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【完結】錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~  作者: 瞳夢
第二部 見習い魔法薬師の躍進
33/100

第30話「見習い魔法薬師と錬金術師4」

第30話目になります。これからもお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。

第30話「見習い魔法薬師と錬金術師4」


「とりあえず、ルルネに頼みがあるんだ。魔法薬師にしか頼めないことだから」


「それであたしは何をすれば良いの?」


「そんな難しいことじゃない。薬を作ってほしいんだ」


「薬? 何ので何個よ?」


「何てことないさ、抗生物質を六十個ほど作ってもらおうと思ってっさ」


 リアムのその言葉に、ルルネは引きつった笑みを浮かべるしかなかった。


***********************


 調整(アジャスト)調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整調整。


 後何回繰り返せば良いんだろう?


 ルルネは気が遠くなるのを感じた。リアムが指定した抗生物質は、抗生物質の中でも一番簡単に作ることが出来る抗生物質ではあった。だけどさすがに数が数だ。いくら簡単でも、数が多ければ気が遠くなるのも必然だろう。


 時刻はすでに深夜二時を回っていた。


 対してリアムは、依頼された品を作りながら、薬を作るための準備を進めていっている。


「ルルネ、残りは何個だ?」


「あと四十」


「分かった。そっちは任せたぞ」


「ええ、そっちは大丈夫?」


「何とかな」


 リアムは力なく返すと、作業を進めていく。


 こんなことで終わるのかな?


 ルルネはそう思ってしまう。だけど、リアムの姿を見ると、疲れた表情を見せてはいるものの、その瞳には確かな闘志が宿っていた。


 それからどれぐらい経っただろうか?


 作業部屋に腹の虫が鳴る音が響き渡った。時間は深夜三時を回っている。昼間からずっと作業しているのだ。お腹が空いて当たり前だろう。


「ちょっと休憩にしましょう。何か簡単なものとお茶を淹れてくるから」


「ああ、悪いなルルネ」


 ルルネはそう告げると、作業を一時中断して席から立ち上がった。


 確か食材はあったはずだから、あれなら作れそうよね。


 ルルネは疲れや睡魔に襲われている頭を何度か再起させて、キッチンへと足を運んで行く。


 キッチンに何とか辿りつき、さてとと気合を入れ直してやろうとした瞬間、アトリエの出入り口がノックされてる音に気が付いた。


 こんな時間に誰だろう?


 ルルネは疑問に思いながらも、アトリエの入り口に行きその扉を開けた。果たしてそこに立っていたのは、グレンだった。


***********************


「こんなに遅くに済まない。色々と仕事が立て込んでいてこんな時間になってしまったんだ。これ差し入れを持ってきたんだ」


 グレンを作業部屋に招き入れ、三人はグレンが持ってきてくれた差し入れと、ルルネが淹れた紅茶を飲みながら一休み取っていた。


「リアム、進行状況はどうなんだい?」


「まあ、とりあえずは順調なんじゃないのか?」


「どうして、疑問形なのよ?」


 ルルネは疑問形で答えたリアムに、そうツッコミを入れてしまう。リアムはそんなルルネの紅い瞳を真っ直ぐに見ながら答えた。


「ここからが本番ってことだよ。ちょうどいいやグレンもいることだし、いっちょその薬を作ってみますか」


 リアムはそう言うと、自身の両膝をパンと叩いて立ち上がった。


 抗生物質、キュアリーフ、樹脂。


 この三つを釜に入れて調合していく。やがて、正しい調合反応が現れてその反応は落ち着いていく。そこから待つこと数十分。


 釜の中には薬が出来上がっていた。しかし、それは従来から飲まれている液状の薬ではなく錠剤タイプの薬だった。


「リアム、それは?」


 不思議そうな声を上げたのは、グレンだった。そんなグレンにリアムは説明していく。


「グレンから話を聞いた時、普通にやったんじゃ絶対に間に合わないって思ったんだ。なんせ今までの液体状の薬じゃ、一度に四人か五人分を作るのが限界だったからな。だから、その概念を土台からひっくり返したのさ。だったら、その液体をこういう風に錠剤にして固めてしまえばいい。ルルネに作ってもらっている抗生物質は、村人を助けるには必要不可欠だ。それを百五十個なんて用意するのは到底不可能。それにルルネが作ってる抗生物質じゃ効果も弱いし。だったら、それを俺が補えば良い。こうして錠剤タイプにすれば一度に十五人分は作れるし、効果も引き上げられる。そう考えると、何とか間に合いそうな現実が見えてきたってわけだ」


 グレンとルルネはそのリアムの言葉を聞いて、二人は言葉を失ってしまう。あんな状況でそこまで考えていたのかと。それに、今までの常識を覆した薬も作り出してしまったのかと。


