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無能力者の悪魔王  作者: 暗黒物質
異世界到着編
7/9

ギルド

 その後、武器屋を出た俺達は、しばらく歩いて大きくてきらびやかな金色の建物の前にたどり着いた。

「ここが貴様らのギルドか?」

「そうだよ。ここが私達のギルド、『白夜ホワイト・ウルフ』。派手だからすぐに分かるでしょ」

「フフフ、まさか金色とはな…… 日光が反射して眩しいぞ」

 金閣寺も顔負けの輝きに、俺は右腕でで両目を覆う。隅から隅まで金色というのはここの創設者の趣味だろうか? まるで足利義満だ……

「しかしいつになっても慣れないわねこの輝きは…… ほんと吹き飛ばしてやりたいわこのギルド」

「駄目だよクレア。そんなことできやしないよ。我慢して入ろ? ね?」

 右手で両目を覆いながら左手に風を生み出すクレアを、二コラはさりげなく彼女を日光の盾にしつつ落ち着かせる。策士め……

「仕方ない、私の能力で何とかしましょうか」

 クレアが溜息混じりに呟くと、突然、青空にどんどん雲が広がっていく。

 それはどんどんたまっていき、やがて日光は遮られた。

「風を操ることで雲を移動させ日光を遮るとは…… まさか貴様、SSランクの魔王クラスのモンスターか!?」

 その直後、俺の首筋がむにっとつねられる。

「モンスターとは随分言ってくれるじゃない?」

「フッ、つねるとは子供じみた真似を…… ちょっと待て! 痛い! やっぱり痛いから離せ!」

 意外につねられるとは痛いものだ。心に留めておこう。

「ルシファー君? 冗談でも今の台詞はクレア、いや女の子の前で言っちゃいけないよ? 前それ言って殺されかけてる人見たし……」

「大丈夫、ニコラ、貴様は天使だ。断じてモンスターではない」

「そういうことじゃないんだけど……」

 二コラは諦めたように呟くと、ギルドの金扉を開いた。




 外とは違い、中は金一色ではなく、西部劇の木作りの酒場という印象だった。

 そこでは多くの男女が酒を飲んだり、雑談をしたりしている。

「中はいたって普通だな……」

「でしょ? 中は普通の酒場とあんまり大差は無いんだよ」

 そう言って二コラは「はっ!」と小さな手を口に当てる。どうやら何かに気付いた様子だ。

「そうだ! 私今日お酌当番があるんだった! ごめんクレア! 服買ったら私にルシファー君が着ているご奉仕服貸してくれると嬉しいな?」

「いいわよ」

「ごめんね? 今度クレアの当番代わるから!」

 どうやら、このギルドではウエストレスをする義務があるようだ。そして、どうやら女だけらしい。

 その証拠に、あちこちにいるメイド服を着ているウエストレスは全て女だ。当たり前だけどな……

 その時、一人の栗頭の少年がガッツポーズをしながら酒場中に響き渡る歓喜の声を挙げた。


「ニコラがウエストレス…… 来た来た来たあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ! 俺の時代が来たあああああああああああああああああああああああああっ!」

 叫び終わると少年はごろごろと床を転がりながら俺達の元にやって来て、ニコラの前で騎士のように膝まづく。

「ニコラ。今のままでも君は十分天使だ。しかしご奉仕服を着ていてお酌をする君はもっと天使だ」

 俺以外にそんな台詞を言う奴がいたとはな。そして俺以上に痛い。

「アーサー君久しぶりだね」

「俺は君が来るのをずっと待っていた。三日三晩寝ずにな」

 俺はそんな栗頭を見ながらクレアに耳打ちする。

「(誰だあのムカつく栗頭)」

「(アーサーという貴方と同じニコラ大好きの栗野郎よ)」

「(何かムカつくからあの栗エクスカリバーで串焼きにしてやろうか?)」

「(お好きにどうぞ)」

 そんな俺達の会話を聞いたのか、突如栗が俺達に向かって来た。

 

「ようクレア、そして誰だこの腐れ女装野郎は?」

「貴方と同類よ」

 その言葉に、栗は眉間にしわを寄せた。

「クレアよ。お前の目は節穴か? 俺をこんな女装野郎と一緒にするな」

 栗がそう言うと、俺の頭で何かが「ぶちっ」と切れた音がした。


「おい、そこのモンブラン。まだ話してもいないのに随分と俺のことを悪く言ってくれるな?」

「俺がモンブランだと!? ははっ! 手前に言われる筋合いはねえよ女装野郎?」

「女装野郎? 俺は悪魔王ルシファーだ」

「手前のどこが悪魔だよこの現実逃避野郎」

「何だと!?」

「んだよ!?」

 俺達は互いに額を合わせながら睨みあう。

 そしてなぜか、「やれやれー」とギャラリーが盛り上がってきた。

「だ、駄目だよ二人とも喧嘩は!」

 勿論天使ニコラがこれを許すはずがなく、彼女は俺達を押しのけて間に入る。

 しかし、栗は彼女の天使の言葉を遮った。

「ニコラ、俺は前から決めてたんだ。お前に言い寄る奴は俺の敵、俺の敵は俺の敵だ」

「それはアーサー君の心を読めば分かることだけど……」

 反応に困っている様子のニコラに気付かずに、栗は俺に向かって指を指す。



「だから、俺と手前、どっちがニコラにふさわしいか勝負だ!」

 


 


 

 

 



 

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