第23話「大図書館の司書」
第23話目になります。ゆっくり目の更新となってはいますが、これからもよろしくお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。
第23話「大図書館の司書」
【大図書館】の扉を開いて中に入ると、そこは別空間が広がっていた。一言で言い表すとすれば、この一画だけが王都に建てられている建物のような感じだろうか。とにかく何が言いたいかと言うと、あまりにもこの南区画【スーザック】にある建物の中から言えば規格外すぎる建物なのだ。
中もかなり広々としており、入って真っ正面に受付があったかと思えば、その奥には数多くの本棚が並んでおり、中にはちらほらと人の姿も散見できる。しかし、これはあくまでも一階の話でありこの図書館には二階もあり、一階の両端には半螺旋を描くように設置されていた。
よくもまあ、ここまでオサレに設計出来るものである。隣に立っているルナは感嘆の声を上げている。
そして、受付カウンターには俺にとっては見知った顔が立っていた。
セリア・ノルゼ。俺のアトリエの常連客で、この大図書館で司書を務めている女性だった。それに以前、ルナとひと悶着あった女性でもあるが、あの後はちゃんと二人は和解して良好な関係を築けていると思っている。ただまあ、セリアさんはいつも通りなので、その度にルナが不機嫌になってしまい、機嫌を取り戻すのが大変なのだが。
俺は受付に近付くとセリアさんに声をかけた。
「セリアさんどうもです」
「あっ! リアムくん! ついに私の気持ちに応えてくれる決心が着いたのね!」
「いやいや、そんな決心着いてないから! 俺の心はルナ一筋だから!」
「釣れないのね」
当たり前だ。俺にはルナと言う心に決めたかわいい嫁がいるんだ。だから、ルナさん、俺の後ろで絶対零度のオーラを放つのは止めてください。ルナの場合、浮気なんてしたら命がないだろうな。しないけどね!
「それで今日は一体どうしたのかしら?」
セリアさんは妖艶に微笑みながらそう聞いてくる。
一瞬でもその微笑みが美しいと思ってしまった自分が悔しい。
「実は魔法薬師に関する本を探しているんだ。出来れば大量に」
「魔法薬師についての本? 錬金術師の君がどうして魔法薬師のことなんか? まさか、錬金術師から魔法薬師へ転職でもする気なの?」
セリアさんの言葉に俺は首を横に振った。
「違いますよ。少し気になることがあるんです。それを調べたくてここに来たんですよ」
「ふ~ん。そうなんだ。ちょっと待ってね。今どこにあるか探してあげるから」
セリアさんは片目を閉じてウィンクをしてくると、傍らにある端末に手を伸ばすと、何やら調べ始めた。
「え~と、魔法薬師に関する本なら一階の五番通路にある本棚にまとめられているわ」
「ありがとう、セリアさん。それじゃあ早速探してみるよ」
「いえいえ、これも司書のお仕事ですから」
俺はセリアさんにお礼を言うと、ルナの手を握り五番通路に向けて歩き出した。
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これじゃない。それじゃあ、こっちか?
俺たちはセリアさんに言われた通りの通路に向かうと、そこから手当たり次第に本を取って備えた付けられていた机と椅子に向かって本を読み進めていた。
しかし、何冊が読み進めていても有力な情報は得られていなかった。俺は一度本から視線を外すと息を吐き出した。
隣では俺と一緒に本を読んでくれているルナの姿があった。
「ルナ、そっちはどう?」
俺がそう聞くと、ルナは本から顔を上げてかわいらしい顔を横に振った。
「ダメです。こっちの本は薬のレシピばっかりです」
「う~ん、やっぱり漠然とした中で調べても、良い答えが見つかるわけないか」
ここに来れば、何かしらルルネのあの失敗に関するものが得られると思っていたのだが、どうやら当ては外れたらしかった。
「でもな、あのルルネの失敗には、絶対に何かしらの理由があると思うんだけどな」
「そもそも、あんなに失敗するものなのですか?」
ルナの最もな疑問に俺はすぐさま首を横に振る。
「ルルネの失敗数は異常な数だよ。あそこまで、失敗するなんて普通はあり得ないことなんだけどな」
「それじゃあどうして?」
「分からない」
俺は首を横に振ることしか出来なかった。
とにかく今の段階では分からないことだらけだった。
ルルネに才能がないわけじゃないと思う。それじゃあ何がルルネの調整を妨げているんだ?
