第22話「大図書館」
第22話目になります。相変わらずな作風ですがよろしくお願いいたします。
また、第21話目のサブタイの表記が間違っていました。申し訳ありませんでした。
第22話「大図書館」
少しの休憩の後、俺は午後の依頼品を作るために作業に戻っていた。
午後も午後でそれなりに作業はあるのだ。ルナは俺のサポートに回ってくれたり、接客などを色々とやってくれているので、俺としては大助かりだった。
「ルナ、そっちにある青色の液体を取ってくれるか?」
「はい、あなたこれですよね」
「そうそう。ありがと」
俺は礼を言って、ルナからそれを受け取ると錬金釜に流し入れ反応を見る。
よし、これで反応が安定してくれれば、問題なく依頼品は完成するだろう。
俺はそう思いながら、備え付けているソファーに視線を向けた。そこではルナがすやすやと眠っているところだった。
ここの所家事に加えて、作業を手伝ってもらっていたので疲れが溜まっていたのかもしれない。
それに最近仕事や王都から出されている課題ばかりをやっていたため、ルナと出かけたり、ゆっくりと休日を過ごしたりといった夫婦らしい休日を過ごせないでいた。それに対してルナは、文句など一言も言わずむしろ、笑顔で俺の仕事を手伝ってくれていた。
甘えてる…………んだよな。
俺はルナの行為にあまえている。その自覚はあった。それもかなりの率で。
このままや駄目だよな。きっとルナは笑顔でやってくれると思う。でも、このままじゃ駄目だ。俺はルナに何にも返せなくなってしまう。
だから、俺はルナに何か恩返しがしたいと思った。以前、王都に二人で行った時に、俺はルナにプレゼントを贈っていた。
リボンにネックレス。ルナはよほど気に入ってくれたのか、それらを肌身離さず、あれからずっと身に着けていた。そのルナの行動は嬉しくもあったが、同時に恥ずかしくもあった。けど、嬉しさが勝っていたので問題ない!
それなのでまたプレゼントを贈ったところで、ルナの場合は遠慮して受け取らない可能性だってあるわけなのでプレゼントうんぬんかんぬんの話はとりあえず横に置いておこうと。とにかく今の話は、いつも頑張って俺のことを支えてくれているルナに恩返しがしたいとかって言う話だ。
俺はそこまで頭の中でまとめると、だったらルナに恩返しってどうしたら良いのだろう? と思ってしまう。それに疲れが溜まっているであろうルナに休んでもらいたいとも考えていた。
そう考えると、やっぱりルナをデートに誘うことが良いのかな?
ルナのことだ。ここにいたら色々と家事や作業の手伝いを自らやってしまうだろう。
うん、これが妙案なんだろうな。俺はそう考えをまとめると、ルナと明日出かけることを決意して、寝ているルナにそっとブランケットをかけた。
よし! それじゃあ頑張んないといけないな。
俺は決意を固めると作業を再開させた。
***********************
あれから作業が滞りなく終わり、今は風呂に入ってルナと共に一緒に夜ご飯を食べている所だった。
今日の食卓にはシチューとサラダ、そしてパンが並べられていた。しかもどれも手作りときたものだ。さらにはどれも美味いのだ。相変わらず俺の嫁は完璧すぎる。
「? あなたどうかしたんですか?」
俺がどうやって明日のデートのことを切り出そうと迷っていると、ルナがかわいらしく小首を傾げ、不思議そうにこちらを見ていた。
「もしかして、わたしの料理がお口に合いませんでしたか?」
ルナの思わぬ言葉に、俺は首をぶんぶんと横に振った。
「全然そんなことないって! ルナの料理はどれも最高だよ!」
俺は虚飾のない本心を口にする。
「今日の料理もとっても美味しいよ。それにやっぱり、ルナのご飯は世界で一番美味しいよ」
俺の言葉に、ルナは頬を真っ赤に染めているが、恥ずかしがっていると言うよりも嬉しさで悶えているように俺には見えていた。
そんなルナの姿を見て、俺はほんわかして悩んでいた言葉がすんなりと口から出てきた。
「あのさ、ルナ。明日って何か予定とかって入ってる?」
俺の質問に少し考えた後、ルナは口を開いた。
