表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏生詩集2

苦い肉

作者: 夏生

遠足の日の朝

朝日射した台所に

父のまあるい背中が

あった


いつもならパンと

バターのにおいが

焼き肉のにおい

台所から居間まで

漂い、朝という

気がしなくて


父のまあるい背中は

黙々と動いて

肉が焼ける音が

はではでしく

聞こえた


食卓には三人

兄はべそをかきながら

焦げた肉を頬ばり

私は父の苦い顔を見ながら

苦い肉を食んだ


台所の片隅に

かた結びのお弁当箱

持てば父の重いに

よろけた


母のやわらかさを

思うと鼻から思いが

噴出してしまいそうで

私は鼻を押さえながら

学校へ向かった


昼に開いた弁当の中身は

ごけた肉と四角いチーズ

母が作ったんじゃないと

私は必死に叫んだ


やさしいお父さんだね


友だちは妙にやさしい目で

私を見た


あのころ

母はどこへいっていたのか

今でも知らない私


兄は父から逃げるように

遠くへ行ってしまった


思い出すのは

朝日射した台所に立つ父の

まあるい背中と

苦い肉の味だけ



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