第89話 クラスメイトと元クラスメイト
銀の翼のメンバーも俺達の屋敷で家臣になることに合意し、ライラックと2人っきりで少し話しをした後に、ブッセ支部長に部屋を借りたことをお礼を言った。
「また何かありましたら言ってください。なるべく手助けしますのでね」
「ありがとうございます」
銀の翼の皆さんは明日にでも宿を引き払って移り住むと言われ、俺もライラックさんに屋敷の場所を教えておいた。
これで残る課題は冒険者予備校のクラスメイトを家臣に組み込めるかどうか……ということである。
なるべく選んだ8名全員が家臣になってくれると嬉しいが……どうなることやら……。
翌日。
「じゃあ行ってきます」
「はーい! 皆行ってらっしゃい!」
クリスを除いたパーティーメンバーとラインハルトの8人で冒険者予備校へと移動する。
ラインハルトは冒険者予備校で非常勤講師の役職が与えられて、再編された俺達のクラスの教官をやってくれることになる。
まぁ冒険者について教えるのは引き続きジェイシェット教官がやってくれるらしいが。
予備校に到着すると、多くの生徒達から畏怖の視線が送られる。
「アンデッドドラゴンを倒したらしいぞ」
「俺が聞いた所によるとアンデッドの大群を消し飛ばしたとか」
「いや、元凶を討ち取ったからとも聞くが……」
色々な噂話をしているが、中には辺境伯の娘を娶っただの、マンシュタインはこうなることを見越していた辺境伯が送り込んだのではないか……なんて突拍子の無い話なんかもある。
そもそも現状辺境伯に嫁入りしていない娘さんは居ないし……辺境伯の妹さんが1人、未亡人でいるらしいが、40歳を超えているので俺と釣り合うハズも無く……。
そんなコソコソと言われる話を無視しながら、いつも通り教室に入ると8人のクラスメイトが揃っていた。
「おはよう」
「「「「おはようございます」」」」
ございますか……もう上下関係はできてしまっているな。
メアリー達も仕方がないって表情をしている。
ラインハルトは職員室に一度向かうので別れ、俺達は席に座って待っていると、十数分後、ジェイシェット教官とラインハルトが教室に入ってきた。
「よし、お前ら揃ってるな。昨日話した通りナーリッツ、メアリー、アキーニャ、シュネーの4人が爵位を授与された。で、4人と話し合った結果、パーティーメンバーの3人を除いた残りの13名のうち、ここに残った8名は爵位組から直々に家臣になって欲しいと願い出ていた。で、本人達も家臣を希望してこの場にいる」
それは良かった……とりあえず8人全員家臣になる希望はあるみたいだな。
男子6名、女子2名……上々だ。
ジェイシェット教官の説明の次にラインハルトが教卓の前に立ち
「初めまして、家臣希望の皆さん。私はラインハルト。これから皆さんに家臣としての教育を施す者です。ケッセルリンク家の執事長の任も承っているので、君達の上司でもあります。今のままでは君達は戦力と成りませんので、予備校に通っている間に教育を施させてもらいます」
「また、ナーリッツ様方は家臣となる皆さんが勉強している間も給金及び食と住は提供すると言われております。今週中に宿や実家から出てケッセルリンク家の屋敷に住んでもらうことになりますがよろしいですね」
8人は頷いている。
ここまではジェイシェット教官が事前に説明していてくれたらしい。
「よろしい。皆さんはケッセルリンク家の家臣であると同時に冒険者にもなってもらいます。覚えることは山のようにありますが、覚えきれれば将来の安泰は約束されます。心して取り掛かるように」
「「「「はい!」」」」
こうして冒険者予備校に通うクラスメイト達も家臣へと加わるのだった。
休み時間、俺が廊下に出ると土下座してくる生徒が居た。
「どうか家臣の末席に加えてはくれないでしょうか!」
その男子は元クラスメイト……メアリーから俺達に寄生しようという思考が漏れ出ていると言われた1人だった。
周囲の生徒達もざわつき出す。
「顔を上げろ」
顔を上げた男子生徒は必死の形相である。
