第27話「見習い魔法薬師と錬金術師」
第27話目になります。今作もよろしくお願いします!
第27話「見習い魔法薬師と錬金術師」
それは一年と半年ほど前の出来事だった。
ルルネが魔法薬師養成機関学校を卒業してから半年ほどが経った頃だった。
ルルネは魔法薬師養成機関学校を卒業すると同時に、研修するところに自身の実家を選んでいた。何を隠そう、ルルネの実家は両親が共に魔法薬師で、さらには薬屋【ヒール】も営んでいたからだった。
そんなとある日だった。
ルルネは両親に頼まれて薬の配達に出ていた。
えっと、これがトワソンさんの所で、この薬がハイルさんの所だったよね。
ルルネは配達のリストを確認すると、どの道で行ったらいいかのルートを確認する。
うん、こう行けば最短ルートで行けるわね。
ルルネはあたし天才っと自画自賛をすると、その決めたルートで配達先へと向かっていく。
このトワソンとハイルは、昔っから【ヒール】の薬を愛用してくれている常連さんだった。
そして、今日届ける薬は、どちらも定期購入してくれている薬だったので、こうして毎週届けに行くのが、ルルネの研修内容の一つでもあった。
魔法薬師は薬を作って終わりではなく、薬を使ってくれた人を笑顔にするのが仕事。
これはルルネの両親が常々から掲げている、スローガンでもあった。実際、ルルネもそのスローガンには納得だった。ただ薬を作ることなら魔法薬師なら誰だって出来る。けど、それはただ作っただけであって、その人の病気が治るのか、またその人自身にあった薬なのかまでは分からない。
ルルネの両親は、そのことを加味して、誰もが笑顔になれる薬作り、販売を行っていくことを目標にしていたのだ。
ルルネはそのことを自慢に思っていたし、かっこいいとも思っていた。だからこそ、自身も魔法薬師になりたいと子ども心に思っていたわけだし。
ルルネがそんなことを考えながら歩いていると、一軒目のトワソンさんの家が見えてくる。
トワソンさんは確か腰痛を抑える薬だったよね。
ルルネは再度確認してから、トワソンさんの家の扉をノックした。
「ルルネ・ニーチェです! お薬を届けに参りました!」
ルルネがそう声を上げてから待つこと数分。中から白い髭を顎に蓄えた初老を思わせる人物が出てきた。
ルルネはその人物を見ると、すぐさまぺこりと頭を下げた。
「ご無沙汰してます。トワソンさん。お薬のお届け参りました」
ルルネは再度同じ言葉を繰り返した。
「ああ、いつもありがとうルルネちゃん」
「いえいえ、こちらこそいつも薬を使って頂いてありがとうございますですよ」
ルルネは笑顔で応対していく。しかし、そんなルルネに対して、目の前に立っているトワソンの顔は何だか晴れないそう言った顔をしている。
「どうかしたんですか? トワソンさん」
そんなトワソンの様子に気が付いたルルネは、首を傾げながらそうトワソンに問いかけた。
トワソンは少しの間、唸っていると言いずらそうな口調で口を開いた。
「ルルネちゃん、申し訳ないんだけど薬の配達は、今回限りで終了にしてもらっても良いかな?」
「えっ?」
ルルネの口からは自然にそんな言葉が出ていた。しばらくの間、ルルネはトワソンに言われた言葉が理解できなかった。
だって、それは契約解除を告げる言葉だったのだから。
トワソンはもう何十年に渡って、ルルネの実家である薬屋【ヒール】を愛用してくれていた。それがいきなりの契約解除を告げられたのだ。理解出来なくて当然だろう。
「ごめんな、ルルネちゃん」
トワソンさんはもう一度そう告げると、ルルネから薬を受け取るとその扉を閉めて中に入って行ってしまった。
「えっ? どうして?」
ルルネはただただそう呟き、呆然と突っ立ていることしか出来なかった。
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とりあえず配達を終わらせないとと気を取り戻したルルネであったが、続いて行ったハイルさんの所でも契約解除を告げられてしまい、両親に何て言ったらいいのかが分からなくなってしまう。
ハイルさんももう何年も買い続けていてくれたのに、一体どうして?
ルルネは純粋にそう思ってしまう。
何とも言えない気持ちで家に辿りついてしまい、家の前で突っ立っている訳にもいかず、ため息を一つ溢すと家の扉をくぐった。
「ただいま」
「あら、ルルネちゃん。お帰りなさい。配達してきてくれてありがとうね。あっ! 今おやつを用意するから手を洗って席に座って待っててね」
「うん」
ルルネはそんな母親の言葉に、空返事で返した。そして、そんなルルネの様子にルルネの母は娘の様子がおかしいことにいち早く気が付いた。
「ルルネちゃん何かあったの?」
母親のその言葉に、ルルネの肩はピクンと震えた。言うべきか言わないべきかとも思ったが、いずれはバレることなので隠していても仕方ないと思い、ルルネは今回配達に行った二件とも契約解除にあったことを母に話した。
ルルネの話を聞いた母親はただ「そう」としか言葉を出さなかった。
「驚かないの?」
ルルネはそんな母親の態度を訝しく思いそう問いかけた。
母親は困ったように笑いかけると、ルルネに事情を話した。
「実はね、今月に入ってからこれで五件目なのよ。契約解除をされるの」
「えっ⁉」
ルルネはその母親の言葉に、心底驚いてしまう。
ルルネの両親は家族贔屓ではないが、それなりに腕の立つ魔法薬師だとルルネは思っていた。それが認められ顧客はどんどん増えていった。それぐらいに信頼のある薬屋だったのにいきなり何故?
