第28話「見習い魔法薬師と錬金術師2」
第28話目になります。よろしくお願いいたします。
※一部、誤字の修正を行いました。今後ともよろしくお願いいたします。
第28話「見習い魔法薬師と錬金術師2」
えっと、何なのこの状況?
ルルネは目の前の光景を見て思わず、そう思ってしまう。目の前では今まさに、ルルネが作った料理を頬張る一人の青年の姿があった。
本当にこいつが凄腕の錬金術師なのだろうか? と疑問が浮かんでしまうぐらいに目の前の青年はぱっとしないような雰囲気をしていた。
何なのこの状況?
ルルネは誰に問うでもなく、同じ質問を自身の中で繰り返してしまっていた。
時間は遡ること二時間前のことになる。
このアトリエ【クレアスィオン】に来ていたルルネは、奥の部屋から物音を聞いて、すぐさま奥の部屋へと駆け付けたのだ。そして、その奥の部屋で待っていたのが、床に倒れている青年の姿だったのだ。
ルルネは戸惑いながらも、その倒れている青年に向かって声をかけたのだ。
「大丈夫ですか?」
何かあったら大変だと思い、ルルネは身構えていた。これでも見習いではあるが一応は魔法薬師だ。何かしらのことは出来るかもしれない。
ルルネは出来る限りの注意をしながら、その青年の姿を見ていた。
「…………あぁ」
青年が何かか細い声で何かを伝えようとしていたので、ルルネは耳を澄ませた。
「……はっ……」
「は?」
「はら……へった」
はい?
その言葉にルルネは固まってしまう。
え? 何? この男は空腹で倒れてたってこと?
理解が追い付くと同時に、ルルネは呆れてしまう。何かと思って奥に来てみれば空腹で倒れている男。
本当にこんな奴が凄腕の錬金術師なのかしら?
ルルネは疑問に思うと同時に、さすがに無視は出来ないと思い声をかけた。
「あのさ、キッチンってどこにあるのかしら? あたしで良ければ何か作ってあげるわよ」
ルルネの言葉に、その青年は力弱くキッチンがあると思われる方に指を指した。
ルルネは呆れたため息とともに、「少し待ってなさい」と告げるとキッチンの方に向かった。そして、キッチンに着いてもルルネの呆れは治まらなかった。
キッチンはとても料理など出来る状態ではなく、食材も無く、あったとしても芽が生えはじめた野菜だけだった。
「本当にあいつが凄腕の錬金術師なの?」
ルルネはこの日何度となく思った疑問を口にしてしまう。だが、作ると自分で言った以上は作らなきゃいけない。
「あ~あ! 分かったわよ! やってやるわよ!」
ルルネはそう叫び、腕まくりをすると取りあえずキッチンを使える状態に戻すべく取り掛かった。
それが終わったらすぐさま買い出しに行き、自分の出来るものでなおかつ、手早く出来るものを選択して調理に取り掛かっていく。
何やってるんだろう、あたし。
ルルネは今更ながらに疑問を抱き始めていた。
***********************
そして、冒頭に戻ることとなる。
目の前でむしゃむしゃと自身が作った料理を頬張る青年の姿を見ながら、ルルネは紅茶を啜っていた。
それからしばらくして、青年が料理を食べ終えた。
「ふぅ~~食べた、食べた。ごちそうさま」
「はいはい、お粗末様でした」
ルルネは引きつりながらそう返した。
「あんた、どんだけ食べるのよ。軽く三人前はあったと思うんだけど」
そうなのだ。目の前の青年は三人前はあろうかと言う料理を全て平らげてしまったのだ。
「いやさ、二日間何も食べないで作業してたから、ものすごく腹が減ってて」
「二日間何も食べずに作業って、あんたってバカなの?」
「バカって、確かに言われたらバカなのかもしれないけど。しょうがないじゃないか。食べる時間がなかったんだから!」
「食べる時間がないって、どういう……」
ルルネは言っている途中で言葉が詰まってしまう。何故なら、壁に貼られた大量の依頼書を見て言葉を失ったのだ。
「まさか、あれを一人で請け負っているの?」
「ああ、そうだけど」
こともなさげに、さらっとそう告げる目の前の青年に驚きの感情しか、ルルネには出てこなかった。
「普通に考えて無理な量だとあたしは思うんだけど」
そうだ。一人で処理する量ではないはずだ。
「う~ん、ずっと作業していれば無理な量でもないだろう。それに時間はそれなりにもらってるし」
今度こそその青年の言葉によって、ルルネは言葉を失ってしまう。
そうだとしても無理な量だと言うのは変わりはないだろう。
「ああ、そうだ。助けてもらったお礼言ってなかった。本当に助けてくれてありがとう。俺はリアム。リアム・ラザールだ。よろしくな」
「あたしはルルネ。ルルネ・ニーチェよ。こう見えても見習い魔法薬師をやっているわ」
「そっか。 サンキューなルルネ。それとよろしくな」
「えっええ。よろしく。それと一つ気になったんだけどあなたいくつなの?」
「えっ? 俺は十九だけど」
「えっ⁉ 同い年なの⁉」
今日は何回驚けばいいのだろうか。後何回驚けばいいのだろうか?
