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稜戦姫の恋  作者: 三茶 久
第三章
58/84

龐岸制圧戦(1)

「そろそろか……」


 隣を駆ける楊基が、声を漏らした。稜花も手綱を握る手に、自ずと力が入る。


 昭国軍が陸路へと入って三日。かなり順調な行程を辿っている。

 本来ならば援軍を出すにしても、それなりの手順というものがあるわけだが、今回ばかりは恐ろしいほどに早くすんでしまった。それもこれもすべて、稜花の存在による影響である。


 今回の遠征で、特に問題になってくるのは昔の領境――すなわち、今の国境になる。稜河の航行に関する取り決めは、昭が昭領であった頃から、稜明との間で交わされている。基本的な関税と、商船の行き来に関するものだった。

 ただし、軍船に関しては話が別。各領を通り抜ける際には当然のことながら許可が必要になってくる。

 正直なところ、今回、昭国からの届け出に関する返答は、まだ届いてはいなかった。 しかしそこを強行突破で国境まで押し寄せ、稜花の顔ひとつで即時返答頂いた。

 稜明の長官も、稜花が生きていた事実に目を白黒させ、その後、泣いて喜んだ。 どうやら、このあたりまで稜花の死亡説は噂になっていたらしい。



 そしてそのまま、稜花たちは陸路に入ったのだった。

 まずは早馬を走らせ、更に軍を先行部隊と後方部隊に分けた。主力は後方部隊だが、当然稜花は先行して軍を走らせている。主力の出番など、ない方が良いに決まっている。


「早馬は、到着しているわよね」

「順調に行けばな――さて、戦はどうなっているか」

「戦なんて、起こってないわよ」


 稜花は空気をぴりとさせた。楊基に当たっても仕方のないことだとは思う。本来責めるはずは、この事件を引き起こした別の誰か。本当に杜の者なのかはわからないが、とんでもないことをしてくれた。

 早馬を送ったにもかかわらず、その返事が帰ってこないのも気になっていた。向こうの状況が知りたいのに、ままならない。しかし、それもあと僅かなこと。



 林の中の一本道。南へ下るその道は、荷馬車が行き交うのも問題ない程度に整備されている。

 昭国に用意してもらった軍馬は、体が引き締まっており、力強い。相当な悪路でも物ともせず、安定して駆けぬけてしまう。

 西国と取り引きをしているというが、この馬の強さは本物だ。以前から昭軍は機動力があるとは思っていたが、この馬の強さを考えると納得してしまう。


 ――想定より、早く到着出来るはず。


 この馬なら。この軍なら。

 かつての稜花軍も機動力に優れた軍だったため、同じ性質を持ったこの部隊は非常にやりやすい。彼らを稜花に与えてくれたことは、純粋に感謝せざるを得ない。





 そうして、駆けて、駆けて、駆け抜いた先。東西に広がる山の谷間に建てられたひとつの城。

 いや、城というよりも砦に近い石造りのそれ。その城を囲む空気に、音に、稜花はただならぬ不安と息苦しさを感じた。

 風で砂塵が舞う。濁った色した視界がやがて晴れた時、稜花は自らの目を疑った。


「待って」


 思わず、言葉を漏らす。城の四方。汰尾ほどの規模ではないながら、周囲を取り囲むように豆粒のような人間が見える。

 稜明側にあたる北側の入口までもがこじ開けられ、稜明と杜の兵が入り混じるようにして争っている。戦は龐岸(ほうがん)の城を取り囲むだけではなく、そのまま東の森の方までのび、城の内外で繰り広げられているようだった。


