第33話「再び王都へ」
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第33話「再び王都へ」
試験までに残された日はあっという間に過ぎていき、試験まで残すは三日となっていた。
ルルネは王都に行くための荷造りを始めていた。ルルネの予定では今日中には、王都に行こうと考えていた。
「ルルネ、準備は出来たか?」
「ええ、出来たけど。どうして、あんたとルナちゃんが一緒に来るのかが分からないんだけど?」
そうなのだ。ルルネは試験を受けるために、王都に用があるのは分かる。だけど、ルルネはどうしてリアムとルナが王都に行く理由が分からなかったのだ。
「俺は王城に用があるんだよ。新・万能霊薬の研究結果を提出しに行かなきゃいけないんだ。そして、ルナは俺の付き添いだ」
「ああ、あんたが黙って女に会いに行ったツケね」
「変なこと言わないでくれよ。確かにそれは事実だけどさ」
あのことを思いだし、リアムは苦い顔をしている。そんなリアムの姿を見て、ルルネはくすくすと笑っている。
「よし、それじゃあ、行きましょうか王都に!」
ルルネの言葉に、二人は頷いた。
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王都【キーリン】に向かう馬車に揺られながら、俺は隣でキャッキャとやっている二人を何となく眺めていた。
ルナもルルネも楽しそうに会話をしているところを見ると、良い感じにルルネはリラックス出来ているんだろうと俺は感じていた。
しかし、前は俺の師匠に呼び出しを食らって王都に行って、思いがけないことに出くわして、今度は自分の仕事の要件と言うのもあるが、友人の大事な試験もあるために王都に行くなんて思いもしなかった。
ちなみに、俺とルナの入場許可書は、王城から出された特別物で、それがあればいつでも王城に入れるのだ。いわゆるフリーパスポートだ。そして、ルルネは申請を出して一般の入場許可書を発行していた。
「そう言えばルルネさん。試験ってどういった形で行われいるんですか?」
「ああ、そう言えば言ってなかったっけ? あのね、筆記試験と実技試験があるってことは前に話したと思うけど、それを二日間に分けて行われるの。一日目が筆記試験で、二日目が実技試験で。それでその合計評価を見て合格か不合格かが決まることになっているわ。だから、もしも仮に片方が少し失敗したなって思っても、もう片方が良ければ挽回も可能だったりするのよ」
「へぇ~、そうやって試験をやるんですね」
ルナが感心したような声を上げているのを聞きながら、俺は一つ疑問に思ったことを口にした。
「なあ、ルルネ。前から一つ気になっていたことを聞いても良いか?」
「何よ? 何だかあんたの顔から失礼な質問が飛び出す気がするけど、良いわ聞いてあげるわよ」
「じゃあ遠慮なく。ルルネはどうやって魔法薬師養成機関の学校を卒業したんだ?」
「あんたぶっ飛ばされたいの? ぶっ飛ばされたいならはっきり言いなさい。一思いに殴ってあげるから」
ひどいな。俺にとっては真面目な質問だったんだけど。
「ちゃんと試験を受けたわよ。筆記試験と実技試験を」
「卒業試験も同じようなもんなのか?」
「まあね。卒業試験はある意味で言えば、今回の試験から言えば前哨戦みたいなものだったからね。でも、それを言うならあんただって受けたんじゃないの?」
「いや、錬金術師は受けなかったぞ。学校を卒業して、師匠の弟子入りをして、それからアトリエをもらってからこれまでやって来たからな」
「へぇ~~、何かその話を聞いて余計にぶん殴りたくなったんだけど」
「何でだよ!」
「自分の胸に聞き返しなさいよ! バカ錬金術師!」
ひどい言われようであった。本当に俺は何で罵倒されているのだろう?
