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飛災横禍:3節 襲撃

--- 別荘内 監視センター


「隊長!! 表側から不審な2人を発見。 コンテナランドセルのコンバットスーツと一人はジャガーノートで武装しています。 得物はカービン! 」


「ほうほう。いいね。ようやくか……」

「どうかされましたか? 」


「いや。しかし、あの警戒網を? 警報器は? 」

「正常です。検知されずにここまで入り込んだと見るべきかと」


「……」

それだけの強者が、2人だけで正面突破……


「おい、建物裏側の予備カメラを確認しろ!! 」


「了解です。カメラ切り替えます」


指令室のモニターでの判断では、10体以上のコンバットスーツ部隊が映る。

この時点では、トークンか人かの判断は付かない。


「隊長。直ぐに警報を!! 」

「待て! ……慌てるな。 正面は囮だ。やつらも正面に注意が向くのを期待している」


「……」


「わからないのか? つまり、建物裏側は手薄と見ているわけだ。正面に適当に威嚇して、別荘裏側へ静かに部隊を展開しろ。 気づかれないようにだ。 正面に人が多くいるように見せれば、それでいい」


「おお。 流石ですね。 安心して急襲してきた敵部隊を大人数で殲滅するのですね!! 」


「そうだ。警報を上げず。隠密で対応しろ!! 」

「了解です」


隊員が部屋を出て準備に取り掛かる。




--- 建物正面側


『ダイゴ。敵に動きがあります。想定通り正面側に3名、建物裏側に40名ほどの配置になっています』


「これはまた極端だな」

「良いんじゃないか? 中途半端な経験者がやりそうな布陣だ。指揮官の力量も読めた」


『内部カメラを転送します』

バイザーメットに内部映像が映る。


「敵の位置は、なるほど、狙いにくいな。 得物は一般的なアサルトライフルか」

「スモークで行くか? 」


「それがベストだな。 作戦通り行く行くぞ! 」


その合図とともに建物の正面鉄扉周辺に複数のスモークグレネードが投げ込まれる。

暗闇とスモークで視界が完全に遮られる。


上から銃手が銃撃しているようだが、当たる気配がない。


≪全くデカい鉄扉だな!! ≫

C4(プラスチック爆薬)をスモークに紛れて張り付けていく。


≪事前に知っておいてよかったぜ!! ≫

彼らの声はマイクを通してであり、外には聞こえていない。


C4(プラスチック爆薬)をありったけくれてやれ。 中にはクズしかいねーからな。 巻き込んでもらって結構だ≫


一通り張り付けるとその場から撤退する。


銃手は、スモークにから出てきたダイゴ達に銃撃を浴びせるが、森の中に立地しているため、逃げられてしまう。


「さてと、花火だ!! 」

爆音とともに鉄扉を破壊する。


エクスプロシブ・ブリーチング。 爆薬により強制的に入口をこじ開ける。


「爆薬多くねーか? まったく」

「良いんだよ! 幕悪は派手にいかねーとな! セレン(シップマスター)。内部の放送設備に繋げ!! 」


『了解です……どうぞ』


「よう! 女を殴って気持ちよくなっている下郎ども。 バレッツ・バルガス(弾幕組)が、遊びにきたぜ! 火力は十分、人も十分、一夜限りのヤンチャを心行くまで楽しもうじゃねーか! 宴の始まりだ!! 」


