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考え始め

僕はキツネ。 僕は北海道の札幌よりの山奥に住んでいるキツネだ。どうして僕がキツネに生まれてきたのかを今考えているのだが、それは隣のやつがどうしてキツネに生まれてきたのかを考えることと同じで、1人で考えているよりも仲間と一緒に考えた方が効果的だと気づいたところだ。


「やぁ、君はどうしてキツネなんだい?」彼も僕と同じ種類のキツネだ。キツネにちなんで彼をKと呼ぶことにしよう。


「それはどういうことなのかな? 君は僕がキツネであることをバカにしているのか?それとも僕がキツネであることの意義を問いただしてでもいるのかい?」Kは博識なキツネだ。他のキツネからも尊敬されていて僕の憧れのキツネだ。


「いやね、今僕はどうして自分がキツネなのかということについて考えているのだけれども、それは君や他のキツネに「どうして君はキツネなの?」と尋ねることに他ならないということに気付いたところなんだ。」僕は彼の意見を待つことにした。


「なるほどね。だが、それは僕にとって少々お門違いなことさ。僕は自分がキツネであることに誇りを持っているんだ。簡単にいうと「キツネな自分ってカッコいい」って思ってる。だから自分がキツネであることに疑問を持つことは自分にマッチングしてないことなんだ。他を当たってくれよ。」さらりとKは言った。


「ありがとう。君ってナルシストなんだね。」そう言って僕は立ち去った。


どうして自分がキツネなのか、このような話題はもう少し熱弁できるような間柄じゃないと相談できないと僕は感じていた。ということで次の相談相手をお父さんとお母さんにすることにした。


「お父さん、お母さん、どうしてお父さんとお母さんはキツネなの?」単刀直入に僕は聞いてみることにした。しかしタイミングが悪かったようだ。お父さんとお母さんは子作りの真っ最中であった。僕はしまったと思った。 しかしここまで来た以上引き下がるわけにもいかなかった。一方でお父さんとお母さんもしまったという顔をしていた。僕は覚悟を決めた。


「いや、お父さん、お母さん、続けてもらって構わないよ。僕はどうして自分がキツネなのかという問題について深く考えなくちゃいけないんだ。だから答えて欲しいんだ。」僕はそう宣言した。


僕の並々ならぬ決意を前に2人は恥じらいよりも動揺が大きかったのだろう。2人はしばらくの間、無口で子作りに励んでいた。スパーン・・・スパーン・・・。やがてお父さんが口を開いた。


「それは大変な問題だな・・・今考えているから少し待っていなさい。」スパーン・・・スパーン・・・バシッツ・・・ガガガガッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


静寂が訪れる。僕は何だか緊張しきっていた。やがてお父さんが口を開いた。


「ふぅ・・・。スッキリして頭が明瞭になったよ。待たせて悪かったね。」


「いいや、いいんだ。ところで、どうして僕はキツネなの? どうしてタヌキやイノシシじゃないの?」


「えっ!?」


この質問にはお父さんもかなり面食らったような様子である。お父さんは子供に子作りの現場を目撃されたものだから適当にはぐらかせてこの場を立ち去ろうと考えていた。 しかし、自分の子供からこんな哲学的質問が飛び出してきたのだから、適当に取り合うのも申し訳ない気がしてきた。 数分間熟考を重ね、お父さんは口を開いた。


「君はお父さんとお母さんが今何をしていたかわかるかい?」


「セックスだよね。僕知ってるよ。オスのペニスをメスのまんこに出し入れするんだよね。 これは一見意味のないようなことに思えるけれども続けているうちにオスのペニスから白くてドロドロしたものが飛び出てメスに入っていくんだ。」


自慢げに話す息子にお父さんとお母さんは驚くよりもむしろ呆れていた。


「・・・そうだ。ではセックスのあとに何が起こるのか分かるかい?」


「赤ちゃんが生まれるんだ。」


僕は無表情で答える。


「・・・そうだ。 じゃあここで質問しよう。 今お父さんとお母さんは君が言うとおりセックスをしていたわけだが、これから生まれる赤ちゃんは果たしてキツネだろうか? もしかしたらキツネじゃなくてオオカミかもしれない。もしもオオカミだったとしたらその赤ちゃんは僕たちの家族なのだろうか? わかるかな?」


予想外の切り返しに今度は僕が困惑していた。 確かに、これから生まれる赤ちゃんがキツネである保証なんてどこにもないではないか。


「でも・・・キツネからキツネが生まれるのは至極当然の話じゃないか。 オオカミが生まれるわけなんてないよ・・・。」


僕は自信なさげに答えた。 そんな様子を前にお父さんは少し得意げな表情をした。 お母さんは何処かへ行ってしまったようだ。 お母さんがいないことを確認し、お父さんは僕にそっと耳打ちをした。


「今度お父さんが暇なときに一緒に出かけよう。 面白いものを見せてあげるから。」


そう言い残すとお父さんは何処かへ行ってしまった。 僕は呆然とその場に立ち尽くしていた。 結局僕は何でキツネなのかを知ることはできなかった。



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