悪魔
あれから何やかんやあったが、無事に『魔王城』にたどり着いたシルバーデビル少年。
「『魔王』か……」
あれから更に詳しく日誌を読み込んだシルバーデビル少年は、過去の自分が『魔王』に対して興味深い考察をしていたのに感心を持ったのである。
{『魔王』が世界を恐怖に陥れているのは何か理由があると考えるのが正確だろう。そもそも世界を恐怖に陥れるなんていう糞面倒くさい事をやる理由がないのだから、これは自然と行き着く考えだったのかもしれないな}
{何を目的としているのかは分からないが不老不死に関する事だと俺は推測した。というかおそらく不老不死でない者が、世界を恐怖に陥れるなんて酔狂な真似しないと思うからだ}
バサッバサッ
そうやってしばらく城門の前で立ち止まり、日誌の内容を思い出していたシルバーデビル少年の前に屈強な悪魔が舞い降りた。
「なんだお前は?」
「俺はシルバーデビルという者だ」
「そうか……ではシルバーデビルとやら『魔王城』に何か用か?」
「当たり前だろう? 用もないのにこんな所までわざわざ苦労して来る訳ないだろうよ。少しは考えて喋り掛けてくれないかね?」
「ほう……なかなか大した度胸ではないか」
「度胸? あんたは何を言っているんだ?」
「これは異な事を。この私に偉そうな口を開いたのだから、随分強いのだろうなと言ったんだ。シルバーデビルとやらよ」
「それは初耳だな。俺は全然強くないし、そもそもあんたに用はない」
「何? シルバーデビル貴様ふざけているのか?」
「俺がいつふざけたんだ? 俺はいつでも真剣だぞ!!! ふざけているのは貴様だ糞悪魔!!」
「シルバーデビルとやら、それは宣戦布告として受け取っていいんだな?」
「いい訳あるか糞悪魔! 俺は『魔王』に用があって来たんだ! 貴様なんぞを相手にしている暇なんかないんだよド阿呆が!」
「『魔王様』に用があるだと? ならばやはり敵ではないか」
「用があるだけで敵認定とか貴様の頭はイカれてんのか糞悪魔! 俺は『魔王様』に頼みがあって来たんだよ!」
「何だと!?」
「ああもう面倒くせえ! 早く『魔王様』の所に案内してくれ」
「いやしかし」
「ほら早く!」
「分かったから翼から手を離せ!」
シルバーデビル少年の謎の勢いに押されてしまった屈強な悪魔は、少年を魔王様の元まで案内する事と相成ったのだ。