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宙域会戦:1節 マールス宙域会戦

艦隊戦:共生同盟(68艦隊) VS タニア連合王国 (75艦隊)

--- マールス(火星)宙域


火星宙域で共生同盟のナーミャン艦隊とタニア連合王国のマルカ艦隊の衝突は、続いている。 宇宙戦は開けた空間での殴り合いであり、消耗戦の様相を呈している。


両軍とも自軍の陣形を楕円に陣取り、回転しながら移動する。 接敵時は、喧嘩独楽の要領で近づき、宇宙艦をターンさせながら側面を向けての攻撃を仕掛けている。


挿絵(By みてみん)


戦線ではなく、戦環といったほうがイメージが付きやすい。 宇宙であるため艦には、抵抗がなく真っすぐに突っ込めば、慣性でそのまま宇宙の果てまで行ってしまう処置である。


両者とも初めての宙域戦でありため、むざむざ直進で相手陣地まで突っ込み被害を大きくするような蛮勇はいない様だ。


≪シールド艦損傷 30%超えています! ≫


「後退させ、次列シールド艦を展開。タイミングは防御艦隊群の指揮官に任せる。 ※1補修部隊を向かわせろ」


「了解」


オペレーターが前線指揮官へ指示を送っている。 巨大な戦艦が、メリーゴーランドのように慣性で敵戦環から遠ざかっていく。


挿絵(By みてみん)


