第42話 再び山へ
約1ヶ月ぶりの山へのアタック……今回は前回に比べて異空間の広さを数十倍にしておいたので、ワイバーンも十数匹くらいなら入るだろう。
それほど狩るつもりも無いが……。
俺達はアキが作ってくれたマントを羽織って森の中を進んでいく。
前回マッピングしたため迷うことなく進んでいき、魔物の領域に入る。
「魔物の領域だと地球での生態系の知識はほぼ当てにならないな」
「確かにそうだね」
シュネが同調してくれたが、目の前の光る巨大キノコを見ていると、ここが異世界であると改めて感じることになる。
「このキノコ……身体の回復効果があるキノコの変異種だと思うから収穫しておこうか」
「これが? 発光してるけど!」
メアリーが青白く発光している俺の背丈よりもでかいキノコが体に良いと言い出した。
「なに、キノコはキノコだ。シイタケみたいに乾燥させて水に戻して出汁を取ればそれが回復薬になったハズだよ……あの空間の本に書いてあった回復のキノコは松茸サイズが殆どって書いてあったけど……」
「大きさ数十倍じゃないですか! 別種じゃなくて?」
「うーん合っているはずなんだけどな……」
そんな巨大キノコがここらには無数に生えている。
「前回の道を少し外れたらこれか……魔物の領域は不思議でいっぱいね……あれ? このキノコは巨大エリンギみたいね……光ってないけど……」
アキが光ってないキノコに近づくと、キノコに目が浮かび上がり、腕が生えてきて殴りつけてきた。
「暴れキノコだね。キノコの群生地に紛れている魔物だったはずだ」
「解説している場合ですか!」
メアリーが呑気に解説しているが、アキの手助けしようと魔法を放とうとすると、アキがクロスカウンターで逆に暴れキノコをぶん殴っていた。
胴体にアキの拳がめり込み、吹き飛んで木にぶつかると、暴れキノコは漫画の様に目をグルグルに回して気絶してしまった。
「食べれるらしいけど食べてみる?」
「それよりトドメをさっさとしてしまいましょう」
ただキノコをトドメ刺すってどこを攻撃すれば良いんだ?
そう考えているとシュネがキノコを手で触れると、暴れキノコがガチガチに氷漬けになり
「これなら流石に死んだんじゃないですかね」
そう俺に言ってきた。
パワープレイである。
「ナツ、これしまえる?」
「ちょっと待ってな」
俺はシュネが持ち上げた暴れキノコを受け取ると異空間の中にしまい込む。
光るキノコエリアを抜けると少し開けた土地に出た。
「蜘蛛の巣?」
周りを見ると木々に繭がぶら下がっているし、蜘蛛の巣が至る所に張り巡らされていた。
探知での反応は1つ……ワイバーンには劣るが大きな魔力反応を感じる。
「上!」
アキがそう叫んだと同時に上から紫色の魔物が俺達を踏みつけようとのしかかりをしてきた。
アキの声と探知によって反応できた俺達は距離を取る。
現れたのは下半身が巨大な蜘蛛に上半身が人の女性の姿をした魔物……アラクネ。
「魔物でも高い知能と魔力を持ち、その糸で編まれた織物は高濃度の魔力を宿しているし、絹のような手だざわりで、白く美しい……って言われている魔物だね」
「解説どうも!」
メアリーが解説する中、蜘蛛の部分から糸が放たれ、俺達に襲いかかる。
交わすが、俺達の後ろにあった木に深々と突き刺さる。
俺達が避けるのを見ると、アラクネは女性の上半身をした部分を動かし、魔法を放ってくる。
それは毒々しい紫色をした液体の塊であり、それを上空に上げると、雨のように降らせてきた。
「任せろ!」
俺は土魔法で咄嗟に俺達の上空に土の板を出現させてアラクネが放った液体の雨を防ぎ切る。
当たりを見ると雨が当たった部分がジュゥと音を立てて草木が溶け出していた。
「溶ける毒液かよ! やべーな」
「風魔法で吹き飛ばす!」
メアリーが竜巻の魔法を放つと、毒液の塊に直撃し、離散。
最初の状況……いや、周囲に障害物になる物が一切溶けて無くなったから隠れられない分不利か?
「ナツ! アイツにスキを作って! 私とシュネでトドメ刺す。メアリーがサポート」
「「了解!」」
アキに作戦があるらしく、俺は念話のパスを今更ながら皆に繋ぎ、そのまま土魔法で石柱を周囲に沢山生やして障害物を形成する。
そのまま石柱が下から生えてくる勢いでアラクネを上空に押し出す。
それを見たアキは身体強化かつ変身で大熊モードになり、一気に駆け出して石柱を踏み台にし、空中から落ちてくるアラクネを地面に向かって両腕で叩き落とす。
落とされた先にシュネが作っていた炎の槍がアラクネに突き刺さり、一気に燃え上がる。
ギシャァァァ
アラクネの悲鳴が周囲に響き渡るが、俺達は完全に息の根を止めるため、アラクネの周囲を石壁で囲むと、シュネがオレンジ色に光り輝く巨大な火球を中に閉じ込める。
そのまま四角く石壁で囲い込み、丸焼きにしてしまう。
数十秒後に石壁が破裂し、炭化したアラクネだけが残るのだった。
ザクザクと黒曜石ナイフで炭化したアラクネを削っていくとワイバーンよりは少し小さいが、バレーボールくらいの大きさの魔石が出てきた。
俺が魔石を取り出している間にアキ達は糸の回収を試みていた。
しかし、毒液をばら撒いたお陰で溶けてしまい、ほぼ回収できていなかった。
「クソ〜アラクネの糸なんて錬金術の素材にもってこいな感じがしたのに!」
「仕方がないね……魔石はゲットできたから良しとしようか」
メアリーがアキを慰める。
と言うか毒液によって繭も溶け出して悪臭放つし、ドロドロに溶け出した中身が周囲に溢れている。
早くこの場から離れたくてしゃーない。
「早く行こうぜ」
俺は異空間に魔石を仕舞って先に進むのだった。
「山に到着したけど……少しルート変えただけで色々な発見を得れたな」
アラクネ戦以降は特に魔物に出会うわけでも無く、山に到着してしまった。
いや探知の範囲内には複数の魔物の反応はあったが、特に進行方向にいるわけではなかったので素通りし、2時間もかからずに山に到着した。
そのまま木苺ジャムパイを食べながらこの後どうするか話し合う。
「ワイバーンも見えるし、またワイバーン狩りをして、帰りに蜂蜜回収してから帰りましょうか」
「そうだね……前の場所に蜂蜜あるかな?」
「行きで見ておいた方がよかったかもね……うん! パイ美味しい!」
俺達は気合いを入れ直してワイバーンに再び挑む。