「待ってよ……!」


 嘘だ、と首を横に振る。信じたく無くなるような光景に、叫ばずにはいられなかった。


「どうして、戦が始まってるのよ!?」

「間に合わなかったか……」


 楊基も吐き捨てるように呟き、戦場を見渡している。

 指揮系統が完全に混乱している。お互いが目の前の敵兵に向かい合うのが精一杯で、各隊隊長が好き勝手指示を出しているようにも見える。

 本来ならば煩いほど聞こえる銅鑼の類や、旗による指示も飛ばないただの泥仕合。いや、こんなものは戦とは言えない。目の前の恐怖を打ち払うだけの殺し合いだ。


 全身が凍り付いた。

 “指揮系統が機能していない”――その意味を理解した瞬間、膝から崩れ落ちる程の恐怖が襲う。




「……兄上っ!!」


 まだ失うか。

 瞬間稜花の脳内に、絶望の記憶が蘇る。


 手を伸ばして届かない命。向かいたくてもたどり着けないもどかしさ。すぐそこに居るはずなのに、どうにも出来なかった自分。

 水の冷たさ。奪われる体温に燃えさかる船の軋み。

 息苦しさが一気に押し寄せてきて、目の前が真っ白になる。



「公季兄上っ!」


 でも、ここは水面じゃない。護りたい者は、そこにいるはず――。


「……っ」


 手綱を握りしめ、稜花は前へ進もうとする。呼吸することも忘れ、無我夢中に。


「待て、稜花! 早まるな」


 しかし、激情に溺れる稜花を放っておく楊基ではない。彼もまた声を上げ、稜花の隣に並ぶ。

 お互いの距離を縮め、無理に稜花の腕をとらえる。楊基、と彼の名前を呼ぶが、稜花の独走を許してくれるべくもない。


「焦るな、稜花。其方は将だろう」

「……っ」


 至極当たり前のことを今更言われ、稜花は唾を飲み込んだ。すぐ目の前には、龐岸。戦況が全く分からない、混沌とした状況。こんな時ほど、冷静にならなければならないことくらい分かっている。しかし、と稜花は唇を噛んだ。


 ――公季、兄上……!


 たった一人の家族の安否が、こうも自分を動揺させている。親しい家族がいなくなる恐怖を味わうのは初めてで、どうやって気持ちを抑え込んで良いのかわからない。



「百戦錬磨のような顔をしているが、まだ年相応の娘だな……いいか、落ち着け。深く呼吸しろ」

「……っ」


 楊基の言うことはもっともだ。

 無理矢理頷いて、大きく息を吸う。肺の中がかき回されて、苦しい。すっかり呼吸を忘れていたらしく、突然入ってきた空気に体が動揺している。


「……そうだ。少しは冷静になれ。良いか」

「うん……」


 ようやく返事が出来、楊基も少しほっとしたような顔をする。楊炎の言ったとおりだな、と独りごちるのが聞こえた。

 そして彼は、稜花の背中を擦るように撫で、肩を叩いた。


「ゆっくり息を吐くんだ。何、最悪の事態は想定してきただろう? 我々は今から、どうすれば良い?」


 ここまで来る最中、ただ安穏と過ごしてきたわけではない。龐岸の地形について確認し合い、お互いの戦力予想、城門が開かれた際の防御隊列、最悪、城が杜に奪われた際の侵入経路など事細かく想定してきた。

