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1-4 命の洗濯

今作はフィクションです。

今作の舞台は架空のものであり、実在の人物、団体、その他固有名称で特定される全てのものとは、一切関係ありません。



「災難だったねヒデオ」

 綺麗に塗装された青のベンチに座り、太陽が爛々と輝く広大な空を仰ぎながら俺が愚痴をこぼしていると、隣に座るリュウ――現実での名を安心院龍之介あじみ りゅうのすけという彼はそう同情の声を漏らした。

 夢の世界から現実の世界へ帰還した俺たちは、高校生という身分であり今日が平日であるため、例え眠っている最中にどんな不幸があろうと登校せねばならなかった。

 現在は昼休み。梢で小鳥が歌声を奏でる中庭のベンチで小休憩と洒落こんだはいいが、俺の唇が紡ぐのは夢世界で起きた不幸の愚痴ばかりだった。

「悪いな龍之介。付き合わせて」

 俺は隣の龍之介へ視線を移す。

 インヴァギートで見た容姿と変わらぬ、男子のブレザー制服を着ていても女性に見えるという特徴的な外見の龍之介は、「別にいいってば」と首を振る。

「それより坂上ヒデオ(さかがみ ひでお)くんが確り集会に参加したほうが嬉しいんだけどな」

「前向きに検討します」

 龍之介の軽口にそう返し、俺は再び溜息を吐き空を見た。

 現実の世界は五月の二十日。春の暖かい風と陽光が俺を包み込み穏やかな気分にさせてくれる――のは良いが、それでも包みきれぬ不幸に見舞われ何とも複雑な気分である。

 あの後、ミカとかいう人型獏疑惑少女は必死にウルフと口論を交えていたが、俺が心中で少なからず応援する甲斐もなく彼女は僅か五分でやりくるめられ納得してしまった。まあ俺は既に無駄だと悟り戦いもしなかったのだが。

 というわけで、今後の俺の活動にはミカというパートナーが付き纏う。 

 ウルフ氏曰く。

『もしホントに人型獏なら常に最強の戦士を傍に置いておきたいし、違うなら皆の印象を操作するために同胞である獏を多く殺すことで彼女は仲間だと言い張れますからねえ。というわけで二人で頑張ってください』

 ともっともらしく聞こえる理由のためらしい。

 要するにミカの面倒は全て俺に放り投げたということなのだが、確かに獏関連の任務であるため俺も強くは言えなかった。というか言っても他の戯言でやりくるまれるのがオチだ。

「あの団長様、一番権力を与えちゃいけないタイプの人間だろ……」

「確かにやり手だよねウルフさん」

 本職は詐欺師に間違いない。それともあいつは大学で嘘をつく方法でも専攻しているんだろう。

「確かあいつ、こっちじゃ大学生やってるんだよな?」

「団長をあいつ呼ばわりって……まあ、うん。確かそう言ってた」

 インヴァギートに住む者たちには当然、それぞれ現実の姿がある。

『無剣の剣師』こと俺はしがない高校一年生。リュウだって同じ高校の一年生だ。ウルフこと大神宗谷おおかみ そうやは大学生らしい。

 大神宗谷のように偽名を名乗る者もいれば、俺たちのように下の名前をそのまま名乗ったり端折ったりして名乗る者もいる。うっかりフルネームを教えてしまう者も少なくない。もっと言ってしまえば現実とインヴァギートで性格が豹変する者もいた。

 誰もが何かしら、インヴァギートとは別の顔をもっているのだ。

 だがこの現実でインヴァギートのことを知っている者はごく僅かしかいない。

 なぜならインヴァギートでの記憶は一部の者を除いて引き継げないからだ。

 夢の内容を全て覚えている人は少ない。インヴァギートの記憶は夢でそのような光景を見た――程度にしか引き継げないのが判明している。

 だから世間はインヴァギートという世界のことを知らないし、公表もされていない。

 例えインヴァギートで大切な人を失ったとしても、一度目覚めればその記憶は既に夢の一部として淘汰されるのだ。

 それがあの残酷な世界のより残酷なところ。

 二つの世界の記憶を共存させる場所は唯一インヴァギートのみ。インヴァギートでは現実の記憶も引き継げるのだ。しかしそれがより残酷で、大切な人を失ったことを忘れるのが嫌で目覚めることを拒絶する者もいた。

