絶望ヲ与エシ魔王
あれから、屈強な悪魔との壮絶な口喧嘩を経て、遂に『魔王』と対峙する事となったシルバーデビル少年。
「『魔王様』。此方の少年が、『魔王様』に聞いて欲しい頼みがあるらしいのです」
「そうか……名は?」
「……」
「おいシルバっ! 何黙ってんだよ」
屈強な悪魔に小突かれるシルバーデビル少年。
「ああ……俺の名はシルバーデビル…ゴルゴル王国のボック村の出身で、約百年前に《祝福の儀》にて最下位階の不老不死能力を授かった哀れな男だ」
「何!?」
「シルバ、お前不老不死だったのか」
「ああ……どうやら俺は百年もの間、ゴルゴル王国で殺傷訓練の実験台という公務を生業としてきたらしいんだが……致死ダメージを負うと《祝福の儀》以降の記憶が吹き飛ぶ為に、怨恨が湧かないのはいいんだがいつの間にか知り合いも皆死んじまってな……日誌にて記録を残し日誌を真の記憶として見るとな…俺はいい加減に本当の意味合いで死にたいんだよ……だから藁をも掴む気持ちで『魔王』を訪ねて来たって訳さ」
「そうだったのか……」
「ああ……」
「シルバーデビルと言ったな。本当に死にたいとは?」
「不老不死能力で死ねないのが苦痛だから死にたいんだよ『魔王様』。《祝福の儀》なんて受けるんじゃなかったぜ」
「なるほどな………しかし我々は君の事を知らないし、君を信用する事は出来ないのだが?」
「その点に関しては、俺が俺に宛てた手紙風日誌を読んでくれれば大丈夫だと思うな……とにかく!」
バサッ
いきなり土下座して頭を床に付けるシルバーデビル少年に、『魔王』と屈強な悪魔は目を見開く。
「何でもするから、俺を不老不死の苦しみから救ってくれ頼む!」
シルバーデビル少年、魂の叫びである。
「シルバ……『魔王様』俺からも頼みます。シルバを救ってあげて下さい!」
屈強な悪魔は涙を流していた。案外人情味溢れる悪魔なのだ。
「……まずは日誌とやらを見ない事には、何とも言えんな」
「これです。受け取って下さい」
「分かった。読み終わるまで、少年は一応客室に軟禁という形にさせて貰おう」
「分かりました」
「少年の監視は、仲が良いようだからお前がやりなさい」
「はい。行こうかシルバ」
「ああ…すまんな」
「遠慮するなよ」
立ち去る二人を目で見送った『魔王』は件の日誌に視線を落とす。
「後継者?………いやまさかな……」