第74話 4人のおっさん会談
「お前さんら……凄いの持ってきたな……」
「換金お願いします」
冒険者ギルドの解体屋……素材を買い取ってくれる場所に俺達の狩りの成果を持ち込むと、スキンヘッドのおじさん……買取部門の部門長であるパウルさんが驚いた顔をしていた。
「おいおい、ジャイアントサーペントにタイタンフロッグ、ロックバードもいるじゃねぇか……本当にお前さん達が狩ってきたのか?」
「ええまぁ」
俺がそう言うと、マンシュタインが正確にはメアリー、シュネ、アキの3人ですがと訂正する。
「おいおい、それに空間魔法が使える坊主もいるパーティーとか……滅茶苦茶豪華だな」
「そう言えば狩りの成果って冒険者のランクに影響するんですか?」
メアリーが何気なくパウルさんに聞くと
「なんだ、まだ予備校で習ってねぇのか? 勿論あるぞ。そして冒険者予備校生も勿論評価が蓄積される。今回の成果だけでもブロンズ飛び越してシルバーランクに値すると思うがな。まぁどんなに評価が蓄積したとしてもゴールドランクになるには冒険者ギルドから依頼を受ける必要があるがな」
「へぇ……」
「でもな、予備校生でも冒険者ギルドから特別依頼をお願いする場合もあるんだぜ……それを達成すれば、卒業と同時にゴールドランクの冒険者になれるって場合もあるがな。うちの管轄の冒険者ギルドでも100年前にそんな冒険者が出た記録があるから、前例がないわけでもないんだなぁ〜これが」
パウルさんは俺達の質問に答えながら、素材の確認作業を行い、どの素材も状態最良と判断され、今回も満額出せるだろうと言われた。
俺やメアリー達がパウルさんの弟子さんから査定結果を言われている間に、パウルさんはマンシュタイン、スター、マリーの3人を捕まえ、こう言っていた。
「3人は他4人に比べて実力が劣っているな」
「はい……パーティー組み始めたばかりで、現状は足を引っ張ってますが、いつまでもお荷物でいるつもりではないです!」
「ふむ、現状でどれくらい狩れる?」
「パウルさんが言ったジャイアントサーペント、タイタンフロッグ、ロックバードの3体以外は俺達3人が倒しました」
「おお、レッドオークを倒したのか……となるとシルバー中位から上位の実力はあるな。なに、不釣り合いだからパーティーを解散させろとか言うわけじゃない。というかそれだけ狩れているなら例年なら天才パーティーと持て囃されるだろう」
「上には上がいるとまざまざと実感しましたがね」
「あんなのは100年に1度現れるかどうかのパーティーだ。気にしないでパーティー組めている事を喜べ。まだ仮パーティーだろ?」
「ええ、まぁチェンジするつもりはないですがね」
「その意気だ。なに予備校の方には正しく情報を送るから教師から過剰評価を受けることはないだろう」
「ありがとうございます」
聞き耳を立てていたが、特に問題は無さそうで安心した。
で、査定結果は白金貨75枚に金貨6枚と出た。
日本円換算で7560万円である。
1回の狩りの結果と考えると滅茶苦茶高い。
7等分しても1080万円分……日当約1000万ってどんな仕事だよ。
……某二刀流のメジャーリーガーが日当2700万だったわそう言えば……。
うん、これくらい普通だな。
それに現状使い道無いし、貯金しておこう。
「パウルさん、お金はクム商会のゼファー会長が俺等の金を代理で貯金しているので、予備校経由で送金できませんか? 流石にその金を持ち運ぶのは危ない気がするので」
「おう、まかせろ。予備校の金銭管理部門と相談しておく。ただ一筆もらうぞ」
「はーい!」
本来は借金がある生徒が借金先に自動送金される仕組みを応用した送金方法らしいが、今回みたいに金額が多すぎるから送金してほしいはほぼ無いらしい。
書類に各自サインを行い、自由に使えるお金として金貨2枚は学校で受け取ると設定し、今回の狩りは終わるのであった。
ナツ達が2回目の狩りを終えて数日後、冒険者ギルドのギルド長の執務室にておじさんが4人集まっていた。
1人は買取部門長をしているパウル。
それに予備校の特待生クラスの教官をしているジェイシェット。
他2人は冒険者ギルドハーゲンシュタット支部長のブッセと予備校校長のレーマンであった。
「さて、とある予備校生が毎週狩りで大量の魔物を売りに来ている件についてだ。ジェイ(ジェイシェットの愛称)その生徒達について説明してくれ」
「ああ。年齢は全員9歳。ゲンシュタイン騎士領出身のナーリッツ、メアリー、アキーニャ、そしてシュネーこの4人がパーティーの中核で、大量の魔物を狩っている理由だ。他に辺境伯様の重臣であるサドラー家の息子のマンシュタイン、家臣筋のスター・レイマンとマリー・プレプスというのも居るが、正直おまけだ」
