第96話 地竜討伐後の後始末 2
約5時間飛び回って、魔物をミンチにし続けた俺達は、夕方になってきたので、念話でメアリーとシュネのペアに声をかけて撤退。
流石にスズメみたいな魔物……弾丸スズメも数が減り、最初はマシンガンの様に切れ目無くぶつかり続けたが、最後の方は2分とか3分に1羽が突っ込んでくるくらい減っていた。
あと地上で魔物狩りをしていたゴーレム達次第だろう。
拠点に戻った俺達にアキが出迎えてくれて、ゴーレム達も戻り始めていた。
なんか姿が一部変わっているゴーレムがいて、ケンタウロス……地球でも有名な、人の体に胴体が馬の魔物みたいに、上半身は人間形態で、四足歩行になっているのだが、下半身は軽トラみたいな荷台に象の様な太い足が生えている奇妙な姿のゴーレム達が背中に大量の魔物の亡骸を背負って運んでいた。
「あ、皆お疲れー」
「奇妙な形のゴーレムがいるんだけど……」
俺がアキに質問すると、賢者の石を使っているから、荷物を運びやすいように自己進化した姿らしい。
勿論元の姿に戻ることもできる。
拠点の周りに置かれる魔物の亡骸。
だいたい頭が潰れていたり、首から上がなかったり、心臓部を突かれて魔物達は死んでいた。
ゴーレムの割に結構綺麗に倒すなっと感心すると、アキ曰く、自分の思考や知識をコピーしているので、魔物にあったらこう対処するというのはちゃんとプログラミングされているらしい。
「このゴーレム軍団どれくらいの強さなの?」
「いい質問ねシュネ。このゴーレム達は1体でホーンタイガーを倒せるくらいには強いわ。防御力はワイバーンの攻撃に耐えられるくらいかしら……ただ攻撃手段が普通に剣や槍とかだから飛ぶような魔物への対応は厳しいし、自己修復できるから継戦能力は高いんじゃないかな?」
ねーっとアキがゴーレム達に言うと、ゴーレム達はビシッと敬礼をキメた。
「常識が……俺の常識が……」
デーニッツさんは明らかに既存のゴーレムと一線を画す能力を持つアキのゴーレムに頭を抱えている。
ホーンタイガーを倒せるゴーレムが200体。
しかも自己修復で完全に壊しきらないと復活するとか悪夢以外の何物でもないだろう。
現状でも戦略兵器である。
俺はゴーレム達が運んでくる魔物の亡骸で、売れる奴を回収し、売れそうにないのはアキが錬金釜で煮詰めて、更に賢者の石もどきを作ったり、そこそこ強い魔物の骨で魔法の威力を上げてくれる杖や魔物の皮でできたマント、牙でできた首飾りなんかを作り上げては俺に収納しておいてと放り投げる。
「全く、坊主や嬢ちゃん達なら宮廷魔導師になれるんじゃねぇかと思えてきたぜ」
「何度か聞くんですけど、宮廷魔導師ってどんな人がなれるんですか?」
簡単には聞いていたが、魔法使い達でも特に優れている者しか成れないくらいの認識である。
「宮廷魔導師は帝国の個人における最強戦力と目される人物達だ。定員は12名で、序列1位から順になっている。序列1位の人物は公の場では公爵待遇を受けられ、他の序列も一番下の序列12位でも伯爵と同等とされているな」
宮廷魔導師と呼ばれる人達は爵位とは別に序列で呼ばれる特権階級扱いで、子供に地位が引き継がれることは滅多に無いらしい。
子供も親と同じ実力があれば引き継げるらしいが、それは本当に稀なのだとか。
最低でもワイバーンを単独で倒せる実力が求められるため、欠員が多いらしい。
現在でも8人しか宮廷魔導師は居ないとのこと。
「それに宮廷魔導師になるには配下の魔導部隊っていうまぁ師弟関係を結んでおく必要があるんだよな。で、師がこれはと思う弟子を皇帝に上申して、許可が出ればワイバーン狩りに行かせ、成功すれば宮廷魔導師になれるって面倒くさい決まりがあるんだよ」
