第82話 特別クラス発足
数日間辺境伯様の屋敷で拘束され、そのまま爵位の授与も行われた。
この町に来て1ヶ月ちょっとで爵位まで手に入れてしまった……。
どんだけやねん。
1代とはいえ貴族になったからには今泊まっている宿に住み続けるわけにもいかなくなり、辺境伯様自ら屋敷を下賜してくれることになった。
辺境伯様の甥が元々住んでいた屋敷だったらしいが、家臣に殺されてしまったらしく、色々なゴタゴタの末に辺境伯家の持ち物として相続することになったが、家臣に殺された様な人物が住んでいた屋敷等気味悪がって誰も住もうとしなかったので、将来自分の屋敷を建てても良いから、一時的に住んでくれと言われたのであった。
デーニッツさん曰く
「ナーリッツ達は成り上がり者だからな。多少損を被っておかないと文句が出ちまう。いわく付きの家を下賜されたとなれば、他の家臣や貴族から同情を買えるって寸法だろうよ」
と、教えてくれた。
引っ越し作業があるのでそれまでは宿で泊まっても良いが、なるべく早く引っ越す様にとも言われてしまった。
俺達は泊まっている宿の妖精の止まり木に帰ると、ミクさんや嬢の皆さん、従業員の皆さん、そしてスターやマリー、クリスからいきなり居なくなったから心配したよと、俺達が元気そうな顔を見せたことで安心された。
で、俺、メアリー、アキ、シュネの4人で町を襲おうとしていたアンデッドドラゴンを討伐し、そのままアンデッドの群れを消滅させ、更に首謀者を討伐した功績で1代限りであるが騎士の爵位を貰ったと説明すると喜びと困惑が入り混じった表情を浮かべられた。
そのまま末端とはいえ貴族になったので、宿で泊まっているのはマズイらしく、辺境伯様から下賜された屋敷で住まなければならないため、迷惑料を支払うので部屋を数日後には引き払わないといけないと説明すると、嬢達から俺達のサービスが受けられなくなることを残念がられた。
「そういうことなら仕方がないね〜。それに今までできた縁が切れる訳でも無いし……あ、もし良かったら私をメイドとして雇わない?」
いきなりミクさんが自分を売り込んできた。
宿の経営を担ってきたから計算や料理、洗濯もできるし、色々できるよ〜と言うと、嬢達もミクだけズルいと売り込みが殺到。
ただミクさんのお母さんが嬢達には借金があったり、生活力が無かったりしてメイドとして働くには問題があるのばっかりだろうと一喝。
ただミクさんに関しては正直宿の経営で一生縛り付けるくらいなら外で働いた方がミクさんの為になるからと、薄給で良いのでメイドとして働かせてはもらえないだろうかと言われてしまった。
別に俺達もミクさんとは仲が良いし、信頼もできるのでメイドとして働いてくれるなら助かる。
ミクさんをメイドとして雇うことに決めて、俺達はスターとマリーの2人と一緒にマンシュタインを拾いに行き、そのまま後始末で1週間休校になっている予備校へと顔を出すのであった。
「爵位の授与おめでとう」
「なんだ、マンシュタインは知っていたのか」
「腐っても重臣の息子だ。父上からナツ達と同じパーティーに所属しているって事も知られていたから、父上経由で情報が伝えられていたんだ」
「じゃあ私達にも教えてよ!」
「同じパーティーメンバーじゃない!」
スターとマリーがマンシュタインに対してプリプリ怒るが、マンシュタインは
「勘弁してくれ、僕も父上からナツ達の情報を根掘り葉掘り聞かれまくっていたんだから……それに兄達が僕経由でナツ達の家臣になろうと画策していて、牽制するのが大変だったんだから……」
「お疲れ様」
俺はマンシュタインの肩をトントンと手を置いて慰め、予備校に向かいながら今後の話をする。
とりあえずマンシュタインも俺が下賜された屋敷に住んでもらうのは確定だ。
あと地竜討伐にパーティーとして参加してもらうのも決まっている。
マンシュタイン達は遠方から討伐の様子を観ているだけになるだろうが……。
逆にそれ以外は全く決まっていない。
こういう時に頼りになる男がマンシュタイン。
