第41話 ワイバーンの杖 日々の修行
ある日、アキが錬金術の成果物ができたと言われて、小屋に集められた。
「ふふーん、じゃあこれを見てちょうだい!」
アキが木の箱から取り出したのは俺達4人の為に作られたマントだった。
マントには全体にワイバーンの鱗が取り付けられていて、エメラルドグリーンに光っている。
「ワイバーンのマント……見た目の割には凄い軽くて、鱗の面は水をよく弾くわ。防御力もとても高くて……」
アキが石槍を生み出して突き刺すが傷1つつかない。
「魔物による魔法攻撃にも強くて、マントで身を包めれば魔法の防御壁が無くても耐えられると思うわ。ただワイバーンと戦うとなると、少々心もとないかもしれないけどね……で、本命はこっち」
アキは箱から杖を取り出した。
それも物差しくらいの小さいサイズではなく、俺達の身長と同じくらいの大きな杖である。
「ワイバーンの骨を使った一品よ。骨を削って槍の様にして杖の上部にワイバーンの魔石を埋め込んだの」
アキによるとワイバーンの翼の細長い骨に頭蓋骨を加工して杯状の器を作り、そこに巨大な魔石を取り付けた物になるらしい。
魔法を使う時に威力が上がる補助具の意味合いらしく、錬金術を駆使して体の魔力を効率的に活用できることに注力したらしい。
それに本来の使い方では無いが、とても硬いワイバーンの頭蓋骨と魔石によって上部が構成されているので、ぶん殴ってもそれなりの威力は出るだろうと武器としても使えるらしい。
試しにメアリーが広場で使用してみると、広場の土がうねうねと動き始め、綺麗に耕され、畝が作られると種が蒔かれ、小さな雨雲を作り出して水をやり、あっという間に芽が出て、蔓が伸びて、豆が実ってしまった。
「こりゃ凄いの作ったねアキ! 普通に魔法を使うよりも全然出力が違う!」
「でしょー……ただ欠点がワイバーン1体につき1本しか作れないんだよね……これ」
「まぁ頭蓋骨に魔石まで使っているからな。しかも錬金術を使った特注品だし……」
「というわけでまたワイバーン狩りに行かない?」
「それでも良いが、もう少し異空間を広げさせてくれ。今の状態じゃ全部収納できないかもしれないから」
「ナツ、早く空間を広げてよね! ……杖使いながら異空間広げたら早く広がるんじゃない?」
アキにそう言われて、俺は試して見ると異空間を半分の時間で倍の広さに拡張することに成功した。
「実質4倍の効率になった! これなら1週間もあればワイバーン数体収納できるスペースを得られると思うぞ」
「それまでは皆各自修行ということにしましょうか」
メアリーが今後の方針を決めて、俺達は修行に移るのだった。
俺の修行はほぼ最近は決まっていて、皆と昼の間に集まれる時間はおよそ6時間。
雨の日とかは流石に集まることができないのでそういう日は家の自分の部屋で食事までの間、身体強化の魔法で体に魔力を纏わせながら異空間を広げる修行を行う。
皆と居る時はアキが作ったワイバーンの杖を使って効率を高めてから異空間を広げる作業を2時間。
だいたい1時間で32畳くらい異空間の面積が広がるので、2時間やると64畳分。
それだけの面積があってようやくワイバーン1体を収納できるスペースである。
2時間修行したら俺はメアリーが修行で作った作物を受け取って、それで食事を作る。
メアリーは農作業を魔法で代行することで魔力放出の鍛錬とし、その過程で作物が収穫できるので、それを使って料理を作っていく。
まぁだいたい豆や芋、葉野菜が殆どなので、有り余っているワイバーンの肉を入れた野菜のスープだったり、蒸かし芋に塩を振った物を俺が作る。
たまに小麦粉を使ったミートパイを食べることもあるが、小麦粉は貴重なので3日に1度ほどの頻度になってしまっている。
メアリーに小麦は育てないのかと効くと、魔法で作るには効率が悪い……とのこと。
作れなくは無いが、小麦を多く育てるんだったら畑を広げる必要があるが、森の中を開発してしまうと村の人達に俺達が森で魔法を使って鍛錬していることがバレてしまうかもしれないので、これ以上森を開発するのは隠蔽上厳しいので、小麦の栽培しても量が確保できないとのこと。
だったら豆や野菜や芋など少ない面積でも多く収穫できる物を育てた方が良いとなる。
メアリーなりに考えがあるので、俺は別に何も言わないが、メアリーはとにかく農作業をしながら魔法の練習をしている。
一方でシュネは氷の塊を生み出して、それを別の魔法で破壊するという一般的な魔法の練習を主に行っていた。
シュネは他のメンバーに比べると魔力の循環や放出が他のメンバーよりもできているため、とにかく火力を上げているらしい。
シュネにつららの人格が覚醒してから、低温だった炎も徐々に温度が上がっていき、暗めの赤色だったのが、現在オレンジ色に変化していて、だいたい2000度前後の温度を放出できるようになっていた。
アキが何か高温で加工したい物がある時にもシュネが駆り出されて、指先から高温の炎を出して溶接したり、アキが土魔法で生み出した石を高温で溶かして黒曜石を作ったりもしている。
現状シュネだけが大規模な魔法……池全面を凍らせるとかが出来るので、修行で更に出力を上げている段階である。
最後にアキは半分の時間は錬金術、もう半分を魔法の鍛錬の時間に当てていて、味噌や醤油、油や塩などといった調味料類を積極的に作ってもらっている。
あとはチキンザウルスやホーンタイガーの骨や肉を肥料に加工してメアリーに渡したりもしている。
本人的には鉄や金属を使った物こそ錬金術で色々加工したいと言っていたが、中々鉄は手に入らないし、貴重な鉄は優先的に鍋に加工してもらっている状況。
魔法の鍛錬は土魔法で大岩を出して俺と一緒に身体強化をしてスクワットや腕立て伏せをしている。
現状の俺達の修行はこんな感じ。
まぁ成長というより神の間でできた出力に戻している感覚に近い。
魔力も毎日寝る前に空にして最大量を増やそうと努力しているが、上がる量は神の間にいた頃に比べて大幅に下がっているし、神の間にあった魔力測定機の様な機械も無いので、上がっているか感覚で掴むしか無い。
微量だからほぼ誤差なので上がっている感じは全くしないが、しないよりはマシである。
そんな修行を行ってまた山に挑むのであった。