「おまけと言っても特待生なのだろ?」
「ギルド長、確かにおまけと言った彼らも例年なら1、2を争う秀才達であるが、ゲンシュタイン騎士領出身の4人は数十年に1人の天才だ。それが奇跡的に4人集まってしまった」
「ブッセ、私からも彼らと買取する時に4人のうち3人でロックバード等のゴールドランクの冒険者の上澄みでも討伐が難しい魔物を倒したと聞き取りが済んでいる。それにナーリッツは空間魔法使いだ」
「ほう」
ギルド長のブッセの目の色が変わる。
それだけ空間魔法使いは貴重なのである。
「彼らの目的はなんだ? ジェイなら知っているか?」
「ギルド長に言われたので将来の夢について調査を行ったところ、ナーリッツを中心とした貴族になりたいという夢を持っているとのこと」
「貴族か……他の者は?」
「メアリー、シュネ、アキーニャの3名はナーリッツの嫁になることが夢でナーリッツの貴族になりたいのも3人を娶るためかと」
「青臭いな。でも悪くない夢だ」
「私もそう思いますよ」
「若いですなぁ……」
ギルド長のブッセと校長のレーマンの2人も同調する。
マンシュタインはナーリッツの筆頭家臣になること、スターとマリーの2人はパーティーの支えになれればと書かれていた事をジェイシェットは伝える。
「ふむ、既に貴族になることを目標に据えて動いているのか」
「となると我々は下手に縛り付けるより、貴族の目に留まるような依頼を出していったほうがいいな。塩漬けにしていた高難易度依頼を片付けるチャンスだな」
ブッセは机から幾つか紙束を取り出す。
それにはフォーグライン辺境伯から依頼された普通の冒険者では達成困難だったり、依頼金に見合わない難易度の依頼が複数書かれていた。
その中でも特に緊急性を要していたのが、フォーグライン辺境伯の息子の治療薬の素材であった。
辺境伯には男子が2人いたが、長男は正妻の息子かつ、将来を有望視されている家中でも人気の高い人物で、次男の側室の子との仲も貴族の家では珍しく良好。
それどころか兄を支えるために率先して士官教育を受けていた努力の人であった。
まだ2人とも10代前半であるが、この度長男が難病にかかってしまい、その治療薬として地竜の血液が必要となっていたのである。
徐々に内臓不全を引き起こし、複数の合併症を引き起こして亡くなる奇病であり、嫡男の健康状態的に持ってあと3年とタイムリミットがかけられていた。
地竜の生息していると思われる場所は見当がついているが、秘境と呼ばれている場所かつ、ワイバーンと勝るとも劣らない強さの持つ竜のため、討伐難易度も高い。
宮廷魔導師の派遣も辺境伯は求めているらしいが、隣国との戦争で宮廷魔導師達も忙しく、ドラゴンスレイヤーと呼ばれるパーティーも秘境に出向いてまで地竜を狩りたいとは思わない。
辺境伯は自軍を率いて秘境に乗り込むとも言っているが、周囲の家臣達が必死に留めている状態であった。
もしこの依頼を達成できれば冒険者ギルドとしても辺境伯に大きな恩を売れるし、ナーリッツ達のパーティーも辺境伯から顔を覚えられるだろう。
「問題は地竜を倒せる実力があるかどうかだが……」
「ホーンタイガーを群れで倒せるので問題は無いかと。ただその場所に案内するために別の冒険者パーティーが必要になるかと」
「……秘境へ長期行かせるとなると……現状動かせるパーティーが居ないな。ジェイ、お前行けるか?」
「私は冒険者を引退した身ですよ……ここは辺境伯の魔法使いを借りるのはどうでしょうか」
「デーニッツか……奴なら実力を認めれば引率を買って出るかもしれないな」
デーニッツ・クロス……辺境伯のお抱え魔法使いであり、元冒険者上がりでもある。
実力は申し分ないのであるが、おべっかが使えない性格だったために宮廷魔導師として仕えるのは合っていないと、知り合いだった辺境伯家に転がり込んだひねくれ者でもある。
デーニッツは今50歳であるが、彼が20代の頃はプラチナランクのパーティーで活躍していた実績もある。
その後パーティーの解散や個人での活動に切り替わったこと、あとは辺境伯に仕えるからと一度引退したことでゴールドランク冒険者に格下げとなったが、それでもワイバーン討伐経験もあるので有望格を引き合わせれば行ってくれるかもしれない。
「辺境伯の息子さんのためだ、嫌とは言わんだろう」
「時期はどうします?」
「ジェイが行けると判断したら直ぐに行かせろ。この依頼を達成したらパーティー全員ゴールドランクに格上げする」
「了解しました」
ナツが居ないところで話が進んでいくのだった。




