第81話 1代騎士に受勲
客室の様な部屋に案内されると、フレデリック様が俺達に改めてお礼を仰った。
「堅苦しい謁見で疲れたろう。悪かったね。あと辺境伯領の民や軍の皆を守ってくれてありがとう」
フレデリック様は俺達に頭を下げられた。
「あ、頭を上げてください! 片手間でやったことなのでそんなに苦でもないですし!」
「そ、そうです! 頭を上げてください!」
俺とメアリーが慌てて頭を上げるように言うと、フレデリック様はニコリと微笑んでから
「アンデッドドラゴンや万を超えるアンデッドを消し飛ばして苦じゃないとか……どうやら本当に英雄の様だ。うちのデーニッツでも不可能な所業なのに」
フレデリック様は椅子に座り、メイド達にお茶とお菓子を用意するように伝え、俺達に椅子に座るよう促され、俺達も着席する。
テーブルマナーとか分からねーぞ!
「ああ、マナーは気にしなくて良いよ。腹を割って話すために同年代の私を父上は君達に宛てたのだと思うからね」
用意されたお茶に砂糖を入れてかき混ぜるフレデリック様。
俺達も真似をして少し砂糖を入れてからお茶を飲むと、上質なマテ茶っぽい味で、砂糖の甘みの後にマテ茶特有のすっきり爽やかな風味が鼻を抜ける。
流石辺境伯、上質な良い茶葉を使っている。
「落ち着いたかな?」
「は、はい」
「まだ緊張は解けないか。リラックスリラックス」
正直ワイバーンと対峙している時より緊張する。
これが貴族のオーラと言うやつか?
「さて、君達の事はデーニッツから少し聞いたよ。貴族になりたいんだって」
「はい!」
「いい返事だ」
ただその前にアンデッドドラゴンの魔石や回収した骨の買取を行いたいとフレデリック様より言われた。
緊急討伐であるが、得られた素材の優先権は討伐した冒険者に帰属する。
これを貴族だからといって勝手に押収することは出来ないらしい。
「それにナーリッツ君は空間魔法が使えるからね。そのまま何処かに持っていかれたら追いかけられないしね。さっき取り出してくれたアンデッドドラゴンの魔石の買取金額だけど……」
その額白金貨500枚。
ワイバーンの素材全てでその値段だったが、アンデッドドラゴンの魔石単品で白金貨500枚とは……。
「問題は君達はまだ9歳で口座が作れていないことだけど、今回の功績で父上から君達全員に1代騎士の爵位を与えると言われてね。爵位を持っていれば、貴族の家として口座を作ることができる。それで良いかな?」
「え? ……デーニッツさんは1人に1代騎士の爵位くらいだろうと言われましたが」
「うん、普通ならそうだけど、君達は全員凄まじい魔法使い達だ。ワイバーンを大量に狩れるんだろう?」
「ええ……証拠見ます?」
「いや、後で買取査定をする者の前で見せてくれ。実力を私達は疑っていないからね」
「……普通ならと言っていましたが、やはり魔法使いの俺達に何か裏がある感じですか?」
「そう身構えなくて良いよ。1つは囲い込み。辺境伯として有望な魔法使いを多く抱えるのは周辺の貴族への抑止力になるからね。中央へも影響することだし、今フォーグライン辺境伯家が抱えている魔法使いで、実力があるのがデーニッツくらいしか居ないというのも問題でね。デーニッツももう50歳を超えているし、種族も人族だ。まだ当面は現役だと思うが、次世代の事を考えると有望な者を抱えておきたい」
でも辺境伯のお抱え魔法使いの一族であるスターの話によると、結構な数のお抱え魔法使いがいるらしいと聞いているが。
「確かに抱えている魔法使いは数十人居るけれど、戦略に影響するような強力な魔法使いはデーニッツしか居ない。デーニッツも後進の育成を頑張っては居るんだが、中々芽が出ていなくてな」
「なるほど」
「他にはワイバーンを倒せるドラゴンスレイヤーを抱えたいというのもある。実は今、辺境伯領にプラチナランクの冒険者パーティーやドラゴンスレイヤーの称号を持っている人物はデーニッツしか居ないんだ。デーニッツの元パーティーメンバーは居るが、デーニッツ以外現役を引退していてね。貴族の面子的にドラゴンスレイヤーを抱えるというの大きいんだ……財政的にも」
ワイバーンの素材は高値で取引される。
高い魔力の抵抗素材としても活用され、ワイバーンの鱗で作られた鎧を持っていることが上流貴族のステータスにもなるらしい。
ここ20年近くワイバーンの討伐をフォーグライン辺境伯領ではできて居らず、今回ワイバーンの亡骸を手に入れた商会(クム商会)からも辺境伯家が高値で鱗や骨、魔石を購入したと言っていた。
しかも定期的にワイバーンを狩れるのであれば、辺境伯の財政的にも助かるという側面があるらしい。
辺境伯家として膨大な財産を持っているが、それでも家臣を養ったり、領地経営をしたり、今回のような人災、天災への予算で見た目よりは黒字と言うわけでは無いらしい。
ワイバーンの素材の転売をしている他の貴族はそれで結構な儲けを生み出していて、辺境伯家は今まで指をくわえて眺めているだけだったらしく、新しいドラゴンスレイヤーを育成するために、冒険者ギルドに多額の献金を行なってもいたらしい。
なのでフォーグライン辺境伯は顔には出さないが、喜びが大きかったから全員に1代騎士の爵位を贈ることを決めたらしい。
「あとは……身内の話なのだが」
フレデリック様曰く、辺境伯の長男であるバイパー様の体調が思わしくないらしく、治癒師達でも治すことができず、余命宣告を受けているらしい。
そんな彼を治すことができる薬の材料が地竜の血が必要で、俺達に地竜討伐を依頼したいらしい。
「まだ9歳である君達に冒険者として特別依頼を依頼することは常識的におかしな話になってしまうが、貴族間のやり取りであれば何も問題無い。だから全員に爵位を与えたんだ」
フレデリック様も領主としての能力は兄であるバイパー様の方が高いし、家臣達からの人気も高い。
なので予備である自分よりも兄のバイパー様が完治した方が辺境伯家の為になると断言していた。
家のこと、領民の事を第一に考える上流貴族の子供として立派な考え方である。
「勿論その依頼を達成したら、ワイバーンの売却も含めてナーリッツ君は男爵の地位を与えることにするよ」
「よろしいので?」
「ああ、男爵までだったら辺境伯家でも新規に数家爵位を与えても良いと皇帝から権利を与えられているからね。ただそれ以上の爵位は皇帝から下賜される必要があるけどね」
「では男爵になれるように頑張ります」
「うん、頑張ってくれ」
その後俺達は鑑定師の元に行き、異空間で死蔵しまくっていたワイバーンの素材を辺境伯家の庭に並べていき、200頭分の鱗、骨、魔石がちゃんとあることを確認され、あとワイバーンの肉もある程度売却することになり、口座が開設されたら、そこに5年分割支払いで約白金貨8万枚で売却する契約をするのだった。
フレデリック様曰く、一時的に辺境伯家の金は目減りするが、転売したら1.5倍になるので父上も喜んでいると笑っていた。
この量だと相場が混乱するので数年に分けて売却するらしい。
こうして俺達は町の危機を救った英雄扱いかつ、辺境伯様からも名前と顔を覚えられ、更には爵位を貰うに至るのだった。
あと辺境伯様より後日、地竜討伐の特別依頼を受けることになるのだった。




