聖騎士学園
500年程前。甚大な被害をもたらした天災。それは、4万5千人と言う被害者、2つの山、4つの森を消し去った。神々が下界へ降りてくるゲートとされている山。神道山。その山を中心に光の柱が無数にも落ち、辺りは火の海と化した。人々は悲鳴をあげ逃げまどった。自分が助かるのに必死だった。その時の人々の顔は欲に溢れ、他人を蹴落としてでも助かろうとする恐ろしい顔だった。この天災を人々は「裁きの日」と呼んだ。これは、神の怒りだと。誰もが信じ、そして誰もが神を恐れた。そして、その天災を起こしたとされる神の名は。「裁きの神レイア」
聖騎士学院高等部。そこに、新たに150人の生徒が入学をすることになった。聖騎士学院は初等部、中等部、高等部とあり全てが騎士を育成する為の学校となっている。全寮制で騎士道精神を第一とする一流の中の一流校。入るには学校側から声をかけられる必要がある程の学校だ。1000人の生徒に声がかけられ試験が行われそこからさらに厳選される。そしてその試験をトップの成績で合格した者が「アリシア・ハイケイト」だ。
「新入生総代。アリシア・ハイケイト」
「はい。」
アリシアは優雅な振る舞いで壇上に登った。
「私達新入生はここ聖騎士学院高等部へ入学する事に伴い、騎士道精神にそって生活をし優秀な騎士になることを誓います。」
アリシアの声は透明感があり聞く人全てを安心させるような声だった。アリシアは腰に下げている剣を引き抜き前にかざした。
「我ら、剣に誓い心に刻む。善人に救いを悪人に裁きを。」
その言葉を最後に入学式は終わった。
「アリシアー。新入生総代。お疲れ〜。」
アリシアの後ろから声をかけたのは「カレン・メイアン」だ。その後ろに「カイ・セイラン」と続いていた。三人とも同じクラスだ。
「ありがとう。カレン。」
「この後の予定は何かあるの?」
「うん。いつもどうり出勤。」
アリシアが目を僅かに伏せた。
「そうか。じゃあカイと一緒にいくんだね。頑張って。私はもう部屋に帰るね。」
カレンは手を大きく振って走って行った。
「カイ。行こうか。」
アリシアが微笑むとカイは頷いた。そして二人は制服のままある場所へ向かって行った。
その場所とは。
「国防機関、ラファエル。」
国の中でも選りすぐりの人物のみが行ける
機関ラファエルは、国防の中で医療の役割を果たしている。国防機関は全部で四つある。戦闘専門のガブリエル。スパイ活動専門のミカエル。悪人の処罰専門のウリエル。そして、医療専門のラファエルだ。この中の何処かに入っている人は人並外れた身体能力とずば抜けた知能がある人達だ。その中で分けられていく。つまり、この中にいる人誰もが戦闘もこなせ、医療も資格をとれば行えるのだ。
そして、二人はラファエルのドクターとして高校生ながら配属されているのだ。国防機関でのドクターは15歳からとされているが、本来ならばドクターになるような人材は35歳以上が普通なのだ。二人は最も早くドクターになった天才とされている。ちなみに、カレンは国防機関、ミカエルのメンバーだ。しかし、ミカエルは基本的に集まることはなくカレンがミカエルのメンバーだったのはつい最近知ったことなのだ。このように、聖騎士学院には逸材が揃っている。つまり、聖騎士学院とは国防機関への切符の発行場所とも言えるのだ。
「アリシア。今日の予定は分かるか?」
カイが聞くとアリシアは鞄からタブレットを取り出した。
「今日は、3時からミーティングでそのあとはそれぞれの患者さんの診察。ぐらいかな。帰りは6時半ごろなんじゃない。」
「そうか。」
特にこれといった意味のない会話に聞こえるが、この会話で二人は何時に集合かと言うのを決めているのだ。基本的に、ラファエルに出勤するとガブリエルの練習ででる怪我人やアフターケア、戦闘で大きな負傷を負った入院中の戦士の治療。病気の研究を行っている。しかし、二人にはまだ研究の仕事は特に入らず研究の手伝いや雑用がまだまだ多い。だからガブリエルの練習に二人は混ぜてもらっているのだ。ガブリエルには割りと若い世代が多い。