 残酷な世界なのに。ずっと居たいと思わせる。

 とても残酷だ。

 そんな残酷な世界のルールに抗う人間が、俺たち明晰夢者ルシッダー

 インヴァギートでの記憶を現実に引き継ぐことができる者たちのことだ。

 現在インヴァギートの住人は一〇万人に及ぶ。そのなかで明晰夢者は全体の一〇〇〇分の一、一〇〇人程度。

 こうして俺が龍之介相手にインヴァギートでの不幸を愚痴にするということは、とても異例なこと――あるいは幸福なこと――なのだ。身近に同じ明晰夢者がいたということだけで奇跡に近い。

 もし俺が明晰夢者でなければ、俺はあの世界で感じた怒りも忘れただのうのうと生き、インヴァギートに戻る度にそんな自分を嫌悪することになっていただろう。

 なかには現実でもインヴァギートについて考えなければならない、と明晰夢者であることを不幸に思う者もいるが、俺はそうは思わない。

 この感情を、一時にしろ消し去ることに強い嫌悪感を覚える。

 獏。あの化物を一匹残らず殺し尽くしたい。

 その衝動を、その根源を、忘れることなんて――

「どうしたのヒデオ?」

 物思いに耽っていた俺を、龍之介の声が呼び戻した。

「あ、ああ……少し考え事をな」  

「考え事? ああミカさんのことね。僕にはわからないなあ、でも人間だったとしたら辛いだろうね」

 龍之介は誤解していたがあえて俺は訂正せず、

「獏でもないのに疑われるのは確かに辛いな。俺だったら疑惑をかけた奴を半殺しにする」

 龍之介は「違う違う」と苦笑する。

「確かにそれもあるけど、僕が言ったのはあの世界、インヴァギートに閉じ込められることだよ」

 俺は龍之介の言わんするところに気付いた。

 ミカという少女は消えないからこそ、現実に戻る様子がないからこそ獏と疑われている。それはつまり、現実に戻れずインヴァギートに閉じ込められているということだ。

 俺とそう年の頃も変わらない少女が、残酷な世界で生きるために戦い続ける。平穏とは縁遠い天敵が闊歩する世界で。

 もしそうならば俺は出来る限り彼女の負担を軽減してやるべきだ。優しい言葉をかけ、ともに戦い、彼女が一刻でも早く現実の世界に戻れるよう力を貸す。

 だがもし、彼女が獏だというならば。

 俺はきっと――

「そろそろ教室に戻るか」

 その思考に決着をつけ、俺はベンチから立ち上がり背筋を伸ばす。

「うん、そうだね。ところで――」

 昼休み終了五分前を告げるチャイムを挟み、龍之介は傍らに携えたお弁当を持って苦笑しながら言ってきた。

「お昼ご飯をあと五分で食べる自信ある?」

 愚痴はほどほどにしよう。俺は心からそう思った。



 学生の仕事である勉強を終えて、俺が一人暮らしライフを謳歌する小汚い二階建てアパートに帰宅した頃には陽はずいぶんと傾いていた。

 六畳一間の安アパートと言えばみすぼらしいイメージが付き纏うが、住んでみれば案外慣れてくるものだ。六畳一間でもわりと充分で、ユニットバスも付いているし、何より家賃が安くて貧乏学生には大助かりである。