 目の前の事態は予想外のものだが、龐岸の城が開かれ、その中に敵が侵入していると考えると、答えが導き出される。



「……北門を制して、拠点を作るわ」

「そうだ。それでいい」


 稜花は将だ。単身、兄を探すために敵陣に飛び出していいはずがない。

 李公季の安否を心配するあまり、考える前に体が動き出しそうだった。しかしそれは稜花の悪い癖だ。何かをしでかす前に止めてくれた楊基に感謝せねばなるまい。


「――ありがとう、楊基」

「ん?」

「行きましょう」


 小さく感謝の言葉を溢す。隣を走る楊基は、意外そうな顔を見せるが、それだけだ。稜花は真っ直ぐに前を向いて、馬を走らせる。


「楊基。号令を、お願い」

「――可愛い妻のためならな」


 こんな時にまで悪ふざけを見せ、楊基は濃く笑った。しかし、それは彼が見せる余裕の現れ。どっしりと王が構えているだけで、皆が安心するのをよく分かっているのだろう。

 楊基がその手を天に掲げる。




「さて、我が国の戦姫が龐岸をご所望だ。目指すは北門。杜軍の侵攻を阻止せよ!」


 オオ―! と、鬨の声が上がる。一斉に昭軍の軍旗が揚がり、銅鑼の音が鳴り響く。

 我が国の、と彼が断言したことに辟易しつつ、稜花は前を見据えた。そうだ、今、自分が成すべき事は、目の前の事柄を一つ一つかたづけていくこと。焦ったところで結果はついてこない。


 ――兄上、どうか、無事で……!


 強く念じる。そしてぎゅっと拳を握りしめ、手綱をひいた。

 一斉に騎馬が駆け抜けていく。北側から突如現れた昭軍に、稜明・杜の両軍が驚愕したのが分かった。



「稜花、其方の仕事は分かるな」

「当然! 私は稜明の皆を……!」


 先頭に飛び出し、稜花はその剣を天に掲げた。太陽の光を受け刃が白く光る。


「稜明軍の皆! 昭国が李稜花、昭国王楊基と共に援軍に参った!」


 その高くて澄んだ声。凜とした響きに誰もが耳を疑う。数多の騎馬兵の先頭、艶めく青銀色の髪が揺れる。

 彼女の姿を知らない者など稜明軍にはいない。驚きに目を剥き、誰もが稜花に注目する。

 それは何も稜明軍だけではない。杜軍の皆も明らかに動揺を見せ、ざわざわとした声が広がりを見せる。



 女だてらに一軍を率いる彼女。華奢な体に男性用の鎧を着込んだ稜花は、稜明にいた時とはまた別の華やかさを持っていた。昭国軍に用立てられた青毛の馬に跨がり、勇ましく号令をかける。


「まずは北門を制す! 皆、隊列を整えて! 負傷者は昭国軍の背後にっ。戦局を変えるわよっ」


 指揮官不在の戦場に置いて、すでに全体を見通している稜花の言は確かだ。隣を駆ける楊基が一斉に、軍を左右に広げ、北門を覆うように展開する。

 突然現れた兵たちに取り囲まれた杜軍は、目を白黒し始めた。その場にへたり込み、動けなくなる者すら現れている。いくら乱戦とは言え、あまりの士気の低さに、稜花は顔をしかめた。