二人は、ガブリエルの敷地の中に入った。
グラウンドの前の更衣室の前で二人は止まった。
「じゃ、グラウンドで。」
「うん。」
そしてそれぞれの部屋に入った。部屋に入るとまず暗証番号の入力を行い自分のIDを機械の中に入れる。するとその人の身長に合わせてある服が出てくるのだ。アリシアは服を持ちカーテンの中に入ると服を着替えた。髪は高く縛った。そして、靴を履き替え外に出た。カイはすでに出ておりアリシアを待っていた。カイの肩には重そうな鞄がかかっていた。これは、ラファエルから支給される医療用バッグなのだ。アリシアは重たいので基本的には必要最低限のものだけを持って自分の小さい鞄に入れている。ガブリエルでの訓練では真剣を扱う為怪我が絶えないのだ。しかし、真剣で戦う事によってより実戦的な訓練ができる。カイもアリシアもそれぞれ剣を持っている。二人はグラウンドのコーチの元へ向かった。周りでは既に自主練習が行われており勇ましい声が飛び交っている。
「アレックス。今日はなにをするの?」
コーチのアレックスは教育係りの最高位のものだ。
「今日は、模擬戦闘を行ってもらう。相手はそれぞれ組んであるから。」
『はい。』
二人は頷くとお互いの前に対戦相手となる人物が現れた。フィールドへ移動し、戦闘の準備が、始まった。
「よろしくお願いします。」
そして、お互いが剣が鞘を抜いた瞬間。戦闘は始まった。
「あーっ。痛い!痛い!もぉ。模擬戦なのに・・・。それに私、ラファエル所属だよ!?なのにメリッサこんなにボコボコにする?」
アリシアは腕を三センチほど切られ、肩には大きな痣ができる程の怪我を負った。
「それを言ったら、アリシアもメリッサをボコボコにしただろ。」
治療をしてくれているのは今日のガブリエルの怪我人の治療係りのセイだ。メリッサはガブリエル所属の女戦士だ。メリッサは隣の部屋で別のドクターに治療を受けている。
「はい。おわり。抜糸は二週間後くらいね。」
「はーい。ありがとうございました。」
そういって医務室をアリシアがでると額に包帯を巻いているカイが待っていた。
「えっ!?どうしたの?」
流石に額の傷にアリシアは気になって聞いた。
「額が見事に切れてしまったんだよ。これくらい。」
と、指で長さを表した。およそ5センチだ。かなりの深手である。
「あーあ。先生達にまた心配されちゃうね。」
と、アリシアが笑うとカイはアリシアの額を弾いた。
「うるさい。ほら。早く行くぞ。ミーティング。」
アリシアの手を引きカイはスタスタ歩き始めた。あまりの速さにアリシアは躓きそうになるがカイは全く気にしない。少し汗を額にかき始めた頃ラファエルのミーティング会場についた。ミーティングスタートまで後30分ある。それでもアリシアとカイは急いで荷物を置くとお茶の用意を始めた。アリシアとカイは命令されているわけではないが、お茶の用意はいつも率先してやっている。15分前には完成し、二人は扉の前で立って他の先生方を待った。しばらくすると先生方が会場に到着した。二人は扉を開き丁寧にお辞儀をした。
先生方も軽く会釈をし部屋に入り全員が入ると二人は最後に余った席に座った。二人が座るとミーティングは始まった。
「えー。ミーティングを始めます。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
みな座ってお互いに礼をした。
「今日伝えることは3つあります。1つ目は、そろそろ国防機関の病院の外来を受付始める時期です。それぞれの科で準備を進めてください。詳しいシフト表は追い追い配布いたします。2つ目は、ミカエルからの情報です。新たに我々の国に進行をしてこようとしている国があるようです。戦闘は近いでしょう。各々がその事を頭に入れておいてください。」