「予定……ですか? 特にはないと思います。強いて言うなら、あなたのお手伝いをすることだと思ってます」
そう笑顔で口にするルナ。もうやだ、この子かわいい。
「そっか。なら、予定はないと考えて大丈夫なんだな。それじゃあさ、明日デートしないか?」
突然の俺の誘いに、ルナは元々大きな瞳をさらに大きく見開いていた。
「明日ですか?」
「そっ! 明日。ここの所また仕事仕事で、ルナとゆっくり過ごせてなかったからさ。偶にはルナと一緒にゆっくりしたいなって思ったんだよ。それに、ルナも最近俺の仕事を手伝ってくれていて、疲れが溜まっているだろうし。だから、リフレッシュさせてあげたいって思ったんだよ」
俺の言葉を最後まで黙って聞いていたルナだったが、最後は困ったような笑顔を浮かべていた。
「う~ん、ルナ的には嫌だったか?」
そう聞くと、ルナは首を横に振り、勢いよく否定の言葉を口にする。
「そんなことありません! あなたと過ごせるのならどんなことでも嬉しいです! ですが、あなたが多忙なのも知っています。それなのに、わたしなんかの為に、その貴重な時間を割いてもらうのが、とっても申し訳ないと思ってしまうのです」
まったくこの子は。どれだけ自分のことを後回しにして、俺のことを優先してくれるのだろうか。本当に良い子過ぎる子だ。十四歳でこれはあまりにも出来過ぎだ。
「ルナ、わたしなんかって言葉は禁止な。だって、俺たちは夫婦だろ? 夫婦は寄り添い合って助けるものだと俺は思ってるし、男も女も関係ない。二人同じ場所に立ってるんだ。だから、その言葉は禁止な」
「はい! すいません!」
ルナは勢いよく頭を下げてくるので、俺は思わず苦笑してしまう。
「それに、魔法薬師のことについても調べたいと思っているんだ。ルルネのあの失敗には何か理由があるんじゃないかって思えるんだ。だから、大図書館に行こうと思っててね。それが終わったら、デートしようかと考えているんだけど、それでもダメかな?」
今度こそルナは笑みを浮かべて首を絶てに振るのだった。
俺はそれを見て頷くと、食事を再開させた。
それからご飯を食べ終えて、ベットの中でしばらく話していると、喋り疲れてしまったのかぐっすりと隣で眠っている。
いや~、寝顔も天使だわっと思ってしまうが、俺にはやることがあったのでルナを起こさないようにそっとベッドから抜け出した。
その足で作業部屋に向かうと、明日の依頼内容を確認する。
明日は比較的簡単な調合内容のものだな。それに納品も二日後になっている。これなら徹夜すれば明日の朝までに終わるかな。はは、ルナにバレたら怒られそうだけど、これもルナの為だ。以前に、ルナに黙って徹夜で作業を行っていたら、ルナにバレてこっぴどく怒られたことがあった。あの時はマジでやばいと思ったな。だけど、そうは言っていられない。
「いっちょ頑張りますか!」
俺は気合を入れ直すと作業に取り掛かった。
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「これで今日一日分の作業は終了かな」
最後の依頼品を調合を終えたと同時に、ソファーに倒れ込んだ。だけど、これで今日は一日フリーに動けるわけだ。後は明日急いでやれば間に合う量だ。
窓から外を見ると、まだ暗いので少しだけ寝る時間がありそうだと思い目を閉じるが、その瞬間、後ろからものすごい視線を感じた。
俺は恐る恐るそっちに振り返ると、そこにはルナが立っていた。
「あなた、何をしているんですか?」
「えっと目が覚めちまったから、ちょっとここで作業を……」
嘘を言っても見破られてしまうので、真実を混ぜた嘘を吐く。しかし、ルナにはすぐにバレてしまう。
「嘘ですよね。わたしあれほど言いましたよね。休める時はしっかりと休んでくださいって」
ルナは俺が完成させていた依頼品を見ながらそう言ってくる。その瞳は何処までも光を失っている。マジで怖い。
「そうなんだけど、すぐに終わる作業だったからついやってしまったんです」
喋りながら背中に汗が流れるのを感じる。どうしたら、切り抜けられる?
