第56話 久しぶりにお風呂に浸かる
俺達はクムさんに紹介されて、当面の間泊まることになった娼館兼宿屋の【妖精の止まり木】に向かい、そこでクムさんの姪っ子のミクさんと出会った。
彼女に宿の仕組みを紹介してもらった後に俺達は長期間泊まることになる一室へと案内されるのであった。
「ここが皆さんに泊まってもらう部屋になりま〜す」
ガチャリと扉を開けると、セミダブルサイズのベッドが4つ、部屋の四方に置かれて居るのが見えた。
扉のすぐ横にはトイレがあり、トイレを見ると現代日本でも見られるような洋式のトイレになっていた。
タンクの中に魔石を埋め込む場所があるらしく、そこから水が流れて汚物をタンクに流し、それを別の魔石で徐々に洗浄及び消失させていく仕組みになっているらしい。
「うちの宿ではトイレは全部このタイプ。というより町のトイレもこのタイプが多いよ。冒険者の方々が魔石を回収してきてくれるから成り立っているんだよね〜」
とのこと。
ミクさんは部屋の壁にかけられた時計を指差し、18時以降から夕食が始まるから気をつけてねと言われるのであった。
ミクさんが部屋の鍵を俺達に渡してから出ていくのを確認してから、ようやく長旅中着ていた服を全員脱いで、洗浄の魔法をかける。
そのまま部屋にあるクローゼットにかけて、俺達は布が有名な村で買ったTシャツにぶかっとしたズボンに着替えてベッドにダイブ。
「はぁ……やっと移動が終わった……飛行の魔法だったら半日で行けるよ……」
メアリーがベッドに座りながら答える。
アキも長旅疲れたと言うが、結果としてこんなにも良い宿を紹介してもらったのは助かるわぁと言っていた。
シュネは既に眠たそうにベッドの上でうとうとしている。
現在の時刻は16時、まだ飯まで時間がある。
「1回風呂に行かねぇか? 洗浄の魔法で体も清潔にしているとはいえ、お湯に浸かって疲れを取らないとさ」
「確かにお風呂に浸かりたいかも」
アキも同調する。
「……シュネはどうする?」
メアリーが聞くが、シュネはすぴーすぴーと寝息を立てていた。
「ありゃりゃ……眠ってるね」
「起こすのも可哀想だから俺達で先に風呂入ってくるか」
「そうだね」
結局俺とアキ、メアリーの3人で風呂に入ることにする。
部屋を出て、受付にいたミクさんに風呂でのマナーなんかはありますかと聞くと、体を洗ってから湯船に浸かる事、体を洗ったタオルは湯船につけないこと、性行為をしないことの3つを守ってくれれば良いらしい。
日本の銭湯のルールに似ている。
あとタオルはレンタルしているよと言われ、せっかくなので今日は借りることに。
ちょっとゴワゴワした手ぬぐいサイズのタオルにバスタオルのセットを渡された。
「使い方はわかるよね?」
それは勿論と言い、ミクさん曰く田舎から出てきた人だと初めての風呂は勝手が分からなくなるらしいが、俺達みたいにちゃんとルールを聞く人は基本大丈夫らしい。
借りたタオルを持って大浴場に行くと、靴を脱ぐ場所があり、アキが作ってくれたブーツを脱いで、靴箱に入れる。
そのまま竹の様な植物で作られ籠……ラックの中に服を脱いで入れて、手ぬぐいサイズのタオルを持って大浴場に繋がる扉を開ける。
「「「おお!」」」
そこにはジャグジーの様な丸い形をした大きな風呂が2箇所置かれていて、1つのジャグジーに10人くらい入れそうな広さをしていた。
手前の壁沿いには洗い場があり、蛇口に魔石が埋め込まれていて、そこからお湯が出てくるようになっているし、洗い場の横には石鹸が常設されていた。
恐らく嬢のお姉さん達が3人ほど風呂に浸かって談笑している。
俺達は彼女達に会釈した後に洗い場で体を洗うのであった。
「石鹸だけだと髪の毛を洗うのは辛いね」
「ナツ、異空間に私が錬金術で作ったシャンプーまだ在庫あったよね? それ出せない?」
「他の人見ているから空間魔法は使いたくないな」
メアリーとアキがシャンプー出してと言ってきたが、あまり空間魔法が使えることは広めないほうが良いとクムさんに言われていたので、今回は我慢してもらうことに。
代わりに俺は魔法でアキとメアリーの髪に洗浄魔法とヘアケアの魔法をかけて、髪の毛に光沢が出るくらい綺麗かつサラサラにしてあげた。
メアリーのピンク色の髪やアキのブロンズ色の髪が輝いて見える。
それを見ていた嬢のお姉さん達が
「ねぇ君! もしかして魔法使い!」
「女の子達の髪が凄い綺麗になったけどあれも魔法!」
と、食い気味に聞いてくる。
俺は魔法で頭皮を洗浄し、髪質を整えたと答えると、私達にもやってくれない! 胸もんでも良いからさ! と言われた。
メアリーとアキは自分達のぺったんこの胸を見ながら俺を見てくる。
「凄くそそる提案なんですけど」
俺はアキとメアリーの肩を組んで
「既に恋人が居るんで!」
キャーキャーとお姉さん達は可愛いと言って抱きついてくる。
結局胸が顔に当たる当たる……。
メアリーがお姉さん達の胸を恨めしそうに見ている……というか揉んでいる。
もみくちゃにされた後、お姉さん達に俺は髪を綺麗にする魔法をかけてあげてサラサラにする。
「すごーい! 今まで無いくらい綺麗になった!」
「お客さんもし良かったらミクにこの魔法教えて上げてくれませんか? 彼女も少し魔法使えるので」
お姉さん達の1人がミクさんにこの魔法を教えて上げて欲しいと言われた。
別に隠すような魔法でも無いし、魔力の消費量も少ないので、火種が付けられるくらいの魔力でも1人くらいだったら綺麗にすることができる。
「お客さんもしかして長期滞在ですか?」
「はい、冒険者予備校に通おうかと思いまして、1年間はお世話になると思います」
するとお姉さん方は喜び、もし良かったらまたかけて欲しいとも言われるのだった。
体を洗った俺達は久しぶりに湯船に浸かる。
「ふう……気持ちいい……」
「そうだね……神の間以来の広い風呂じゃないかな」
「あれでも風呂だと村にいた時にも五右衛門風呂みたいなのは作ってみたよね」
「あれは……狭いじゃん」
「まぁそうね……」
村で五右衛門風呂みたいなのを作ってはみたものの魔法で温度調整を常時しておく必要があって、ゆっくり浸かるみたいにはできなかった。
普通に木を燃やしてお湯にした時もあったけど、今度は熱くて水を足す羽目になり、ゆっくり浸かれなかったのである。
「あぁ~疲れが抜けていく〜」
「これが毎日入れるのは最高……別に混浴は気にならないな〜」
「男にとっては混浴って天国じゃん。女性にとっては知らない人に裸を見られるのは嫌悪感がやっぱりあるよ」
そうアキが言う。
メアリーは頭にタオルを乗っけておじさんみたいに湯船でとろけてしまっている。
俺も湯船に浸かって疲れを取り除いていく。
久しぶりにゆっくり浸かれたので45分くらい湯船でメアリーとアキの2人と駄弁りながら風呂に入るのだった。




