第67話 狩場での狩り2
狩場の森の中を更に進んでいき、俺は魔物の反応があると皆に警告する。
「魔物……」
「動物よりは確実に強いから警戒してくれ」
マリーは手に持っている斧をギュッと握り、力が入っているが、俺が肩に手を置いて落ち着くように言う。
「数は4。恐らくオークと思われる」
俺は冷静に魔物の特徴を言っていく。
オーク……猪の様な顔をし、グピグピやブヒブヒといった豚の様な鳴き声をした二足歩行をする相撲取りの様な体型をした魔物である。
冒険者の実力を測る上でも基準にされる魔物で、ブロンズランクの冒険者はオークを狩れることを求められる。
雑食で、活動範囲も広く、それでいて動物より頭が回るので複数の集団を作り、群れで村を襲ったりする。
ただ肉は豚の様に美味しいらしい。
「僕達が殺ろう。アシストを頼む」
「任された」
マンシュタインとスター、マリーの3人が倒すと息巻き、オークの姿が見えた瞬間にマリーがまず飛び出した。
マリーは近くに居たオークを斧で斬りつけてオークの巨体を倒す。
周りに居たオーク達がマリーを囲むように動くが、マンシュタインが風の刃で斬りつける。
冒険者予備校の試験で石柱を破壊していた威力の風の刃なので、オークも簡単に切り裂かれ、腕や足が吹き飛ぶ。
スターも電撃の魔法でオーク達を感電させて動きを止める。
動きが止まったオークにマリーが斧を振り回して次々に首を吹き飛ばして、4体居たオークはあっという間に殲滅されるのであった。
殲滅されたオーク達を見るが、ズタズタになっていてこれでは売り物にはならないだろうと思い、俺は治癒魔法をかける。
頭を吹き飛ばしたりしても体はまだ完全に死んでおらず、数分なら傷を癒やすことができる。
まぁ首を接合したとしても頭に血が巡ってないため、くっつけたとしても脳死状態で、蘇生するのは難しいのであるが……。
傷だらけになっていたオーク達が次々に綺麗な体になっていくのを見て、マンシュタインが相変わらず器用だなと突っ込みを入れる。
「マンシュタイン、もう少し綺麗に倒してくれ。これじゃあ買取拒否されるぞ」
「わ、悪い。初めて魔物を倒すから興奮してしまった……」
逆にスターの電撃とマリーの首切りの連携は上手くできていた。
首を切り落とすだけなので、体に傷が付いていないのもポイントが高い。
体を治癒したら、そのまま血抜きをして、オークの体を異空間にしまっておく。
すると、猛スピードでこちらに近づいてくる魔物の反応を見つけた。
「草むらに隠れろ!」
俺がそう叫ぶと、一斉に草むらに飛び込み、魔物が姿を現す前に隠れきる。
現れたのは体長3メートルを超える巨大な熊の魔物……ブラッディベアーの登場である。
血なまぐさい熊という名前の通り、凶暴かつ動物の肉を好み、狙いをつけた生き物をどこまでも追いかけるという習性を持ったゴールドランク相当のパーティーで当たるべき魔物であった。
俺の横に居たスターが恐怖のあまり震えているが、念話で散らばった皆の安否確認を行う。
『落ち着け、この程度の熊であれば何も問題は無い……アキ、注意を引き付けられるか?』
『了解』
『俺が不意を付く。万が一しくじったらメアリーとシュネがカバーしてくれ』
『『了解』』
するとアキが大熊モードになりタックルしてブラッディベアーを吹き飛ばした。
数メートル吹き飛んだブラッディベアーは怒りでアキしか見えなくなる。
そこに消音の魔法で音を消した俺が飛びかかり、異空間から出したワイバーンの剣で亜空切断。
ブラッディベアーの頭が消え去り、首から噴水のように血を噴き出しながら、ブラッディベアーはその巨体を地面に伏せた。
「終わったぞー」
俺は血抜きをしながら、隠れていたメンバーに報告し、出てきてもらう。
「す、すげぇ……ブラッディベアーを一撃かよ……」
「それよりアキさんが熊に?」
「ああこれ?」
アキがまた大熊に変身して皆の前に現れる。
アキの一族に伝わる魔法で獣人の血を活性化させて熊に変身しているだけとアキは説明するが、マンシュタイン達は今日色々な新しい魔法を見せられてそんな魔法があるんだ……と納得している様子。
実際は転生によるチートなんだけどね。
というかアキの熊形態の大きさも大きくなったな……さっきのブラッディベアより大きくないか?
