第70話 マリー・プレプスの考え
「こんにちは……」
「よろしくお願いします……」
私の名前はマリー・プレプス。
冒険者予備校に通っている学生よ。
親友のスターと一緒に家を飛び出して冒険者になることにしたけど、右も左も分からないから予備校に通うことにしたわ。
私は魔法を放出することができない体質だったから、スターみたいに魔法を使って特待生のクラスに行けるか少し心配だったけど、入学試験で私の得意な武芸を使って、無事に突破することができたわ。
そして入学初日……私達のクラスにとんでもない人物が居たの。
その子の名前はナーリッツ。
ナツって今は呼ぶ仲になったけど、ナツが教室で空間魔法を披露したり、その異空間からホーンタイガーを幾つも出したのは正直驚いたわ。
私の実家が軍属だったから時々兄達やお父様が兵を率いて魔物狩りに出かけることがあったけど、ホーンタイガーを討伐した際には無数の犠牲者を出すほど激しい戦闘の末に勝利したと聞き及んでいたので、その頭を十数個も持っているってことはそれだけ狩れる戦闘能力を保有していると見て間違いない。
それに彼の周りに居る同村出身の少女達……メアリー、アキーニャ、そしてシュネーの3人もそこらの子よりも鍛えているのが服の上から見ても分かる。
私はそんな彼や彼女達を見て、どうにかしてパーティーメンバーに潜り込むことはできないかとスターと一緒に考えていた。
翌朝、私達が早朝から勉強をしていると、逆にナーリッツから声をかけてくれた。
最初は他愛のない話だったけれど、あれよあれよという感じで狩りに一緒に行く事になり、仮パーティーを組めることになった。
私は心の中でガッツポーズをし、狩場について調べたり、必要な道具の準備をして役に立てることをアピールしようと頑張った。
結果は殆ど4人におんぶに抱っこ。
それにブラッディベアーに襲われた際は恐怖で立ち竦んでしまったし、自慢の武芸を見せる事も殆どできなかった。
狩りが終わって皆と別れた後、スターと2人で反省会を宿でしたけど
「私達ナツの足を引っ張っただけに終わった気がするんだけど」
「うん……全く戦力になってなかったよね……」
どんよりと落ち込んでしまっていたが、それだけナツやメアリー達の狩りは予備校に通うまでもなく、既に一流であった。
魔法の使い方も上手だし、私と似たタイプのアキーニャことアキも武芸でなら勝てるかもしれないが、冒険者として必要な戦闘能力は確実に劣っている。
身体強化込みでもブラッディベアーに単身突っ込むことがどれだけの人ができるんだろうか……。
「強くなるしか無いよね」
「うん……でもナツ達が強くなれた理由を聞けたし、今からでもやり方を真似て頑張ってみよう!」
そう、私とスターは強くなれる秘訣を彼に習っていた。
私達も貴族ではないが辺境伯領では上の方の家出身。
魔力を上げる仕組みは家族から習ったりしている。
それは寝る前に魔力を空っぽにするまで使ってから眠ること。
これをすると微々たる量だけど少しずつ魔力が上がっていくのである。
私達も5歳の頃から毎日魔力量を底上げするトレーニングはしてきているが、ナツ達はそれだけでなく魔力のポーションを飲んで、睡眠分の回復をポーションで代用して魔力量を増やすというやり方があると教えてくれたし、その分のポーションも譲ってくれた。
このポーションはアキの特製らしい。
彼女も彼女で多才だな。
「えっと確か身体強化を最大まで引き上げて、飛行魔法で浮いて……探知魔法を最大範囲まで広げる!」
「私の場合は身体強化を最大にして、自己治癒をし続ける……」
スターと私もナツに言われたことを真似てみる。
すると3分もしないで魔力切れに陥り、意識が朦朧としてくる。
ポーションを飲み干すと、意識が明瞭になってきた。
「ポーション凄く苦かったりするけど、このポーションはギトギトしてるけど美味しい」
「でも胃もたれしそう」
「胃に回復魔法かける必要があるわね……」
そんなことを言いながらポーションが無くなるまで約2時間ほど繰り返してみると、明らかに魔力量が上がった気がする。
「スター、魔力量上がったよね?」
「うん、凄くって訳じゃないけど久しぶりに魔力量が明確に上がったって感じた」
ポーションの入っていた瓶は空になってしまい、明日も同じ事をするんだったらポーション貰う必要があるねとスターが言う。
「私達も強くなれるかな!」
「きっとなれる! 戦力になって……目指せドラゴンスレイヤーってね!」
「うん!」
その数日後、私達は大金が手に入った。
金貨42枚……実家から支度金として渡されたのが金貨5枚だったので約8倍。
そんな大金を1日で稼げるって……絶対にこのパーティーから抜けるわけにはいかない!
