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 結論と真実






 何者に探られているか分からないので、深夜こっそりとマイホームを後にしたシルバーデビル少年は、【モダの木】と名付けた木々など一切ない場所にたどり着いた。




「たしか……ここかな?……ここだな」




 明らかに人為的な痕跡が残っていた為、直ぐに分かった。記憶を吹き飛ばす前の自分の仕業であろう。




「また日誌か」




 シルバーデビル少年が見つけたのはやはり日誌である。まあそれしか方法がないのだから当たり前なのだが。




{結論から言おう。俺や俺の家は監視されている}




「やはりか」




{更に言えば、魔女氏がヤバイ}




「何!?」




{俺は国家に監視されているが、それとは別に俺を探っているのが魔女氏だ}




「??」




{魔女氏は不老不死の最高位なのだが、そもそもいくら記憶が吹き飛ぶとはいえ【あんな仕事】を紹介するのはおかしい}




「確かに」




{また結論だが、魔女氏は他の不老不死能力者……つまり俺を嫌っている節があるんだ。理由は分からないんだが、少し長生きしている俺に対してヤケに突っかかった態度をとる事からも確定だろう}




「何て事だ……」




{更に言えば【あんな仕事】を紹介したのは、俺を玩具にして楽しむためだろうな。実は俺程度の不老不死能力者ってのは結構いるらしいんだが、公務人として能力を国家の為に使っているのは少ないというか俺ぐらいらしい}




「マジかよ……」




{だから俺は国中の人間に監視されているし、魔女氏は俺に軽く説明する役割で給金を貰っているんだ。ちなみに俺の給金は最低賃金の1/4。どうせ記憶が吹き飛ぶんだから給金出てるだけ感謝しろっていう感じだったぜ?}




「ざけやがって!」




{ああ、国に直訴しても無駄だから。実際直訴した俺がいたみたいだけど殺されちゃったんだって……直訴する! って記録で終わってるから、多分殺されちゃったんだろうね}




{もう気付いてると思うけど、ニイタカヤマノボレとモダの木を思い出せはかなり最初期に書かれた物だ}




「……だろうな」




{書き直す事で過去の俺と今現在この日誌を見ている俺自身で、少しずつだが知らなければならない情報を蓄積して来た訳だ}




「そういう事だったのか……」




{さて、今はだいたい八十年目くらいらしいが、今の俺は何年目かな?}




「二十年も経ってるのかよ……」




{まあ何年目でも構わないが、これから書いてある事を実行するのは、目覚めてからあまり時間が経過していない俺だけが実行してくれ。逆に目覚めてから1ヶ月は死ななかった俺は、大人しく殺されといてくれ}




「どういうことだ?」




{王国から逃げろ。逃げたら『魔王』を訪ねるんだ。『魔王』はおそらくは最高位の不老不死能力者であり魔女氏に対抗する唯一無二の手掛かりだからだ}




「!!!」




{俺が現在の無限ループ状態である不老不死能力から解放されるには、『魔王』に頼るしか手はないんだ……魔女氏は魔王の事を良く思っていないらしいのだが、それは世間一般が抱いているものではなく俺に向けたのと同等の同能力嫌悪のような物だったからな……}




「………」




{俺は三年もの間休暇と称して長生きした訳だが、そろそろ【あの仕事】をしなければ怪しまれるからね。後は未来の俺自身に託す事にするよ}




「……」




{親しかった人達は全員死んじゃったから思い残す事はない筈だよ。あと重要な事は『魔王』にこの日誌を見せる事だね}




「?」




{日誌を見せなければ、万が一『魔王』が誤って僕を殺してしまって記憶が吹き飛んでしまっても何とかなるかもしれないからね}




「ああ……」




{最後になんだけど、今現在俺の周りに集まってくる人間は絶対に信用してはならないよ。いくら不老不死能力で怨恨の心配がないからとは言え、【あんな仕事】を低賃金でやらせるなんて正気の沙汰ではないのだからね}




「……だな」




{ゴルゴル王国、ボック村、魔女氏はすべてにおいて狂っているというのが三年生きた感想だ。幸せって何だろうね? まったく《祝福の儀》なんてやるべきじゃなかったよ}




「……ああ…そうだな」




{俺は普通に生きたかったよ。でも無理だった。じゃあもう死ねばいいという訳にもいかないじゃないか……不老不死なんだからさ}




「……」




{始まりがあるものには全て終わりがあるなんて誰が言ったんだよ! じゃあ俺はいつ終われるんだよ! 終われないじゃないか! って思うのだけどそれも含めて未来の俺自身に託す。頑張って逃げて『魔王』に会ってくれよな}




 日誌はそこで終わっていた。暫く目を瞑っていたシルバーデビル少年は目を見開くと何か決意に満ちたかのようなキリッとした表情で立ち上がり、一言だけ言葉を発した。




「よし逃げるか」




 と






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