第65話 狩場の申請 特製サンドイッチ
翌日、今日も予備校で普通に授業。
今日の授業は昨日ジェイシェット教官が言っていた様に狩場についてであった。
「この町から他の村に繋がる街道や畑がある場所以外は野生動物が住んでいる。他にも魔物が生息している地域を狩場と言う」
教官曰く、町に近いほど安全が確保されるが、未開の地に進めば進むほど魔物の質、量共に増えていくとのこと。
俺達が住んでいたゲンシュタイン騎士領なんかは辺境というより秘境だな。
村が存続しているだけでも奇跡である。
南部の辺境伯領でも幾つか魔物が生息している地域があり、冒険者や辺境伯軍が定期的に間引きをすることで現在の勢力圏を維持しているとのこと。
その地域では魔物を狩ることが推奨されていて良好な狩場となるらしい。
勿論町に近い場所ほど冒険者が多いため、獲物の奪い合いになり、何の成果も得られない……なんてこともあるらしい。
「町から徒歩で1時間ほど歩いた場所に複数箇所魔物の生息域がある。ここで狩りをする場合はパーティーの申請をして複数人で当たるように」
特待生になるくらい実力があるのであれば、町の近場の魔物であれば遅れをとることはないだろうとのこと。
野生動物が居るエリアもあるが、そういうのは予備校に来ていないアイアンの冒険者や予備校に入りたての新人のために行かないほうが良いらしい。
あと普通に人が多くても得られる獲物が少ないというのもある。
町には各地から食料が入ってくるが、肉の供給が間に合っていないらしい。
だから冒険者を使って動物や魔物を狩って、肉を供給してもらうというのが上の判断らしい。
なので肉の買取値段は他の素材に比べて高いが、ちゃんと解体できる人がいない場合はなるべく早く狩った獲物を冒険者ギルドに持ち込み、専門の職員に解体してもらうようにとも言われた。
素人がやると素材を傷めたりするので、狩れると思ったら解体ができるポーターを雇うのが良いとのこと。
冒険者予備校でもポーターの育成はしているから、夏休み終わる頃にはある程度解体技術が仕込まれたポーターも育つらしいので考えておけらしい。
その後詳しい狩場についての場所と出てくる魔物や動物について教わり、今日の授業は終わったのだった。
昼休み、俺やメアリー達は昼食のサンドイッチを食べ、パーティーメンバーに加わったマンシュタインやスター、マリー達3人もお弁当を食べながらどこの狩場に行くか話をしていた。
「ちょっと遠いけど人が少ない狩場の方が良いよな」
「ああ、人が多ければそれだけ獲物が少なくなるからな。僕もそれで良いと思うよ」
マンシュタインが頷くと周りの皆も頷いていた。
「となると徒歩で2時間かかるがここの森なんてどうかな? 色々な獲物がいるらしいけど」
マリーが提案したのは町から南東に進んだ位置にある森だ。
町から離れているし、街道が繋がっている訳でもない。
行き来がしづらいので不人気の狩場らしい。
「ナツ君なら空間魔法で狩った動物や魔物を収納して運べるから、多少移動に時間がかかっても巻き返せるんじゃないかな」
スターもマリーの提案した狩場に賛成する。
俺やアキ、メアリー、シュネも獲物が多い方が良い。
ただマンシュタインが
「ナーリッツ……いや、俺もナツって呼ぶけど、ナツの空間魔法の収納できる量ってどれぐらいなんだ? いや、ホーンタイガーの頭をあれだけ収納できるから結構な量あると思うんだが」
確かに知らない人達からしたら俺の収納量がどれぐらいあるのか気になるわな。
「うーん、言いふらすなよ。この冒険者予備校の校庭の数百倍の面積を収納できるぞ」
「は、はぁ!? そんなにか! というかそんなに魔力があるのか?」
「まぁそうだな。空間魔法って対象者の魔力量に依存するらしいし、俺の場合魔力はあるが、体が追いついてなかったから少しずつリミッターを外して容量を増やしていったらそれぐらいの広さになったな。正直まだ増やそうと思えば増やせるけど……」
「ナツ、魔力どれだけあるんだよ……」
マンシュタインが驚いた後に呆れ始めるが、俺だけじゃなくてメアリー、アキ、シュネの3人も同じくらい魔力はあるんだけどな。
そこはまだ言わなくても良いか。
「じゃあこの狩場で決定な。ジェイシェット教官に狩場の申請しておくぞ」
「ああ、リーダー頼むね」
「おう」
そのまま俺達はサンドイッチを食べていくが、マンシュタインが
「そのサンドイッチは自作なのか? 随分と美味しそうだな」
そう質問してきた。
「せっかくだし食べるか? パンは既存品だが、中身を少し凝ってみた」
「良いのか?」
「異空間内に沢山作り置きしているから気にしないで食べてくれ。その方が味の改良に繋がる」
「じゃあ遠慮なく」
マンシュタインが食べると、目を開いて驚愕の表情で固まった。
「なんだこのサンドイッチ……美味すぎる……」
スターとマリーも食べたいと言うので渡すと、彼女達も固まった後に美味しい美味しいと言いながら味わうように食べ始めた。
パンはマンシュタインに言った様に町のパン屋で普通に買える小麦粉の比率が多い茶色の食パン。
具材はワイバーンの肉をローストビーフ風に低温でじっくり焼いて薄切りにし、それに塩コショウを眩した物や、ワイバーンの卵と普通の鶏の卵を混ぜて卵サンドにした物、メアリーが作っていたジャガイモとワイバーンの肉のベーコンで和えたジャーマンポテト風サンドイッチの3種類を用意していた。
地球のコンビニに売っているサンドイッチと比べても勝る味だと思っていたが、マンシュタイン達には刺激が強すぎたかもしれない。
「僕……このサンドイッチが毎日食べられるんだったらナツに忠誠を誓うわ」
「おい、やめろよ。で、味はどうだった?」
「最高。今まで食べてきたどんな料理よりも美味しかった。強いて言うならパンをもっと白パンにアップグレードした方が良かったかも」
「スターやマリーはどうだ?」
「最高だった……意識が飛びかけたわ」
「どこでこの食材手に入れたの?」
「俺の住んでいた村では近くで手に入ったんだけどな」
嘘は言っていない。
マンシュタイン達がそんな食材なら町に持ってくれば特産品になるだろうに……ゲンシュタイン騎士領の領主は馬鹿なのかと言っていたが、倒せる者が居ないんじゃ特産品になり得ないよな……。
その後、教官から狩場の申請が通り、俺達は次の休みの日に狩りに出かけることになるのだった。




