第60話 入学試験
あっという間に冒険者予備校の入学試験の日になり、嬢の皆さんやミクさん、オットーさん達に頑張れよと応援されて宿を出ていった。
冒険者予備校の前では入学を希望する少年少女達が列をなしており、俺達も出願届けを出してから試験の列に並ぶ。
「確認しておこうか、入学試験は主に2つ。1つは100キロの砂袋を指定された場所に時間内で運ぶこと。2つ目は魔法を使える人は魔法は年によって変わる試験に魔法を使って合格すること。魔法が使えない人は試験官と模擬戦」
「私達の場合前者ね」
アキが俺の言葉に同調する。
列に並ぶ人達をざっくり見た感じ俺達と同じくらいの歳の子もちらほらいるが、だいたい中学生くらいの年齢の人達が多い様な気がする。
「結構年上が多いな」
俺がボソッと呟くと前に並んでいた少年が理由を答えてくれた。
「年上の人達は冒険者として既に活動している人達が殆どさ。君達は魔法使いかい?」
「ええ、まぁ……」
「ふーん、突然変異かただの馬鹿か。見ない顔だから他所から来たんだろ。初めまして、フォーグライン辺境伯に仕えるユークリッド家のマンシュタインだ。合格できたらよろしく」
「ゲンシュタイン騎士領のニューベルク村出身のナーリッツです。横に居る彼女達は俺の幼馴染のメアリー、シュネ、アキーニャです。全員一定以上の魔法は使えると自負しています」
「よろしくね」
「よろしく!」
「マンシュタインさん、よろしくお願いします」
メアリー達3人もマンシュタインに挨拶する。
「なるほどね……彼女連れってわけか」
「はい」
「おいおい、否定しないのか」
「実際3人は俺の彼女ですし」
「モテるんだね」
マンシュタインも苦笑いしている。
俺はマンシュタインの方がモテるだろうとは思う。
金髪碧眼だし、短髪で刈り揃え、動きやすい服装ながら清潔感があり、中々値が張りそうだ。
辺境伯の家臣と言っていたが、実家は裕福な家なのだろう。
「さてと、順番が来たね。先に待っているよ」
マンシュタインが最初の試験を受ける番になり、試験官が合図を出す。
受験者達は走り出して砂の入った袋を持ち上げると、それを担いで白線の超えた場に下ろしていく。
持ち上げられない人や運んでいる途中に崩れ落ちる人、白線までたどり着けなかった人は問答無用で脱落。
身体強化の魔法が使える人達は楽々運び、魔法が使えない人でも背負ったり持ち方を工夫したり、あるいは自身の筋力だけで突破する人もいる。
冒険者になると荷物を運べなければ長期間の活動が不可能だったり、素材や荷物を運べなかったり……ブロンズ冒険者としてやっていくのに最低限必要な資質なのであろう。
一応これをクリアできれば戦闘の資質が乏しくてもポーター……荷物持ち候補として冒険者予備校に通うことができる。
まぁポーター候補に特待生は存在しないのであるが……。
マンシュタインも身体強化の魔法が使えるのか、軽々と袋を担いで、白線を越えた。
1分ほどで合図が鳴り、運べなかった人達が肩を落として会場から立ち去っていく。
10人受けて3人から4人が脱落するという割合か?
多い様な少ない様な……。
まぁ今回受けに来ている人達の人数が400人くらい居るし、最終的には250人から280人くらいが残るんじゃないかな?
