第62話 冒険者予備校入学 場違いな服装
数日後、いよいよ冒険者予備校に入学する前日となり、俺達はどんな服を着ていくか悩んでいた。
「どんな服着ていけば良いんだ?」
「学校の指定だと動きやすい服装で来てください……って書かれているよね……僕達が村で狩りをしていた時の格好でいいんじゃない?」
「あのワイバーンの鱗を錬金術で無理矢理繊維にして作った服か……」
ぱっと見だとジーパンに茶色の長袖のシャツという鉱山労働者にしか見えない格好であるが、動きやすいし、防御力は凄まじい。
耐火性能も高く1500度までだったら燃えない。
冒険者になるんだからとアキが数日かけて作った特注の服である。
「別にお洒落していくような場所でも無いし、それで良いか」
俺達は地味な服装でいくことにするのだった。
(しくじった……)
特待生ということで指定された教室に入ると、めっちゃお洒落した同級生と思われる人達が座っていた。
というか……動きやすい服装って書いてあったのに、ゴスロリファッションの少女やスーツをビシッと決めている少年、明らかに動きづらいだろという結婚式で着るようなふわふわドレスを着込んでいる少女なんかもいた。
明らかに俺達浮いている……。
「やぁナーリッツ君、久しぶりだね」
「マンシュタイン」
マンシュタインの格好は騎士みたいな格好をしており、白と黄色を基調とした騎士軍服というべき服装をしていた。
剣が似合いそうだが、腰には杖を下げている。
「ナーリッツ君達は……随分と普通の格好で来たんだね……」
「知らなかったんだよ……なんだ? 冒険者って仮装するのが普通なのか?」
「それは……」
マンシュタインがそう言いかけると教官と思われる人物が入ってきて着席するように言われた。
テーブルの上には名札が置かれており、それを目安にして着席する。
「今年も今年で英雄被れの少年少女が多いな。まともな服装をしてきたのは4人だけか……社交界と勘違いしてはいないか?」
おお、教官は俺やメアリー達が思ってくれていたことを代弁してくれた!
「まずは自己紹介を。このクラスを担当するジェイシェットだ。つい最近まで冒険者をしていた。ランクはシルバー……まぁ冒険者の中だと中の中だな。世間知らずな貴族階級の坊っちゃん嬢ちゃんに冒険者の常識を叩き込むのが仕事だ。勿論魔法使いの教官も居るが、そいつは非常勤講師だ」
ジェイシェット教官は続けて言う。
「どうせお前達は英雄譚や冒険者から成り上がった人物達の自伝を読んで貴族に返り咲く為に、もしくは自身を大貴族に売り込む為に冒険者になろう……と思っているんだろうが、そんな甘い世界じゃねーよ。そうだな……先に現実を言っておくと、この中で貴族に雇われるくらいの実績を残せるのは特待生で半数……いや、5人ってところか。1代限りでも貴族になれる可能性があるやつはこの中で1人居ればいいんじゃねぇかな」
教官の発言に聞いていた少年少女達は憤る。
現時点で教官を倒して特待生を勝ち取った人もいるくらいだ。
シルバーランクで引退した教官を舐める人も居ることだろう。
「今年も反骨精神だけは一丁前の夢見がちなボンボンが多いな……特待生はこれだから……そこの地味な服を着た……ナーリッツ、アキーニャ、メアリー、シュネー」
俺達の名前が呼ばれたので返事をする。
「お前ら田舎出身だろ」
「ええ、まぁ……」
「動きやすい服装……いやその感じ、既に実戦で使っているな。魔法で何を狩ることができる」
流石にワイバーンって言うのは不味いよな……なんて言おう。
俺が迷っているとメアリーが
「ホーンタイガーくらいであれば狩れますよ」
と答える。
すると他の生徒達からデタラメだとか嘘をつけなんて罵声が飛ぶ。
女子生徒はクスクスと笑っている……感じ悪いな。
