第25話「魔法薬師・ラール・レーメル」
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第25話「魔法薬師・ラール・レーメル」
ルナとルルネがリアムのアトリエで女子会を開いている頃、そのアトリエの主であるリアムは、依頼品を届け終えると、とある人物の元に赴いていた。
まさか、またここに来ることになるとわ。出来ればここには来たくはなかったけど、頼れるツテは使っていかないといけないよな。
俺はため息一つ吐くと中に入った。
「おいラー、いるのか?」
中に入ると、そこは何ともカオスな空間が広がっていた。八畳ほどの部屋には、物がわんさか散らかっており、足の踏み場でもない程に物が散乱している。
こりゃあ、ひどすぎるな。
ルナが来る前の自分のアトリエの状況を棚に上げて、そんなことを思ってしまいながら俺は、この物で散乱している中からとある人を探し出さなければいけないのだが、中々その中からその人物を見つけることが出来ないでいた。
「ラー、いないのかよ?」
俺は再度、その人物の名を呼んだ。すると、散乱した物の山から何やらむくりと起き上がる人影が見えた。起き上がった際に、その物の山は崩壊しその代わりに、その山から一人の少女が現れた。
黒髪の髪をボブカットに切りそろえて、一糸まとわずな状態で現れた一人の少女。
俺は慌てて回れ右をしてそこから視線をそらした。
「なあ、ラー。一つ良いか?」
彼女は小さなあくびを一つしてから、「なに?」と俺に聞き返してきた。
「なら遠慮なく。……どうしてお前はいつも裸なんだよ!」
俺は思わずそう叫んでしまう。
「うぅ~、リアムいきなり叫ぶのは反則」
寝起きの頭に響いたのか、ラーはそんな弱々しい声を出している。
俺はため息を吐きたくなるのを何とかこらえた。
「とにかく、お前は早く服を着ろ。と言うか、毎回このやり取りをやっている気がするんだけど」
そうなのだ。毎回、ここを訪ねると、なぜか毎回このラーが裸で俺は叫ばなければいけない状況になっているのだ。なぜに裸だし⁉
「ん、リアム着替えられた」
「おう、そうか」
これで安心して話が出来るなっと思いながら俺は振り向いたが、その瞬間固まった。なぜかって、ラーの奴がそこらへんに適当に合った布を体に巻いただけだったからだよ! それに巻いたのが白い布だったので、女の子の大事な部分が透けて見えたり見えなかったり状態なのだ。
「ちょっ⁉ お前ふざけてんの⁉」
「ふざけてない。至って大マジメ。それに服がどこにあるのか分からない」
「だぁ~~! こんな所で生活してるからだろ!」
俺は頭をかきむしってしまうけど、これ以上は言っていられないと思い、山の中からラーの衣類を探していく。見つけるたびに、俺はラーに向かって服を投げていく。その過程で水色の下着らしきものも視界に入ったが、見なかったことにしておく。
それから待つこと数分。やっとの思いでラーに服を着せることに成功した俺は、気疲れでその場に座ってしまう。
こんなことなら、ルナを連れてくるべきだったかもしれない。
ラーもラーでその場に座り込んでいた。
ラー。本名ラール・レーメル。この少女は十五歳ながら魔法薬師の称号を与えられている少女だった。
普通、魔法薬師になるためには、魔法薬師養成機関と呼ばれる学校で、魔法薬師のことを勉強して、そしてそこから今度は、魔法薬師見習いとして魔法薬師となっている人の所で二年学び、今度は王都で行われる試験に合格して初めて魔法薬師と名乗れるようになるのだが、目の前にいる少女は、そのプロセスをすっ飛ばして魔法薬師になってしまった天才だった。そして、腕も確かで彼女が発表する新薬は驚きの価格で取引されるなど、彼女の活躍には魔法薬師協会も目が離せない状態だった。
何事にも例外ってあるんだなっと俺は思ってしまう。
「それで、リアム。今日は何の用?」
ラーが藍色の瞳を真っ直ぐにこちらに向けてくる。
「実はラーに聞きたいことがあってここに来たんだ」
「ラーに? なに?」
眠たそうな目で、こちらを覗き込んでくる彼女に俺は話を続けた。
「実は魔法薬師のことについて聞きたいんだ」
俺のと言葉に、眠そうだったラーの目が見開き、俺に急接近してくる。気のせいか、その瞳がキラキラと光って見えるんだけど。
「リアム、ついに魔法薬師に興味持った。なら、すぐさま魔法薬師になるべし」
「いやいや、魔法薬師に興味を持ったと言う事実は認めるけど、魔法薬師にはならないからね。俺は錬金術師ですし」
「ぶう、またフラれた。ラーとの関係は遊びだったのね」
「誤解を生むような言い回しは止めろ! 元々、俺とラーの間には何にもないだろ。まあ、魔法薬師のことを前に少し教えてもらったぐらいで」
ラーは不満そうに頬を膨らませたまま、言葉を続ける。
「リアム、ずっとラーの誘い、断ってる」
「断ってるって言われても、俺は錬金術師であって魔法薬師じゃないし、そもそも錬金術師と魔法薬師じゃやってることが根本的に違うだろう」
俺たち錬金術師は、素材を混ぜ合わせて物を作り上げていっているのに対して、魔法薬師は、一度素材を分解し、再構築して薬を作り出す。
簡単に説明すると、錬金術師は掛け算だけなのに対し、魔法薬師は割り算と掛け算を行わなければいけないということで、働きかけているものがそもそも違うのだ。
「って、今はそう言うことを言ってるんじゃないんだよ。実はルルネのことで知りたいんだ」
「ルルネ? それって女?」
「ん? 女だけどそれがどうかしたのか?」
俺がそう返すと、しばらく無言だったラーがいきなり、俺の手を噛んできた。
「痛てッ! って何すんだよ! ラーッ!」
俺はいきなり噛みつかれて驚きで、そう叫ぶがラーは俺の言葉に聞く耳を持たず、さらにかむ力を強くしてきたため、俺は全力で苦痛の声を上げることしか出来なかった。
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俺が薬などでラーに噛まれた傷を手当てしている最中も、ラーは不機嫌そうに頬を膨らませているだけだった。
「なぁ、ラー。どうしていきなり不機嫌さんなんだよ?」
俺はラーにそう声をかけるが、ラーはぷいっとそっぽを向いてしまい話を聞いてくれそうにはなかった。
駄目だこりゃあ。どうして、女って単語を出しただけで不機嫌になるんだよ? ったく女心ってまったく分からない!