デーニッツさん曰く、平民には宮廷魔導師の弟子になることも難しい為、長い帝国の歴史でも平民から宮廷魔導師になれた人物は5人も居ないのだとか……。
「辺境伯のお抱え筆頭である俺でも実力的に宮廷魔導師にはなれねえからな。実力だけだったらナーリッツの坊主や嬢ちゃん達は成れると思うが……相当なやっかみを受けると思うぜ」
「いや、もう帰れば男爵になれるんで、あとは領地貰えるように頑張れば良いかなって……」
「まぁ厄介な事に自ら突っ込んで行かなくていいわな。さーてともう夜になるから一泊して寝るか……ナーリッツ、蜂蜜酒以外の酒あったりしねぇか?」
「何かあったかな……あ、芋焼酎があったはず!」
「焼酎?」
「蒸留酒の一種ですよ」
この世界では焼酎とは言わなくてジャガイモの蒸留酒であるアクアビットと呼ぶらしい。
確か地球でもドイツのジャガイモの酒をそう呼ぶはず……。
任務も終わったのでデーニッツさんはガッツリ飲む気になっているっぽく、適当にツマミを用意したら味わいながら飲み始めた。
「かぁ! カラッとしていて蜂蜜酒と違って腹に来るな!」
喉が焼けそうであるが美味しそうに飲んでいる。
俺達はまだ子供の体なので酒は飲まないけど、練習がてらで作ったのが美味しいって言って飲まれるのは嬉しいな。
ちなみに帝国では酒を飲んではいけない年齢はないけれど、早いうちに酒の味を知って飲み続けると酒毒になって早死するからと大人達は子供達に注意するし、予備校でも早いうちに習った。
ドワーフとか肝臓が強い種族の人は子供のうちから飲んでも大丈夫だったりもするけどね。
俺達も食事を始め、今日のメニューはベーコンエピというベーコンの入った麦の様な形をしたパンにポテトポタージュスープ、それに輪切りにした玉ねぎを焼いて塩コショウで味付けした簡単な物である。
拘った点はベーコン部分がワイバーンのベーコンという点だろうか。
普通に美味しくいただき、夜も過ぎていくのであった。
「昨日のうちに対応しておいて良かったな」
「デーニッツさん、そうですね」
今日の天気は生憎の雨模様。
ただ任務も終わっているので、小雨になるまで待ってからゲルやトイレ、シャワーの片付けを行う。
まぁトイレとシャワーは全体を水洗いしてから便器やシャワーの魔導具を回収し、石壁は土魔法で土に戻しておく。
アキのゴーレム達も異空間に全体収納し、最後にゲルを異空間に仕舞ったら、雨除けのローブを着て飛行魔法で空を飛ぶ。
まぁ魔法が使える俺達は雨に濡れないように魔法障壁を展開しながらいけば、濡れることは無いし、雨なので障壁も極薄で大丈夫。
俺はデーニッツさんを背負い、飛べないアキはシュネに背負ってもらって飛行する。
1時間半で辺境伯様が居るハーゲンシュタットの町に戻り、俺達は早速、辺境伯様に地竜の討伐と目的の地竜の血液の提出を行うのであった。
「デーニッツにケッセルリンクの皆、よくやってくれた! これでバイパーは救われる!」
辺境伯様は大喜びであるが、薬ができるまでまだ数日かかる。
その間にバイパー様の容体が急変したら不味いので、辺境伯様にアキが既に調合した薬を渡しておく。
「素人の調合した薬なので使わないに越した事はないですが、容体が急変するような事があればお使いください」
「おお! 流石だな! よし、地竜討伐の功績を称えて、ナーリッツ・フォン・ケッセルリンクは男爵へと陞爵(爵位を上げること)とする! また正妻の座は空座とし、メアリー、アキーニャ、シュネーの3名のうち、一番早く男爵の子供を産んだ者の子供に男爵家の継承を許す。他の娘の子は騎士伯として分家を作ることを許そう」
「「「「はは!」」」」
これで俺達は1代限りの騎士から子供に世襲させることができる貴族へと成り上がることに成功したのだった。