まず貴族になったからには家臣団を形成しなければならないと説明される。
「前にクランメンバーに誘っていた銀の翼っていう冒険者パーティーは家臣に組み込むのが良いだろう。そして他の人材は予備校のクラスメイトから募っても良い。領地を持たない新興貴族の家臣はよほどの馬鹿じゃなければ人間性重視で雇っていって良いよ」
「それに辺境伯様が気にかけてくださっているなら家臣を束ねる執事長の様な人材は紹介してくれると思うから、その人に教育させれば良い」
マンシュタインの発言にそれはそうであるが、冒険者ギルドに不義理を働くことに繋がらないかと俺は心配する。
「そこは教官達に今から聞いてみればいいさ。それに領地が無い貴族なんだから、稼ぐとなったら冒険者として活動しなければならないし、領地を持つとなっても、有望な魔法使いは多い方が良いだろ?」
「それはそうだけど……」
「一度聞いてみよう」
マンシュタインに押されて、俺はそれ以上は何も言わずに冒険者予備校に向かうのだった。
予備校に到着すると、ジェイシェット教官が俺達を出迎えてくれた。
「おう、ナーリッツ、メアリー、アキーニャ、シュネー……大活躍だったらしいな。お陰で冒険者予備校は事件が解決してもてんてこ舞いだよ……ちょっと来い」
教官に連れられて教室に入ると、席をくっつけて、教官が誕生日席みたいに中央に座り、俺達は左右に座る。
「冒険者になってから爵位を受け取る奴は十数年に1人単位でいるが、予備校生で受勲したのは記録の限り居ないからな。お前達をどう扱うかで教官らは皆悩んでいるんだよ」
「それはそうですよね……」
「それと、お前さんがクリスか。初めましてだな。予備校で教官やってるジェイシェットだ。まぁあんまり長い付き合いにはならねぇだろうが、よろしくな」
「よろしくお願いしますわ」
クリスと教官も挨拶を済ませる。
教官はそのまま話を続け、予備校生の青田買いについて話される。
「正直に言おう。予備校としてはお前らが生徒を家臣に加えるのは何も文句は言わないし、是非とも抱え込んでほしいくらいだ」
「いいんですか?」
メアリーが本当に良いのかと聞くと、教官は勿論と答える。
「優秀な冒険者を育成する学校ではあるが、他の道に進んでも真っ当な道であれば予備校側に箔が付くし、辺境伯からもこれはと思う生徒が居れば予備校側からもナーリッツ達に家臣として紹介するように言われている。それに1人家臣とするごとに予備校側の補助金を増やすと公言する太っ腹っぷりだ」
「問題が無いなら特待生の奴ら全員抱えて欲しいくらいだ」
「それは……ちょっと遠慮願いたい。俺達に寄生する気満々の奴も混じっていたので」
「誰だ?」
俺はメアリーに目配せすると、メアリーが該当人物の名前を言っていく。
メアリーのチートは読心術。
その力を使ってクランメンバーに誘えそうな向上心ある生徒と寄生目的の生徒の選別は既に済んでいた。
「5人もいるのか」
「逆に私達パーティーメンバーを除いた8名は合格です。クランメンバーとして誘おうとも考えていましたので」
「うーむ……クラス内で派閥ができそうだな。よし、そいつらをクラスから外そう」
「教官!?」
そんな事が許されるのかと言いたくなるが、ここは義務教育の日本の小中学校ではない。
「貴族の子供ではなく貴族本人が所属しているんだ。それぐらいの融通は利く。何より辺境伯から配慮するように言われているんだ……こっちも最大限動かねぇとな。その5名と一般生徒で見込みがありそうな奴は別枠で特待生扱いにしてもう一つ特待生クラスを作ることにする。残った生徒達は予備校で授業を受けてもらうが、辺境伯に教師を紹介してもらって、そいつに教師をやってもらう。俺は補助教員扱いになるだろうが……仕方ねえ」
予備校の中でも色々決まっているらしく、あっという間に俺達が貴族としてやっていくためのバックアップ体制が整えられていった。
こうして懸念点がほぼ消滅して、俺達は引き続き予備校には在籍することになるが、特別クラスとして教育を受けることになるのだった。