「わたしあれほど言いましたよね。徹夜とか止めてくださいって。あなたに何かあったらどうするんですか! それに徹夜したのも、きっと今日をわたしと過ごすための時間を作ってくれるためですよね? それって何だかものすごく申し訳ない……」
ルナの言葉は最後まで続かなかった。何故なら、俺が自身の口でルナのそれを塞いだからだった。
心の底から心配してくれているのが分かる。だけど、この子は俺のことを優先しすぎるあまり、自分のことを疎かにし過ぎてる部分がある。俺はそのことがひどく許せなかった。
「ごめん。だけど、ルナがそう言って自分を否定するのはもっと嫌だな。確かに徹夜したのはルナのためだけど、俺のためでもあるんだよ」
俺は諭すように、ルナにそう語りかける。
「ルナと限りなく、一緒の思い出を作りたい。一緒に楽しい時間を過ごしたいって。だから、時間がないことを言い訳ばかりにはしていられないと思ったんだ。だけど、それでルナを悲しませてたら本末転倒も良いところだよな。本当にごめんな」
ルナはルナで俺の服をぎゅっと握ってくる。そのしぐさがたまらなくかわいらしい。
前に何日か徹夜して作業をしたことがあってぶっ倒れたことがあった。それがあったから、ルナはこうして口酸っぱく俺に言ってくるのだろう。
「もう、あなたって人は本当にどうしようもなくて、わたしがいないと危ない人ですね」
「ああ、そうさ。俺はルナがいないとダメダメな人間なんだよ」
「もう開き直らないでください、わたしはまだ許していませんよ」
そう言ったルナは怒ったような表情を向けてくる。俺はその表情を見て悶えそうになるが、それをこらえてもう一度ごめんと謝った。
「分かったらな良いんです。それじゃあ、あなたは少しだけでも眠ってください。わたしももう少し寝たら朝ご飯の用意を始めますので」
ルナは怒っていた表情を緩め、微笑むと俺の手を引いてくる。俺もそれに従って一緒に寝室のベッドに向かって潜り込むと、すぐさま睡魔はやって来て意識を手放した。
ルナに起こしてもらい、ご飯を食べた後アトリエを出て、俺たち二人は大図書館に向けて歩いていた。
【大図書館】 この南区画【スーザック】にある王都管轄の施設で、そこにはあらゆる分野の本や資料が保存されていると言われている。そして、その大図書館は俺のアトリエから歩いて二十分ほどの所にあるので、ルナとこうして散歩がてらに行くにはちょうどいい距離ともいえた。
「大図書館に行けば、ルルネさんの失敗の原因も何か分かるんでしょうか?」
「それはまだ分からないな。だって、あんなに失敗するところ何て見たことがないし。それに、魔法薬師の学校を卒業するには少なくとも三つ以上の素材を使った調整を成功させないといけない。卒業したってことは、ルルネはそれを成功させているってことだ」
それに、やったことない四つ以上の調整も成功させている。本当にどういうことなのだろうか?
俺はますます首を傾げてしまう。
やがて大図書館となっている建物が見えてくる。相変わらずこの町には似合わないぐらいの豪華な造りで、大きさも相当なものだろう。
「すごい立派な建物です!」
ルナも大図書館を見て驚いている。うん、それが当然の反応だよな。だって、めちゃくちゃこの町にあるのが不自然に思えるもん。
まあ、何はともあれ何かしらのヒントが見つかれば良いんだけど。
俺はそう思いながらも、ルナの手を引いて中に入った。
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