さて、俺達の番がやって来た。
試験官の合図と共に目の前の袋を担ぐ。
うん、身体強化が使えるならこれくらい楽々と運べないとダメだな。
ダッシュで袋を運んで白線を越える。
特に波乱もなく、メアリー、アキ、シュネの3人も白線を越えて合格を勝ち取る。
「おめでとう。魔法が使えるって言うくらいだから身体強化の魔法は使えるか」
「まぁね。使えないで魔法使い名乗ったら恥ずかしいでしょ」
「そりゃそうだ」
マンシュタインと話しながら次の会場に移動する。
魔法使いの試験を受けるか、試験官との模擬戦を希望するか、試験官から聞かれて、俺達は魔法使いの試験を受けると答える。
試験官から注意として魔法使いの試験で適性なしと判断された場合、試験不合格になるので、今からなら模擬戦に切り替えることもできるぞと言われると、集まっていた何人かが模擬戦側に移動する。
残った人達はおおよそ60名くらい。
特待生の人数は決められてないが、アルフレッドさんやクムさんから町に移動する最中に聞いた話では、多くても20名と言われた。
まぁここに居る魔法使い候補の中から選ばれるだけでなく、試験官と戦って勝っても特待生になれる事もあるらしいので、どれくらい特待生になれることやら……。
「試験内容を発表する」
俺達の前には高さ2メートル、幅1メートルくらいの石柱が建てられていた。
「試験内容はこの石柱を魔法を使って倒すことができれば合格、破壊できた場合特待生合格とする」
なるほど……至ってシンプルだ。
するとマンシュタインが挙手をする。
「挙手した受験者、発言を許可する」
「はい、石柱を手で触れることは許されますか」
「それは構わないが、石柱は地面に埋められている。それを手で掘り起こし倒す様な真似は認められていない」
触って石柱の材質を調べることは良いらしい。
ただ制限時間は1人5分と決められていた。
試験開始前であるが、俺達は既に情報を集め始めていた。
「地中には50センチくらい埋められていて、地面も固めてある。アキ、石柱の材質は?」
「ん~とね……硬さ的には銅と同じくらいかな? 私達が普段生み出している石より柔らかいね」
メアリーは電撃系の魔法は今回相性が悪いだろうと答え、シュネは今回の石は1000度もあれば溶けると推測した。
「見ただけで分かるのかい?」
「ええ、まぁおおよそは。田舎にいたんで、狩りする時に情報収集や相手の強さなんかを素早く判断しないと死ぬので」
俺達的にはワイバーンの事を言っているが、マンシュタイン的には野生動物の事と思ったのだろう。
熊とか倒すなら大変だもんなと同調していた。
うーん、すれ違い……。
まぁこの程度であれば破壊は簡単だ。
何人かの受験者が既に受けて火球を飛ばしたり、水で地面をぬかるませて、倒したり、念力の様に石柱を引っこ抜いて倒したりと頑張っている。
ただ2組20人が終わった段階でまだ破壊できた人は現れていなかった。
「さて僕達の番かな」
マンシュタインと同じ組になっていた俺達も魔法を使う準備をする。
「それでは初め!」
まず動いたのはマンシュタイン。
風魔法を使い、石柱を中心に竜巻を起こし、風の刃で石柱をガリガリ削っていく。
時間はかかったものの細切れになり、特待生の基準をクリアする。
メアリーは五指を石柱に向けて、指先から高圧力の水を発射し、ウォーターカッターの要領で手を握った瞬間に石柱は切り裂かれて崩れ落ちる。
アキは土魔法で自身でも石柱を作ると、身体強化の倍率を上げ、槍投げの様に石柱を放り投げる。
高速でぶつかった試験用の石柱は粉々に砕け、逆にアキの石柱は貫通して、地面に深々と刺さっていた。
シュネは思いっきり息を吸い込むと、口から熱線を放出する。
やや白色に光り輝いた熱線は一瞬で石柱を融解させて、ドロドロに溶け出してしまった。
「皆気合入ってるな」
「ナーリッツだけだよ残りは」
マンシュタインに急かされるが、まだ時間は3分以上残っている。
俺はゆっくり石柱に近づき、手を当てる。
次に振動の魔法を使うと、石柱は一瞬で崩壊し、崩れ落ちる。
「やるじゃないか」
「マンシュタインもな」
こうして俺達は文句無しに特待生として冒険者予備校に合格するのであった。




