第78話 アンデッドドラゴン
「数万のアンデッドだと!」
「はい、飲み込まれた村の生き残りの情報だと魔物のアンデッドも多く、聖職者達の浄化も効果が薄かったと」
フォーグライン辺境伯を含めた南部に領地を持つ貴族達や辺境伯軍の上層部が通信魔導具を用いて話し合いを行なっていた。
「中にはアンデッドドラゴンが居るという情報も入っている。これは辺境伯軍全軍で対処に当たらなければ被害は拡大してしまうだろう」
「冒険者達にも招集をかけなければ……それに教会もだ」
「うむ」
それだけ緊急性の高い案件であると判断され、辺境伯の命令で冒険者ギルドで緊急クエストが受注された。
冒険者予備校の生徒達もなるべく参加するようにと言われ、教官から志願者が募られた。
「冒険者予備校の生徒達は町の防衛をする部隊に当てられる事になっている。直接戦闘するわけでは無いが町の危機だ。多くの生徒が参加することを願う」
ジェイシェット教官からそう告げられ、クラスはどうするか休みの時間は毎回その話で盛り上がるし、授業内容もアンデッドへの対処法についての授業が殆どになる。
アンデッドへの対処法であるが、効果が強いのは浄化と呼ばれるアンデッドやゴースト系の魔物に特効の魔法を使う……もしくは炎の魔法で燃やすというのも効果が高い。
スケルトンみたいな骨だけの魔物でも火球1発で燃え上がって灰になる……なんていうのが普通に起こるらしい。
あとはアンデッドに強い浄化作用を引き起こす銀の武器だったり、塩を武器に塗りたくったり、教会が作り出す聖水を武器に塗るとアンデッドにも物理攻撃がよく効く様になる。
逆にそれらの魔法が使えなかったり、対処をしないと、何度でも立ち上がってくる厄介な相手になるし、鉄製の武器に安いからと塩を塗ると、錆びる原因にもなるので、なるべく相手したくない魔物というのが冒険者の中で共通認識らしい。
それでも今回みたいな大規模な襲撃が起こってしまうと損得勘定抜きに一体にならないと町ごと飲み込まれて大惨事となってしまうため、冒険者達も頑張るのだとか。
あとこういう災害級の魔物による襲撃で活躍して生き残れば、報酬が美味しかったり、冒険者ギルド側の評価も貰いやすいという現実的な考えもあったり……。
「どうするリーダー」
「いや、参加だろ。町が飲み込まれたら敵わん」
マンシュタインにどうするか聞かれるが、勿論俺達も参加である。
なんなら第一線に出ても良いとすら思っているが、俺達はあくまで町を守る防衛戦力。
狩り逃したアンデッドを攻撃するくらいであろうと教官からも言われている。
ちゃっかり得をしたのはクリスで、俺達とパーティー登録をしたため、前線に行かなくて済みましたと安堵していた。
クリスも教会側の戦力として従軍する可能性が高かったらしい。
事実、軍や冒険者達の出陣式が町で行われたが、教会からの戦力として、クリスと同じくらいの年頃の男女も治癒師として駆り出されていた。
予備校も戦時体制に移行し、授業は停止、昼間は各検問所近くで待機したりして時間を潰す事になるのだった。
「……巨大な魔力が近づいてないか?」
「……本当だ」
俺達も志願したので兵士の詰め所で待機していたが、探知の魔法でアンデッドと戦っている本軍の様子を確認していたが、巨大な反応がこの町に近づいていることに気がついた。
俺は詰め所の責任者に逸れたアンデッドの反応を探知したと言い、メアリー、シュネ、アキを連れて詰所を飛び出し、アキの土魔法で高い塔を一瞬で作る。
「……あそこだ」
俺が指し示す先には骨だけで構成されたドラゴンが町に向かって飛行しながら近づいてきていた。
「バカでけぇ! 何十メートルあるんだ!」
「ジャンボジェット機並みの大きさだね」
「うわ……骨が飛んでいるよ……」
俺、メアリー、シュネの順番でそれぞれ反応し、アキが
「感心してないでちゃっちゃと倒さないと町に被害が出ちゃうわよ!」
「それもそうだ」
俺はアキを背負い、飛行の魔法で一気に一気に距離を詰める。
「さて、どう料理する?」
「ワイバーンより大きいけど強さはどうだろう……アンデッドだから知能は無さそうかな?」
「じゃあ一番槍は私が!」
俺に武器を出すように合図を出され、異空間から対ワイバーン用にアキが作った巨大ハンマーを取り出す。
ワイバーンの魔石が両端に埋め込まれていて、更に強化の魔法で強化されており、他の部分もワイバーンの骨や鱗で飾られている。
アキの身長よりも大きなハンマーを手に持つと、俺はアキをアンデッドドラゴンに投げつける。
飛んでいったアキハンマーを振り被り、アンデッドドラゴンの頭に思いっきり叩きつけた。
バコン
空気が震え、衝撃波が周囲に飛び散る。
アキに叩きつけられたアンデッドドラゴンは地面に高速で落ちていき、地面に巨大なクレーターを作りながら撃墜。
俺は自由落下を始めたアキをキャッチして、異空間から火薬袋を地面でもがいているアンデッドドラゴンに落としていく。
「さて、仕上げはシュネ頼むわ」
「はーい!」
口に超高温の炎を蓄え、一気にブレスを放つ。
すると地面に落ちていた火薬袋にすぐさま引火し、巨大な爆発が巻き起こる。
もくもくとキノコ雲が巻き起こり、アンデッドドラゴンは爆発で骨がバラバラに離散し、爆心地には巨大な魔石が七色に輝いていた。
「ワイバーンより弱かったね……」
「まあアンデッドだからな。でも魔石はワイバーンの数倍はあるな」
俺達が魔石を回収していると、空からローブを被った初老の男性が降りてきた。
「おいおい、アンデッドドラゴンを倒しちまったよ……すげぇ若いのが居たもんだ」
俺達はその人物を誰一人知らず、申し訳ないのですが、自己紹介をしてもらっても良いですか? と尋ねる。
「デーニッツ・クロス。辺境伯のお抱え魔法使いだよ。お前らは……冒険者か?」
「冒険者予備校に通っているナーリッツです」
「メアリーです」
「アキーニャです」
「シュネーです!」
「おいおい、予備校の生徒かよ……なんでアンデッドドラゴンを倒せる化け物が予備校に通ってるんだよ……」
「いや、俺達9歳でまだ冒険者になれないので……」
「若いと思ったが、9歳かよ……全員がか?」
「「「はい」」」
「かぁ……若い人材が冒険者に流れたのを嘆くべきか? まあ良いや。お前らまだ余力あるか?」
「ええ、あの程度準備運動にもなりません」
「おっしゃぁ、アンデッドの軍勢にでかい魔法ぶっ放すから手伝え」
本戦に参加しなくてよかったはずなのに、何故か本戦に参加することになるのだった。




