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稜戦姫の恋  作者: 三茶 久
第三章
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龐岸制圧戦(4)

 兄上、と稜花の声が響く。

 東の森。日が昇ると同時に分け入ったが、一向に李公季の姿は見えない。

 稜花が確認できたのは、少数の稜明兵が立ち残り、追撃部隊を押さえ込もうと奮闘する姿だけだった。彼らを頼りにひたすら進む。


 ここは稜明領。しかし、稜花は龐岸の付近へ派遣されたことなどなかったため、このあたりの地形には疎い。

 龐岸の城を出る前に、地図にて地形を確認し、幾つか隠れやすそうな場所に目星はつけたものの、今だ李公季には巡り会えなかった。明日までに龐岸の城へ戻りたいとも思い、気持ちだけが急いてゆく。


 杜兵は散り散りになっていた。数がそう多くないため、見つけるたびに捕縛していく。むしろ彼らも、もはや追うのか、逃げるのか、己の目的が定かになっていないようだった。彼らの混乱はやはり、指揮官が居なくなったことに由来するのだろう。

 実際に森に入ってみて初めて安堵する。杜兵がこの状態なら、助かる見込みがある。

 いくら李公季でも、負傷した上で数で押し切られたらその身は危なかったはず。追っ手が少ない分状況だからこそ、逃げることに専念できる。




 峠へ差し掛かる方向に一本の道があった。当然舗装されているわけではなく足場は悪いが、この道を辿ればいずれは小さな村へたどり着く。李公季も必ず補給のことは考えるだろうから、その村へ立ち寄った可能性は高い。

 まずはそちらの方向へ行ってみるかと考えた上で、すぐに稜花は首を横に振った。単純に村へ向かっていたならば、夜、楊基に出してもらった捜索隊が見つけられるはずだ。



「楊基、昨日はどのあたりを調査したの?」

「……麓から順番だな。単純に山道を進んだわけでもなさそうだから、手を焼いている」

「――そう。でも、道が分からなくなるような奥深くまでは入っていないと……思うのよね」


 見知らぬ夜の森を闇雲に進むのは自殺行為だ。おそらく東へ向かうこの山道は確認しているだろうから、道沿いに身を潜めているような気がする。

 少しでも、人が奥へ分け入った跡などが見つかれば話が早い。

 しかし、山は確実に色づきはじめている季節。落葉の量が多く、地面が掘り起こされたとしてもすぐに覆い隠してしまうだろう。色が深まった秋の森が、李公季の存在を消してしまっており、何とも歯がゆい。