「成長期!」
そうかー成長期かー……成長期終わったら何メートルの大熊になる気だよ……。
マンシュタイン達の注目はブラッディベアーの方に向く。
毛皮を触ったり、切断された首の断面を見ていたり……すげぇすげぇと言うbotになってしまった。
「頭はどこに行ったの?」
「ん? あるよ」
俺は異空間からブラッディベアーの首を取り出すと、舌をだらりと出した熊首をマリーに投げ渡した。
マリーやマンシュタイン、スターはまじまじと見て、これを倒せるようにならなくちゃいけないのか……と不安そうに呟く。
「まぁマンシュタイン達の魔力量でもブラッディベアーくらいは狩れるようにならないと。まだ魔力の成長鈍化は来ていないんでしょ?」
「ああ、まだ魔力は伸びていると思う」
「じゃあ魔力を伸ばす訓練を続けていけば良いよ……あ、そうだ。伸ばすトレーニングを受けないか?」
「伸ばすトレーニング? 魔力を効率的に伸ばせる技があるのか?」
「あるよ。俺達もそれで伸ばした」
勿論俺達が魔力を伸ばせたのは神の間でのセックスなので、そこは嘘であるが、効率的に魔力を伸ばす方法は神の間で見つけている。
魔力を空になるまで使い、魔力回復のポーションを飲んで回復、また魔力を空になるまで使うを繰り返せば、睡眠による超回復をしなくても、魔力総量を引き上げることができる。
勿論魔力量の伸びが鈍化するタイミングがあるが、それでも自身の魔力の才能を一気に上限近くまで引き上げられるのは今後生きていく上で大切である。
「でもそのやり方って魔力ポーションを大量に必要としないか? 魔力ポーションって全体の1割を回復するやつでも金貨1枚するけど」
日本価格で10万円。
質が良い物は白金貨で取引されたりもしているらしいが、うちには本物の錬金術師であるアキがいる。
ワイバーンの血を使うことでお猪口1杯分で魔力を全回復するポーションを作り上げていた。
欠点は味がギトギトしているため、好みが分かれる点であるが、豚骨背脂ギトギトスープを飲める人は逆に好きな味になっている。
胃もたれも普通にするので、俺達は薬品としてしか見ていなかったが……。
「やり方は簡単だ。夜に宿とかの部屋の中で、身体強化を最大までやった状態で、飛行魔法を使い、空中で探知の魔法を最大距離まで引き上げると一瞬で膨大な魔力を消耗するから、意識が飛びそうになったらこのポーションを1口飲む。そうすると魔力が回復するからそれを寝るまで繰り返す。30分もやれば魔力量が上がっている実感が出てくるはずだ」
俺はマンシュタイン達にアキ特製魔力回復ポーションの瓶を手渡す。
赤くドロドロした液体が瓶の中で蠢いている。
「あ、ありがとう……騙されたと思って試してみるよ」
マンシュタイン達はあまりに強引なやり方に若干引いていたが、それで魔力が手に入るなら安いと考える様にしたらしい。
「ちなみに材料は……」
「それはまだ言えないな……信用が足りません」
「いや、魔力回復ポーションを渡す時点でおかしいからな」
そんなやり取りをしながら俺達は狩りを続けるのであった。