俺たちが王都に行っている間に作ったと言っていた薬は、決して簡単なものではなかった。それなのにルルネはそれを作り出していた。しかも、やったことのない四つ以上の調整でだ。まぐれの一言で片づけられる問題ではなかったのだ。
「何かしらの理由があるはずなんだけどな」
誰に問うでもなく俺は一人呟いた。
そこから少し黙考していると、お昼を告げる鐘の音が聞こえてくる。この鐘の音は、お昼や夕方になると町全体に鳴り響く仕組みとなっている。
「もうお昼だったんだな」
「ふふ、お腹が空きましたか? あなた」
「そうだね。何だか頭を使っていたからお腹空いたかな」
そんな俺の言葉を肯定するように、俺の腹の虫が静かなこの図書館に響き渡った。そんな俺のことを見て、ルナは再びおかしそうに笑った。そんな姿もたまらなく愛おしく思ってしまった。
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俺たちは大図書館を後にすると、ルナの案内の元少し小さめの広場へとやって来ていた。
「あなた、ここでお昼にしませんか?」
「ああ、構わないよ」
俺たちはその広場に設置されたベンチに腰を下ろした。
この広場はこじんまりとはしているが、日当たりが良くて、人があまりいなくて静かな場所だったのでとても居心地が良い所だった。
「とっても良いところだな。こんな所よく知ってたね」
「はい、買い物とかしている時に見つけて、今度あなたと一緒に来てみたいと思っていたんです」
ルナは種明かしするみたいに微笑むと、お昼の用意をし始めてくれる。対して、俺はルナがそんなことを思ってくれた嬉しさと恥ずかしさで、頬に熱が集まってくるのを自覚していた。
俺はその熱を誤魔化すように咳払いすると、ルナに話しかける。
「それで、今日のお昼は何を作ってくれたんだい?」
「サンドイッチです。今日はあなたがそので……デートに連れて行ってくれることでしたので、手軽に食べられるものにしました」
ルナはそう言いながら、持参していたバスケットの中からサンドイッチと果実ジュースを取り出すと、俺に差し出してくれる。
「ありがとう、ルナ。いただくね」
「はい、召し上がれ♡」
ルナの微笑みを見ながら、俺は差し出されたサンドイッチにかぶりついた。口に入れた瞬間、軽く炙ったパンの香ばしさ、レタスのみずみずしさや、それにかかったマヨや甘く焼かれた肉のジューシーさが口の中に広がりはじけていく。
それらを簡単に一言で言うのであれば、美味い! 美味すぎる! その一言に尽きると思うのですよ俺は!
あまりにも美味いサンドイッチだったため、俺は一休みする間もなく一つ目を食べてしまう。
そんな俺を見てルナはくすくすと笑っている。
「あなた、そんなに慌てて食べなくてもサンドイッチは逃げたりしませんよ?」
「いやさ、ものすごく美味しかったから……つい」
俺は思わず我を忘れて食べてしまったことに、俺は少し恥ずかしさを感じていると、目の前にはルナの綺麗でかわいい顔があった。
「っ⁉」
突然に目の前にあったルナの顔に俺は驚き身を引いてしまうが、ルナが「動かないでください」と言言ったので、俺は後ろに下がりたい衝動を何とか抑え込んだ。そして、俺にそう言ったルナは、どんどん俺に近付いてくるため、俺の心拍数はかなり上がっていて、今にでも目の前のルナにこの音が届いてしまいそうだった。
俺が頼むからこの音が届かないでくれと願っていると、その感触は突然やってきた。ルナの唇の感触が俺の頬に触れたのだ。しかも、限りなく唇に近いところに。
「るっルナ⁉」
俺はルナのその行動に対して、先ほどとは比べものにならないぐらいの驚きを受けてしまう。ルナはルナで顔を超真っ赤に染めて恥ずかしいそうにもじもじとしている。
「あなたの頬にソースが付いていたので……」
そこまでが限界だったのか、ルナは恥ずかしさに身悶え顔を両手で覆い隠してしまう。
そんなルナの姿を見て、こっちこそ身悶えてしまう。
くっ! なにこれこの世の生きものなの! と言うかこの子が俺の嫁なの⁉ かわい過ぎる! この世の生きものと思えない程にかわい過ぎるの‼ それに自分でやっておいて恥ずかしがるところがなおかわいい! 駄目だ、ルナのかわいさの前では何もかも無力です! 俺もさっきからかわいいって言葉しか頭に浮かんでこないし!
俺はこうしてルナのかわいさの前で、しばらく再起不能に陥っていた。はたから見ればただの不審者である。でも、逆に言えば不審者になってしまうぐらいにルナはかわいらしいのだ。と俺の頭は謎の持論を展開し始めていた。
しばらくして、落ち着きを取り戻した俺たちは、果実ジュースで喉を潤そうと思ったのだが、ここで一つ問題が発生していた。ルナが果実ジュースを一本しか持ってきていなかったのである。俺が自分の分はと聞くと、彼女はかわいらしく舌を出して「忘れてしまいました」と答えたのだった。うん、かわいい。
「俺のを飲むか? 半分ぐらいもう飲んちゃったけど」
「えっ? でも、それではあなたの飲み物がなくなってしまいますよ」
「別に構わないって。俺はそれよりもルナの喉が渇いている方が嫌かな」
素直な気持ちを口にすると、ルナは控えめに俺の手から果実ジュースを受け取ると、それまた控えめに口を付けたのだった。
俺はそんな光景を何となく横目で見ながら、二つ目のサンドイッチを口に運んでいたが、ルナの発言によってそれを盛大に吹き出すことになった。
「はわわ、あなたと間接キスしてしまいました」
それは果実ジュースを飲み終わった後のルナの言葉だったのだが、俺は心の中でちょっと待ってと叫んでしまう。
さっきキスまでしておいて、間接キスで驚いて恥ずかしかるのは反則でしょ! っと。
そんな天然なルナに、若干の恐ろしさを覚えながらも俺は幸せを噛み締めていた。
ルナと一緒にこうして過ごせるこの幸せを。
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