「あんた人間なの?」
とてもじゃないが、同い年には思えずそんなことを言ってしまったのだ。
「初対面なのに、失礼じゃないか? 心配しなくてもちゃんと人間だよ」
「いやいや、とてもじゃないけど人間とは思えないんだけど」
同い年でここまでの差があるものなのだろうか?
「それでルルネは一体どうしてここに来たんだ? 依頼なのか?」
リアムがそう言えばと言った感じに、ルルネに問いかけた。
「依頼……依頼ではないの」
そう言えば何て説明しよう。まさか、正直に話すわけにはいかないしな。
ルルネがそう思っていると、突然目の前から「あっ!」と言う声が聞こえてくる。
「いきなりどうしたのよ?」
「今何時だ?」
「今って午後三時になるところじゃないの?」
「まずいな」
ルルネに時間を聞いたリアムはすぐさま立ち上がると、何やら釜みたいな所に歩み寄った。
「ちょっとどうしたのよ?」
「四時に頼まれてた依頼品をまだ作ってなかったから、今から大急ぎで取り掛からないと間に合わない」
リアムはそういうや否や、すぐさま材料を掻き集めて釜へと投入していく。それから棒のようなものでくるくると釜の中をかき混ぜていく。
「よし、後はこれを入れて」
最後に液体のような材料を釜に入れると、その釜の中が光り出してやがて光は収束した。
「これで反応は安定したかな。後はしばらく置いておけば大丈夫だろう」
リアムは釜の中身が安定したのを見ると、ぐーと背伸びをして肩をほぐすと後はどんな依頼があるかを確認するために、壁に貼ってある依頼書を確認していく。
「残りの依頼は二件で、どっちも同じものか。なら後は楽勝かな」
リアムはそう呟きながら、次に作るものに必要な材料を集めていく。その過程の中でとある素材を切らしていることに気が付いた。
「しまった。昨日切らしたのをすっかり忘れてたな」
昨日から作業をぶっ続けでやっていたので、注意が散漫になっていたのだ。
「今から買いに行けば、何とか間に合わせることが出来るか? だけど、釜も放置できないし」
ぐぬぬと呻りそうな具合に悩んでいるリアムの姿を見て、ルルネは何だか放っておけず声をかけた。
「何なら、あたしがその素材を買ってこようか?」
「えっ? 良いのか? だけど、悪くないか?」
「あんた、キッチンの掃除やご飯まで初対面の相手にやらせといて良く言うわよ」
「その節は大変お世話になりました」
そう言われれば、リアムは何も言い返せないので、素直にお礼を言うことにする。
「それで、何を買ってくれば良いわけ?」
リアムは必要な素材などを書いた紙をルルネに渡した。ルルネもルルネでその紙を受け取ると、一応確認をしておく。
「うん、分かったわ。それじゃあ行ってくるわね」
「ルルネ、本当にありがとう。このお礼はいつか返すよ」
「そんな大げさな」
ルルネはリアムの言葉に微妙な笑みを浮かべると、買い出しに向かうためにアトリエを後にした。
リアムはリアムで依頼の品を完成させるために、作業に戻るのだった。
***********************
買い出しから戻ったルルネが見たのは、今まさに釜から完成したものを取り出すリアムの姿だった。
今リアムが作っていたものは、何かの補強素材なのだがあんな形で作り出してしまうとは、何とも不思議な感じだった。
これが何でも作り出すと言われている錬金術。
「あっ、ルルネお帰り。買い出しありがとな」
「えっええ」
ルルネは買って来たものをリアムに差し出した。リアムはそれを受け取ると、すぐさま次の作業に取り掛かろうとしたが、その手を止めてルルネに向き直った。
「ルルネどうした? 何だかぼぉーとして?」
「いえ、今のが錬金術なんだなって思っただけ」
「ルルネは錬金術を見るのは初めてなのか?」
「実はそうなの。魔法薬師として薬を作る過程なら幾度となく見てきたけど、錬金術に関しては初めて」
「へぇ~、それでどうだった錬金術は?」
「そうね。錬金術師って薬とかも作れるの?」
「作れることは作れるけど、多分魔法薬師よりも良い薬は出来ないんじゃないかな」
良く言うわよ。あんたの薬の方が上だってお客さんが言っているのに。
「だけど、錬金術師と魔法薬師で不思議よね」
「不思議って何が?」
「素材に対してのアプローチの仕方が違うのに、同じものを作り出すことが出来るなんて」
「う~ん、それは数学と同じじゃないかな」
「数学と?」
「ああ、数学の問題って答えは一つのはずなのに、解き方に関して言えば色々な解き方があるだろ。だから、それと同じで薬も色々な作り方がある。そして、その作り方によってその薬の強さも変わっていく。多分、そういうことじゃないかなって、俺は思ってるんだけど」
リアムの言葉に、ルルネはなるほどと頷いた。確かに言われてみればそうなのかもしれない。
だったら、こいつの近くでそれを見ていれば、魔法薬師が錬金術師が作る薬にどうして劣ったのか分かるかな?
「ねえ、さっきいつかお礼するって言ってたよね?」
「ああ、言ったな」
リアムは作業をしながら、ルルネの言葉を聞いていく。
「それじゃあ、あたしのお願いを一つ聞いてくれない?」
「お願い?」
「そう。お願い」
ルルネはそう返すと、深呼吸を一つするとそのお願いを口にした。
「あたしをしばらくの間、ここにいさせて欲しいの」
そのルルネのお願いに、リアムは固まるしかなかった。
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