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【完結】錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~  作者: 瞳夢
第一部 突如、嫁が出来ました
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第3話「リアムってアレなの?」

第3話目になります。こんな感じでお話が進んでいく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

   第3話「リアムってアレなの?」


「それで、あたしはいつまで空気と化していれば良いのかしら?」


 何とか話がまとまったなっと思っていたら、横からルルネがそう声をかけてくる。


「うおっ! いたのかルルネ」


 そういや、ルルネがいたことを忘れてた。それを思い出した瞬間、何だか恥ずかしくなってしまい、俺は慌てて手を引っ込めてしまう。ルナも恥ずかしかったのか顔を赤く染めていた。


「はぁ~、あんたねぇ」


 ルルネに本気で呆れられてしまう。そんな空気の中、ぐぅ~と気の抜けた音が響き渡った。


 どうやら俺の腹の虫が鳴った音だった。そういや、朝から何も食っていなかったっけ。


「あなたお腹空いたのですか?」


「あっああ。そう言えば朝から何も食べてなかったな」

 

「それはいけません! 少し待っていてもらえますか」


 ルナはそう言うや否や、アトリエを飛び出して行った。


 数十分後に戻って来たルナの手には紙袋が抱えられて、そこには食材が入っていた。


「キッチンを貸してもらっても良いですか?」


「向こうにあるけど、多分使えない」


 俺は申し訳ない気持ちを抱きつつ、ルナをキッチンに案内する。そして、そこは見るも無残な状況になっていた。使った皿や、屋台などで買って来た食べ物のゴミなどがあちこちに転がり、とても料理できる状況ではなかった。


 最近、仕事が忙しくて片している暇がなかったのだ。偶に見かねたルルネが掃除をしてくれたりするのだが、ここ最近はルルネもルルネで、自分の勉強の方が忙しくてこの惨状になってしまったのだ。


 こりゃ、完全に呆れられたかなと思い隣を見ると、ルナの表情からはそんな感情は一切なくむしろその感情の逆の感情みたいなものを感じた。


「まったく、これではますますわたしがあなたのおっ奥さんにならないといけませんね」


 言っていて恥ずかしかったのか、少し顔が赤くなっている。


「それで、箒とかはどこにありますか?」


「え~と、どこにあったかな? 多分、作った方が早い気がするな」


 俺はルナにそう告げると、錬金釜の所に向かった。後ろからルナもついてくる。


「ちょっと待っててくれるか」


「はい」


 ルナの返事を聞くと、俺は次から次へと材料を釜の中に入れていく。そして、棒で混ぜて待つこと数分。一本の箒が出来上がった。


「よし! これで良いな。ほらルナ。これで良いか?」


「はっはい」


 俺は出来たばかりの箒をルナに渡すが、ルナはどこかぼぉーとしていた。


「ルナ? どうかした」


「あっ! いえ、今のが錬金術なんだなって思いまして、材料を掛け合わせてまったく別の物を生み出すなんて、やっぱりあなたはすごいです」


「いやいや、今のは初歩中の初歩だから錬金術師なら誰でも出来るよ」


「いえ、あなたはすごい人です!」


 やけに実感の籠った言い方をされて、俺はたじろいでしまう。


「あのさあんたたち、あたしがいるのにナチュナルにイチャつくのやめてくれない」


 無言で見つめ合っていると、ルルネがものすごい不機嫌そうな目でこちらを見ていた。


「そっそれではお掃除をしてきますね!」


 ルナは慌ててそれだけを口にすると、キッチンに行ってしまう。


 そして、その場に残された俺はまたルルネの罵声を浴びるのだった。


***********************


 あれからと言うもの、ルナはものすごいスピードで掃除を終わらせると、今度は三人分の昼食を作ってくれて、俺たちは今まさにそれを食べているところだった。


「申し訳ありません。本当はもっと色々作りたかったのですが、お腹を空かしているあなたを待たせるのはかわいそうだと思って、これだけしか作れませんでした」


 本当に申し訳なさそうに言うルナに、俺は慌ててお礼を述べる。


「そんなことないって! このサンドイッチだって本当にすごく美味しいし! こんなに美味しい食事を取ったのは数年ぶりだよ!」


「そう……ですか。それなら良かったです」


 俺の言葉に一安心したのか、ルナはやっと肩の力を抜いた感じだった。でも、実際にルナが作ってくれたサンドイッチは本当に美味しかった。パンの炙り具合も最高だし、中に挟まっているレタスやトマトと言った野菜たちも特製の調味料がかかっているのか、とても食力が湧く味付けだった。


