第20話「リアムの答え」
第20話目になります。そして、この回で第一部は完結になります。皆さまお疲れさまでした。また、ここまでお読みいただき本当にありがとうございました! 第二部の方ですが、別作品である「人生が余りにもクソだったので、とりあえずネット小説を書いてみた」の第二部が完結次第、再開していきたいと考えております。改めまして、ここまでお読みいただきありがとうございます。
第20話「リアムの答え」
翌日、俺とルナは再び師匠に連れられて、仕立て屋に来ていた。今日はこれから王城に出向いて、叙勲式を受けることになっているのだ。
昨日のスーツはあくまでもパーティー用のスーツだったため、今度は白のフォーマルスーツに身を包んでいた。
今は師匠と共に、ルナの仕立てが終わるのを待っているところだった。
「師匠、どうして昨日のこと教えてくれなかったんだよ?」
「別に教えなかったわけじゃないが、ワシも教えられてなかったのじゃよ。アレックスからは、弟子を連れて来いとしか言われていなかったし。それにワシも昨日の発表には驚いた」
「何だよ? 聞いてたのか?」
てっきり、女を掴まえて帰っていたのかと思っていた。
「バカモン! 弟子が晴れ舞台に立っているのに見ない師匠がどこにおる!」
いやいや、目の前にいそうなんですけど。俺の師匠って、弟子よりも女を取るような人だった気がするんですけど。
俺はそう思ったが、口には出さなかった。言ったところでどうしようもないことは分かっていたからだ。
「まあ、あんなバカ弟子だったリアムがここまで来るとは、正直思ってなかった。まさか、歴史的快挙を成し遂げたのが、リアムだとは未だに信じられないがな」
「俺だって信じられないですよ。俺が作ったのが新・万能霊薬だったって」
「まったく、お前もいい加減認めたらどうじゃ? リアム、そのうち他の錬金術師に刺されるぞ」
「冗談でもよしてください」
俺はバカなことを言う師匠は放っておいて、俺は今日の叙勲式に思いをはせる。きっと、今日の叙勲式は俺にとっては人生の大きな岐路になるだろう。だからこそ、叙勲式が近づくにつれて、俺も徐々に緊張してきてしまう。
それからしばらくの間、俺と師匠の間に沈黙が降りていたが、それはルナが着替えを終えてこちらに来る音で破られた。
「あなた、お待たせしました」
今日のルナは、昨日のドレスの色違いを着ていた。昨日は淡いピンクだったが今日は紺色だった。髪は昨日に比べると大人しめに結われている。それに顔は軽く化粧が施されているため、可愛らしさの中に綺麗さがあって、昨日とは違ったドキドキを感じてしまう。
「用意が出来たようじゃな」
師匠はそれだけ呟くと、進みだしてしまうので俺とルナは手を繋ぐと師匠の後を追った。
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街を走っている馬車を数回乗り継ぎ、俺たちは王城前まで来ていた。遂に来てしまったのだ。
馬車から降りると、師匠はスタスタと歩いて行ってしまう。俺も歩き出そうとするのだが、緊張からか中々歩き出せないでいた。
「あなた?」
「ああ、ごめん。ちょっと緊張しちゃって。歩き出せなかったんだ」
俺の言葉にルナは、クスクスと笑っている。
「ふふ、もう王様にお会いするのはこれからですよ?」
「そう……だよな……」
確かにルナの言う通りである。王様に会う前からこんなに緊張していてどうする。
今度こそ俺は歩き出した。
王城の入り口で名前を告げると、すでに近衛兵には伝わっていたようで、王城を案内してくれる。そうして通されたのは待合室だった。何でもこれから王様に会うのは俺一人だけだと言う。ルナと師匠には悪いがここで待機してもらうことになるのだそうだ。
しばらくの間はここで待機して、王様の準備が出来次第、近衛兵の一人が俺のことを謁見の間へと案内してくれるそうだ。
もうすぐ、俺はこの国の王様に会うのか。
「あなた頑張ってください」
そう言って微笑んでくれるルナだけど、俺の緊張はさらに高まってしまう。結局、俺はあの後は眠れず、ずっとこの先のことを考えていた。自分の将来のこと、ルナのこと、何が良くて何が正解かを色々と考えた。
ルナには自分の誇れる答えを出してくださいと言われていた。そして、どんな答えを出そうと、自分が俺から離れることはないとまで言われている。
年下の少女にそこまで言わせてしまっているのだ。男として覚悟を決めなければいけなかった。どんなことがあっても彼女を幸せにすると言う覚悟を。
そうこう考えていると、王様の準備が終わったようで近衛兵の一人が呼びに来てくれる。
俺は立ち上がると、ルナと師匠の方に向き直った。
「それじゃあ、行って来ます」
「恥のない態度でな」
師匠の言葉は短かったが、何となく意味は分かるので俺は頷いておく。
「あなた、あなたは見つかりましたか? あなたの答えが?」
目の前に立つルナは、翠色の瞳を不安そうに揺らしながらこちらを見ていた。
俺は少し考えた後に頷く。
「ああ、出せたよ。俺が誇れる一番の答え」
それを聞いたルナは、満面の笑顔を咲かせていた。
「それは良かったです!」
「ルナのおかげだよ。ありがとな」
ルナにお礼を言っていると、近衛兵の人に急かされてしまったので、俺は慌てて部屋を出て行こうとするのだが、ルナに手を掴まれてしまう。
俺はどうしたのかと聞こうとしたら、いきなり唇に柔らかい感触がやってくる。俺はこの感触を知っている。ルナにこうしてキスされるのは二度目だろうか。