俺はこれ以上の罵倒を避けるために、視線を馬車の外にやるのだった。ああ、早く王都に着かねぇかな。
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それからさらに馬車に揺られること数時間。
やっとの思いで王都に到着した。
「う~ん、やっと着いたぁ~」
馬車から降りたるルルネが、う~んと背伸びをしている。
「ルナ、大丈夫か? 疲れてないか?」
「はい、大丈夫ですよ。心配して頂きありがとうごさいます」
俺は馬車から降りてくるルナに、手を貸しながらそう聞くとその答えが返ってきたので「なら良かった」と返しておく。
「さてと、まずは宿探しよね」
「ああ、ルルネそのことなんだけど」
「何? 宿になんか心当たりがあるの?」
「まあな」
それだけ溢して、俺はルナの手を引いて黙って歩き出した。
「ちょっと、どこ行くのよ?」
「まあ、良いからついて来いって」
俺はそうルルネに不敵に笑いかけたのだった。
そう言って連れて来たのは、俺の実家だった。最初は師匠の家に連れて行こうと思っていたのだが、あそこにルナとルルネを連れて行くのは危険だと思ったのだ。貞操的な意味で。あのエロジジイは節操がないからな。
それに比べ、実家なら母親と妹のやかましさだけを堪えれば良いだけの話である。
「ああ、そう言えばあんたって王都出身だったわね。この裏切り者が」
「あのさ、宿を提供してやるって言ってるのに、何で俺はディスられないといけないのかな? そろそろ泣きたくなってくるんだけど?」
「勝手に泣いてればいいじゃない。あんたが泣こうがこっちは何にも感じないし」
何この理不尽な言葉の暴力! 俺が何をしたと言うのか!
俺が心で涙していると、隣に手を繋いで立っているルナが、ニコッと微笑みかけてくれる。ああ、天使がそこにはいた。
「バカなことばっか考えてないで、早く家の中に案内してよ」
「かっ考えてないし!」
何故バレたし!
俺はため息とともに、その驚きを吐き出すとそのドアノブに手を掛けた。
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「おかえりなさい! お兄ちゃん! 久しぶり!」
扉を開けた瞬間、中からやかましい声が響いてくる。俺は頭痛に悩む頭を押さえながら、声の主に声ををかけた。
「帰って来てそうそう、騒がしいやつだな。ニア」
俺は飛びついてくる、妹――ニア・ラザールを抱きとめながら、妹に文句を言った。
ニアは俺の三つ下の妹で、今は俺が卒業した錬金術師の学校に通っている。ニアが錬金術師の学校に入学したのは十五の時だったので、順当にいけば今年が卒業ということになっている。
学校に入学する資格は十二歳になれば得られるのだが、ニアは入学するのが少しばかり遅かったので、まだ学生と言うわけだ。
「そんじゃあ、兄ちゃんから一つ忠告な。ニア、十八にもなってその髪型はどうかと思うぞ」
俺はニアの頭を撫でながら、ニアの上の方で結われている二つの髪の毛を見てそう指摘するが、当の本人は聞く耳持たずだ。
「別にかわいいから良いじゃん!」
終いには舌を出してきやがったし。まったく、子どもっぽい仕草は二年前の時のままか。だけど、やっぱり、二年会ってなかっただけで妹の姿は変わっていた。身長はそこまでは伸びてはおらず、ルルネより少し低いぐらいか。だが、出る所は出て、しまるところはしまっている。うむ、この二年間で妹に何があったと言うのか? 二年前はバリバリの幼児体形だったと言うのに。
「どうかなお兄ちゃん? ニア、少しは魅力的になったかな?」
後ろに手を組みながら、恥ずかしそうにはにかむ妹の姿に、不覚ながらも俺はときめいていた。
魅力的になったかだって? バカを言え! 魅力的になり過ぎだ! ニアは元々美少女と言っても過言ではないぐらいにかわいかったが、今やそれはスタイルと言う名の武器まで手に入れた。もう無双状態ですよ! はっ‼
そこまで思考して、俺ははっとする。何故なら後ろから絶対零度を思わせる二対の視線が先ほどから突き刺さるからだ。
俺は妹相手に何てことを考えていたのだろうかと、そこでやっと気が付いた。ニアの目がまったく笑っていないと言うことに。
「お兄ちゃん、さっきから後ろに立っている女の人たちのこと、ちゃんと説明してくれるよね?」
俺はただただ頷くことしか出来なかった。
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「どういうことなの⁉」
タンッ! テーブルを叩き付け身を乗り出して追及してくる妹に、はて? 俺は何て答えたら良いのだろうか?
