第37話 実食、各種魔物肉
山で探索した翌日、俺達はいつもの森の中にある秘密基地に集まっていた。
「ホイホイっと」
俺は異空間から蜂蜜の入った壺を取り出し、小屋の空きスペースに置いていく。
「ふう、これで異空間が多少すっきりした」
「それでもまだ余裕があるわけじゃないでしょ?」
「ああ、もっと異空間広げないとな」
アキに言われた通り、蜂蜜を取り出しても異空間のキャパは7割は埋まっている。
ほぼワイバーンのせいであるが……。
蜂蜜は腐ることが無いので小屋に置いておいても良いだろうということと、壺の1つを各自家に持ち帰って家族に渡すことにした。
まだ6歳なので農作業に従事される訳では無いが、それでもただ遊んでいると見られるのは家での居心地が悪くなる。
各々水汲みをしたり、洗濯物を洗ったりして家事の協力はしているらしいが、蜂蜜を見つけたと言って渡せば、家での評価が一時的にだが上がるだろう。
多分森の近くで遊んでいると俺達は村の人達から思われていると思うが、それに関して特に注意を受けることはない。
まぁ森の奥には行くなよ程度である。
それでも熊や狼とかは生息しているのだが、殺されたらそれまでとでも思っているのだろうか?
兄貴達も愚連隊みたいな悪ガキ達とつるんで森の近くを彷徨いているし、多分村にとって普通なことなのであろう。
とりあえず蜂蜜の一部は持ち帰るとして、他の物である。
小屋の前の広場……俺達が修行したり模擬戦をしている場所にまずは白いホーンタイガーの亡骸を取り出す。
やることは解体作業である。
「虎の肉って食べられるのか?」
「どうなんだろう……日本でも虎肉なんて食べたことある人の方が稀だろうし……」
「魔物だから味とかも違うんじゃない?」
「とりあえず解体していきましょう」
俺達は事前に魔法で黒曜石を作り、それをアキがナイフに加工した物を使って解体をしていく。
黒曜石ナイフって切れ味は良いけれど脆いし、力の入れ方を間違えると直ぐに壊れるので保護の魔法をかけて壊れないようにして使う。
石器時代の人達ってこれを普通にナイフとして使っていたんだよな……よく使えたなと言う気持ちになる。
ただ黒曜石の切れ味は凄く、ホーンタイガーの皮を簡単に切り裂くことができる。
腹を掻っ捌いて臓物を取り除き、毛皮をまず剥ぎ取る。
次に水魔法で血抜きをして、肉を取り除いていく。
腹部の中にハンドボール大の魔石が埋まっていて、それも取り除くことができた。
アキが今度錬金術で使うと言うので小屋の中に置いておき、最後に骨を洗浄して綺麗にしていく。
毛皮、肉、骨、爪、角、魔石……動物系の魔物から採取できる素材はこんな感じ。
続いてチキンザウルスを解体していく。
頭は潰れているし、内臓も殆ど引っこ抜いているので、ホーンタイガーより楽に思えそうだが羽を引っこ抜く作業がある。
一応魔法で一気に毟り取った姿はまんま巨大な鶏肉にしか見えない。
各部位ごとに肉を切り分け、壺に入れ、俺の異空間で保管していく。
チキンザウルスはむね肉の間にホーンタイガーと同じくらいの魔石が埋まっていた。
そして最後にワイバーンの解体である。
まず鱗を魔法で剥いでいき、纏った枚数を紐で縛って小屋に入れていく。
鱗は1枚が手のひらくらいの大きさで、厚みも3から5センチくらいある。
部位によってはそれよりも小さい鱗もあるが、エメラルド色に光っていて綺麗である。
鱗を剥ぐと柔らかい肉の部分が出てくるので、腹を掻っ捌いて内臓を取り出していく。
腸系は綺麗に洗浄すれば牛のホルモンの様に食べられるかもしれない感じなので洗浄後、壺に入れて異空間に保管しておく。
心臓や肝臓なんかは錬金術で薬になるらしいので別箇保管。