「緊張しないおまじないです。頑張ってくさだい! あなた!」
そう言って、悪戯そうに笑うルナに俺はノックアウトされていたのだった。
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謁見の間の扉の前に立ち、俺は深呼吸を数回繰り返した。この扉の中に王様がいるって考えただけで、何だか緊張してしまうのだ。
ここに立っていても埒が明かないと考え直し、俺は中に入ることにした。扉の前で控えている近衛兵が扉を開けてくれたので、俺はその扉を潜って中に入った。
中はかなり広大な広間になっていて、昨日の舞踏会のダンスホールもそうだったが、それを上回るぐらいの場違い感があった。そして、その広間の真ん中には一人の銀髪長髪の女性が立っていた。
俺が近づくと、その女性はこちらに振り返ると一礼してくるので、俺も慌てて礼を返した。
王冠を付けているところを見ると彼女が王様ということなのだろう。しかし、おかしい。王様って結構な歳のおじいちゃんだった気がするんだけど? だけど、目の前には一人の女性? が立っている。見た目を見ると俺の下か同い年ぐらいの子なんだけれど。
俺が疑問に思っていると、目の前の子が説明してくれる。
「あなたが、リアム・ラザールね。わたしは、セシル・グリゼルダ。現国王の孫娘よ。今回からわたしが叙勲式を執り行うことになったの。よろしくね」
なるほど、そういうことか。それで女性がいたというわけか。
「今日はこのような会を開いて頂き、ご厚意感謝いたします」
俺はもう一度頭を下げた。しかし、王女は気に入らなかったらしく、不満そうな顔をしている。
「そんな堅苦しい挨拶は抜きにして、さっさと叙勲式を始めましょ」
おいおい、良いのかそれでとも思わないでもないが、俺としても早く終わらせてルナの元に帰りたいので、異議なしではあった。
「それじゃあ、叙勲式を始めるわね。これが終わればあなたは王城に仕える錬金術師よ!」
そうノリノリで話す王女に、俺は手を上げて間に入る。
「王女様、そのことで少しご相談があるのですが」
俺の言葉に眉をひそめた王女だったが、とりあえずは話を聞いてくれる姿勢のようなので、俺はこっそりと安堵の息を吐くと、続きを口にした。
俺の相談ことを聞いた王女は、初めは怪訝であり得ない者を見るような目で俺を見ていたが、やがて長いため息を吐いた。
「はぁ~~、やっぱり天才は変人が多いのかしら。そんな条件を出したの、多分だけどあんたが初めてよ」
「無茶苦茶なことを言ってるのは分かってます。だけど、どうにかなりませんかね?」
王女は両目を閉じて少し考えた後に口を開いた。
「分かったわよ。あんたの条件飲んであげるわ」
「本当ですか!」
「ただし! その代りこっちの条件も飲むこと!」
王女はそう言って不敵に笑うのだった。
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王都からの出来事から一週間が経とうとしていた。
俺とルナはあの後、二日間王都に滞在してからスーザックに戻って来ていた。俺があの時に相談した内容とは、王城に仕えるのではなく、このアトリエでその薬の研究をしても大丈夫かということだった。そして、王女はそれを許可してくれたのだ。しかし、月に一度は王城に顔を出して研究成果を見せろとの条件付きだが。
それでも俺はここに帰ってこられたのだ。
結局、俺はここでの生活を捨てることは出来なかった。この二年間、ここで過ごした日々は俺にとってはとても大切なものだったからだ。それに、このアトリエはルナと共に過ごした大切な場所だ。ルナとはまだ一ヶ月ほどしか暮らしてはいないが、それでもここは大切な場所だった。だから、どうしてもここを離れて王都で暮らすと言う選択が出来なかったのだ。
ルナにそのことを話したら、とっても喜んでくれてたので、これで良かったんだなって思えたし。でも、ルルネにはめっちゃ怒られた。それもそうだろうな。王城に勤めることがどれだけすごいことかを考えると、俺はバカな選択をしてしまったのだろうが、俺的には後悔はない。グレンには俺らしいと笑われたが。
それに俺が錬金術師をやっているのは、富や名誉のためじゃないって、ルナの姿を見て再確認できたし。
「あなた、そろそろお客様が取りに来る時間ですよ」
「ああ、分かってるよ」
俺が物思いにふけっていると、エプロン姿のルナが俺を呼びに来てくれる。何故エプロン姿のかと言うと、最近ではルナにも作業を手伝ってもらっているのだ。少しずつ錬金術の勉強をしていたルナだったが、その吸収力はすごく、助手の役割なら簡単にこなせるレベルまでに上達していた。元々要領が良いからなルナは。
「扉って閉めたままだっけ?」
「いえ、開けておきましたから大丈夫です。あなたは依頼品の用意をお願いします」
「ああ、分かったよ」
俺はルナに言われた通り、依頼されたものを用意して作業部屋から出るとアトリエの出入り口に向かった。そこは軽い小スペースになっているため、そこで依頼内容を聞いたり清算などを行っているのだ。
そして、俺が出入り口に着くのと扉が外から開けられるのは同時だった。 なので、俺とルナは笑顔でこう言うのだ。
「「いらっしゃいませ! アトリエ【クレアスィオン】です!」」」
一人の錬金術師とその嫁になった一人の少女の物語は始まったばかりなのである。
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