俺がそう思い困っていると、何かに気が付いたのかラーが俺の左手を取ってくる。その拍子に持っていた氷が床に落ちてしまう。
「リアム、この左手にはまってるものはなに?」
左手にはまっているもの?
俺は左手を見てああと思いだした。俺の左手薬指にはルナに付けろって言われて結婚指輪がはまっていた。何でも二人で付けなきゃ意味がないとのことだ。それもそうか。
「えっと、結婚指輪?」
「なんで疑問形ですか? まさか、さっき話してた女が……」
俺はその言葉に慌てて首を横に振った。
「違う違う! さっき話してたのは友達だから! ただの友達だから! 俺にはちゃんとかわいい嫁がいるから!」
慌ててそう言葉にした俺は、さらなる地雷を踏み抜いたことに気が付いていなかった。
「ふ~ん。嫁か嫁ですか……ぐひ……ぐひひ……」
「おい、ラー?」
恐る恐る声をかけるが、ラーはそんな俺の言葉は耳に入っていないのか、すぐさま俺から離れると、何やら手早く素材を集め出している。
「おい、ラー。お前、一体何をしようとしてるんだよ?」
ラーは聞く耳持たず素材を集め終えると、六つの素材を調整し始めている。そして、それをすぐさま終えると、出来上がったばかりの薬を俺の前に差し出した。
「リアムはこれを飲むべし」
「えっと、それって」
「自白剤」
「えっ?」
今、自白剤って言わなかったか?
「自・白・剤」
どうやら俺の聞き間違いなどではなく、彼女は本当に自白剤と言ったようだった。そして、淡々とそう言うラーに、俺はうっすらと恐怖を覚えていた。
「えっと、確か自白剤を作り出すことは法で禁止されていなかったか?」
そうなのだ。自白剤は人を生きたまま殺す。すなわち廃人にしてしまうことも出来る薬なので、一般的には販売もされていなければ製造もされていないのだ。なのに、ラーの奴はこうも簡単に作り出しているし、あろうことか――
「――大丈夫。ラーは特別に許可を受けている。なので、まったく問題ない」
と口にしたのだ。でも、自白剤って成分が複雑で作るのに大変だって話を聞いたことがあるんだけど。素材もかなり使ってたみたいだし。なのに、それをいとも簡単に作ってしまうとは、やっぱりラーは天才なんだな。
自白剤を突き付けられている状況だと言うのに、俺は何とも場違いな感想を抱いていた。
「さあ、これで何も問題ないはず! さあ! さあ‼ 遠慮せずぐいっと一息で飲むべし!」
「いやいや、まだまだ問題大ありだからね! まず、それ飲むと確実に俺が廃人になるよね! ラー、絶対にそうなるように強めの自白剤をわざと作ったのお見通しだからな!」
「ちっ! バレてたし! だけど大丈夫。廃人になってもラーが面倒見てあげるから。だから、ぐいっと…………ね?」
「ね? じゃねぇ! 自分の生活も出来ない程の生活破綻者が何を言うか!」
もう嫌だこの子。だから来たくなかったんだ!
このラーの家に用があって来ると、いつもこんな感じのやり取りが繰り返されるのでかなり疲れるのだ。
「むう。じゃあ、自白剤は良い。その代り説明も求む。リアム結婚した?」
「そう言えば、ルナが来てからはここに来てなかったもんだ。実は一ヶ月前ぐらいかな。それぐらいの時期に結婚したんだよ」
だけど、ルナが来てからまだ一ヶ月しか経っていないということが驚きではあった。何だか、ルナと一緒にいる時間が濃密過ぎてもっと一緒にいる感覚がするのだ。
そう考えたら、ルナの顔が見たくなってきたな。それに早く帰ってルナのことを抱きしめたいとも思った。
「結婚、リアムが結婚? あり得ない」
「おい、ラー。さすがにそれはひどくないか? 実際に俺、結婚してるんですけど」
俺はすかさず反論するが、ラーも負けじと言葉を返してくる。
「だってあり得ない! そう天地がひっくり返るぐらいにあり得ない!」
そこまで言いますか! どうして俺の周りの連中はこぞって、俺が結婚できたのが不思議と言うばかりのリアクションをするのでしょうね⁉ まったくもって理解不能だよ! こんちくしょう! 俺に嫁がいちゃ悪いのかよ!
そう叫びそうなってしまうのは、必然だろう。
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