 あっという間に平らげてしまい、何だかもったいない気持ちになる。食事をしてこんな気持ちになるのはいつ振りだろうと自分自身で思ってしまう。


 隣で一緒に食べていたルルネも、満足そうな表情をしている。それほどにルナが作ったサンドイッチは美味しかったのだ。


「ごちそうまさ、ルナ」


「ごちそうさまでした、ルナちゃん」


「お粗末様でした」


 ルナはそう言って微笑むと、食器をすぐさま持って行き片づけてしまう。


 本当に何から何まで手際が良い子だよな。


 俺は先ほどからルナの動きを見てそう言った感想を抱いていた。掃除をしてる時や料理を作っている時、ルナの動きには一切の無駄がなく見ていて気持ちがいいほどだ。メイドでも雇ったのかと錯覚してしまうほどだった。


 程なくしてルナが戻ってくると、何やら俺の前まで来てもじもじとしている。どうしたのだろうか?


「ルナどうかした? 俺に出来ることなら言ってほしいかな。ほら、俺は君のおっ夫何だから」


 何だろう、自分で言っていて違和感が半端ないな!


 俺の言葉にどこか安心した様子を見せると、ルナは顔を上げると口を開いた。


「えっとですね、一つお願いがあるんです」


「お願い?」


「あっ頭をなでなでして頂けませんか?」


 ルナはそう言うと、自身の服の裾をギュッと掴んでいる。何だろう、そんな仕草をされたら断れません!


「こうか?」


 俺は恐る恐るルナの頭を優しく撫でた。最初は力加減が分からず、ルナを不安にさせてしまったが、少し撫でていたら何となくコツが分かりルナの頭を撫でていく。すると、


「ふっふにゅ~~~~」


 ルナが溶けそうな表情になっていた。俺は咄嗟に顔をそむけてしまう。嫁の反応がかわい過ぎて直視できません! しかも、本人は十四歳と言ってはいたが、実年齢よりもマイナス二歳に見えるためひどく犯罪的な感じがしてしまうのだが、嫁がかわい過ぎるため、そんなことは頭から抜け落ちていた。否、考えないようにしていた。だが、ルルネがこっちをものすごく睨んでいたため現実に引き戻されることになった。


「あんたって、アレだったのね」


「アレって何だよ?」


「ほら、幼い少女しか愛せないって言う特殊性癖の持ち主。……最低ね」


 ルルネが容赦なく吐き捨てた。


「ちょっと待て! 勝手に人を犯罪者みたいな扱いにすんなよ! 俺は違う!」


「何が違うって言うのかしら! その状況を見れば誰がどう見たってそう思うでしょ!」


 ルルネの正論に何も言い返せない。俺もさっきから撫でるのを止めようとは思っているのだが、撫でるのを止めようとすると、ルナがとても寂しそうな顔をするので完全に止めるタイミングを見失っていた。


 違うんです! 俺はアレじゃないんです! 俺の嫁がかわい過ぎるだけなんです! 