「兄上――!」


 再度名前を呼びながら前へ進んだ。

 着実に、道を潰していくしか稜花に出来ることはない。どうか無事で。この声が、届けば。と何度も心で祈りながら、ただ、東へと足を進める。





 ***





 兄上。と声が聞こえた気がした。

 幻聴だろうか。いや、そんなことは、と首を横に振る。

 迫り来る騎馬の気配に誰もが焦り、足をもつれさせる。そんな最中、聞こえるはずのない声に、李公季はいよいよ頭がおかしくなったかと嗤った。


 稜花は死んだらしい。少なくとも、噂が本当であれば。

 信じる気も無かったはずなのだが、いざ自分に危機が迫ると、物事がすべて悪い方向に思えてくるから厄介だ。

 あの行動的な妹のこと、突然目の前に現れても不思議ではない気がしてしまうが、どう考えてもこんな場所にいるのはありえない。



 それでも――。

 幻聴かと思った稜花の声。

 負傷したせいで熱でも出たかと思っていたが、そうではなかったらしい。


「公季様」


 ぽつりと、隣に立つ宇文律が声をかけてくる。

 この声は、と彼が告げたところで、女の声が聞こえているのは自分だけではないことを悟った。

 周囲の兵たちも、お互い顔を見合わせる。声は西――龐岸の方向から聞こえてくる。まさか、いや、と疑いながら、元来た方向を振り返った。


 声はまだ遠い。身を隠すなら――もしくは、逃げるならまだ余裕がある。しかし頭の中がどうもちかちかする。



 ――まさか、そんな。


 何度も否定するが、それでも、兄上、と。ひっきりなしに響いてくる声は必死で、そのひたむきさに心が惹かれる。

 妹の稜花がひたむきな娘であったことくらい、李公季はよく知っている。

 罠か、とも一瞬思う。

 稜花に似た声の主を連れてきて、李公季をおびき出そうとでも言うのか。いやいや、そんなまさか。どれだけ参ってるのだと自分のとんでもない推論に苦笑した。



 李公季はぎゅうと拳を握りしめた。

 戻るか。進むか。


 相手は騎馬だろう。

 もし、敵であったならば、身をさらすのは自殺行為。声の主が稜花だという夢のような想像に賭けるのは、あまりに馬鹿馬鹿しいと自分でも思う。しかし――。



「……行くか」


 眉間に皺を寄せ、それでも。

 この声のひたむきさに、応えないわけにはいかない。


「李公季様……!?」


 周囲に止められる前に、李公季は足を踏み出した。先ほどまで、来た道を戻るかのように。

 ふふ、と笑いがこみ上げてくる。

 血迷ったかと、何度も思うのに何故だろうか。

 一晩逃げ惑い、絶望に苛まれてきたというのに、この凜とした声を聞くだけで、頬が緩み、笑みが溢れる。


 自分が馬鹿だと自嘲しているわけではない。心の更に奥底に、もしかしたら、という希望が微かに灯る。

 賭けなど全くもって李公季の趣味ではないのだが、何故だろうか。妙に信じたくなる自分がいて、気持ちが止まらなくなる。



 ――公季兄上!



 ほら。

 公季兄上。

 そんな名で、自分を呼ぶおなごなど、一人しかいないではないか。




「――稜花!」


 声に反応する。こんなにも大きな声を出したのは、いつぶりだろう。痛む脇腹がいつの間にか気にならなくなり、足が軽くなる。がさがさと道無き道を掻き分け、山道の方へ――。


「稜花!」


 その名を呼んだ。明るく笑う、妹の顔が頭に浮かぶ。


 稜花。稜花。

 どうか無事で。私は無事だ。と、李公季は何度も頭で唱えた。





 ***





 稜花。と声が聞こえた気がした。

 騎馬の蹄の音にかき消された気がしたが、確かに――。



「止まって!」


 稜花は手で後方の集団を制し、しばらくその場に立ち尽くした。


「……どうした?」


 突然立ち止まったため、楊基も怪訝な顔つきで、稜花を見つめてくる。しかし、その声に反応することもせず、稜花は耳を澄ました。



 ――稜花!



 静かな森の中。今度ははっきりと声が届いた気がする。

 わなわなと、唇が震える。頬が紅潮して、胸が熱くなる。


 その声を聞いたのは、稜花だけではなかったらしい。隣に立つ楊基もまた、はっと目を見開いた。

 感極まるように彼の方を見つめると、彼は馬を寄せ、ぎゅうと稜花の肩を抱いた。



「――無駄ではなかったな」

「行きましょう」


 すぐにでも手綱を引こうとした瞬間、楊基は再び稜花の手を取った。


「?」


 どうして制止されるのかわからず、稜花は首を傾げる。

 彼は森に入る前と同じ、ごく真剣な顔をして、首を横に振った。


「最後まで気を緩めるな。見たろう。まだ杜兵は潜んでいる――奴らにも、声が届いているはずだ」

「……ええ」


 確かに、楊基の言うとおりだ。

 散り散りになり、自棄になった敵兵というのは厄介だ。どんな攻撃を仕掛けてくるかも分からないため、気を抜くことは出来ない。

 もちろん、稜花達はある程度の人数で固まっているため、たかが一兵卒が単騎で襲ってくるとも思えないが。


 楊基の言葉に頷いて、稜花は前へ進んだ。彼女の引き締まった表情に、楊基も満足そうに、同時にまるで心配するかのように目を細める。



 ――調子が狂う。


 昨日から、随分心配されている気がする。

 いざ戦場に出してみて、思った以上に稜花自身が危なっかしかったのかもしれないが、それでも心配しすぎだろう。こんな時までじいと見つめられるのがなんだかこそばゆくて、稜花は視線を逸らした。