ダイゴの演説が館内放送で流れる。

「出番だ! 」

「あいよ」


制圧ミサイルが発射される。一度上昇し、巡行する高価なタイプになる。

セレンの誘導により別荘の屋根を超え裏側で炸裂する。


高度が低いことと対人兵器のため、アイギスシステムも検知出来ていない。

「スコアは? 」


『20名の行動不能といったところでしょう。トークン隊は? 』

「前進させろ! 伏兵の20体も出撃だ! 」


『了解』


「俺らも行くぞ!! お姫様の救出だ」

「了解だ」

ダイゴ達の部隊が行動を起こす。




--- 正面玄関からの突入。


隠密行動もあったものではない。


弾幕の嵐で入口を拡張し、屋敷に侵入する。

デカいエントランスであるが、展開速度はこちらの方が上のため、攻撃がない。

そもそも兵士が配置できていない。裏側に廻ってしまっているのだろう。


そのため、屋敷への侵入は要因であった。


ダイゴが叫ぶ

セレン(シップマスター)! 敵の配置は!! 」


『爆発により総動員になっています。屋敷裏側への補充人員確認。30名に回復。

トークン隊と交戦中』


「屋敷内は! 」

「20名の展開を確認。武器はアサルトライフル。地下の簡易指令室を中心に防衛線を張るつもりです」


「遊撃隊は! 」

『10名を確認。 こちらに向かってきています』


「了解だ」


副社長は落ち着きながら、セレン(シップマスター)に指示を出す。

セレン(シップマスター)。 トリュフィナの場所をチェックしろ」


バイザーメットに行き先マーカーと距離が表示される

「ダイゴ。 お前は迎えに行ってやれ」

「……すまない」


「ただし、トークンの半数こっちに廻してもらうぞ。ウェヌス(金星)に家族を残しているんだ。 俺はこんなところで死ぬ気はないからな」


ダイゴは納得したようにセレンに命令を飛ばす

セレン(シップマスター)。 こいつにトークン隊半数の命令権をやってくれ」


『了解しました。 命令権の譲渡申請。 確認しました』

言葉を継ぐようにセレンから状況報告が上がってくる。


『敵12名。 敵の位置情報をマーキングします。 正面角から来ます――接敵!』


セレンの言葉と同時に弾幕がダイゴ達を襲う。 バイザーメット内の情報がさらに増える。 そしてそれらが、ほぼバイザーメットの表示通りなっている。


「こいつはスゲーな! いけ!! 救ってやれ。王子様」


「助かる。 感謝する」

ダイゴはそこで副社長と別れることになる。


副社長が叫ぶ。

「ここから先は、通行止めだ」


正面にスモーク弾を投擲し、斜線を切りながら、ミニガンの弾幕が突き進んで来る敵に浴びせられる。


助っ人のトークン部隊の到着までは。少し時間が掛かかりそうだ。



ダイゴはバイザーメットのマーカーを頼りに進んでいく。

それにしても何気に広い、屋敷になる。


持ち主はエリスの執政官になっているが、公邸ではないとすると私邸になる。

随分と色々なことをしているのだろう。


所どころあるセンサーもセレンのおかげで、隔壁も警報もならず進んでいる。


「トリュフィナは、地下か……」

階段を降り、廊下を進んでいく。


セレンが屋敷システムを掌握しているため、突然の接敵の危険性もない。

『ダイゴ。急いだほうがよろしいです。トリュフィナの監禁部屋に暴漢が入ってきまいた』


「了解だ」




--- トリュフィナの監禁部屋


「あなた。隊長でしょう!! 交戦が始まっているのに何し来たの!! 」


「まぁあいつらには、迎撃方法を教えた。今は、交戦の真っ最中。当分足止めだ。 こちらの勝利はゆるぎない。 この屋敷はトラップ三昧だからな」


男はトリュフィナに近寄っていく

「あんたの体を見て興奮しないのは男じゃないだろう? 」


拘束されていないとは言え、周囲には武器になるようなものはない。彼女は部屋の隅に追い詰められていく。


「聞けばどこかの貴族様との噂もあるじゃねーか。いいね」

男が彼女に手を伸ばした瞬間、扉が爆破される。


煙の中からモスグリーンのコンバットスーツが現れる。


「よう! 下種野郎。 お楽しみ前に失礼するぜ」

男が入口の方を見る。


「……バレッツバルガスねー。 久しく聞いていない名前だったよ」

男が発言する。


「嬉しいねー。ファンがいるなんて、女性ならもっと良かったところだがね」


「宙域海賊団風情が、いまは“白翼の騎士団”で義賊気取りか? 」

「正確には、下請け会社ってところさ」


「相変わらずの減らず口だな。俺を覚えているか? 」


「知らん。男の名前や顔を憶えるのは苦手でね。 ところで、質問があるんだが、いいかな? 」


「いいぜ」


「女を襲うにしても、コンバットスーツ装備で何する気だ? 」


「端的に言えば、あんたを誘い出すためだ」

「……」


「最初の爆破後の名乗りで敵の能力が想像がついたよ」

「……」


「お前達が、あっさりと正門までセキュリティに検知されることなく到着したのが奇妙に感じてな。 ここの屋外設備の監修は俺がやっているからな、あれを検知されることなく正門に来るのは不可能だ」


「……」


「そこから考えられるのは、2つ。 施設の防衛機構はマヒしているか、乗っ取られている可能性が高い。 マヒは考えられない。 故に乗っ取られていると読んだわけだ」


「……」


「システムが乗っ取られているのであれば、俺がここに来て、人質に危害を加えるそぶりを見せれば、バレッツバルガスの片割れが、真っすぐに向かってくると推測した訳だ。 あんたが来るかは、博打だったんだが……」