肉の感じは牛とも豚とも鶏とも違い、毒々しい色をしているがメアリー曰く神の間で乗っていた本によると竜種の肉はとんでもなく栄養があり、更に美味しいとされていた。
味についての記述は無かったらしいので食べてからのお楽しみである。
肉を解体している最中にワイバーンの魔石を見つけ、大きさはバスケットボールくらいであった。
中々の大きさ……これもアキが錬金術で使うらしい。
骨、爪……それだけでなく眼球や脳みそも錬金術で使える素材だとアキは喜んでいた。
何ができるんだろうか……。
全部を解体するのに、魔法を使っているのにも関わらず2時間もかかり、俺達は慣れない作業をして疲れてしまった。
「とりあえず飯にしよう」
俺がそう言って、異空間に仕舞ったホーンタイガーの肉、チキンザウルスの肉、ワイバーンの肉を人数分取り出し、木の棒で串刺しにして炎魔法で焼いていく。
焼き鳥を焼くというよりケバブの巨大肉を焼く感覚で縦で串刺しにした肉を焼いていき、火が中まで通ったのを確認し、洗って熱殺菌した黒曜石のナイフで焼けた肉を切り分けて木のプレートに盛り付けていく。
「疲れていると思うけど食べて元気だそうや」
全員に行き渡り、俺らは木を削って作った各自のマイ箸を異空間から取り出して、肉を摘んでいく。
「「「「いただきます」」」」
元が日本人だから俺達だけで何か食べる時はいただきますを自然と言ってしまう。
ちなみに家で食べる食事の時は両手を組んで目を閉じて神に感謝をと唱える。
ちょっと……と言うかだいぶキリスト圏っぽい祈りである。
とりあえず各種肉を食べ比べてみる。
まずはホーンタイガーの腕肉から食べてみる。
「ちょっと筋っぽくて若干癖があるけど不味くは無いな。美味しくもないけど」
これならば普通に豚や牛肉を食べた方が美味い。
癖というのも若干アンモニアの臭いがするのである。
サメみたいに体内で尿を蓄えているわけじゃないので激臭って感じではないが、臭い消しにハーブとかと一緒に燻製にした方が美味しかったかもしれない。
期待していたほどの美味さでは無かった。
次にチキンザウルスのもも肉……うん、鶏の肉をもう少し弾力ある感じにした肉だな。
鶏肉よりも肉汁が溢れ出てくる感じで普通に美味い。
現状調味料が塩しか無いが、照り焼きとかレモン醤油で焼くことができたら更に美味しそうである。
うん、柑橘系の汁と合わせて食べたいと思うし、これなら唐揚げとかの揚げ物をすれば肉汁が内側に閉じ込められてより美味しくなりそうである。
最後にワイバーンの腹肉をパクリ。
んん!
塩をまぶして食べただけなのにスパイスを何種類も混ぜ合わせた様な刺激的な味がするし、深みが凄い。
それでいて、くどく無く爽やかな口触り、舌の上でトロける感触……多分腹の部分だから脂身が多いんだろうが、普通に絶品である。
前世を含めてこんな美味い肉は食べたことない!
「ワイバーンの肉美味しすぎるでしょ!」
「これは毎日食べたい味すぎる!」
「ナツ……お代わりある?」
メアリー、アキ、シュナも全員が美味しい、絶品とワイバーンの肉を答えた。
こりゃ俄然ワイバーンを1人でも狩れる様になる理由ができてしまった。
「うーん、4人で昼間ワイバーンの肉を食べるとしても、大食いのアキ含めて2キロいかないくらい……800キロ近く可食できそうな肉が得られたから、食べきるのに1年以上かかるぞ……」
「いいじゃんいいじゃん。沢山保管しておいて町に行ってもこの肉を食べようよ」
「焼くだけでこの美味しさなら毎日でも問題無い」
「毎日とはいかなくてもワイバーンの肉はもっと保管しておきたいよね……というわけでナツは異空間の許容量を更に広げようか」
「結局そうなるか」
メアリーにそう言われて、俺は更に修行をすることになるのだった。




