第75話 見習いシスターのクリス
「ナーリッツ君! 私とパーティー組まない!」
「一時的でも良いから!」
「メアリーちゃん! 1回で良いから」
「アキーニャちゃんはどうかな?」
「シュネーさん! 僕達のパーティーに入らないか!」
「ナーリッツ君達のパーティーに入れてくれないか!」
予備校に行くと徐々に俺達が大量の魔物を狩っていると噂が広がり、俺達の引き抜きや逆にパーティーに入れて欲しいという要望がクラスメイト達から言われるようになっていた。
メアリーに読心術で狩りの成果が広まった原因を探ってもらったが、たまたま換金現場を目撃した生徒がいたらしい。
そこから、俺が空間魔法を使えることもあり、一気に広まったというのが原因で、誰かが言いふらしたみたいな事は無かった。
正直、特待生に選ばれている生徒なので、なるべくコネは作っておきたい。
それこそクランを作ったらクランメンバーに誘えるくらい仲良くなれたら良いなと思っていたが、メアリー曰く、上手く俺達のおこぼれを貰って寄生していきたいと思っている人物も混じっていて、注意が必要とのこと。
「おいおい、まだ予備校始まって2週間ちょっとだぞ……」
「それだけナツが注目されているってわけだ。うん! 今日も美味しい!」
今日のメニューはシンプルにチーズバーガー。
特製のバーベキューソースをかけて、ピクルス、玉ねぎ、トマト、パティにチーズを挟んで石窯で軽く焼いた物で、放課後に町を巡った時に買って作っておいたのである。
今週の半分は、パーティーメンバーに各種ハンバーガーを食べ比べてもらおうと思っていた。
で、実際に皆に食べてもらって感想を聞いている。
「難しいよ……金を稼ぐために冒険者を目指す奴も多いし、特待生は実力がある奴しかいないから、彼らなりのプライドだったり、俺達パーティーメンバーになった奴への嫉妬とかもあるからさ」
「難しい問題だな」
「実際私達も運が良かったと思っているし……」
「そうよね……」
スターとマリーの2人も運が良かったからパーティーメンバーになれたと思っているらしい。
まぁ最初はそうであるが、現在は必死に俺達に追いつこうと頑張っているから、パーティーから外れてもらう選択肢は無い。
かと言って俺達が稼げているのは俺の空間魔法によるものが大きいので、メアリーやアキ、シュネが別のパーティーに出向してもすごい稼げるかと聞かれれば、素直に頷くことはできない。
というか、実力差があり過ぎて、メアリー達の適性レベルの狩場に行ったら、他の子死ぬと思うし、小物を狩ろうものなら、メアリー達が付いて行く必要が無くなる。
「難しい問題だな」
「あぁ、難しい」
ただマンシュタインから他のクラスメイトと交友を深めるのも大切だから、一時的に出向するのは考えた方が良いとも言われた。
「頭に入れておくよ」
ある日、ジェイシェット教官から教会に治癒が使えることを登録しておけよと言われた。
「素材の買取記録でナーリッツ達の誰かが治癒魔法を使っているのは分かっている。町に住んでいる人達は既に登録を済ませているが、村出身だから登録していないだろ。冒険者パーティーでも治癒師は特別な役職となるから、さっさと教会で登録してこい」
そう言われてしまった。
なんなら、アキの作る傷薬(効能は市販品レベルまで落とした物)も他所に譲ったりするのでも処罰される可能性があるから、登録した方が良いと言われ、定額お布施と言う名の登録料を支払えば特に問題は無いらしいので、纏めて登録をすることに……。
「教官、お布施の相場ってどんな物ですか?」
「まぁ銀貨1枚包んでおけば問題は無いが……今後の繋がりとかを考えておくと、もう少し多く包んでも問題は無いな」
「なるほど……」
その日は俺達は午後の授業は早退で良いと言われたので、そのままクム商会に立ち寄って、少しお金を下ろし、町の中央にある教会へと向かった。
今日はバザーはしていないらしく、受付代わりにポーション売り場にシスターさんが居たので、彼女に治癒師の登録と薬師の登録を行いたいのですがと聞くと、教会の中へと通され、初老の神父が対応してくれた。
「治癒師の登録ですね。では皆さんの治癒魔法を見せてもらいます」
そう言うと神父さんは野菜を差し出して、ナイフで傷をつける。
「ではこれを治癒魔法で傷を塞いでみてください」
そう言われたので、俺達はそれぞれ治癒魔法をかける。
すると傷跡も綺麗さっぱり無くなった。
「ほぉ、若いのに皆さんこれほどの治癒魔法をお使いに……いや、治癒魔法と言っても傷に薄い膜を作るだけだったりする方も居るので、そういう方には治癒師と名乗らせるわけにはいきませんのでね。一応確認で動物でも試させてもらいますよ」
俺、メアリー、シュネの3人は今度は傷ついたうさぎが用意され、それぞれ治癒魔法で傷を治していく。
死にかけだったのに、今ではピョンピョンと部屋を跳ね回っている。
「確かに確認いたしました。ところでもう1人の彼女は付き添いで?」
「あ、いや……薬師としての登録で」
「ああ、では作った薬品と調薬の試験を受けさせてもらいます」
するとアキの顔が歪む。
錬金術に頼った調薬をしていたので、普通の調薬はできないのである。
その事を神父さんに言うと
「錬金術師ですか……実際に見せてもらってもいいですか? いや、教会まで来て詐欺を働こうという事は無いと思いますが……」
別室でアキだけ調薬の試験を受けに行き、十数分後、部屋から出てくると、神父や付き添いのシスターさんから疑ってしまいすみませんでしたとアキが謝られていた。
「方法は違えどポーションの製作はできていましたので、販売目的でなければ製造や活用を保証しましょう。ただ、薬師ギルドがありますので、販売はそちらで許可を受けてからでお願いします」
そう言われていた。
最後にお布施であるが、俺達は白金貨を1枚ずつ納める。
「こ、これほどいただいてもよろしいので!」
「今後の付き合いを考えるとそれくらいの金額を支払ったほうが良いと考えました。お納めください」
俺達がそう言うと、神父さんは深々と俺達に頭を下げるのだった。
その日の夕方。
俺達が宿で嬢達の治療やスキンケアをしていると、ミクさんが大浴場に飛び込んできた。
「な、ナツ君達に教会からお客さん来ているよ!」
いつもののんびりとした口調ではなく、ハキハキと喋っているので、何事かと思い、ちゃんとした服に着替えてから向かうと、俺達より少し年上のシスターさんが立っていた。
「初めましてナーリッツ様、メアリー様、シュネー様、アキーニャ様。私シスター見習いをしているクリスと言います。以後お見知り置きを」
「あ、どうも?」
何をしに宿に来たか見当がつかなかったのであった。