戦環も数列で構成されており、前列のシールド艦が、後退し次列のが最前線に出ていく。


やはり、徐々に被弾率2%の影響が出てきている。 マルカ艦隊は砲塔の数こそ多いが、射撃精度の差で砲塔や装甲が破壊と修理が出てくる。


副官のマルガリティファーが、話しかけてくる。

「マルカ閣下。 押されていますね」


「だな。 まだ、沈んだ艦はないものの、修理ローテーションはこちらが多い……好ましくないな。 宙域ステーションからの補給艦隊は? 」


「随時出ております。 しかし、共生同盟側は、軌道エレベータでの補給になりので、こちらより補給が迅速になっております」


「軌道エレベータを持っているだけで、(いくさ)がこうも違うとはね」

さすが、ナーミャン。運用方法まで研究済みか。


惑星間協定があるため、軌道エレベータの攻撃は厳禁になっている。

これは惑星間の取り決めであり、容易に破れる条約ではない。


故に、軌道エレベータを持つエリスとテッサリアは宙域戦闘では、非常に有利になる。 副官が進言してくる。


「閣下。 “TF-1型”で早々に決着を図りましょう」


「どうやって、あの艦隊まで送り届けるんだ? ここからいたずらに魚雷を撃ったとしても電磁加速砲の餌食だぞ。


魚雷の速度は所詮、音速の十数倍レベル。 電磁加速砲は、弾丸は第三宇宙速度(約6万km/h)を撃ち落とすために造られている。


 瞬く間に落とされるのがオチだ。 加えて堕とした魚雷が“TF-1型”と分かったら直ちにこちらが不利になる。


威力は大きいが、簡単には利用できないんだよ、あれは」


「失礼しました。 浅慮でした」

「構わないさ。 運用認識さえ理解してもらえればそれでいい」


しかし、こちらがじり貧なのには変わりない。


≪共生同盟側艦隊陣形に動きがあります!! ≫

オペレーターからの報告が、上がってくる。


円環部の艦隊の接近速度が上昇し、上下開く陣に変形する。 それもかなりの速度である。


平面から立体への陣によりタニア艦隊は、上から撃ち落とさる形で攻撃されている。 


共生同盟艦隊の隊列も層が薄く防御が希薄になる。 防御を捨て攻撃の幅を出した形になる。 立体的な攻撃によりタニア艦隊に被害が出始める。


「奇策に出たか!! 」

上部からの攻撃により、砲塔が破壊される艦が続出する。


≪5号シールド艦 大破!! 制御不能>≫

オペレータの報告が上がってくる。


ここにきて艦の被害が大きくなってくる。


≪4号シールド艦 大破!! 制御不能≫

≪5号軽巡洋艦 大破!! 制御警告≫


≪※2戦闘プロトコルに従い、艦から乗員の退避が開始されます≫


オペレータの更なる報告が上がってくる。

シールド艦はほぼ無人であるが、戦闘艦にはそれなりの人員が配置されている。


大型艦が次々に航行不能に落とされる。

「全軍後退! 他の戦艦は、敵中心部に攻撃を集中しろ!! 」


マルカ艦隊も辛うじてナーミャン艦隊の数艦を大破させているが、圧倒的にマルカ艦隊側の被害が大きい。


「閣下。自軍大型艦5隻、中型艦2隻が制御不能・制御警告です!! 」


副官がデータを見ながら、報告し続ける。

「こちらは中型艦の撃破の戦果のみです。このままでは陣形を崩されかねません」


「巡航速度を上げろ……全体を後退させる……制御不能の船は捨て置け! 」


「後退しては、マールス(火星)宙域を抑えられてしまいます!! 格闘戦で対応しましょう! アタッカー(戦闘機)を用いた、格闘戦であればまだ、我らに理があります!! こちらには、弩級艦空母のアタッカー大隊群がいます!! 」


「いやダメだ! 後退だ。 退避状況はどうなっている! 」

マルカからオペレータに現状確認の指示が出る。


≪シールド艦は完全退避、軽巡洋艦も完了しつつあります≫

オペレータの報告が来る。


マルカ艦隊は、後退する。


「……」

マルカは黙って、ホログラムマップで陣形図を見ている。


艦隊は、マールス(火星)宙域を明け渡す状況まで後退する。

ナーミャン艦隊は、好機とみて前進してくる。


「閣下! マールス(火星)宙域を抑えられたら、本国であっても、宇宙艦隊の降下部隊の圧力には、耐えられません! このままでは、今回の戦。負けてしまいます」


副官の言葉を無視して、戦況画面を見続けている。


どのようなタイミングだろうか? 急にマルカ少将が指示を飛ばす。

「コード9999発令!! 」


オペレータが、指示を受け取り9999のコードを打ち込む。


               ・

               ・

               ・


              刹那


               ・

               ・

               ・


戦闘指揮所のモニターに火球が映り、その後画面は一時的にホワイトアウトする。


因みにアニメのような宇宙空間に艦橋を晒すような仕様ではなく、潜水艦のような狭い空間にモニターなどが並べられている。


コンソールを稼働させるオペレータと数名ときわめて少ない人員での業務になる。


強力なエネルギーがカメラを一時的にダウンさせる。画面が正常に戻るとナーミャン艦隊の円形陣の6分の1が消失した、映像が映し出される。


「なにごと……“TF-1型”!! 」


「仕方ないさ。落としどころは本国に考えてもらう。それに戦時協定違反ではないからな」


(使いたくはないが、負ける訳にもいかないのでね)