『ナツ、証拠出してもらえる? ホーンタイガーの頭で良いから』
念話でメアリーからお願いされた。
おいおい、空間魔法を皆の前で使わせる気かよ。
『ここからはある程度目立った方が得だよ。それに僕達平民じゃん。実力差見せておかないと嫌がらせが発生するかもよ』
『へいへい』
俺は異空間に手を突っ込むとホーンタイガーの首をゴロゴロと出現させた。
「教官、これを証拠としますわ」
俺がそう言ってホーンタイガーの首の1つを教官に投げる。
教官は受け取ったホーンタイガーを見て少し驚いた表情をした後に
「お前ら、こういうのが本当の天才ってやつだ。ホーンタイガーをこの量倒せるんなら既にゴールドクラスの実力はあるな。優れた冒険者ほど外面からは想像が付かない場合がある。一見冴えない腰の低い青年がドラゴンスレイヤーだったりすることもある。外面だけで相手を評価すると痛い目に遭うぞ」
「良かったな。事前に気がつくことができて」
教官からホーンタイガーの首を投げ返されると、俺は空中に異空間を開けて、中に仕舞った。
転がしていた他のホーンタイガーの首も一瞬で片付ける。
横を見るとマンシュタインが驚愕の表情で固まっていた。
「ここは社交界じゃねぇ。汚れてもいい服に次から着替えてこい。走ったり泥だらけになったりするからな」
「さて、入学したからには1年間でみっちり冒険者としての常識を叩き込まなければならない。冒険者予備校は朝8時より授業開始、50分授業、10分休憩の言語学、歴史、算術、冒険者としての教養の4つの授業を毎日行う。昼食休憩を1時間取り、午後からは訓練を3時間行う。掃除をして午後4時30分解散となる」
黒板に授業の時間割や日程を書いていく。
この世界1週間が6日、それを5回繰り返し30日で1ヶ月となっているが、5日間が授業、休息日の地球だと日曜日に当たる日が休みとなっていた。
更に3学期制になっており夏と冬には約1ヶ月の長期休暇があるらしい。
卒業の関係もあり、実際に授業を受けるのは12ヶ月中9ヶ月とのこと。
それで卒業できるようにスパルタで詰め込み教育を行う。
あと学期末には筆記のテストがありそれをクリアしないと夏と冬は長期休暇返上で補習が行われ、最後の卒業試験を合格できなかった場合は留年もしくは退学になるらしい。
日本の高校よりも容赦なく厳しいな。
「学校は朝7時から開かれているから、早朝にここで勉強するのもよし、放課後も18時30までは教官も働いているから質疑応答は受け付ける」
「また、冒険者予備校に通う者は既に冒険者になっている者以外は、冒険者の仮免許を発行している。それがあれば南部地域での冒険者活動を行うことができる」
「特待生の中にも金銭を稼がないといけない者もいるだろう。休息日や長期休暇期間中は冒険者ギルドで買取されている物の採集したり、狩猟を行なっても良いとする。ただしそれは自己責任だ。怪我をしたり命を落としたりもするから実力以上の場所に挑まないことだな」
教官は脅しの意味も含めて生徒達に忠告を行う。
「さて、じゃあ早速テストを行う。筆記用具を忘れた者は挙手を行え……居ないようだな。どれくらい学力があるのか調べる常識的な問題だ。その点数によって学習内容が変わる事もあるから真剣に受けるように」
俺達はいきなり抜き打ちのテストを行わされる羽目になったが、内容は凄く簡単。
文字読み書き、四則算の問題、冒険者として行われるであろう金銭のやり取りの文章問題……詰まったのは周辺地域の地名問題と帝国の歴史についての問題。
多少は神の間で勉強してはいたが、周辺地域の地名なんて知らないし、歴史も超大雑把。
今まで村で生活していたので皇帝の名前すら知らない。
この2つは壊滅したが、他の問題は見直しもして全問間違いが無いことを確認してから提出するのであった。