普通冒険者が稼げる日当って銀貨5枚でも上の方って聞くし……1週間に1度しか狩場に行けないとしてもこれは……。
「スター、他の子には言えないね」
「言ったらパーティーに入りたい人が殺到する未来が見えるわ」
それにこんな大金、今泊まっている宿に置いておくのは不安になる。
かと言って予備校に毎日持っていくのも不自然だ。
そこでナツが知り合いの商人に預けてしまおうと言い出し、その商会は貿易商としてこの町では名のしれていたクム商会の会長さんだった。
ナツが金貨6枚を手数料として支払っていたけど、多めに支払うことでトラブルを避ける彼なりの交渉術かもしれない……なんてことを考えていたら、予備校を卒業するまで稼いだ金は預かってくれるし、泊まっている宿への費用もクム商会が預かったお金から引き落とす形で支払ってくれることに……。
正直滅茶苦茶助かる。
ただ今の安宿は治安面から危ないと指摘され、パーティーメンバーならナツ達が泊まっている宿に一緒に泊まれば良いんじゃないかとクム商会の会長から提案された。
これはナツ達と関係を深められるチャンスだと思った私はこれに飛びつき、今の宿を引き払って移動することをきめた。
ナツ達が商会で商品を選んでいる時にスターから
「ちょっとマリー……どうしたのそんなにグイグイ押して」
「チャンスよスター! ここで少しでもナツ達と距離を近づけられれば絶対将来の糧になる」
「でもメアリー達を不愉快にさせない? 異性がナツに近づくの」
「どうなんだろう。それとなくメアリーやアキ、シュネに聞く必要があるけど、同じ宿に泊まるのは情報交換もしやすいから良いと思うのよね!」
「……はいはい、じゃあ荷造りしないとね」
「うん!」
こうして私達はナツ達が泊まっている宿に拠点を移すのだった。
そして冒頭に繋がる。
カウンターで店番をしている緑髪で胸の大きなお姉さんが相手をしてくれた。
「ナツ君達が言っていた予備校の生徒さんね。部屋に案内するよ〜」
お姉さん……ミクさんはのんびりした口調で私たちを3階の部屋に案内してくれた。
部屋はナツ達の隣らしい。
「2人部屋だから安心してね。でもナツ君達ってやっぱり魔法凄いの?」
「滅茶苦茶凄いです」
「だよね~、うちの宿は娼館もやっているから嬢の体調を彼らに見てもらったりするんだけど、治療費だけでこっちは元が取れるんだよね〜それに最近はお風呂のお湯の張り替えもしてくれているし」
「そうなんですか?」
「お風呂のお湯循環させているんだけど、大人数入ると少し汚れちゃってね。綺麗にするのに時間がかかるんだけど、彼ら一瞬で綺麗にするから大助かりなの」
「なるほど……」
それで宿代をタダにしているって凄いな。
ミクさんに案内された部屋は、今まで住んでいた宿よりも明らかに質が良かった。
実家のベッドよりも質が良いかもしれない。
「じゃあごゆっくり~」
洋服とかをクローゼットに仕舞いながら、私達は隣のナツ達に挨拶に行くのだった。




