第53話 途中の村に到着
ライラックさんとの夜警も終わり、ジャズさんとアキに交代して、俺は眠りに就く。
日の出と共に目覚めると、俺は朝食の準備を進める。
ポテトサラダにワイバーンの細切れ肉入りのオニオンスープ、ワイバーンのひき肉を塩と柑橘系の果実汁で味付けしてパテにし、野菜と一緒に挟んだハンバーガーを作った。
好評で、長期間の行商だと焼きたてのパンを食べることが中々できないので、ありがたいとクムさんに言われた。
銀の翼のメンバーからは俺の料理の腕を褒められると同時にやっぱりワイバーンの肉は格別だということに落ち着いた。
移動を再開し、難所は荷車から降りて野生動物に襲われないよう警戒しながら進んだり、荷車の中で色々教えてもらったりしながら進んでいき、1週間が経過したある日、狼の遠吠えが聞こえてきた。
「アルフレッドさん、狼の群れが馬車に近づいてきます」
いち早く探知した俺がアルフレッドさんに報告すると、馬車から全員飛び降りるように言われ、馬車を守るように取り囲む。
「ナツ! 狼は何処から来ている」
「南東から……約10匹ほどが向かってきています。追い払いますか」
「いや、ここで倒しておこう。追い払うだけだと追いかけてきて夜襲を仕掛けてくる場合もある」
「了解しました。罠を設置します」
俺は地面に手を当てると何箇所かに罠を設置した。
狼の群れは俺達を包囲するように動き、一斉に襲いかかってくる。
すると罠が発動して狼が踏んだ場所の地面が抜け、穴に落ちる。
穴の中には尖った石槍が剣山の様になっており、落ちた狼が串刺しに。
「俺達もいつも通りやるぞ! ジャズ」
「あいよ!」
銀の翼のメンバーも戦闘に移行する。
まず盾持ちのジャズさんが狼の攻撃を受け止め、両手剣を持ったライラックさんが狼の首や顔を斬りつける。
ジャズの死角をアルフレッドさんがカバーし、マーシーさんが魔法で狼を攻撃していく。
なるほど、これが連携の取れた冒険者の戦い方というやつか。
「シュネ!」
「わかってる」
シュネは残った狼に狙いを付けると、一瞬で地面を凍らせる。
馬車や俺達は凍らないように調整し、狼の足だけが凍るようにし、足が凍って動けなくなった狼にアキが魔法で作り出したの石の杭が発射されて、急所を貫く。
あっという間に狼は全滅し、俺達の完勝であった。
「ほほぉ、やっぱり皆さん解体も上手ですね」
俺達は倒した狼を解体して毛皮を剥いでいくと、荷車に隠れていたクムさんがやってきて、俺達の解体の様子を褒めてくれた。
「冒険者って普通解体とかも習うんじゃないんですか?」
俺が質問すると、近くにいたジャズさんが答えてくれた。
「ポーターみたいな荷物持ちや解体に特化したメンバーが居るならまだしも、そうじゃなかったら解体しないで魔物や動物を冒険者ギルドに持っていった方が良いんだよな。冒険者ギルドには専属の解体要員が居て、解体してくれるんだ」
「冒険者予備校でも言われるぜ、下手に解体はするな、素材が駄目になるからってな」
「なるほど……」
ただクムさんは
「しかしナツさん達の解体は冒険者ギルドの解体要員さんと遜色ない出来です。商人目線ですと、十分な腕前ですよ」
「そう言ってもらえると助かります」
でも野生動物はまだしも、ゴブリンみたいな魔石以外活用部位が無い魔物とかはどうするのかと聞くと、そう言う魔物は討伐の証明となる耳や鼻を削いで、魔石を体内から取り出したら地面に埋めるか燃やしてしまうらしい。
放置すると別の野生動物や魔物をおびき寄せることに繋がるからだとか。