 声の聞こえた方向へ進む。

 本当に声の主が李公季なのだとしたら、稜花が呼びかけたのなら向こうから寄ってきてくれるはず。


「兄上! 公季兄上っ!」


 だからこそ、稜花は兄の名を呼ぶことをやめなかった。

 李公季だけでなく、どんなに杜兵の気を引いたとしても、構わない。今は、李公季と出会うこと。これを最優先したい。


 声が随分と近くなってきて、それでも兄の名を呼んだ。喉がカラカラになって、ひどく痛む。しかし呼びかけることしか出来なくて、稜花は必死になった。




「――稜花!」


 ごく近くに声が聞こえて、胸が震える。

 間違いない。何度も、何度も自分を呼んでいたこの声。柔らかい低めの声が、稜花の耳に優しく届く。


 馬を止め、稜花はすぐさま地面へと降り立った。楊基が制止するが、いても立ってもいられない。山道から、道無き森の中へと分け入りたい。

 馬を隣の護衛兵に預け、稜花は声がした方向に、自らの足で駆けだした。

 相当な悪路を何とか分け入る。捜索が困難だったわけだ。山道を逸れると、こうまで進むことがままならないかと苦笑する。



「兄上!」


 再度叫んだ。顔が見たい。彼の姿が。

 木々の奥、草を掻き分ける音が聞こえてくる。目を見張ると、こちらに近づく人影が見えた。たまらなくなって、稜花はその影の方向へ足を進める。


「稜花、待て!」


 後ろから、制止する楊基の声が飛ぶ。

 しかし、もう、兄はすぐそこなのだ。足を止めるわけにはいかない。


 木々の向こうに、見慣れた姿が垣間見える。

 十人ほどの集団の先頭。一見父によく似た、しかし気難しそうな顔をした男の姿。

 ああ、と、稜花は思う。

 その姿が見えなくて、もしかしたら、と何度も不安に思った。もう二度と会えないかもと、心を毟り取られるような思いもした。

 しかし、彼は生きていた。李公季――稜花の最も信頼する者のひとり。大切な、兄が。すぐそこに。



「兄上っ!」


 歓喜で、笑みが零れる。

 向き合った兄も同じように頬を緩め、生きていたか、と声を出す。

 彼の脇腹は、衣に赤が染み付いており、やはり負傷した事実を確認した。そして、それでも生きていたことに、喜びと心苦しさで胸がいっぱいになる。


「稜花!」


 李公季との距離が詰まる。稜花は両手を前に突き出し、少しでも早く、兄を支えたいと足を速める。




 そのとき。


 視界の端に走る、銀の光。

 それは稜花の真横から。意識がゆっくりと追い、両目を見開いた。


 ――杜兵……っ!?


 李公季との距離はあと僅か。手を伸ばせば届くのに、光が稜花より先にたどり着かんとする。



「稜花! 待て!」


 後方から声が聞こえる。しかし、その声で止まることなど、できない。


 待てるはずがない。

 呼吸が止まる心地。

 稜花はなだれ込むようにして李公季の元へとたどり着く。

 稜花の腕は、彼の身体を押し倒し、覆い被さるように地面に倒れこんだ。視界にとらえた銀の輝きは、稜花の腕を僅かに掠め、地面に突き刺さった。



 ぴり、とした痛みが傷口に走る。が、これしきの傷どうということはない。

 うっかり李公季を下敷きにしてしまった故、己の傷口を全力で地面にぶつけたらしい李公季は呻き声を上げる。

 しかし、稜花にそれを気遣っている余裕など無い。すぐさま身を翻し、銀の光――おそらく、弓矢であろう――の飛んできた方向へ視線を向ける。地面に手をついて起き上がり、真っ直ぐ反撃体勢に入った。


 だが、その相手はあっという間に木々の向こうへと身を隠してしまう。

 まるで追いようのない距離だった。兵卒にしてはかなりの腕前で、稜花は相手が隠れた先をキッと睨み付けたが、行方が分からなくなる。


 相手は声を張り上げ続けていた稜花を追っていたのだろう。

 あえて今攻撃してきたと言うことは、相手の狙いは李公季か。稜花が呼び出すのを待っていたとでも言うのか。

 この敵味方散り散りになった混乱の最中、じっと機会を狙っていたとは。しかも、あの腕前。

 楊基がずっと警戒していたのは、この瞬間を狙っていた輩がいる可能性を危惧していたからなのかもしれない。




 兎にも角にもやり過ごせた。稜花は安堵し、ほう、と大きく息を吐いた。

 李公季とは出会えた。まだ油断は出来ないが、本日中には龐岸へ戻ることが出来そうだ。


 さて、李公季は大丈夫だろうか。

 危機を回避してようやく、先ほど突き飛ばした兄のことが心配になる。頬を緩めて振り返る。兄上、そう呼びかけようと振り返った時だった。



「稜花!」


 稜花の視界に最初に飛び込んできたのは、未来の夫の方だった。血相を変えて、彼女の肩を押さえる。


「へっ?」


 わけがわからなくて素っ頓狂な声を上げる。

 しかし楊基は、稜花の反応など気にすることもなく、彼女の体を反転させる。その強引さに目を白黒させていると、彼は今度は、懐刀を取り出した。


「ーーっ!!」


 咄嗟に身の危険を感じて離れようとしたが、がっしりと押さえ込まれて身動きが取れない。それどころか、先ほどの傷がピリピリ痺れていることに気がついて、目を見開いた。


「じっとしていろ!」

「やっ……楊基っ」


 刃を向けられ、恐怖する。後方から制止させる声が聞こえるが、彼は聞き入れることが無かった。

 何かと思うと、稜花の傷口付近の袖の切れ目を無理矢理広げ、傷口を露わにする。

 ピッ、と掠めただけの、細い赤の線。ほとりと雫が溜まっている。それを見た瞬間、楊基の顔がくしゃりと歪んだ。


 楊基? と声をかけたが、彼は稜花の言葉など耳に届いていない様子。懐から布を取り出したかと思うと、即座に肩との付け根付近を縛る。相当キツく締め付けられ、傷口よりもそちらが痛んだ。

