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無能力者の悪魔王  作者: 暗黒物質
異世界到着編
9/9

ギルド入団

 エクスカリバーはくるくると回転しながら、グサッと濡れた地面に突き刺さった。

 負けた。

 常識的に考えれば当然だ。

 俺は初心者。それと違って栗、いやアーサーは見るからに使い手だ。打ち合ってみれば大体分かる。

「ふ、フハハハハ…… やるではないか。だが俺の秘めた力を使えば貴様如きは……」

「秘めた力だ? じゃあ見せてみろよ。もう一回やってやるからよ」

 俺は再びエクスカリバーを握り、アーサーに向かって斬りかかる。

 無謀なのは分かっている。

 しかし、俺は悔しかった。

 奴が本気で戦っていなかったのが悔しかった。

 いくら俺が初心者だからって、手を抜かれていた自分自身が憎かった。

 奴が本気を出してれば、俺は瞬殺されてただろう。

「うおおおおぉっ!!」

 俺は咆哮した。

 体中から声を振り絞った。

 アーサーの剣目掛けて、エクスカリバーを斬りあげた。

 だが、次の瞬間、俺は体ごと吹き飛ばされた。


 俺はしばらくの間、降り止まない豪雨の中で茫然自失としていた。

 そんな俺を心配に思ったのか、ニコラとクレアが傘を差しながら俺のところにやって来る。

「アーサー君から話は聞いたよ。ルシファー君才能あるって言ってた」

「……」

 俺は何も答えなかった。

「悔しいのは分かるよ。でもこんなところにいたら風邪引くよ? 中に入ろ? ね?」

「……」

 その場に石のように固まっている俺に溜息をつきながら、クレアは風を操り雨雲を移動させる。

 すると、嘘のように雨が止んだ。

「あーあ、私雨好きなのに貴方のせいで止ませちゃったわ。それと服もそんなに汚してくれて…… 洗うのが大変じゃない」

「……悪い」

 やっと聞こえるくらいの声で俺は呟いた。

「……けど、これを見ているだけで、貴方が一生懸命戦ったってことくらいは分かる。不覚にも、少し貴方のことを男らしいと思ってしまったわ」

「無表情で言われても説得力がないんだが」

 そう俺がツッコむと、彼女はわずかに笑みを浮かべた。

「これでどうかしら?」

「やり直しを求めるとは想定外だ」

 そのやり取りに、ニコラが笑みを浮かべる。

「二人ともお似合いだね」

「「それは無い」」

 同時に呟き、俺とクレアは互いに顔を合わせる。

「今のははもってないから」

「フッ、悪魔であるこの俺が貴様如きと言葉が重なるとは不本意極まりない!」

「じゃあ私は?」

 横槍を入れるようにニコラが俺に尋ねた。

「貴様は俺の天使だからむしろはもるべきだ。これからは俺と言葉を重ねる練習を使しようではないか!」

「それは面白そうだね」

 ニコラは俺に微笑みながら言った。

「うん。良かった。ルシファー君が元気になってくれて」







 その後、俺はこのギルドに入ることにした。

 なぜかって? あの栗に俺の恐ろしさを知らしめる。そして天使ニコラと悪魔と天使のハーフの子を産むためだ。

 入団試験に何とか合格し、俺はこのギルドの一員となった。

 

 


 5ヵ月後……


 俺の剣の腕は以前よりも遥かに上達した。

 ギルドの仲間に剣を教えてもらい、なかなかのものだと筋を認められた。

 そして現在、クエストボードの前にて、俺は一人で依頼を確認していた。

「クエスト内容、ここにある王国の姫の護衛か…… フッ、悪魔王であるこの俺なら容易いことだ。フハハハハ!」

 俺が無意味に高笑いを始めると、つんつんと肩をつつかれる。

「ルシファー君? どうしたの高笑いなんかして?」

「放っておきなさいニコラ。頭を悪魔にやられているのよ」

 ニコラとクレア、彼女達とはよくクエストに同行して貰うことが多い。いわゆるパーティとでも言えばいいだろうか。

 そして、奴もだ。

「ニコラァァァァァァァァァァァァァァァ! なーぜこんな野郎と一緒に話しているのだーーーーーーーーーーーーっ!?」

 アーサーはごろごろと岩のように転がりながら俺達のところへやって来る。

「あ、アーサー君? ルシファー君をクエストに誘おうと思ったんだけど…… 良かったら君も来る?」

「勿論ですとも」

 ニコラの手を握るという調子に乗っている行為を平然と行いながらアーサーは首をほぼ180度回転させて俺の方をむく。

「おい、手前ニコラに最近クエストの共を誘われてるからって調子に乗るなよ!?」

「俺はニコラに認められているからだ。外野は黙っていろ」

「んだと!?」

「外野だから外野といったんだ。それとも栗がいいか?」

 喧嘩モードの俺達に呆れながら、クレアは扉を指差す。


「貴方達、行くなら早く行きましょ」


 

 

 

 

 


 

 

 

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