番外編「ルルネとグレン」
第二部を開始する前に、番外編を数話ほど投稿したいと思います。第二部の方は番外編が終わり次第随時更新していければと考えております。よろしくお願いいたします。
番外編「ルルネとグレン」
リアムとルナが王都【キーリン】に出かけて行って既に一日が経過していた。リアムとルナが暮らしている南区画【スーザック】では、今日も穏やかな時が流れていた。
そして、この町で暮らしているルルネは、リアムとルナが知る共通の友人である。
ルルネ・ニーチェ。この町で両親が魔法薬師をしていて、販売も行っている所の娘だった。そして、ルルネ自身も魔法薬師になるために日々勉強中なのだ。
そしてこの間、ルルネは錬金術師でアトリエを営んでいるリアムとその妻ルナ。この街で近衛隊の隊長を務めているグレンと共に、死者が蘇る森の謎を解明していた。
そして、その原因は以前ルルネが魔法薬師の学校に通っている時に教師をしていたアルス先生が降霊術を行ったためだった。
ルルネはその事実にものすごく動揺してしまったが、リアムの言葉でルルネは何とか立ち直ることが出来ていた。だから、ルルネはこうして毎日近衛団の留置場に入っているアルス先生の元まで面会に行っていた。
今もその帰りだった。アルス先生は何か話してくれるわけではなかったけど、黙ってこっちの話を聞いてくれていた。
ルルネもルルネで何かリアクションをしてほしいとは思ってはおらず、だが、黙ってでもこっちの話に耳を傾けていてくれることが分かったので嬉しかったのだ。
ルルネはう~んと一度伸びをすると、時刻を確認した。時刻はちょうどお昼を指し示していた。
もうこんな時間だったのね。道理でお腹も空いてるはずだわ。
ルルネはそう感じ、どこかでお昼を食べてから帰ろうと思い、どこで食べようかと迷いながら歩いていると、目の前から見知った顔が歩いてきたのを見つける。
「グレンさん」
ルルネは迷わずにそう声をかけた。
近衛団の白い制服を見事に着こなして街を歩いていたグレンは、ルルネの姿を見つけると爽やかな笑みを見せた。
「ルルネじゃないか。もう面会は済んだのかい?」
「はい。もう大丈夫です。いつもいつも本当にありがとうございます」
「別に構わないさ。それにあの方は君の恩師なのだろ。だったら、気が済むまで会うと良いよ」
「ありがとうございます」
グレンの言葉にルルネはもう一度お礼の言葉を告げた。
「それで、ルルネはどうしてこんな所にいたんだい?」
グレンが言いたいのは、どうしてこんなに人通りが少ない場所を歩いていたかということだろうと、ルルネは推測する。
「実はご飯を食べに行こうと思ってて。それでここが近道だったから通ったんですけど」
「なるほどね。だけど、女の子がこんな所を一人で歩くのは感心しないな。ルルネも女の子なんだ。こんな通りを通ったら何が起きるか分からない。だから、今度からは気を付けてくれると、僕も安心できるかな」
「すっすみません」
「いや、良いんだよ。何も起きなかったんだからね」
グレンはそう言うと、笑ってルルネのことを許していた。
「そう言えば、グレンさんはどうしてこんな所にいたんですか?」
「僕は街の見回りを終えて、近衛団の詰め所に戻るところだったんだよ。それでここを通ったら、ルルネを見かけたんだよ」
「そうだったんですか。あっ、そうだ。グレンさん休憩はまだなんですか?」
「休憩かい? もう少ししたら取ろうかと考えていたんだけど、どうしてだい?」
「え~と、一緒にお昼でもどうかなって思って。ご飯ってやっぱり、一人で食べるよりも誰かと食べた方が美味しいですし」
「ああ、なるほどね。うん分かった。少し待ってもらえるなら一緒に行けると思うよ」
「本当ですか!」
「はは、そこまで喜んでもらえるならぜひ一緒に行かせてもらおうかな」
グレンのその言葉に、ルルネははにかむように笑ったのだった。
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グレンの仕事がひと段落済んだところで、グレンとルルネの二人は酒場【剣の舞】に訪れていた。
ここは昼時は普通の食事処として栄え、夜は酒場として大盛況していた。それにどの料理や飲み物も割とリーズナブルな価格で提供されていて、色んな人がこの店には訪れていた。
ルルネとグレンがここを訪れた時も、盛況でテーブル席もすでに八割ほど埋まっていた。
ルルネとグレンは壁際の席に案内され、そこに腰を下ろした。
「中々、雰囲気が良いお店ですね。騒々しいけど」
「それに値段もそれなりだから、庶民の味方だと思う。それにご飯もお酒も美味しいしね。今度、リアム達と四人で来るのもありだね」
グレンの言葉に、ルルネは素直に頷いた。
ルルネはグレンとウエイトレスに、各々の注文を済ませると少しの雑談に二人は興じた。
「そう言えば、リアムとルナが、いきなり王都に行ってくるなんて言った時は驚いたな」
「確かにそうですね。いきなり、王都に行くなんて言い出したから、何事かと思いましたよ。でも、本当にどうして王都に呼ばれたんでしょうね?」
「それは分からないな。だけど、早く帰って来てくれるといいよね。帰って来てくれないと、みんなでここに来ることも出来ないからね」
「そうですね。早くあいつが帰ってくればいいですよね。ルナちゃんにも会いたいですし」
「ルナか。でも、リアムにまさかあんなお嫁さんが出来るとは思わなかったな」
「本当にびっくりですよね。まさか、リアムに先を越されるなんて思わなかった。あいつにそんな日が来るとは思ってなかったし」
「はは、これはまた厳しい言葉だね。そんなにリアムが結婚したことが気に入らないのかい?」
「そういうわけじゃないですけど。まさか、リアムが結婚するとは思わなかったんですよ」
「確かにそれは僕も思うかもしれないな。リアムが結婚か。うん、不思議な話もあるものだね」
「ですよね~、しかもあんなに可愛くて完璧なお嫁さんですし」
二人は思わず、ここにいないリアムのことで盛り上がり笑ってしまう。しばらくの間、そんなリアムの話題に興じていると、ウエイトレスが注文していた物を運んできた。
ルルネがパスタでグレンが定食を注文していた。
ルルネはグレンに進められるままにパスタを口に運んだ。すると、
「っん⁉ んんんッ⁉」
おっ美味しいいいいいいいいいいいッ!
