第44話 切り札の開発
冬……山に囲まれた窪地にある村なので雪はあまり積もらないが、それでも厳しい寒さが始まる。
この時期は特に農作業があるわけでもないので雪が降った翌日に行われる雪かき以外は特にすることがない。
ただ食料の管理に気をつけなければならないので、記念日とかの特別な日以外はいつもよりも厳しい食事となってしまうのである。
俺は少し量の減った朝飯と夕飯の分、昼飯を多く食べることでカバーしていたが……。
「んん、ワイバーンの肉の味噌漬け……これも合うな」
「でしょ〜! 味噌作り成功させた甲斐があったでしょ!」
「ナイス! アキ!」
冬前に味噌や醤油と言った日本人には馴染み深い調味料の錬成に成功したアキのお陰で、俺達は昼食に味噌汁と焼肉をいただく事が出来ていた。
「やっぱり元日本人としては味噌汁に限るね」
「……よし! 醤油もあることだからあれを作ろう」
「あれ?」
俺はアキに豚骨醤油ラーメンを作りたいと言うと、良いねとアキも乗り気。
小麦粉も節約しながら使っていたのでまだ余裕がある。
「いっちょ作りますか!」
豚の肉や骨は現状俺達だと手に入らないので猪を狩ってきて、その肉や骨を活用する。
まぁ豚も元を辿れば猪だし、出来るだろう。
金属の大鍋……は残念ながら用意できなかったので、陶器の鍋で代用する。
解体した猪の足、背骨、大腿骨を一度よく洗ってから鍋に入れてとにかく煮込む……時短の為、アキに頼んで錬成してもらい、先程の食材達から出汁を取ってもらう。
出汁に猪の背脂、にんにく、玉ねぎ、生姜(玉ねぎ以外は森で生えていた)を投入し、更に煮込んでいき、醤油を加えて味を整えることで、豚骨醤油ベースのスープが完成する。
これに豚肉ブロックで錬金術を駆使して短時間でチャーシューを作り出し、キャベツ、もやしをトッピングとしていく。
麺の方は神の間で何度も作っていたので魔法を駆使することで中太麺を作り出し、スープの入った鍋とは別の鍋で湯がいていく。
器を陶器製の器にギトギトの豚骨醤油スープに麺を入れていき、先程のチャーシュー、キャベツ、もやしを山盛りにして野菜マシマシ豚骨醤油ラーメンの完成である。
「「「「いただきます!」」」」
転生してから初めて食べるラーメン……お味は実に美味。
「うん、このジャンク感がたまらない」
「食べ盛りだからかな、脂ギトギトは前世だとあんまり好きじゃなかったけど、美味しく感じる」
「美味い美味い!」
「滅茶苦茶美味しい!」
メアリーは前世で食べた経験から苦手意識があったらしいけど、今回食べてみて、普通に美味しく感じたらしい。
アキとシュネは種族的に竜人、そして熊の獣人の血が騒ぐのか、脂ギトギトだろうがとても美味しそうに食べている。
逆に作った俺のほうが食べ終えると胃もたれ起こしてしまい、当分食べたくないと感じてしまう始末……。
アキとシュネはお代わりまでしてラーメンを食べるのだった。
作ったスープがまだ残っているので異空間に仕舞い、味噌ベース、醤油ベース……ワイバーンの余った骨でも出汁を取ってみてスープにしてしまい、その他にもポテトスープやオニオンスープを大量に作っては異空間に仕舞っていった。
異空間であれば腐らないし、温かい状態で保存することができるのでね。
作り置きしておいてちまちま飲んでいるのである。
皆には内緒で、夜お腹が空いた時にこっそり飲んでいたりもするが……。
冬の間は野生動物達も冬眠してしまうので、狩りをする際も毛皮目的が殆ど。
魔物の領域にたまに行ってみるものの、魔物達も活動が鈍くなっていて、巣ごもりしてしまっているのが殆どである。
ワイバーンも山頂に集まって子作りしているっぽく、秋頃みたいに飛び回っている感じでも無くなっていた。
蜂蜜が垂れていた蜂の魔物の巣も冬になると流石に消費量の方が多いのか蜜が垂れてくることは無くなっていた。
なので狩り全般が探すのが大変だし、肉は冬眠で消耗していくため秋に狩った奴より美味しくなくなっている。
毛ツヤも悪くなっているし……。
なので狩りは春に来るという行商人に売る分を除いて行わなくなり、日中はもっぱら鍛錬ばっかり。
「エッチな事しても良いんだよナツ」
「いや、まだ精通もしてないので性欲が湧いてこないんだけどメアリー……あと俺ロリコンじゃねーし」
「あらら、残念」
「メアリーもこの年で自慰しているわけでも無いだろ?」
「まーね、私もまだ性欲は湧いてこないね。アキやシュネはどう?」
錬金釜で何か行っていた2人にも質問する。
アキもシュネも年頃になったら発情期が来るらしいので、それ以外の期間は基本ムラムラしないらしい……と両親から習ったとのこと。
発情期が始めるのは生理が始まってかららしいので当分は無いと言っていた。
「精神体の時は毎日ぐちゃぐちゃになるまで交わっていたのにねぇ」
確かに精神体の時はそれこそ3人の穴という穴から精液が逆流するくらいぶち込んだり、精液ボテ腹という漫画でしか見たことなかったプレイをやったけどさぁ……。
「あれは……男のロマンってやつだ」
「まぁそんな男を好きになった僕達も僕達だけどね……紳士だと思ったら野獣だったとは……」
「男は皆変態という名の紳士なんだよ」
空間魔法への理解度も少しずつ上がってきていて、最近だと短距離のワープが使えるようになっていた。
距離にして100メートルもいかない範囲であるが、空間魔法への適性とは相当利便性が高かったらしく、ワープ範囲内だと探知では確認できなかった高さや障害物の中に隠れている対象物も確認できるようになっていた。
それを応用して、圏内であれば対象に直撃するまでホーミングする魔法や先に射線を思い描き、それに沿って魔法を飛ばす……なんて事もできるようになった。
これが役立つのは洞窟だったり障害物が多い場面。
俺達の戦術として相手の攻撃を受けないように強い敵はまず石柱を出現させて障害物を作っておくという戦術を多用している。
アキは足場に、メアリーとシュネは隠れながら魔法を放つ為にそれぞれ使うが、俺の場合その石柱を蛇の様にジグザクで避けながら対象にぶち当たることができる。
逆に敵からしたら空を飛んで上空から絨毯爆撃するか、障害物を壊して攻撃するしか無くなる。
こちらから一方的に攻撃することができるのである。
更に最近俺の切り札として開発しているのが空間魔弾である。
魔弾というが弾丸の形をしているわけでは無く、親指サイズの渦巻く異空間と言ったほうが良いかもしれない。
こいつは当たった部位を防御力関係なく俺の異空間に飛ばせるという性質を持っている。
つまり当たった瞬間に相手の防御を無視して空間ごと切り取る訳で、試し撃ちした猪は当たったところが抉れて、臓物に穴が空いて出血多量で倒すことができた。
まだ操れる大きさも個数も1つしか無いが、これを規模を大きくするか、個数を増やして操ることができれば……切り札として機能することだろう。
俺は冬の間異空間の面積を広げながら、魔法の練習を続けるのであった。




