第51話 常識を学ぶ
「さてと」
俺達はテントの設営をした後に、焚き火を囲んでアルフレッドさん達銀の翼のメンバーの皆さんやクムさんから常識を学んでいた。
「全員が魔法使いでワイバーン倒せるって……本当なのか? 言っちゃ悪いが……アキちゃんだっけか。熊の獣人だよな? 身体強化だけではワイバーンは倒せないと思うんだが……」
ジャズさんがいうのもご尤もで、普段のアキは耳や尻尾が熊っぽい小熊の獣人にしか見えなかった。
ドワーフとの混血であるが、ドワーフ自体が背が低いのであまりドワーフとして見られる事はなかったのである。
「私ドワーフとの混血なので土魔法が得意なんですよ。なので身体強化で石柱をワイバーンにぶつけて倒す事ができます」
「随分とパワフルなやり方だな……」
銀の翼のメンバーはドン引きしているが、話を続ける。
「君達が優秀な魔法使いである事はわかった。冒険者予備校に通う理由も常識を学ぶため……それも良いだろう。でも冒険者として大成するには上との繋がりも大切になってくる。ねえクムさん」
「ええ、アルフレッドさんの言う通りです。貴族との繋がりを持てると最適ですね」
「貴族との繋がり……どうやって繋がれば良いんでしょうか?」
俺はアルフレッドさんに質問すると、手っ取り早いのは冒険者として有名になること。
ワイバーンが狩れるでなくても貴族の領地に出没する害獣や魔物を討伐していったり、貴族が支援している依頼……今回みたいな辺境への商人の護衛依頼なんかも冒険者ギルドの評価が上がって、巡り巡って貴族からの難易度の高い依頼を請け負う事に繋がるなんてこともあるらしい。
「ワイバーンみたいな強力な魔物を倒して持ち込めば名声は一気に上がるんだけど、それだと地方ではなく中央……帝都で売り込んだ方が良いだろうね」
「帝都ですか?」
「うん、冒険者というより宮廷魔導師から出世を狙うパターンだ」
冒険者から宮廷魔導師を目指すパターンは十数年に1人居るか居ないかであり、殆どの宮廷魔導師は貴族として教育を受けてきている。
各自派閥や師弟関係が複雑に絡み合っているが、貴族になるのであれば宮廷魔導師を目指すのが手っ取り早いとされているらしい。
あとは地方の大貴族のお抱え魔法使いとして仕えるパターン。
これは多くの冒険者が目指す王道の出世街道であり、最初に言った冒険者として名声を高めていけば声がかかる可能性があるらしい。
「ワイバーンが倒せるくらいだから貴族を目指すという選択肢は普通に現実的だと思う。俺的には地方での成り上がりをお勧めするけどね」
「それまたどうしてですか?」
「中央の貴族は特権を守るために成り上がり者を囲んで叩く習性があるからね。庶民出身だとどうしても貴族達から嫌がらせを受けることになるから。その点地方から成り上がる際にはその領主が後ろ盾になってくれるからね……なーんて俺も偉そうに言っているけど、冒険者予備校の授業で習った事を言っているだけだが」
ジャズさんが追加で、戦争で活躍する方法や未開拓地を開拓して貴族になる方法もあると教えてくれた。
帝国の北東部では隣国と小競り合いが続いている為、そこで活躍すれば軍属として貴族になれる可能性も無くは無いとのこと。
あとは帝国の南西部及び中央東部から南東部に広がる未開拓地の開発……労力はいるが、開発に成功すれば世襲貴族になることも夢ではないし、地方なので、貴族のしがらみも薄いとのこと。
一般的な冒険者が目指すやり方ではないが、ワイバーンを倒せるほど魔法に長けているんだったら可能なんじゃないかと提案してくれた。
「結構成り上がると言っても色々あるんですね」
「まぁな、クムさんみたいな商人として成り上がりを目指す手もあるけどな」
「ナツ君の様な空間魔法を使える人物なら引く手数多でしょうが……ワイバーンを倒せるのであれば魔物を倒して稼いだ方が実りは良いでしょうね。大貴族に仕えるとしても便利使いされて終わってしまう可能性も高いですから」
結構親身になって色々考えてくれる。
読心術が使えるメアリーが腹の底を確認しているが、どうやらここで色々恩を売っておいて、俺達が偉くなったらお零れを貰えたら良いなと思っているらしい。
俺としても先輩冒険者や商人の方と仲良くなっていて損になることは無いのでありがたい。
せっかくなので冒険者予備校についても詳しく聞いておく。
アルフレッドさん達曰く冒険者予備校は冒険者として生活していくための技術を教えるだけでなく、一般教養やある程度の算術、地域の歴史、文字の読み書きなんかも覚えるための学習機関としての役割を持っているらしい。
そもそも冒険者の一番下の階級であるアイアンは冒険者であるがごろつきの延長線でしかなく、町の治安を守るために冒険者として登録させることで犯罪を犯した時に捕まえやすくするようにする身分登録の延長でしか無く、商人達から依頼を任されるようになるにはブロンズ級に上がっておく必要があるらしい。
冒険者予備校を卒業したらブロンズ級から始められるのは、冒険者予備校が責任を持って、この人物は一定の信用を与えることができますよ……という証明の証であり、だからアイアンの冒険者でも金を貯めてから冒険者予備校に通ってブロンズを目指す……なんて人物もいるらしい。
そして冒険者予備校の大きな目的としてパーティーを組む時に役立つというのがある。
学友同士で固まりパーティーを組むことで生存率を上げ、それが結果として各人の技量の向上に繋がり、冒険者としての質を上げる。
「パーティーは基本3人から8人だ。それ以上はクランと呼ばれるようになる」
「クランですか?」
「クランは冒険者内のギルド……相互援助組織みたいな物だ。徒党を組んで、新人を育成し、クランを強化し、クラン内で物質の融通をする。大きな商会と提携して素材を卸す契約をしているクランなんかもある。貴族を目指す冒険者が将来の家臣を囲い込んだり、優秀な人が愛人を囲い込む為にクランを作った……なんてのもある」
「まぁクランを設立する場合は冒険者ギルドからの許可及び、1人以上のゴールド級冒険者もしくは3人以上のシルバー級冒険者が在籍している必要があるんだけどな。もしナツ達がクランを設立するんだったら俺達も入れてくれよ。力になるぜ」
「ありがとうございます。考えさせてもらいます」
他にも冒険者予備校では狩った魔物を運ぶ人員……ポーターも育成しているのでそう言う人物と契約を結んだり、冒険者予備校と提携している商人との伝手を作ったり……あとは貴族を継げない次男や三男以下の子供達が冒険者になって一旗揚げようとする場合もあるらしい。
特待生の多くはそういう元から教養がある人物が殆どらしく、俺達の実力なら間違いなく特待生になれると思うから、そういう教養を持った人物と伝手を持ったり、パーティーメンバーに組み込めれば良いんじゃないかと提案してきた。
今のところ俺達は4人でやっていくつもりなのでパーティーメンバーを増やそうとは考えて無いのだが、一応頭に入れておこう。
「そんな感じだな。まぁ人との繋がりを作る場と思った方が良いぞ」
「なるほど……参考になりました。ありがとうございます」
「いやいや、これぐらいどうってこと無いから」
アルフレッドさんに色々教えてもらった後、野生動物からの襲撃を警戒するために2人1組交代しながら夜警するという話になり、俺は2番目を任され、口数が少ないライラックさんと夜警をすることになるのだった。




