第29話「見習い魔法薬師と錬金術師3」
第29話目になります。よろしくお願いいたします。
第29話「見習い魔法薬師と錬金術師3」
リアムと出会った次の日から、ルルネはリアムのアトリエ【クレアスィオン】でお手伝いとして働くことになった。
ちなみに、ここでしばらく働くことになったと両親に話したら、あら彼氏でも出来たのかしらと言われたので、しばらくの間口を利かないことにしようとルルネは決めていた。
「それであたしは何をすればいいのかしら?」
再びリアムのアトリエに来ていたルルネであったが、昨日と同じように作業部屋に入ると、床で倒れているリアムの姿がった。
何これデジャヴ? と思ったのはルルネだけではないだろう。
「おーい、あんたまさか、また空腹で倒れてるんじゃないでしょうね?」
でも、昨日は二日間何も食べないで作業をやっていたとか、何とか言っていたはずだからまだ大丈夫なような気がするんだけど?
ルルネがそう思いながらリアムの様子を確認すると、それはそれは小さな寝息を立てていた。
「って! 寝てるだけなの! 紛らわしいのよ!」
ルルネは思わず、そんなリアムの頭を引っ張ったいてしまう。
「痛って!」
そんなリアムの口からは、叩かれていたそうな声が漏れた。ちなみに、とてもいい音が鳴りました。はい。
そして、叩かれたリアムはと言うと、頭をさすりながら起き上がった。
「あのな、ルルネ。起こすならもう少し優しい起こし方で起こしてくれよ」
「あんたが紛らわしいのが悪い!」
ルルネはリアムの抗議をぴしゃりとシャットアウトすると、リアムに何をすればいいか問うた。しかし、返って来た言葉は何とも呆気ないものだった。
「そうね。何しようか」
「はっ?」
ルルネはリアムが返してきた言葉に思わず固まった。いやだって固まるでしょ。働くことになったのに関わらず、何しようかときた。うん、何なんだこいつ。
もう一発ぶん殴ってやろうと思い、リアムに近付こうとすると、今度はこの部屋を間抜な音が支配した。間違いなくリアムの腹の虫の音である。
ねえねえ、こいつをぶん殴っても罰は当たらないわよね?
ルルネは誰に問うでもなくそう思ってしまう。そして、盛大なため息とともに自身が何をするべきか方針が決まった。
「はいはい。分かりました。取りあえず朝食を作るための材料の買い出しに行って来ます」
ルルネはそれだけ言い残すと、材料を買うためにアトリエを後にするのだった。
***********************
結局のところ、ルルネの業務の内容はアトリエの掃除や、リアムのご飯の用意と言った、メイドと対して変わらない業務内容になっていた。
いや、確かにお願いしたのはこっちだけれども何かがおかしくない?
ここに来て一週間が経とうとしているが、ルルネは何かがおかしい気がしていた。元々、ルルネがここに来た理由は、凄腕の錬金術師がいて、その錬金術師が魔法薬師を上回る薬を作り出す理由を探るためだった。なのに、どうして自分は給仕などをやっているのか、まったくの理解不能だった。
本当にあたしは何をしているのだろう。とルルネは再度思ってしまう。
今日も今日とて繰り返される給仕の仕事。本当にこんなことをしていて答え何て得られるのだろうか?
それにこの一週間、リアムのそばで錬金術を見ていたが、リアムが凄腕とはとても思えなかった。何故かって、当の錬金術師が底抜けのアホだからだ。
床で寝るは、空腹で倒れてるは。飲み物と間違って中和剤を飲もうとするはで、とてもじゃないけど、そんな感じがしないのだ。
だけど、一つ分かったこともある。
それはどこまでも真面目で真剣なのだ。それ故にその他のことが多大な感じにおざなりになってしまうのだろうと、ルルネは思っていた。それに一人一人のお客さんをとても大事にしている。接客一つとっても必要以上に丁寧にこなしている。だから、町の人々にも愛されてるのかな。
さてと、今日も仕事に戻りますかと、ルルネは思考を中断して腰を入れようとした瞬間、アトリエ内に奇声が響き渡った。
それはお客さんの接客をする小スペースからだった。
「ちょっと! いきなりどうしたのよ?」
小スペースに出ると、そこには困り顔のリアムと、リアムとは対照的にさわやかな好青年が立っていた。好青年の方は白を基調とした制服に身を包んでいたため、一目で近衛団の人間だということが分かった。
ルルネはその青年と目が合ったため、慌てて頭を下げた。それに倣って青年も頭を下げた。
「初めまして。僕は近衛団に所属しているグレン。グレン・アルタだ」
「初めまして。あたしは見習い魔法薬師のルルネです。ルルネ・ニーチェ」
「そうか。ルルネよろしく。それと君はリアムの彼女なのかい?」
そのグレンの言葉に、ルルネは顔を真っ赤に染めて否定する。
「違いますよ! 誰がこんな奴なんかと!」
「はは、ごめん、ごめん。冗談だよ」
「グレン、冗談なんか言ってる場合かよ」
グレンとルルネが言い合っている横で、リアムが苦しそうな声を出す。
それを聞いたグレンは、目を細め真剣な顔に戻した。