と、そこまで言うと突然話を辞めた。その瞬間、部屋が真っ暗になった。
「えっ!?なに!?」
アリシアが驚きに辺りを見渡していると突然アリシアとカイの部分だけ明るくなった。それがスポットライトだと気づいたのはその後すぐだった。
「3つ目は、アリシア・ハイケイト、カイ・セイランは本日聖騎士学院へ入学しました。」
その瞬間、クラッカーがパパンッと鳴り響き部屋が明るくなった。そして、拍手が上がった。
「特に、アリシアに関してはあの名門校で成績トップでの入学を果たしました。」
すると先生方がおぉ。と声をもらした。アリシアは照れたように微笑んだ。
「それと、その、額に包帯を巻いているカイは2位だそうだ。」
するとまた会場内がざわついた。
「ここには名門の2トップが揃ってるってことかぁ。」
どこからか声が上がり会場内はさらなる盛り上がりを見せた。二人は目を合わせお互いに少し笑った。
「じゃあ、二人から何か一言ずついってもらいましょう。」
そう言われ二人は壇上に挙げられた。すると、突如カイとアリシアが剣を抜いた。そして、剣を持ち上げると。
「我ら、剣に誓い心に刻む。善人に救いを悪人に裁きを。」
と大声で言った。それだけで、先生方は納得し拍手を送った。それから30分程ミーティングと言われる祝賀会は続いた。その後入院患者の回診へ向かった。
「失礼します。ハイケイトです。傷口の調子はどうでしょう。」
アリシアが部屋に入ると中の患者の戦士が元気良く答えた。
「おうっ!先生のお陰だよ。おれはピンピンしてる!いつになったら復帰できるんだ?」
アリシアは笑いながらカルテを開いた。傷も良くなっており精神も安定していると言う結果がでた。
「点滴が残り3本です。明日のお昼には終わるでしょう。ですので、明後日の昼に退院にしましょう。」
すると戦士は嬉しそうに笑った。
「若いのにありがとうなっ!俺も頑張るわ!」
アリシアは微笑み戦士の部屋を後にした。その後、アリシアは回診を終えカイを待っていた。その時、頭の中に響く声が聞こえてきた。
「お前の所為だ。何てことをしてくれたんだ。」
その声はアリシアの知らないような知っているような声だった。頭に響く声はなおもアリシアを否定し続けた。酷い頭痛がアリシアをその後襲った。椅子から体がずり落ちて行くのが分かった。目の前が霞み意識が飛びそうになったとき、悲鳴のような声が聞こえアリシアは体が抱えられるのが分かった。
「アリシアっ!しっかりしろ!」
悲鳴はちかくにいた看護師があげたものだったと分かったのはその後だった。
「誰でもいい。もう一人先生を呼んできてくれ!あと担架も頼む!」
カイが声を上げると周りの看護師が忙しそうに動き始めた。その間もアリシアの意識は消えそうになっていた。
「意識だけは保て!アリシア。」
わずかに頷きアリシアは耐えた。しばらくすると何人かの先生と担架がやってきた。
「どうしたんだ!」
やってきた医師が聞くとカイは振り向き答えた。
「私と待ち合わせていて私が着たら頭と心臓を抑えて椅子から崩れ落ちていました。理由はわかりません。」
カイは立ち上がりアリシアを担架に乗せた。
「とにかく、原因究明を!」
カイが言うと先輩医師がアリシアの服の下に聴診器を持った手を入れ聴診をした。
「これはまずいな。激しい不整脈だ。何度も飛んでいる。処置室赤の二番に運んでください。」
看護師に指示をだしアリシアを運ばせた。
「皆さん、行きましょう。あ、カイ君は外で待っていてくれ。」
「え。・・・何故ですか。」
カイが動揺したように目を震わせた。
「君は親しくしている人に自分の哀れな姿が見られたいかい?」
それでようやく納得したカイは首を振り身を引いた。
「分かりました。お願いします。」
そして、先生方は処置室赤の2番へ向かっていった。