「稜花様!」

「姫っ! 生きていらっしゃったのですかっ!」


 今度は稜明軍の方から口々に稜花の名を呼ぶ声が上がり始める。

 早馬を出したが、どうやら稜花が無事という情報は出回っていないようだ。いや、この状況では、そもそも早馬が無事にたどり着いたかどうかも怪しい。


「皆、稜花は無事よ! 落ちついて、この戦を収めましょう! ……杜軍よ! 兵を引きなさいっ」


 稜花の声に、稜明の者たちが一斉に呼応する。稜花を先頭に兵たちが集結しつつあり、軍らしくひとかたまりの集団へと形を成していく。



「ふっ……そうだ、それでいい、稜花っ」


 楊基も満足そうに笑みを浮かべながら、次の号令をかける。一旦散らばった兵たちが一斉に北門に向かって旋回する。

 一方で、杜兵はますます混乱した。この突然の援軍に対抗する指示を飛ばせる者がいない。杜軍はまともに太刀打ちできる手段もなく、彼らは肩を落とし始める。


「我々はこの場を収めに来た。抵抗せぬなら悪いようにはせぬ。我が軍に下れ!」


 すみやかなる降伏と、捕虜となるよう楊基が呼びかける。すると、たちまち応じる者が現れ始めた。武器を下ろし、首を下げる。悔しさで地面に崩れ落ちる者もいる。

 あまりのあっけなさに拍子抜けしたが、現場の異様さを見れば当然のことかもしれない。この調子ならば、これ以上の被害を拡大することもなく、この場を収められるだろう。



 稜花は胸をなで下ろし、周囲の状況を再度確認した。どうやら皆が皆、戦意を失っているわけではなかったらしい。


「……謀ったな!」


 憎しみに溢れた叫びと共に、稜花の側へ真っ直ぐと駆けつけてくる敵兵がいる。何事、と思い稜花も当然向かい合う。一般兵卒に後れをとる稜花ではない。あっさりとその剣をはじき飛ばし、相手の喉元へ剣を掲げる。


「――謀る? どういうこと?」


 じろりと睨み付けると、恐れと怒りが混じり合った表情で稜花を見返してくる。すぐに周囲の稜明兵に取り押さえられるが、その瞳は稜花を睨み付けたままだ。


「アンタが死んだとホラを吹いたのだろう! 俺たちを殺すために」

「……何を言ってるの!?」


 敵兵はすぐさま稜明兵に口もとをおさえられ、罵ることも許されなくされている。

 こんなことは小者の抵抗にすぎない。彼の憎しみを受け止めはしたが、それだけだ。稜花はその敵兵を一瞥するに留め、真っ直ぐ北門の方へと向かった。



 ――やはり、私が死んだと噂になっている。しかも、それがこの戦の引き金になっている。

 ――でも、何故? 何のために? ……誰が?


「ねえ、貴方たち。昭からの早馬は来なかったの?」


 手近の稜明兵に訊ねる。しかし彼らはお互い顔を見合い、首を横に振るだけだった。まったく思い当たるところがないらしい。


 ――間に合わなかったのではなく、やはり辿り着かなかった? 邪魔が入ったの?


 龐岸周辺はこんなにも混乱に満ちているのに、誰かが第三者である昭からの早馬を発見し、その伝令を断つことに成功している。つまりこの事態を冷静に俯瞰している者がいるのだ。