「討伐だけが目的の魔物の場合は討伐を証明できる部位を切り取って、魔石回収したらそれで終わりだ。町に持ち込む事は無いな」
「なるほど」
それにとジャズさんは付け加えると、冒険者はある程度場数を踏むまでは魔物を狩るのではなく、魔物の領域に生えている植物の採集をして稼ぐらしく、銀の翼も普段は野生動物を狩るか、魔物の領域に入ったとしても浅瀬で薬草を採集するに留めているらしい。
「それだけでも欲を出さなければ十分に食っていけるし、蓄財もできる。本来魔物を狩る時は複数のパーティーで役割分担して倒すものなんだぞ」
そう言われてしまった。
ワイバーン狩りを目的とするクラン(まずパーティーでワイバーン狩りをする者はほぼ居ないらしい)も偵察、誘導、罠製作、襲撃と役割を分担して狩るらしい。
「全員ワイバーンを狩れる実力があるって言っていたけれど、本当に凄いわね。シュネちゃんの足を氷漬けにするのもそうだし、石の杭を複数本操って確実に仕留めるアキちゃんも凄いわ!」
「でも今回もナツの手柄だな。よく狼の襲撃に気がついたな」
「空間魔法の応用ですよ。俺定期的に探知の魔法で周囲の警戒をしていたのと、空間魔法を併用することで探知の範囲を広げることができますので」
「はえ……魔法使いって便利だな……マーシーできるか?」
「ごめん、無理だわ。広範囲の探知は魔力を結構消耗するから、私には無理だし、出来ていたら普段からやっているわよ」
「それもそうだな」
アルフレッドさんが笑い、マーシーさんもやれやれと言った感じで解体した狼の肉を集めている。
それをシュネが高火力の炎で焼いてしまう。
狼の肉は硬くてあんまり美味しくない。
筋も多いし、食べるとしたらホロホロになるまで煮込む必要があるがそんな時間は無い。
金にもならないので焼いてしまおうと言うことになり、シュネが焼いていた。
そんな襲撃イベントを挟みながら、俺達は中間の村に到着するのであった。
「おお、綿花畑が広がってる……」
「ここら辺は木綿の栽培が盛んで、良質な布を作ることで有名なんですよ。皆さんの村にも売りに持ってきていたのがここの布ですよ」
「なるほど……」
クムさんに教えてもらう。
そしてクムさんがもし良ければ蜂蜜等がまだあるのでしたらここで布と交換しておきませんかと言われた。
町だと蜂蜜は売れるのであるが、別の場所でも産地を抱えているらしく、少し買い叩かれてしまうらしい。
なので俺達から買っていた蜂蜜や木苺ジャムはこの村で全て布と交換してしまっているらしい。
それだけここの村の布は町で高値で売れるらしい。
ただ俺がいきなり蜂蜜を売り出すわけにもいかないので、異空間から保管している蜂蜜の壺を取り出し、クムさんが蜂蜜を売ってくれませんかと交渉する。
「俺達が居なくなったからニューベック村で毛皮の仕入れも出来なくなるので、今回でクムさんはなるべく利益を出しておいた方が良いでしょう。俺達も色々教わって勉強になってますし、今後も村に塩を運んでもらわないといけないので、付け届けということでこの蜂蜜は譲りますから」
「なるほど……いやぁ、ナツさんは商人になっても成功するでしょうな!」
クムさんは俺から蜂蜜を受け取ると荷車の小麦粉と一緒に売り始め、村人達がクムさんの周りに集まり、布と交換していくのであった。
俺達も小麦粉の袋を運んだりして手伝い、そのまま夜は宿で休むことができたのだった。
安宿と言われたが、流石良質な布の産地……ベッドは実家のよりふかふかで温かいし、体を洗うために貸し出してくれたタオルなんかも良質だった。
料理は不味くも無いが美味しくも無いって感じだったが、半日ゆっくり休むことが出来たのだった。




