第95話 地竜討伐後の後始末 1
あっさり終わった地竜討伐であるが、その後が滅茶苦茶大変だった。
辺境伯様から地竜を討伐した後は、その土地の魔物を狩りまくってくれと依頼されていた。
狩った魔物は冒険者ギルドに売って換金して良いし、報酬に色を付けると仰っていたので、狩れるだけ狩る事に。
ただ魔物の量は多いし、ここら一帯を炎の魔法で消し炭にするわけにもいかない。
ここらへんは、辺境伯の次男であるフレデリック様の領地になり、樹木は材木に加工して、家の建材になったりするので、消し炭にされては困るとデーニッツさんから止められた。
そうなると、ちまちま魔物を討伐していくしかない。
魔物も強くないし、最初は分散して魔物を狩る事になり、1時間くらい作業したのだが、効率がとにかく悪い。
いや、探知魔法が使えるから他所からしたら効率は悪くはないんだけど、思った以上に作業が地味で代わり映えしなかった。
アキは途中から錬金釜を出して、俺達が狩った魔物をどんどん賢者の石もどきに加工しているし……。
『はい、集合!』
散っていた俺達にアキの念話が届き、俺達は一度地竜を討伐した場所に戻ることにした。
戻ってみるとシュネもそこに居て、念話を単体だと送信できないアキはシュネに手伝ってもらったらしい。
「どうしたアキ? 何かいい方法でも思いついた?」
「ふっふっふ……こういう時にこそ私のゴーレムが活躍するんじゃないかって思ってね! というわけでナツ! ゴーレムのコアをあるだけ出して」
「はいはい」
俺はアキに言われて異空間からゴーレムのコアを200個ほど取り出していく。
それを見たデーニッツさんは
「おいおい、ワイバーンの魔石そんなにまだ持っていたのかよ! しかも加工済みだし……」
「未加工なのは提出したので勘弁してください」
「いや、文句は言わねぇが……ずいぶんと豪華な素材をゴーレムごときに使うな」
デーニッツさんが言うゴーレムごときというのも、この世界ではあまりゴーレムが発達していなかった。
いや過去はしていたらしいのであるが、帝国が確立する前の中小国が乱立するような戦国時代の更に前にもこの大陸に巨大な王国があったらしく、古代王国時代にはゴーレムだったり魔導具ももっと高性能な物が溢れかえっていたらしい。
時折古代王国時代の遺跡から保存状態の良い魔導具が見つかってリバースエンジニアリング……解析し、複製品を造ったりしている宮廷魔導師達の管轄下の魔導具管理局という場所が日夜研究を繰り返しているらしい。
その遺跡から現代よりも高性能なゴーレムが警備しているのがお約束らしい。
ゴーレムの技術はその魔導具管理局でも解析ができておらず、劣化コピーよりも人間が作業したほうが効率が良いと半ば放棄されている技術なのだとか。
だからアキのゴーレムをデーニッツさんはごときという言葉を使ったらしい。
「でも私のゴーレムは魔石の性能が良いからね。プログラムを複雑に書き込んでも大丈夫な素材がワイバーンの魔石だったんだよね」
アキは軽く自分のゴーレムの解説をした後に、ゴーレムコアに自身の魔力を送って起動させる。
するとゴーレムコアに近くに置かれた賢者の石もどきが吸収されて、体を作り始める。
光り輝くのが終わると、全身乳白色色で、胸にゴーレムコアが埋め込まれ、関節が傀儡や人形……いやマネキンの様な女性型のゴーレムが出現した。
口と目はマスクの様な物で隠され、表情を読み取れない。
そもそもゴーレムなので喋れないが、結構造形凝っているな。
「よし! 成功!」
「俺の知っているゴーレムと全く違うんだが」
デーニッツさん、安心してほしい、俺もこんなゴーレムは知らない。
多分アキのやつこっそり研究を続けていたな……。
触ってみるとひんやりしている。
生きている訳じゃないので当たり前であるが、動く美人マネキンって言う方がゴーレムより適切じゃないだろうか。
「じゃあ5体1組になって、魔物を狩りまくってきてね。日が落ちる前には私のいる場所に戻ってくること、じゃあ作業開始!」
するとゴーレム達は各々腕を剣やハンマー、斧や槍に変えて森の中に突っ込んでいく。
「全自動で動くのか?」
「はい、デーニッツさん。私が事前に命令をゴーレムコアに書き込んでいるんで、魔石の魔力が無くなるまで動き続けますよ」
「ワイバーンの魔石って魔力尽きるのか?」
魔石は不思議な物で、大きい魔石だと魔力を時間経過で再生成するんだよな。