 ――兄上……。


 おそらく、稜花達を襲ったあの船の事故から、すべて計画されていた。

 杜と稜明、そして昭国まで巻き込むところまで、すべて相手の手のひらの上。北門を制したとして、城の奥にもまだ何かあるのだろうか。

 しかし、恐れていても仕方ない。稜花は、李公季を探さねばなるまい。彼は、稜明のこれからに絶対いなくてはならない人だ。




「稜花! こちらは粗方終わった」

「敵は乱れたままね。……出来るだけ、捕虜にしましょう」

「ふ、我が妻はなかなかお優しい」

「元々起こるべきでない不毛な争いよ、当たり前だわ!」


 命を断つなと言うことがそんなにおかしい事なのだろうか。楊基は毒を吐き出すが、ここは譲れない。

 もちろん楊基も、異論があるわけではないのだろう。わかったと一言溢しては、苦笑しながら稜花の頭に手を置いた。


「さて――」


 そして、次に進むべき方向に目を向ける。


「……行くわ」


 北門のさらに奥。城の中で一体何が起きていると言うのだろう。

 城内は集団で行動を取りづらくなる。全体への指揮も通りづらくなる。それでも、先に進まない選択肢はない。


「其方はそう言うだろうな」


 本来ならば、指揮官は皆を俯瞰できる位置にいるべきである。しかし、心が早り、足が前へと進みたがっている。


「個別行動はよせ。少しずつ制圧し、行動範囲を広げていく。稜花は私の側を離れるな」

「……わかった」


 本当は一人でも飛び出してしまいたい。しかし楊基の言っていることはもっともだ。稜花は稜花の成すべき事をする――。


「はやく、この無駄な戦を終わらせましょう」

「――無茶だけはしてくれるなよ」


 何をするかわからんな、お前は。楊基はそう呟き、頭に置いた手にぐりぐりと圧をかけた。

 ぐるんぐるんと責められるように頭を振り回されて、稜花は目を回す。そしてぼそりと、楊炎の気苦労が分かった、と付け足されたのを耳にした。




 ***




 城内、通路を昭国兵が塗りつぶすようにしてなだれ込んでいく。目の前の敵に手一杯だった稜明・杜兵たちは、突然の乱入者に気をとられる。


「戦いはよせ! 稜花姫は生きている!」


 言づてに稜花の無事との報せが駆け巡る。争いの原因がなくなったことに、どちらの兵も振り上げた手をどう下ろしていいものやら分からないらしい。

 しかし一度おきてしまった殺し合いは、新たな恨みを生み出す。双方、攻撃を止めるわけにもいかない。戸惑いに満ちた戦線を、昭国軍が回収していく形になっていた。


 場内に入り、馬を預けた稜花たちは、すでに制圧が終わった場所を進んでいく。どこに敵兵が潜んでいるかわからないため、緊張は続くが、なんとも呆気ない。



「殿! 南側の部屋に会談に使用されていた部屋を発見したのですが――」


 忙しなく場内を駆け巡る兵たちの合間を縫って、伝令が駆け込んでくる。瞬間、神経がピリと逆立ち、稜花は両の手を握りしめる。

 どうした、と、楊基が声をかけるが、その伝令は稜花の顔をちらと見ては、言いにくそうに口籠った。

 ずきり、と心が痛む。怖くて、苦しくて、でも唇をキュッと噛んだ後、稜花は口を開いた。


「報告を頂戴」


 その言葉に、兵も頭を下げる。では、と呟いてしばらく、絞り出すように言葉を続けた。



「――杜、稜明の指揮官、文官が一堂に会していた模様。ただ――一部、首が切り落とされております。恐らく、稜明の李公季殿も――」

「……っ」


 言葉を失う。


 もしかしたら、という思いはあった。

 だが、彼を助けるためにここまで駆けてきたのだ。昭殷に向かい、楊基と出会い、再び東へ。その長い道のりを思い、同時に後悔する。



 ――間に合わなかった? いいえ。そんなはずは――



「稜花」


 肩にそっと手を置かれる。その方向を見ると、楊基が厳しい表情で佇んでいた。

 それは単なる哀れみだけではない。彼は君主で指揮官だ。この報告を受け、行動に移さねばならぬ。


「わかってる、楊基。でも――その場所を確認しに行って良いかしら。頭がないということは、公季兄上だとはっきり確認できたわけでもないでしょう?」


 建物の南の方向へと視線を向ける。まだ争いの声は広がったままで、城の至る所で戦闘が繰り広げられているはずだ。

 その混乱状態の中、首のない他国の重鎮が一体誰なのか、一般兵卒に判断できるとも思わない。

 ――いや。ただ、稜花は信じたくないのだろう。自身の兄を、まさかこんな所で失うことなど。



「行くのは構わん。だが、後だ。まずはこの城を制圧する」


 冷酷ともとれる楊基の言葉は正しい。しかし同時に、落ち着けと言われたことを思い出す。

 再度、深く呼吸した。稜花は自分の立場を思う。成さねばならぬことがあるのだ。どんな時も。


「わかってる。……行きましょう」


 酷い顔だと、稜花は思う。目を細めて、遠くを見る。

 腰には急誂えの双剣。手に馴染まないそれらは、まださほど使用しているわけでもない。周囲を楊基の選んだ護衛に固められ、更に、今、兵に取り囲まれた安全な場所にいる。


 息苦しくて堪らない。それは己の立場を改めて実感したからか、それとも李公季のことが己の心につっかえてなのかはわからない。だが、確実にこの城を制圧する。そして稜花は、少しでも多くの者を救わなければならない。


 稜花は前へと進んだ。


 そして戦は、呆気なく結末を迎える。

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