ルルネのことは、とりあえず納得してもらえた。そして、ルルネはすぐに部屋に案内して今は試験勉強をしてもらっている。じゃあ何が問題かって? ルナのことである。
「お兄ちゃんが結婚とかあり得ないでしょ!」
だからどうして、俺の周りの奴はみんなしてそう口を揃えてそう叫ぶんですかね⁉
「あり得ないって言われてもな。実際に結婚してるし」
俺はそう言いながら、キッチンの方に視線を向けた。そこではルナと母さんが一緒にお茶やお菓子を用意しているところだった。
「まさかとは思うけど、お兄ちゃんって幼い少女しか愛せないって言う特殊性癖の持ち主だったの‼」
愕然とする妹に対して、それは即答する。
「断じて違うわ!」
「じゃあ、お兄ちゃんが連れて来たお嫁さんのことは何て説明するのよ! 十四歳とは聞いたけど、見た目が完全にそれ以下じゃない!」
言いたいことは分かるけれども、仕方ないじゃないか。ルナのことが好きなんだから。
「まさか、誘拐したの⁉」
「お前の頭はさっきから想像力が逞しいな! ちょっとそろそろ黙ろうか! さすがの兄ちゃんも傷付いてきたぞ!」
はぁ、何でこうなってんだ?
俺が妹の攻撃で頭を抱えていると、キッチンからルナと母さんが戻って来た。
「はいはい、リアムもニアもそこまで。兄妹仲の良い子とは良いことだけど、試験を受けるために王都に来てる子もいるんだから、少しは自重しなさい」
母さんのたしなめに、俺ら兄妹は揃って「はい」と答え席に座り直すのだった。
「あなた、お待たせしました。今お茶を淹れますから待っててくださいね」
ルナはそう言って、持ってきたポットからティーカップにお茶を注いでくれる。
「ありがとうルナ。それとごめんな。実家に来てまでやってもらっちゃって」
「いえいえ、気にしないでください。わたしがやりたくてやってるんですから」
「ルナちゃんは本当に良い子よね。誰かさんと違って」
母さんの言葉に、ニアが飲んでいたお茶を吹き出している。何だ自覚あったのか。
「それであなたたちはどうする予定なのかしら?」
「俺もルナも二日間はゆっくりするつもりだよ。ルルネは試験勉強をしてるだろうし。後は王城に顔を出さないと。研究成果を提出しなきゃいけないんだ」
「それって郵送じゃ駄目だったの?」
「あっうん。王女様に顔を出せって言われちゃってるし」
「なら、仕方ないわね。ちゃんとやってくるのよ」
「うん。分かってるよ」
「それと、明日はルルネちゃんに王都を案内して上げなさいな」
「ルルネに? でも、試験勉強でそれどころじゃないんじゃないんかな?」
「あのね、こういう時だからこそリラックスが必要なのよ。根を詰め過ぎても、いつもの力は出ないものよ」
母の言葉に押されて、俺は頷いた。
「分かったよ。明日、ルルネを誘ってみるよ。ルナもそれで良いか?」
「はい。あなたが決めたんでしたら、わたしはそれで大丈夫ですよ」
「そっそう。ありがとう」
俺とルナは笑い合った。そんな姿を見たニアがぐぬぬと唸っていた。
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