シールド艦内にTF-1型を仕込んでいた。

魚雷では、速度が遅いため、電磁加速砲で容易に撃墜される。


特にAIの性能が高ければ撃墜率も高くなる。 そのため、遠距離からの攻撃はまず当たらないと見ていい。


そこで、破損しやすい防御艦に事前に仕込んだ戦法になる。ナーミャン艦隊は、破壊された艦を通過したためTF-1型の爆心地に自ら入り込んだ状態になってしまった。


破壊された艦を地雷のように扱った戦法になる。


マルカの旗艦ネクタリス(巡洋艦)より各艦に再度の目標命令が飛ぶ。

「全艦前進。目標。爆心地 周囲敵艦 最大砲火で対応せよ!! 」


動揺した艦の狩りを開始する。


ナーミャン艦隊は後退していく。今度はそれを追撃する形になる。

両艦隊が元の位置に戻る。




--- ナーミャン艦隊

「あのやろう!! やりやがった!! 」

「閣下落ち着いてください」


「ふざけるな。こんな死に方があるか!! 絶対に破滅させてやる!! 」

整った顔が、憎しみで歪んでいる。


この兵器は、ここまで人を変える。


しかし、熱くなっていながらも、直ぐに次の指示を的確に出してくる。

「全艦後退!! 牽制と防御射撃を実施しサバエア宙域まで後退だ!! 」


現存する最強兵器。宇宙艦隊の装甲を容易に消失させ、火球に飲み込む。恐らく爆心地の艦隊は、何が起こったか分からぬ間にその一生を終えたことになるだろう。


幸いにも宇宙であったため衝撃波が無いのが救いだが、強力な放射線で爆心地隣接の宇宙艦隊のAIが動作異常を起こしている。


そのため、マルカ艦隊からの攻撃に防御弾幕が出来ず、落とされていく。


「ふー」大きく深呼吸をする。

自分が熱くなり過ぎていることを自覚するにそれほど時間は掛からなかった。


近くある飲料パックを手に取り、一気に飲み干す。


「※3戦術プロトコルに従い、防御陣形による部隊の再編成をかけろ!

防御陣により守りを固め補給と修理の時間を確保する。


戦艦は引き続き、タニアへの攻撃を続行。やつらは、シールド艦を失している。 以前のような強固な防御は出来ないはずだ!!


それと全てのAIをチェックし問題があればバックアップの起動だ」


ナーミャン艦隊は、陣形を再編成し、シールド艦を前面にした防御陣を形成していく

「現状を洗い出せ!! 」


消失12隻

大破8隻

中破8隻


結果

戦闘不能艦20隻。

修理必須艦8隻。


残存艦隻48 うち8隻は修理中


中型艦が中心であったが、やはり撃沈数が多すぎる。


しかし、副官は感服する。あれだけの被害を出しながらも浮足立つことなく次の戦闘準備に入るっている。


この将軍。エリスの英雄は、間違いなく英雄であると。

火事場で力をここまで示せる人物が一体どれほどいるだろうか?


状況はまだ緊迫状態のままである。




--- マルカ艦隊

「戦術プロトコルに従い、防御陣で部隊を再編!! 全艦に防御陣形を確保した上で大破した艦を曳航可能なら実施、可能であれば修理しろ! 破損艦の修理の時間を確保する。防御弾幕を張りつつ、補修部隊による修理を急がせろ!!」


「閣下。 お見事です!!」


「気を緩めるな! こちらは、完全に陣形戦術で出し抜かれたんだ。 加えて切り札を切ったことが相手にも知られている! 作業を急げ!」

マルカもピリピリしている。


「失礼しまいた」

副官が敬礼し作業管理を始める。


マルカも”TF-1型”を受けてなお、闘争の意志が折れぬナーミャン艦隊に気味の悪さを感じている。


(あれでも闘争心が折れぬとは、何という胆力。 といいたいが、奴ほどの武人。 頼れる何かがあるのだろうな)


こちらのTF-1型は、あと1発。ナーミャンが何発所有しているか分からないが、最低1発以上あることは想定している。


おそらく、この兵器が、ナーミャンのよりどころになっていると判断している。 下手に動けば、こちらが先ほどの二の舞になることは必至。


マルカ艦隊の防御攻撃は続いている。


※1:トークンなどで自動化された補修部隊で、艦艇の外壁や砲塔の修理を行う。 砲弾飛び交う宇宙空間での危険作業のため全て自動化されている。


※2:戦闘プロトコル: 戦闘時における、戦闘・補給・撤退・退避・捕虜の扱い等についての手順。


※3:戦術プロトコル:戦闘時における、部隊の兵站・増員・損失に対しての対応手順。中身として、部隊の再編、兵器の補充、陣形、など部隊運用に関わる応策が規定されており、陣形では防御的か攻撃的かなど戦況に応じて部隊の編成を行う。AIによる自動化で配置する。


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