 俺は素早く入浴した後、最寄のスーパーで半額弁当を入手。宿題という厄介なものをやっつけ、龍之介としばらく電話した後には既に時刻は一〇時二〇分を示していた。

「そろそろ行くか……」

 いつからか俺は眠るという表現を使わなくなっていた。

 俺にとって眠るという行為は既に休憩の意味ではなくなっており、現実の世界から離れあの残酷な世界を向かう――いわば電車に乗るようなものだ。

 ま、睡魔に抗い続けるなんてことはできないから、いつかは必ず乗ることになる強引な電車だけどな。

 俺は自嘲気味にそう思いながらベッドの上で仰向けに寝る。隣接する部屋から微かな笑い声が聞こえたが、それも徐々に遠のき、俺は――



 目覚めると俺は黒いロングコートを纏って、半壊したアパートの残骸に佇んでいた。

 視界にはとても現実をベースとしているとは思えぬ荒涼とした殺風景な光景が広がり、現実と同じ姿の建物は一つも見当たらない。空は低く陰鬱となりどことなく薄暗く、荒んだ風が頬を撫でた。

「インヴァギート、だな」

 いつもと変わらぬその風景を目にし、俺はポツリと世界の名を漏らした。

 この世界では現実にあるモノが廃墟同然の姿に成り果てるか、または瓦礫となって原型すらも留めていないかのどちらかだ。

 アパートは原型を留めてはいるも、既に二階はごっそり消失しており俺の部屋は消え去っていた。残っていたところで私物は一切排除されていただろうが。

 北のほうへ視線を向ける。城壁に囲われた都市が走れば一分もかからない距離に屹立しており、俺は都市を目指し走り始めた。

 北門から夢都市へと入り大通りを抜けて路地へと歩をヒデオめてゆき、真っ先に俺が小休憩に使う宿屋――を兼ねている酒場へと立ち寄る。

「らっしゃい!」

 店長――もといマスターは本気でマスターと呼ばれるつもりがあるのか、八百屋を彷彿とさせる快濶な挨拶を飛ばしてきた。

「なんだあんたか。今日はちょっと来るのは早いね。開店したと同時なんて……まさかあたしの隠れファン?」

「隠れ以前に隠れてないファンもいないだろ」

「冗談の通じない奴だねえ……。とくにあんた宛の手紙は届いてないよ」

 インヴァギートでは携帯なる便利科学があるはずもなく、それを新たに作る技術も部品もないため何かあれば手紙でのやり取りが基本である。しかし手紙を送るにしても先方の住処が知らなければ送れない、そんなわけで夢想者たちは概して定住先が存在するのだ。

 俺はこの酒場の二階。無理に作った感じビンビンな六畳一間もない宿を借りている。他にも部屋はあるが物置と化しており、宿屋としての客は完全に俺一人の状態となっていた。

「そうか。じゃ」

 手紙が届いているか否かを確認するために寄っただけなので、俺はとくにそれ以上の用事もなく身を翻したが、

「ところでヒデオ。あんた、可愛い女の子をゲットしたんだって?」

「どこでそんな誤情報を……」

「商人を舐めちゃいけないねえ。これはあたしの親切心だよ、受け取っておきな」

 カウンターにすいっと置かれた小瓶には、緑色の明らかに身体へ悪影響を及ぼしそうな液体が見えた。俺は怪訝な顔を浮かべつつも、それを受け取る。

「なんだこれ。新しい回復薬……か?」

 ここの商品は基本的に回復薬オンリーだ。この世界では怪我をするということはなく、RPGの如くHP的なものが設定してありそれを全損すると死亡。という何ともわかりやすいシステムが構築されているのだ。

 当然回復薬とはそのHP的なものを回復する役割があり、この酒場以外にも回復薬を売って生業としている店は多くある。

「それは最近入荷した近畿地方にのみ存在するといわれる野苺っぽい何か、確か夢苺とか何とかいう名前のやつを調合して作った……ラブホ的雰囲気を作れる発光薬ッッッ!!」

「努力のベクトルが完全におかしい!」

「一滴でもどこかに垂らすと、たちまちその部分からピンク色の仄かな光が生まれる優れものさ。ただし全部垂らすなよ。良い雰囲気になったところをピンク色の閃光手榴弾で台無しにするようなもんだからね」