「……」


「正解だったな」

男は、そう言いながらバイザーメットを装備する。


「少しは血の巡りがいいようだな 」

ダイゴが、感心する。


「俺は、女は好きだが、戦いはもっと好きなタイプでな。特に一度、土を付けられたお前さんに再戦できるとなれば、そっちの方が興奮するんでね」


「……」

「気持ち悪! 」


相手のコンバットスーツは最新版であり、アサルトライフルを装備している。


「女は、勝利した方が頂く」

「乗った」


男たちは、互いに交えた銃口を上に向けながら部屋を出る。


                 *


広い邸宅だけあって、パーティールームもある。


2人の男が互いに銃口を向けながら伽藍洞(がらんどう)としたパーティールームに入ってくる。

テーブルも椅子もない、広い空間になる。両者とも神経が張り詰めている。


2つの銃口がクロスしている。

「いいね。これで小細工なしで、お前を倒せる」

「どんな手でも勝てばいいと思うが? スポーツじゃないんだぜ」


「抜かせ!! ゴロツキ」

その言葉で男は発砲をしてきたが、ダイゴはカービン銃で左側に敵アサルトライフルを往なし、カービンの台座でメット横からダメージを与える。


素の状態であれば勝負ありになるほどの衝撃になるが、コンバットスーツを着ているためダメージは小さい。


再び銃口をこちらに向けるため、アサルトライフルを持ち上げ構え直すが、その勢いを利用して、相手のアサルトライフル銃口を上に向けられる。


がら空きになった胴体にダイゴが、ハンドガンで銃弾を打ち込む。

9mm弾を至近距離で撃ったが、ダメージが少ない。


瞬間、相手からの左からのケリにより右側に体重が崩れ、アサルトライフルの銃口がこちらを向く。即座に回避するが、相手も経験者。当ててくる。


体制を立て直し、銃撃をしながら距離をとる。


コンバットスーツを着ているため被弾しても直ぐに行動不能にならないが、銃弾があたればスーツにはダメージが入る。


「さすがだな。バレッツ。流石にさっきのは、ヤバかった」

相手のスーツには、ひびが入っている。


男は言葉を継いでいく。

「しかし、お前さんの方が、ダメージが大きいようだな」


スーツの肩部パーツに亀裂が入っている。

ダイゴのバイザーメットにもコンバットスーツのダメージ状況が映る。


「随分と固いスーツだな」


「まぁな。お前さんに負けてからコンバットスーツの強化を実施したんだ。備えあればってやつだ。防御に金を惜しまないさ」


ダイゴは考える。奴のスーツは、特注仕様か。ヤバいな。

≪セレン。聞こえるか? ≫

≪なんでしょうか? ≫


≪手伝え≫

≪一騎打ちとは、正々堂々と行うものと学習しましたが? ≫


≪それは御伽草子(おとぎばなし)だ。実戦で死んじまったら終わりだろ? あいつと握手して互いの戦闘をたたえ合う姿が想像できない≫


≪了解です。 支援を開始します≫


ダイゴが動く。スモーク弾を投げ、カービン銃を使い破裂させる。

「あれをこの状況下で当てるか!! 」


周辺にスモークが流れ射線が切れる。


相手もレーダーサイトで敵の居場所がスモーク内でも分かるため、こちらに銃撃してくる。


しかし、データ上の動く相手を勘で撃つため、素人相手ならまだしも、熟練者相手での命中は厳しいものになる。


特にフェイントなど細かな体の動きが見えないため、相手の次の行動が読みにくいのも命中率低下に拍車をかけている。


ダイゴはつづいて、手榴弾を投げつける。もちろんピンは抜いていいない。

相手も何か飛んできたことは認識している。空中で榴弾を打ち抜き爆発させる。


「てめー何のマジック使っているんだ!! 」

相手からの罵声が聞こえてくる。


もちろん、“はい。 そうですか”と教えるほどこの男は甘くない。

無言で銃撃をしている。


「セレン。やつのスーツのダメージは? 」

『頑丈ですね。これだけ打ち込んでも30%程度の損傷で済んでいます』


(こりゃあまずいな。通常であれば撃破寸前までの損害になるはずだがな)


『屋外トークン部隊。 敵防衛線突破しています。 室内侵入成功』

「それは結構! 」


相手もこちらに徐々に合わせてきており、スモーク中でも弾丸を当ててくる。 補正を掛けてきているようだ。


(指揮官としては3流だが、戦闘員としては、一流か。厄介だな)