 俺は誰にするんでもなく言い訳を並べていた。でなければ、自分の新たな一面に直視した時に立ち直れなくなりそうだった。


「とにかく違うんだって!」


 俺は必死に否定しようとするが、すればするほど状況は悪くなっている気がする。


「あなたどうかされたのですか?」


 俺とルルネのやり取りを見ていて、ルナが不思議そうにこちらを見てくるので俺は慌てて首を横に振った。


「何かわたしのことで不便があったのではないのですか?」


「違う、違う。これは俺の問題だから」


 確かにルナの年齢で結婚している人もいるので、おかしくないと言えばおかしくないのだが、さすがに六つも離れていると、ルルネの言う通りのイメージを持たれても仕方ないのかもしれないのだが、ルナは間違いなくかわいかった。それも一目惚れしてしまうほどに。


 とにかく、このことはあまり考えないようにしておこう。


 俺は問題を先送りにすることにしたのだった。


***********************


 それからルナが部屋の掃除をしてくれて、俺は依頼品の製作に勤しんでいた。特に問題はなかったのだが、依頼人が商品を取りに来るたびにルナのことを看板娘なのかと聞かれ、ルナが妻ですと答えるた度に騒動が起こったため、体力的と言うか精神的に疲れる一日だった。


 今はルナが沸かしてくれた湯船に浸かって、一日の疲れを癒していた。


「はぁ~、何だか今日はやたらと疲れる一日だったな」


 ゆっくりとお湯に疲れが溶けていく感じがする。お湯の温度も丁度よく、程よく疲れた筋肉などもほぐしてくれる。


 俺が気持ちよさにふにゃふにゃになりかけていると、風呂場の扉の前までルナが来て、声をかけてくる。


「あなた、お湯のお加減どうですか?」


「ああ、ものすごく丁度いいよ」


 こんな気持ちよくお湯に浸かるもの久しぶりだ。


「それなら良かったです。なら、わたしはお夕飯のご用意をしてお待ちしておりますね」


 ルナが嬉しそうな足取りで、キッチンに駆けて行く音が聞こえる。


 本当にどうしてあんな子が俺の嫁になってくれたのだろう? まずい、気が緩んで口元がにやけてしまいそうだ。


 何だろう、控えめに言って最高かよ!


 久々の湯船で長湯をしてしまい、ルナに申し訳ないことをしたなっと思ってしまう。


「ごめん、つい気持ちよくて長湯しちまった」


「いえ、大丈夫ですよ。それにあなたがゆっくりと出来たみたいで良かったです」


 ルナはそう言って微笑んでくれる。天使かよ。


 そして、テーブルの上にはルナが作ってくれた料理が並べられていた。


 パンにコーンスープ、肉を焼いたものにそれとサラダが並べられていた。思わず生唾を飲み込んでしまう。こんなにしっかりした晩御飯を見たのはいつ振りだろう。


「さあ、食べましょう」


 ルナの言葉に頷き、俺はイスに着いた。


 俺はすぐさまスプーンを手に取ると、スープを掬って口に含んだ.その瞬間、口の中にはコーンと牛乳の優しい甘みが広がっていく。


 肉も絶妙な焼き加減で次から次へと食べてしまう。昼間も思ったが、ルナの料理は料理人以上の腕前だった。


 無我夢中で食べる俺を、ルナはどこか微笑ましそうに見ていた。


「ああ、ごめん。あまりにも美味しすぎたから夢中になちゃって」


 俺が謝ると、首を横に振った。


「いえ、あなたのお口に合って良かったです」


「ルナはどこかで料理を習っていたのか?」


「いえ、ただ家の方で家事をやってることが多かったですので、それで自然と身に着きました」


 自然と身に着くものなのか? これもある種の才能だと思うけどな。


 俺がルナの言葉に驚いていると、ルナが「あっ」と小さく声を上げた。


「ん? どうしたの」


「あなたの頬にソースが」


 ルナは布きんを取ると、それで俺の頬を拭ってくれる。しかし、やっていて恥ずかしかったのか、やった後に顔を赤くして俯いてしまう。


 そんなルナの姿を見て、何だかこっちまで恥ずかしくなってしまい俺もそれを誤魔化すかのように、頬をポリポリと掻いた。


「まあ、何はともあれだけどこれからよろしくなルナ」


「はい! あなたの奥さんとして精一杯頑張ります!」


 両手で拳を作ると、ルナは笑うのだった。



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2021年8月11日より新連載始めました。よろしくお願いいたします。 リンクスとステラの喫茶店~ステラと魔法の料理~
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