過去からの手紙(日誌)
部屋に入ったシルバーデビル少年は、その手紙の量に驚いていた。
おそらく、百年というのは本当だったのだろう。手紙には似た内容の物が多く見られたが、記憶が吹き飛んでしまったのだから仕方ないのであろう。と、納得していたシルバーデビル少年は、散らばっていた手紙を漁るのを止め、ふと目に着いた机にある日誌に手をかける。
{今日から日誌にて記録していく事にする。記憶がなくなってしまっても、記録していれば何とかなるかもしれないからだ}
{日誌を始めてからかなりの年月が経ってるみたいだが、実感がない。だがある程度の給金が溜まっている事からも、事実なのだろう。せっかくなのでお家を新築する事にしたぞ!}
{日誌ではかなりの年月が経過している事が分かるし、記憶が吹き飛ぶ前に建てたらしいマイホームに残してある記録もかなり溜まっている。そろそろ仕事を止めてもいいんじゃないかなと思ったりした……まあ記憶がないから、仕事を継続している実感が全くないのだが}
「まあ記憶が吹き飛ぶんだから、まともな日誌なんて書いてる訳ないよな……」
シルバーデビル少年は軽く絶望していた。日誌がまともではないから、どうしていいか判断が付かないからだ。
「ん?」
{未来の自分へ。魔女氏にも迷惑がかかるので、後はマイホームにて確認されたし}
そこで日誌は終わっていた。だがマイホームなんて知らないシルバーデビル少年は困ってしまった。
「しょうがないな。魔女氏に聞くか……」
マイホームなのに知らないとは変な話しだが、まあ仕方ないであろう。
「魔女氏」
「何だい」
「僕の家の場所は分かり」
「〇〇〇の◇◇◇番□□□」
「あっ、どうも」
「用が済んだならもう出て行ってくれないか」
「はい、お世話になりました」
こうして、魔女氏の家を後にしたシルバーデビル少年は、全然知らないマイホームへと向かったのだ。