第63話 学友達の動き
私の名前はスター・レイマン……青髪に片耳に星形のイヤリングをしているのが特徴の至って普通のエルフの少女である。
いや、普通というのは語弊があるかな?
私の家のレイマン家はフォーグライン辺境伯家で代々魔法使いとして仕えてきた家柄で、私も例に漏れず魔法使いとしての勉強をしてきました。
ただ私の家は兄弟姉妹が多く、それでいて魔法使いとしては特筆するべきほど魔力量が多い訳でもなかったので年功序列……上の兄さん姉さん達が辺境伯に仕える家臣として取り立てられ、上から7番目の私には家臣の枠が回ってくることもなく、家族からも冒険者として身を立てることを勧められた。
貧しくもないので宿代とある程度纏ったお金は出してくれたが、頑張って食いつないでもせいぜい5年生活できれば良いところ。
冒険者予備校に入ってブロンズランクの冒険者になって、なるべく良い仲間を見つけ、冒険者として稼ぎ、シルバー……ゆくゆくはゴールドランクを目指せれば良いなぁなんて考えていた。
仲間と言えば1人あてがある。
私の家の近くに住んでいるこれまた辺境伯の家臣の家柄かつ、兄弟が多いマリー・プレプスというドワーフの少女である。
彼女の場合、家が軍事系の家柄で、男は辺境伯軍の士官として取り立てられるが、女性は家を出るか政略結婚の道具として家に残るかしか選択肢が無く、更に彼女の場合ドワーフなのに魔力を体外に放出できないという弱点を抱えていたのである。
その分、身体強化や自己治癒、武芸の腕もよく、何より明るく活発な性格で私とは幼馴染という関係だった。
彼女の場合、軍に所属している兄達より武芸が達者だったので、兄達も腫れ物を扱うような感じで、家の居心地が悪かったらしく、政略結婚したとしても兄と同じように扱われるくらいなら家を飛び出して強い男を捕まえてみせると意気込んでいたのである。
私が後衛、マリーが前衛を担えばある程度のパーティーにはなるんじゃないかと家を出る前に話していた事もあり、マリーと一緒に冒険者をやることにした。
私達2人とも年齢も10歳だし、ちょうどよい。
で、冒険者として私達は受付から説明を受けたが、どうやらまともな依頼を受けるにはブロンズランクになる必要があり、ブロンズランクに手っ取り早くなるには冒険者予備校を卒業するのが良いと説明され、冒険者予備校に通うことにした私達。
入学試験で私は特待生の合格条件である石柱の破壊に成功し、学費の免除を勝ち取り、マリーも身体強化と得意の斧を使った攻撃で試験官を倒して特待生として合格した。
私達の知識の中で冒険者予備校も貴族達が通うような学校と同じ様なもので、仲間を見つけるためには多少おめかしした方が良いと盛り上がって、初日からお洒落をして教室に入った。
他の生徒達もお洒落をしていたので、私達の考えは間違ってないと心の中でガッツポーズをし、マリーや周囲の少年少女達と談笑をする。
この時点で既に腹の探り合いが始まっているなと私はワクワクしながら、相手の実力を探っていた。
そうしていると、ちょっと周りの雰囲気とは別の人達が入ってきた。
周りの皆はお洒落をしているのに、その男女4人は長ズボンと長袖という動きやすそうだが、若干みすぼらしい格好をしていた。
その集団にサドラー家のマンシュタイン君が話しかけていた。
サドラー家は辺境伯の重臣を多く輩出している家で、親族の中には騎士や準男爵みたいな爵位を持っている人物もいるくらい凄い家出身の子だ。
私ですら知っているくらいの大物がなぜ冒険者予備校にと思いながらも、4人組とマンシュタイン君は知り合いらしく話していたが、教官が入ってきて授業が始まった。
授業中、教官がちょっとみすぼらしい格好をしてきた4人組を褒め、既に魔物を倒したことがあるだろという質問をした時に事件は起こった。
彼らはホーンタイガーを倒したことがあると言ったのだ。
ホーンタイガー……角から魔法を放つ虎で、ゴールドランクの冒険者パーティーでもやっと倒せる強い魔物であり、1頭倒せれば白金5枚は硬いと言われる冒険者達の自伝でもラスボスの様に語られる魔物である。
クラスメイトの男子からは嘘だと言う暴言が飛び出すが、私でも流石に嘘だと思ってしまう。
すると嘘つき呼ばわりされた4人組の唯一の男子が手を動かすと空間が歪み、そこから10個以上のホーンタイガーの顔面が床に散らばった。
その中の1つを掴んで教官に投げ渡し、教官も確かにホーンタイガーであると認めていた。
つまり彼らはホーンタイガーを最低でもあの数は倒していることになる。
教官が腕のある冒険者は容姿で判断することができないと言うが、確かに着飾っている私達が逆に滑稽でしかない。
しかも彼は空間魔法が使える。
ホーンタイガーの頭を収納していたが、間違いなくもっと色々な物を収納しているのだろう。
空間魔法をある程度使えれば辺境伯様に家臣として雇われるのに、それでも冒険者を目指すというのが凄い。
昼休みになると彼ら4人組に他の人達が群がり、色々質問攻めをしていた。
私とマリーはそれからちょっと距離を取り、様子を伺う。
今私達の格好は彼ら4人からしたら冒険者としての格好ではない。
つまり彼らの中でのマナーに反しているし、その状態で質問攻めなんかをしたら良い印象を持たれないだろう。
「ねぇスター……彼らが物語に出てくるような本物の英雄なのかもしれないわね」
「確かにそうかも……彼らとパーティー組みたいけど……あそこに割って入るのは難しいわよね……」
男子1人に女子3人……質問している人達の話を盗み聞きした限り彼らは同じ村出身の幼馴染らしい。
しかも既にホーンタイガーを狩れるほどの実力者、彼らに何かメリットを与えないとパーティーには入れてもらえないだろう。
「何かあるかな? 私達の強み」
「うーん……空間魔法が使えるってことは荷物持ちもいらないわよね……」
「体で誘惑する?」
「彼女達にキレられるわよ」
「そうだよね……」
今は空間魔法を使った男子に皆の注目は集中しているが……切り崩すんだったら周りの彼女達からかもしれない。
「本丸を落とすんだったらまずは周りの堀を埋めるところからね」
「……ああ、なるほど」
マリーも理解したらしい。
幸いなのは私達は同じクラスの学友になれたことだ。
同じ教室で授業を受ける以上、適切に動けば機会が巡ってくるチャンスを得れるかもしれない。
「まずは適切な服装に着替えてからね」
「そうだね」
私とマリーは彼らとパーティーを組むために動き始めるのであった。