魔力は精神に宿るって言うけど、魔石は魔物の精神が宿っている器官なんじゃないか……と俺は考えたりしているが、アキのゴーレムコアのプログラミングはその精神を人間に都合が良いように書き換えている……精神変異を起こしているとも考えることができるような……。
ちょっと怖くなってきたから、これ以上考えるのは止めておこうか。
地上の魔物はゴーレム達に狩ってもらうとして、俺達は上空……空を飛ぶ魔物の討伐をすることにする。
これは簡単。
俺とデーニッツさん、メアリーとシュネが2人1組になって、片方は飛行魔法、片方は魔法障壁を強めに張ることで、弾丸の様に突っ込んでくるスズメの魔物に対処する。
飛んでいれば勝手に魔法障壁に当たって肉塊へと変わっていくので楽である。
まぁ魔石の回収はできないけどね。
アキには拠点に先に戻ってもらって待機してもらう。
「じゃあやりますか」
「頼むぜ」
デーニッツさんに肩車してもらい、俺は周囲に魔法障壁を展開すると、バチバチバチと光に集まる虫……いや、機関銃で鉄板を撃ち続けているような音が響き渡る。
『念話じゃねぇと会話もできねぇじゃねぇか……これ魔法障壁どれぐらい持つんだ?』
『そうですね……まぁこの程度なら半日は持ちますよ』
『何度目か分からねぇが、あえて言うぞ……化け物め』
『褒め言葉として受け取っておきますね』
まぁやっていることは暇で、空を飛びながら魔物が突っ込んでくるのを待つだけなので基本暇である。
デーニッツさんと念話でお喋りを続ける。
『デーニッツさん、俺達の狩りって基本こんな感じなハチャメチャなんですけど、やっぱり邪道っすよね』
『邪道も邪道だな。普通こんな狩りはできねーし……そんな才能が同郷で出てくる時点で異常だ』
『ですよね~』
『俺の見立てだと魔力量が一番多いのがシュネーの嬢ちゃん、戦闘能力が一番高いのがナーリッツの坊主、魔法の器用さがメアリーの嬢ちゃんで、なんかよくわからないのがアキーニャの嬢ちゃんって感じだな。本当なんでこんな才能が集まったんだか』
『あはは……』
俺は笑って誤魔化すしかない。
流石に転生しましたとは言えないからね。
『普通の冒険者だと魔物を数体狩って、魔石と狩った証拠……耳とか鼻を切り取って、換金性の高い魔物だけを運んで……って感じだ。それにあんな簡単に地竜を倒せるものでもねーんだぞ』
『そりゃそうでしょう……俺達も世間とズレているくらいは分かってますよ。そのズレを修正するために予備校通ったりしている感じですし……』
『予備校で思い出した。この狩りが終わったらお館様から次期お抱え魔法使い筆頭にナーリッツを推薦するから、予備校だけじゃなくてお抱え魔法使いの勉強も受けてもらうぞ』
『デーニッツさんに教えてもらう感じですか?』
『それもあるが、俺の弟子達の中ではナーリッツ達の実力を分かってねぇプライドだけが高い奴も少なくなくてな……貴族のご子息とかも多くて農民から成り上がったナーリッツ達のことをよく思ってねーのよ』
『ああ、なるほど』
『それを言ったら俺だって平民出身なんだがな……あいつら師匠である俺も馬鹿にしてるって思わねぇのかな?』
『ご愁傷さまです』
『全くだ。酒でも飲まねぇとやってられねぇよ。あぁ、ナーリッツがもう少し年いっていて周りに女居なかったら風俗にでも連れて行くんだがな』
『売春宿でこの前まで生活していたんですけど……』
『そう言えばそうだったな……どこの宿だ?』
『妖精の止まり木ですよ』
『ああ、あそこか! 俺もよく利用してるわ!』
『あれ? デーニッツさんって独身なんですか?』
『まぁな。お館様からはしつこく結婚しろって言われてるんだが、俺の財産目当ての奴が多いこと……辟易して女は嬢と遊ぶ程度が丁度いいんだよ』
『大変ですね……』
『まーな。ナーリッツは3人と結婚するために貴族になりたいとかすげぇ男だよ。ただ貴族は奥さんと初めてをやる前に誰かに筆下ろししてもらって童貞を捨てておくのと、ある程度技術を学ばねぇと行けねぇから、精通したら覚えておけよ』
『ありゃ、そうなんですか……え? 俺自身が探すんですか? その人を?』
『本来は父親や上司が探すが……ナーリッツの坊の場合はラインハルトの奴が探してきてくれるんじゃねぇか? 最悪俺が紹介するが』
『精通したらラインハルトと相談することにします』
『おう』
約5時間ほど空を飛び回り、魔物のミンチを浴び続ける俺達だった。