「要するに配分間違えた試作品を寄越したってことかよ……」

 と文句は言いつつも貰えるモノは貰っとく性分である俺は、一応(本当に使い道が思い浮かばない)腰のポーチに収めておく。

「もしこれで上手く行ったら『これのおかげで彼女ができましたー!』って宣伝してよね」

 そんな注文を無視して俺はそそくさと店を出た。確かに可愛い女の子とは出会ったが、その前に『獏疑惑の』と付くので俺としては全く嬉しくない。

「さて、その『可愛い女の子』に会いにいかなきゃな……」

 俺は自嘲気味な笑みを浮かべ、入り組んだ路地を歩いてゆく。

 昨日、俺はウルフの陰謀(?)によりミカとコンビを組まされ、今後ミカと俺はともに活動するということになりお互いの根城を教えてある。

 俺はインヴァギートにきたら真っ先にミカの根城へ訪れると約束し、まだ色々と言いたいことがありそうなミカと別れたのだ。

 確かミカの泊まる宿はこっちだったはずだが……。

 と、しばらく走り書きの地図が描かれたメモを見ながら路地を歩いていると、俺は一軒の宿屋を見つけた。

「ここ、だよな」

 掲げられた看板とメモを見比べながら、現実のアパートより綺麗ってどういうことだおい……。とその瀟洒な外観にちょっと驚きつつ扉を開けお邪魔した。

「いらっしゃいませ」

 入るや否やカウンターに佇む女性が俺のほうを向いて慇懃に一礼し、なぜか眉をひそめ困惑顔を浮かべた。

「お客様。こちらは女性専用の宿となっていますが」

 言われ俺は一階を見渡す。桜色を基調としたインヴァギートでは珍しい明るめの雰囲気で、小奇麗なソファが洒落たテーブルを挟み対になって鎮座している。……確かに女性向けのレイアウトだ。

 へえ……そんなのあったのか。と多少感嘆しながら、俺はカウンターに歩み寄り、

「ここに泊まっているミカって奴の知り合いだ。本人のサインもある」

 俺はメモと一緒に渡された俺の入室を許可するという旨が記されたサイン付きの種類を見せた。それを見てなおも二〇代前後の女性は渋ったが、

「義勇夢解析兵団のかたですか?」

 俺の服装――義勇夢解析兵団の制服である特徴的なデザインのロングコートを見詰め、女性は問い掛けてきた。

「そうだけど」

「……以前お世話になりました。何か理由があるのでしょう、本来ならもっと手続きを踏んでもらうのですが、今回に限り省略しましょう……ミカ様の部屋は一〇三号室になります」

「どうも」

 礼を言って俺は近くにある階段を上る。この宿屋は吹き抜けになっており、二階から一階が見下ろせるようになっていた。不意に俺が木の柵から顔を覗かせ一階を見やると、カウンターに佇む警戒心バリバリの視線をこちらに送っていたお姉さんが即座に目を逸らした。

「事前にこういう場所だって言ってくれよな……」

 この場にいないミカにぼやきつつ、俺は言われた通りの一〇三号室へと歩をヒデオめる。あの酒場の二階と違い、木板を踏む度にギシギシという軋みを上げることはなく、思わず俺も住みたくなるような快適さが廊下の時点であった。

「ここか」

 ドアに掲げられた番号札を見て、俺はノックをする。

 しかし待てど待てども返事はない。仕方なく俺は、

「【開錠(unlock 0070128539)】」

 事前に教えられていた開錠魔術を唱え部屋の鍵を勝手に開けた。

 この世界には魔術という不思議な力が存在する。魔術は詠唱によってある種の力を発することができ、戦い以外の私生活においても多用されている。そんなわけで俺は魔術の力を借り女性の部屋の鍵を開錠したのだ。