「そこをどうにかならないかなリアム。もうリアムに頼むしかないんだ」
「何かあったんですか?」
急に真剣な感じになった二人に、ルルネは思わずそう尋ねてしまう。そんなルルネにグレンは説明する。
「実はこの町から少し離れたところにある村で、奇妙な病が流行していてね。幸いなことにその病を治す薬はあるんだけど、数が数だからね」
「えっと、何個なんですか?」
「百五十個」
グレンが口にした数を聞いて、ルルネは青ざめた。
「でもそれって、錬金術師の仕事じゃなくて、魔法薬師の仕事なんじゃ?」
「それはもちろん理解しているよ。だから僕もこの町の至る魔法薬師に当たっただけど、どこも他のことで手一杯みたいでね。断られてしまったんだ」
「だけど、ここだって手一杯なはずじゃ……」
ルルネは壁に貼られている依頼書を見ているので、そう呟いてしまう。
「分かってはいるんだ。だけど、ここまで断られればいよいよ手詰まりだ。だから、どうかリアム、この依頼を受けてほしい」
グレンはそう言って、リアムに頭を下げた。リアムはしばらくの間、悩みに悩んでいた。
「グレン、納品の期間はどれぐらい待てる?」
「早くて二日。遅くても三日で用意してもらいたい」
「はは、おいおい無茶ぶりにも程があるだろ」
そうだ。無茶ぶりだ。さすがに三日でその数を用意するのなんて無理だ。不可能だ。ルルネはそう感じながら、リアムの顔を覗き込んだ。そして、驚きで固まった。だって、目の前で無理難題を押し付けられているはずなのに、リアムの口元には不敵な笑みが浮かんでいたのだから。
どうしてリアムは笑っているの?
ルルネはその姿を見て、不思議に思ってしまう。
「俺がやらなきゃ、その村の人は助からないんだよな?」
「ああ、君がやってくれなきゃあの村に待ってるのは滅亡だけだよ」
「分かった。その依頼引き受けてやるよ! 俺がその薬を作ってその村を救ってやる!」
「ありがとうリアム。期待しているよ」
***********************
「あんた、何考えてんの!」
「いきなり叫ぶなよルルネ」
リアムは頭に響くようなポーズを取っている。
「叫びたくもなるわよ。あんた分かってるの? あんな大量の薬の発注。普通に考えて二日、三日じゃ不可能でしょう!」
あんな数の薬。魔法薬師が、三日三晩徹夜でやったとしても間に合わない量だった。
「分かってるよ。だから、今考えてるんだ。どうにかして間に合わせる方法最善の方法をさ」
リアムはそう言いながら、色々な本を取り出して調べ物をしていく。
無理だよ。どんな方法を取ろうとも。
ルルネはそう思ってしまう。百五十個なんて、どんな方法を持って作れると言うのだろうか?
リアムはそう思うルルネをよそに次から次へと、本を読み進めていく。
「どうする? どうする? 村人を助けるためにはどうしたら良い?」
リアムはぶつぶつと呟きながら、ページをめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくるめくる。
ダメだ。情報が少なすぎる。とリアムは思うが、それでも間に合わせて作り出す方法をつけ出さないといけない。
「どうすれば良い? どうしたら?」
ここで出来なきゃ村人がみんな滅んじまう。そのプレッシャーがリアムをさらに追い詰めていく。
そんなリアムの姿をルルネは見ていられなかった。
「どうして? あんな無茶な依頼を? 他の依頼もあるのに」
「それじゃあ、ルルネ。俺がやらなきゃ誰がやってくれるって言うんだ? 誰があの村を助けてやれるって言うんだ?」
「そっそれは……」
リアムの言葉にルルネの言葉は詰まってしまう。
リアムの言っていることはごもっともな意見だった。確かに誰かがやらなければ、その村に住む人は死んでしまう。
「だから、誰かがやるしかないんだ。その役目が偶々俺に回って来ただけだよ」
確かにそうなのかもしれない。そうなのかもしれないけど、だけど、今回の依頼はさすがに無理がある。
「普通に作ったら絶対に間に合わないよ」
「そうだろうな。普通に作ったんじゃ個数がそこまで出来ないから時間がかかり過ぎる。それをどうにか出来れば良いんだけど……」
そこでリアムはページをめくる手を止めた。そこにはとある薬の形態が書かれているページだった。
「これを応用すれば何とかなるか? それに素材を少し工夫すればかなりの時間の短縮になるかもしれない」
「ちょっと、いきなりどうしたの?」
「なあ、ルルネ。お前は魔法薬師だよな?」
「えっええ。見習いだけど一応魔法薬師よ」
「だよな。なら、手伝ってもらうぞ」
「えっ? あたしに出来ることがあるの?」
「ああ、むしろルルネにしか出来ないことだ。さあ仕事を始めるぞ!」
リアムはそう言うと、本をパタンと閉じた。
そんなリアムの姿を見て、ルルネは自分の抱いていたリアムのイメージが変わっていくのを感じていた。
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