「新しい薬屋でも出来たの?」
ルルネが真っ先に浮かんだ疑問に母は首を振る。
「薬屋は出来ていないわ。ただ半年前に出来たこの町に新しく【クレアスィオン】っていうアトリエが出来たの。それは知ってるかしら?」
アトリエ? アトリエって確か錬金術師が開いているお店兼工房だっけ?
「ううん、知らないかな。そもそもアトリエって錬金術師でしょ? 魔法薬師に何の関係があるの?」
ルルネの疑問は最もだった。錬金術師と魔法薬師は似て非なる者なのだから。ルルネの言葉に母は苦笑いをしてから、言葉の続きを口にする。
「私たちのお客さんは、そのアトリエに取られているのよ」
ルルネは母の言葉に耳を疑った。
えっ? 薬を作ることが本職である魔法薬師から、本職じゃない錬金術師が客を取っている?
何とも信じられない話だった。錬金術師はあらゆるモノを作り出すとは、もちろんルルネでも聞いたことはあった。そして、そこに薬なども含まれていることも重々承知していた。しかし、あくまでもそれは本職ではない。薬作りの専売特許はあくまでも魔法薬師なのだ。本職ではない錬金術師が、本職である魔法薬師以上の作り出すなんてあり得ないんじゃないかってルルネは思ってしまう。
「錬金術師が魔法薬師以上の薬を作り出すなんてあり得るの?」
ルルネの疑問はそのまま口を吐いてしまう。
「私もお父さんも信じられない話だけど、本当にそうみたいなのよ。お父さんがそのアトリエの評判を聞いたそうなの。魔法薬師以上の薬を生み出す錬金術師とまで呼ばれているそうよ」
母親の言葉にまたもやルルネが驚いてしまう。
まさか、そんなことがあり得るのだろうか? 未だに信じられない話だと思ってしまう。
「ママごめん。ちょっと外に出てくるね」
気が付いた時には、ルルネの口からそう出ていて、ルルネ自身も玄関に向かい、そのまま家を飛び出していた。
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予想以上だった。
家を飛び出したルルネは、町を回ってそのアトリエ【クレアスィオン】の評判を集めていたのだ。
今は町に設置されているベンチに座り、喉の渇きを潤しているところだった。
売店で買ったジュースを飲みながら、先ほど集めて回った情報を整理していた。しかし、情報のほどんどが凄腕の錬金術師で、仕事内容も丁寧で接客や愛想も良いとの話で、文句の一つも出てきそうにない感じの情報しか集まらなかった。
情報が偏り過ぎでしょ!
ルルネは思わずそう叫びそうになってしまう。しかし、どの人に聞いても、誰もが口を揃えて、凄腕の錬金術師と口にする。それって素直に考えてみればすごいことではないだろうか?
「これは直接探ってみるしかなさそうね」
ルルネは手に持っていたジュースを一気に飲み干すと、ベンチから立ち上がった。
目指すはアトリエ【クレアスィオン】 そこに答えはあるはず。
ルルネはそう考え目的地を【クレアスィオン】へと向けた。
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町のはずれと言っても良いような位置にそのアトリエアはあった。
「こんなこじんまりとしたアトリエに、本当に凄腕の錬金術師なんているのかしら?」
ルルネはそのアトリエを見て、思わずそう漏らしてしまう。どう見ても二流、三流の錬金術師が開いているアトリエにしか見えなかった。
ルルネはそう感じながらも、そのアトリエの扉をくぐった。
中に入ると、そこには小スペースな空間が広がっていて、そこにはカウンターがあるだけで、商品と呼べるものはまず置かれていなかった。そして、カウンターの奥が作業部屋になっているのか、カウンターの先に通路のようなものが見えた。
「すみませ~ん」
ルルネは虚空に向かってそう声をかけるが、返ってくるのはひたすらの無だった。そして、ルルネは今更ながらの疑問を抱き始めていた。
どうしてここに来てしまったんだろと。
普通に考えて、いきなり商売敵の店に殴り込むなんて、何とも浅はかな考えなことかと、本当に今更ながら気が付いたのだ。
本当に何してるんだろう、あたし。
ルルネはそう考えなおし、踵を返そうとした。するとその時、アトリエの奥の方から、ドサッと重く鈍い音が響いてくる。
「なっ何?」
ルルネはいきなりのその音に驚いてしまうが、何が起きたのかと言う好奇心に負け奥にへと足を進めた。
多分、この部屋から音がしたのよね?
ルルネは不安に思いながらも、その扉に手を掛けてその扉を開けた。そして、ルルネは見たのだ。
床に倒れている一人の男の姿を。
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