 そして何を焦っているのだと瞬いてるうちに、今度は彼は、その傷口に唇を落とし、吸い上げはじめた。


「ちょっ……!?」


 かなり強く吸われて、痛みが走る。傷口からまるで全身に痺れが回る気がして、クラクラした。しかし楊基は止めることなく、何度も稜花の肌を吸っては、その血を吐き出す。



「楊基殿!?」


 離れていた李公季も、彼の咄嗟の行動に戸惑っている様だった。ぽかんと口を開けて戸惑っていたようだが、やがて、何か厳しい考えに思い至ったのかまるで睨み付けるように表情を変えた。

 稜花もその過剰な心配に戸惑いつつ、楊基を見下ろす。


 きっと毒の心配をしているのだろう。

 もう大丈夫。そう言おうとして、稜花は気がついた。

 ピリとした痺れは、既に傷口だけにおさまっていないことを。


 あれ、と言葉にしようとするが、それよりも先に体が支えられなくなる。意識ははっきりしているのに、痺れで体が動かない。


「稜花っ?」


 うまく呼びかけに応えることが出来ない。稜花の瞳には険しい顔をした楊基の顔がうつりこむだけだ。

 ピリピリした痺れは、気がつけば稜花の全身を襲っていた。舌まで痺れが到達し、表情をしかめた。助けて、の一言が声にならない。

 ひしひしと、マズイ、ということを自覚する。どうにか体を動かそうと藻掻くが、ままならない。



「駄目だ稜花。動くな。じっとしていろ!」


 稜花の状態がわかっているのだろう。楊基は焦って首を振った。そうして彼は、稜花の体を抱え込む様にして山道の方を向いた。



 慌てて李公季も稜花達の元へ駆け寄ってくる。稜花の顔を見下ろしては、彼女の表情の変化にうっと声を漏らしている様だった。


「楊基殿、稜花はーー」

「……毒矢でしょう。今すぐ、龐岸へ戻りましょう」

「いや、しかし、あそこは今」

「もう、騒ぎは収まっている」


 切羽詰まった声で楊基は吐き出し、身を翻した。


「ーーお待ち下され、楊基殿。あの、混乱が?」

「稜花がいましたからね。思いの外、早く片付きました」


 呼び止める李公季を一瞥し、楊基は稜花を抱えたまま、さっさと騎乗した。

 稜花も意識自体はあるものの、体が妙に火照った心地がする。何かにしがみ付きたくて、楊基の懐に手を伸ばした。


 楊基殿、と、後ろから切羽詰まった声が聞こえる。まず間違いなく李公季だが、稜花には振り返る余裕などない。だが、楊基の顔を見ればわかる。己が今、どんな状況かが。



 ーーこの毒矢。かなり、強い……?


 領地によっては、幼い頃から毒で体を慣らす者もいるらしいが、あいにく稜花はさほど耐性があるわけでもない。が、李公季を狙ったのだとしたら、まず間違いなく、命を落としかねないものなのだろう。


 あの出会い頭をとらえる技術。そこから、毒の有無を判断したのだろうか。

 冷静に状況を見ていた楊基だからこそ出来た、咄嗟の応急処置。

 楊基のおかげで命拾いした。……いや、命拾い、出来るかもしれない。


 ーーまあ、助かったと言っても、今から……。


 ビリビリ、と体が痙攣する。

 耐えきれなくて、楊基を掴む手に力を込めるが、その感覚も定かでない。


 ーー戦わなきゃ、いけないの、よね。


 毒と。痛み。ああ、これは長い戦いになるぞ、と苦笑する。毒を受けたのはもはや変えようのない事実なので、なんとか生き残ることを考えねばなるまい。

 涙目になりながら、それでも動かぬ様じっとしていた。



「ーー李公季殿。まずは貴殿が無事でよかった……馬を用意させましょう。私は先に失礼する」


 楊基の言葉と表情が噛み合っていない。まるで李公季を責めているようにも感じられる。ぞっとするほど冷たい瞳を見せて、彼は手綱を引いた。

 稜花を抱きしめるその腕が、熱い。いや、稜花自身が、酷く熱くて——。




「ーー馬鹿者。私が、あれ程……」


 稜花を抱え込んだまま、楊基は馬を走らせる。そして、顔をくしゃくしゃに歪めて、彼は呟いた。


「死ぬな――こんな、くだらないことで」


 遠く耳に届く言葉は、か細い。しかし、その切実な想いはしっかりと届いて、稜花は笑った。表情に出せたかどうかはわからないが。


 死なないわよ。こんなところで。これくらいの毒で。


 そう呟きたかったけれども、稜花の口が開くことはなかった。

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