「なにこれ! 本当に美味しいんですけど!」
「そうなんだよ。僕も最初食べたときは驚いたよ。それ以来はずっとこのお店ににはお世話になりっぱなしだよ」
グレンはそう言って「はは」と笑うと、自身も自分のご飯を食べ始めた。
しばらくの間、二人は無言で自分のご飯を食べ進めていた。それぐらい、ここ酒場【剣の舞】で提供している料理のレベルが高いということだろう。
だが。
「でも、やっぱり、ルナちゃんのご飯には敵わないですね」
「それは仕方ないさ。ルナの料理は僕も食べさせてもらったけど、アレは別格過ぎるんだよ」
「それは分かってますよ。あ~あ、早くルナちゃん帰って来ないかな」
ルルネがそうぼやいていると、突如酒場に悲鳴が響き渡った。
ルルネとグレンは何だと思い、その悲鳴が上がった方に視線を走らせた。すると、そこには倒れている一人の子どもの姿があった。
それを見た瞬間、二人は動いていた。
グレンが周りの客に落ち着くように呼びかけて、ルルネはその倒れた少女に駆け寄り、パニックになりかけている親を退かして、意識などの容体を確認している。
「どうしたの、大丈夫?」
その少女は答える代わりに、荒い呼吸を繰り返している。
「それで何があったんですか?」
グレンが親に問いかけた。グレンのその問いに少女の親と思われる女性は、慌てながら答えている。
「分かりません。料理を食べてからいきなり倒れてしまって」
料理を食べたら倒れた?
ルルネは自身の腕の中で軽く痙攣を引き起こしている少女を見た。少女の唇は震え少しずつ色素がなくなっている気がする。完全にアレルギー反応を起こしている。
「この子の食べた料理は?」
グレンが聞くと、親は「これです」と少女が食べていた料理をグレンに見せた。
「これは海鮮炒めだね。お子さんは何かアレルギーとか持っていたんですか?」
「いえ、特にはなかったはずです。この子は何でも食べる子でしたので」
「とにかく、今のままでは危険です! 早くお医者さんに連れて行かないと!」
ルルネの言葉にグレンは頷くと、少女を抱きかかえ上げた。
「ルルネ、とりあえず行こうか」
「はい!」
ルルネとグレン、その少女の親は慌てて酒場を飛び出した。
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「ん~、これは治せないな」
「「「えっ⁉」」」
ルルネ、グレン、少女の母親は医者の言葉を聞いて驚きの声を上げてしまう。
「どういうことなんですか?」
ルルネは固まってしまっている母親の代わりに、医者にそう聞き返した。
「実はな、この子が起こしているアレルギー反応が特殊なアレルギー反応なんだ。まず、この町では見ない症状だ。王都では見ることもあるだろうが、この町では見ない。だから、その薬もここには置いてないんだ」
なんてこと! そんな話ってあるの⁉
医者の話を聞いてルルネは愕然としてしまう。目の前で苦しんでいる少女がいるのにも関わらず、医者は治せないと突き付けたのだ。
その言葉で呪縛から解けた母親が、医者に縋りついてはいるが、医者は取り付く島もないと言った感じだった。
何とか、何とかならないの⁉
ルルネは自問自答してしまう。どうにかして目の前で苦しんでいる少女を助ける方法はないかと。しかし、ルルネがこうして悩んでいる間にも、目の前の少女はさらに苦しそうに呼吸を荒げている。
くそッ! こんな時にあいつがいないなんて。あいつがいればこんな問題簡単に解決したのに。
ルルネがイライラとしていると、耳元でグレンの声がする。
「ルルネ、君の家にはあの子をどうにかする薬は置いてないのか?」
グレンの言葉にハッとした。そうだ。自分は魔法薬師の娘なのだ。なのに何故自分は、錬金術師であるリアムに頼ろうとしてしまったのだろうか。
その事実にルルネは恥ずかしくなってしまう。ルルネは首をぶんぶんと振ると、両頬をパチンと両手で叩いた。
確かにあいつは凄腕の錬金術師よ! だけど、あたしだって魔法薬師なんだ。まだ見習いだけど。だから、この子はあたしが助ける!
ルルネはそう決意を新たにすると、医者に向き直った。
「あたしにその薬のことを良く教えてください!」
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