『拍手』
2ヶ月ともなると、母は休んでいた仕事に復帰しなくてはいけなかった。
「ごめんね、ちゃんと治るまで傍に居てあげたいんだけど...」
「いいのよ、リハビリくらい1人でも出来るわ。」
「そう?何かあったらすぐ連絡するのよ?」
「わかってるよ。」
心配症だなぁと笑うと、母はそうかしらとはにかんだ。ふと時計を見ると時間が大分進んでいた。
「時間、大丈夫?もう出ないとじゃない?」
「あら、もうこんな時間なのね。じゃあ、お母さん、行くね。あんまり無理しないでよ。」
そう言い残すと母はパタパタと急ぎ足で病室を出て行った。
少しして、すぐにリハビリを始める。
リハビリといっても内容はごく単純で院内を歩き回ることだった。
「せっかく先生から歩き回ってもいいって言われたもんね。」
よいしょとゆっくり立ち上がる。
「まずは、どれくらい歩けるのか軽く病室歩いてみようかな...。」
恐る恐る足を踏み出す。前に出した足にゆっくりと体重を加えていくと膝がパキッと音を立てた。事前に医者から
「所々関節がなったりするはずだけど、痛みを感じなかったら気にしなくて大丈夫だからね。時々車椅子に乗ったと言ってもあんまり動いてないから。」
と言われていた。
「って言われてもこんな大きくなると流石に怖いよ。」
私は苦笑いをしながらゆっくりと歩いていく。足首や膝が何度もパキパキと音が鳴る。痛みはなく、むしろスッキリとしていくようだった。
しばらくすると段々と音がならなくなった。
「そろそろ、部屋の外にも出てみようかな。」
スライド式のドアに手をかけ、開ける。外に出ると、すぐ近くにナースさんがいた。驚いたようにこっちを見ていたが天使の様に笑うと、
「おめでとう。」
と小さく手を叩いてくれた。突然褒められて、私ははにかみながらお礼を言った。