弾丸が、ダイゴのコンバットスーツに当たる。

パーティールームだけあって常時空調が聞いているのか、スモークが晴れ上がっていく。


弾幕が止まる。

「ずいぶんと小技を使うじゃねーか。確かにその腕なら、当時の俺が負けたのは納得がいくよ。 が、今の俺はそれ以上のようだな! 」


敵の目からもダイゴのコンバットスーツが痛んでいるのが容易に分かる。

(奴の弾丸は特注か)


「満身創痍だな、バレッツ。 大分スーツも損傷を受けているぜ」

「抜かせ」


「まだ、軽口を叩けるとは大したものだよ」

両者ともマガジンを交換する。


相手が、突如グレネードを発射してくる。

ダイゴにより銃撃で弾頭を破壊することになるが、一時的に煙幕で敵が隠れる。


刹那。勢いのある蹴りが右上から打ち落とされる。 反応が間に合わず、地に背中が着くことにことになるダイゴと馬乗りになる男。


「やっぱりな。 随分な性能を組み込んだコンバットスーツじゃねーか。 想定通り打ち落としてくれて。 ありがとさん」


(打ち落とされること前提か――視界不良を狙った攻撃か……完敗だな)

男が13mmハンドガンの銃口をダイゴのバイザーメットに当てる。


「いいね。お前に土を付けられてから、この瞬間を待ちわびたよ」

ダイゴは何も言わない。


「この弾丸は、特注仕様でね。近距離であればコンバットスーツのバイザーなど一撃で粉砕よ」


「そいつは凄いな」


「まぁ。お前を殺してあの女とヤッて、適当に廻す。 そのあと、人身売買の商人にでも売り飛ばせば、それなりの金になるだろう。 じゃなぁ……亡霊」


銃声が部屋に響き、バイザーメットが吹き飛ぶ。



「ああ。お前は俺には勝っていたよ。ただし、バレッツ・バルガス(弾幕組)には負けたな」


副社長の狙撃ライフルが、扉から中を覗いていた。

「随分とピンチだったな」


「言い訳はしないさ。 感謝する。 それにしてもこいつのは、頑丈なコンバットスーツだ。セレン(シップマスター)


『なんでしょうか』


「案件が片付いたら。このコンバットスーツを検証してくれ。ヒルベルト商会で導入を検討する」


『了解です』


「さてと、トリュフィナは? 」

ダイゴが副社長に尋ねる。


「トークンに守られている。 仮司令部の包囲も順調に進んでいる。 残党は二十余名。メラノも仮司令部内だ。 こっちはトークン隊で20名ってところだ。 半数が要修理だな」


「上等だ。セレン(シップマスター)。 仮司令部にマーカー! 仮司令部に総攻撃を掛ける! 」

『了解です』


--- 地下仮司令部


メラノ執政官は室内にいる。リーダーが、倒れたのも監視モニターで確認済みである。表からは銃声か聞こえている。


「くそ、くそ、くそ。私の作戦が台無しじゃないか!!」


メインの王族一派をルヴェリエで殲滅した。 これからメンドゥーサよりTF-1型を侵入させ、タニア連合王国を燃やす。 できるだけ痛めつけて、燃え残った土地をキャンバリーに与える。


この作戦が上手くいけば、最強国家タニア連合王国を配下に付けられる。 タニアが我に跪き、マールス(火星)の間接支配が手の届くところまで来ていた。


しかし、今その野望が潰えようとしている。 最初は大きかった司令部外の銃声も徐々に弱まってくる。 そして銃声がいったん消えると、重い鉄扉が爆発する。


「よう! 執政官! お邪魔するよ」

トークンを10体ほど引き連れたコンバットスーツとジャガーノートが部屋に入ってくる。


「表の防衛班は降参した。 基本、降参した人間は生け捕ってあるから安心しろ。 お前さんの悪事の重要な証言者だからな」

バルティスが、発言する。 攻撃しなければ命は取らないとの遠回しの表現だろう。


ボロボロになったコンバットスーツのダイゴが、執政官に近づいていく。

「よくも俺の嫁をいたぶってくれたな」


耳元で周囲には聞こえないように囁き、右の拳が執政官の腹部に入る。


メラノ執政官は声にならないほど苦悶している。

周囲の人間はこちらに攻撃する気もないようで手上げている。


「さてと、執政官殿。これから世紀のビッグイベントがあるんだ。一緒に見ようぜ!! 必ず思い出に残るとの評判だ」


ダイゴは、執政官の首根っこを掴み、司令部の外に出ていく。 バルティスも司令部から出る間際に、執政官の部下に言い放つ。


「何もしなければ命は取らない。大人しくしておけよ」

武装したトークンを3体残し、その場を立ち去っていく。


つづく


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