 ルルネはここに来て実感していた。リアムが何故、凄腕の錬金術師と呼ばれる理由を。そして、素直にそんなリアムがすごいと思った。


 ルルネの隣に座っているグレンも頷いている。


「やっぱり、リアムに任せて良かったよ。君だからこそ、村の人々を救えるんだ」


「止めろよグレン。困ってる人がいれば、俺は何があっても助けるって俺は決めてるんだ。だから、俺は俺の信念の為にやっただけだよ」


「だけど、そんなリアムだからこそ出来たんだ」


 グレンの心からの本音に、リアムは照れくさそうに笑っていた。


 そして、ルルネは実感した。どうして錬金術師なのにも関わらず、魔法薬師よりも優れた薬を作り出すことが出来るのかを。


 それはリアムの心の在り様と常識にとらわれない心だと感じていた。


「何となくあんたが、凄腕って言われている理由が分かった気がするわ」


 ルルネの呟きは、小さすぎて誰の耳にも入らなかった。


「さてと、休憩終り。とっとと、作って村の人に届けなきゃだもんな。うっし! やりますか! ってことで、ルルネ残りの抗生物質よろしくな」


「ええ、任せなさいよ!」


「僕にも何か手伝えないかな?」


 ルルネもグレンも笑顔で作業に入って行く。こうしてリアムのアトリエは朝を迎えるのだった。


「それじゃあ、作業を一気に終わらせますか!」


 リアムのその声に、三人は拳を打ち合わせるのだった。


***********************


「これがあたしとあいつの出会いだったかな。最初はどうして魔法薬師じゃない奴が、魔法薬師以上の薬を作れるのかってむしゃくしゃしてた。だけど、あいつと一緒に過ごしていくうちにそんなことどうでも良くなってた。ただ単純にあいつってすごいんだなって思っていったの、。ああでも、今言ったことはあいつには内緒にしてね。あいつに知られるのは何だか癪だから」


 ルルネのその言葉に、一緒にベッドに入り横になっていたルナはくすくすと笑った。


「それに今なら分かるな。あいつがあの時言ってた信念って、ルナちゃんのことだったのね。ルナちゃんの話を聞いた後なら確信を持って言えるわ」


 ルルネはそう言いながら、綺麗なルナの金髪を優しく梳くように頭を撫でた。


「でも、こうしてリアムさんの昔のお話が聞けて良かったです。それにリアムさんはやっぱり、リアムさんなんだって思えましたし、どこまでも大好きなリアムさんです」


 微笑むルナの姿を見て、この子は本当に強い子だなってルルネは改めて思ってしまう。


「ねえ、ルナちゃん。今度はあたしから聞いていいかしら?」


「はい、何ですか? ルルネさん」


 ルナはそう聞き直すと、ルルネの瞳を真っ直ぐに見た。暗闇の中で翠色の瞳と紅い瞳が交差する。


「ルナちゃんは怖くなかったの? あいつに気持ちが伝えるのが? それにそんなにやったは良いけど断られるとは思わなかったの? 考えなかったの?」


 それはルナが、このアトリエに来た時から思っていた疑問だった。初めて来た時、彼女ははっきりとリアムに告げたのだ。「わたしをお嫁さんにしてください」と。


 確かにあそこでリアムが断るようなことをしていたら、あたしは全力であいつのことを説得していたかもしれないけど。だけど、勝率不明の恋にそこまでの覚悟を決められた理由があたしには分からない。


 ルルネのその意見は、ルルネ以外にも言えることだろう。その不安や懸念、恐怖と言った感情を吹き飛ばして告白したのだ。それはとってもすごいことではないかとルルネは思っていた。


「確かにルルネさんの言う通り、そう考えたことは何度も何度もあります。それにこんなわたしがお嫁に来ても、リアムさんに迷惑がかかるだけなんじゃないかって。だけど、やっぱり諦められなかったですし、何があってもリアムさんのお嫁さんになりたいって思いましたから」


 ルナは一度そこで言葉を切ると、ルルネに顔を真剣に覗き込みそして笑った。


「それに、一度フラれたってそこで終わりじゃありません。一度フラれて諦めるのは、その人に対しての愛がその程度だったってことです。だから、もし仮にわたしがあの時フラれていたらやることは一つですよ」


「一つなの?」


「はい、一つです。それは絶対に振り向かせることです。通い妻でも何でもして、絶対にリアムさんのことを振り向かせていたと思います。だって、そのぐらいわたしはリアムさんのことが大好きで、愛していますから!」


 屈託のない笑顔でそこまで言い切れる彼女に、ルルネは素直に敬意を抱いてしまう。そして、ルルネ根の中にある決意も生まれ始めていることを自覚していた。


「ルナちゃんありがとね。答えてくれて」


「いいえ、わたしもリアムさんの昔話を聞かせてもらえましたから」


 ぎゅーと音がしそうなほどに抱きしめてくる、ルルネのことをルナは嬉しそうに受け入れていた。


「それじゃあ、ルナちゃん。夜も遅いしそろそろ寝よっか」


「はい。そうですねルルネさん」


「あっそうだ。ルナちゃん。今日は、このままルナちゃんのことを抱きしめたまま眠っても良い?」


「大丈夫ですよ」


「ありがとう!」


 ルルネはルナの許可を得ると、さらにぎゅーと抱きしめた。ああ、なんて安心する温もりと匂いなんだろう。


 ルルネはこの恋についてを教えてくれた彼女に感謝をしながら、ゆっくりと瞼を閉じていった。


 ある一つの決意を胸に秘めながら。


 ルナもルナで、ルルネの温もりに包まれながら瞼を閉じていた。早くリアムに会いたいと願いながら。

面白いと思って頂けましたら、ブックマークや評価のほどをよろしくお願いいたします。


※ブックマークや評価本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

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2021年8月11日より新連載始めました。よろしくお願いいたします。 リンクスとステラの喫茶店~ステラと魔法の料理~
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