まぁなぜ自分が外されたか全く分からないからな。
徐々に思い出してきた。
こいつメアリーを自分のパーティーにしつこく勧誘していた奴じゃないか……。
下心が丸見えなんだろうな。
「あのな、お前メアリーをしつこく自分のパーティーに勧誘していたろ」
「そ、それは」
「俺達は同じ村出身の幼馴染だし、恋人同士でもある。それなのに引き抜こうとするのはどういう見解だ?」
「……好意を持ってしまったので、なるべく彼女の気を引こうとしたからです」
「俺達は仲間を欲したんだ。略奪愛を受けるために予備校に通っている訳じゃない。しかも恋人同士であると俺は公にしていたよな? それにも関わらず勧誘を続けた……俺の立場だったらどう思うよ」
「……不愉快です」
「だろ? 人の恋人に恋心抱いている奴を近くに置きたいと思うか?」
「……思いません」
「それが答えだと思うがな」
「……じゃあクラスに残った面々はそうじゃないっていうのかよ! しつこく仲間になりたいって言っていた奴もいたじゃねぇか! そいつらは下心が一切無かったと断言できるのかよ」
うわ、他の人の足を引っ張りに来たぞ……まぁまだこいつも9歳だし感情の制御が出来てないんだろうな。
いや、言語化できているだけまだマシか?
特待生の人達は人として早熟な奴が多かったからあんまり気にしたことなかったけど……。
「完全に無いとは断言できないよな」
「なら!」
「でもお前みたいに足を引っ張ろうとはしないと思うぞ。俺達が残した奴らは向上心が高かった。俺達に寄生して楽して稼ごうって思っている奴は居ない。俺達から少しでも強くなった方法を聞き出そうとしているギラついている奴らを俺は残した」
お前みたいに人の足を引っ張る気質の奴は残してねーよと小声で彼に伝える。
流石にそれを大声で言ってしまったら彼と組もうとする人がいなくなってしまうからな。
心を入れ替えて頑張れば、もしかしたら将来雇うかもしれないが、それだけ努力していれば他の貴族達に仕えることも可能になるだろう。
「俺が雇ってくださいってお願いするくらい実力を付けてみろよ。そしたら俺が頭を下げるからさ」
俺は呆然としている元クラスメイトの彼の肩を叩いてからトイレへと向かうのであった。
それでやる気が出てくれればいいのであるが……。
〜十数年後〜
「ペーターさんってドラゴンスレイヤーのケッセルリンク様と同じ冒険者予備校に通っていたんですよね! 年代的にもしかして同学年だったり?」
「ん? ああ、数週間だけだが同じクラスメイトでもあった」
「そうなんですか!」
「まぁ直ぐに別のクラスに移動されたんだがな」
予備校を卒業して十数年。
俺はナーリッツ様に土下座した日以降、自分を見直し、奮い立たせて、冒険者になった。
予備校を卒業する頃にはナーリッツ様は更に偉くなり、とても話しかけられるような雰囲気でもなくなってしまい、俺と同じくクラスメイトから外された奴らはぐじぐじと元クラスメイト達やケッセルリンク家の人達に嫉妬を語り合って過ごしていたが、それを俺は客観的に見て……あぁ、ナーリッツ様から見たら俺はこう見られていたんだと分かってしまった。
それから俺は努力をし、残りの4人はどんどん腐っていき、俺は新しくクラスメイトになった奴らとパーティーを組み、卒業後も活動を続け、十年が経過する頃にはゴールドランクまで上がり、30人の構成員がいるクランリーダーへとなっていた。
あの時ナーリッツ様に声をかけて叱っていただいたお陰で、俺は人として成長することができた。
今では新しい恋人も見つけ、構成員に囲まれてリーダーとして引っ張っていく立場だ。
「結局、ナーリッツ様が頭を下げられるくらいにはまだ成れて無いな」
どんどん先に行ってしまうナーリッツ様達に置いていかれた俺であるが、人並みの成功は得られた。
いや、他から見たら大成功を収めている部類だろう。
「……さてと、お前ら! ブラッディベアが村近くで現れた! 被害が出る前に片付けるぞ!」
「「「おー!」」」