 誤解なきよう言っておくが、ミカが「あたしがいないときは部屋に入ってて」と言ってきたのでそうさせてもらっただけに過ぎない。おそらくこの男子禁制という風の宿屋の廊下に、ぽつねんと男が部屋の前で立っているほうが問題なのだろう。     

「お邪魔します」

 俺は部屋に入って真っ先に目を瞠った。

「風呂がある……だ、と……!?」

 玄関に入って歩幅四歩程度ヒデオんだそのすぐ脇。一段高く備えられた場所にはマットが敷かれ、簡易的脱衣所らしきものが見えた。

 現実ならば決して立派な浴場ではないだろう。俺のアパートにだって似通ったものがある。しかし、だがしかしこのインヴァギートは身体が汚れても自然に綺麗になってゆくというその特性上、入浴できる場所は限りがある。

 加えてインヴァギートでは「えっ? お前男のくせに風呂に入りたいとか言ってんの? そんな無駄なことしてる暇があるんなら汗水垂らして己を鍛えろよ」的な風潮があり、例え大浴場があったとしてもそこはほぼ女性専用。

 ゆえに俺はかつて一度しかインヴァギートで風呂に入ったことはない。しかしその一回では俺はすっかり『夢の中で風呂に入る』という行為の虜となり、以降期を図っては幾度か風呂に入ろうと試みるも尽く失敗に終わり、俺はあの一度の魅力を感じて以来インヴァギートで風呂へ入った覚えはない。

「くっ……!」

 俺は思わず歯噛みした。

 入りたい、風呂に入りたい!

 しかしここは他人の、しかも女性の部屋だ。本人不在中に入室するというだけでも紳士に反する行動なのに、勝手に浴室を借りるなど男としていかがなものか。

 だがそういった男女の枠組みに縛られ、何度入浴することを断念したか。そのような紳士だからという理念に囚われるこそ一種の男女差別であり、俺は何か間違った思想で己の首を絞めているのではないだろうか。

 それにここは他人の部屋ではなく今後活動をともにするパートナーの部屋。ならば浴室を借りることも一概に『悪』とは言えぬのではないだろうか。そうだ、俺は決して男女差別をせず彼女をパートナーとして認め――――入浴するッ!!  

 玄関でブーツを脱ぎ踵を揃えながら置いた俺は、前方の廊下――その先にある小奇麗なリビングを無視し、左回りをして脱衣所に一歩足を踏み入れる。

 高揚感が俺の中から溢れ出す。暖かいお湯の溜まった浴槽に身を入れるあの瞬間、全身の筋肉が弛緩し思わず「ふい~」と声を出してしまうあの心地良さ。

 インヴァギートは常に肌寒い感覚があり、唯一解放されるのがあの浴槽の中に身を入れたそのときのみ。俺はその感覚こそが魅力だと感じ虜になっているのだ。

 手早く黒いロングコートを脱ぎ捨て、中に着た黒のTシャツや手を包むグローブ、フィットするズボンなども脱ぎ、パンツ一丁の格好となりようやくその煩わしい最後の一枚も脱ぎかけた瞬間、

「…………は?」

 と。

 脱衣所と浴室を隔てるガラス張りのドアが開かれ、一糸纏わぬ姿のミカが現れた。

 水の滴る半透明な髪は硝子のようで一種の芸術性すら感じ思わず見惚れてしまう。しかし衣服を着ているさいも思ったが年齢に反しその乳房の膨らみは非常に残念で、天は二物を与えずという言葉が思考を過ぎった。

 俺は茫然と立ち尽くすミカの裸体を見詰めながら、己の最後の障壁であるパンツを取り払い、手で隠すとかそういう行為はしないで真っ直ぐミカへ向き直る。

「これでお相子だな」

 直後、ミカは俺の下半身を直視しつつ顔を真っ赤にし、

「なわけあるかえっちぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!」

 がっこーん! というわりと洒落にならない打撃音とともに、素晴らしきアッパーが全裸の俺を宙に浮かせた。


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