第36話 VSワイバーン
さてさて、蜂蜜に群がる魔物をメアリーが片付け、垂れてくる大粒の蜂蜜を壺でキャッチしていく。
『すげぇ量垂れてくるな……』
上空で蜂の魔物がぶんぶん飛んでいるので見つからないようにこっそり蜂の巣の下に行くが、その巣が巨大なこと……。
50メートルくらいある巨木の半分にビルみたいな蜂の巣が引っ付いている。
蜂の巣だけでも25メートルくらいあり、そこから垂れてくる蜂蜜の雫も1滴で1リットルくらいある。
地面に着く前に空中でキャッチするが、1滴で壺が溢れてしまう。
『ナツ、貴重な甘味だからできるだけ確保してください!』
『錬金術にも使うからなるべく量確保して!』
『了解』
シュネとアキに言われて、俺は魔法の練習がてら作っていた陶器の壺の中に蜂蜜を入れていく。
25個目の壺が満タンになったところで壺がなくなってしまったので、地上に戻る。
すると地上では残った3人が新しく壺を作っていて、追加で確保してとおねだりされて、新しく作られたら大きな壺(容量10リットルくらい)を担いで蜂蜜をキャッチして、異空間に収納していった。
蜂蜜だけで異空間の5分の1が埋まってしまった……。
『マーキングしたし、また来れるからこれくらいにしておこう』
俺は女性陣がもう少しと言うのを振り切って、本来の目的である魔物の調査に戻るように説得する。
渋々彼女達も納得して探索を再開する。
山に向かって歩き続けると、いつの間にか森を抜けて山の近くに来ており、樹木が減って、岩肌が見えるようになってきていた。
山の上空を見てみると飛竜……ワイバーンと呼ばれるドラゴンの最下級の魔物が結構な数飛んでいるのが見える。
『想像以上にこの地域魔境な感じか?』
『一応チキンザウルスも竜種と呼ばれる魔物だからね。地上に空にこれだけの数が生息しているとなると……この地域は開発できたとしても底が知れているね』
メアリーが冷静に分析する。
東西は山を越えて数十キロ進めば別の貴族の領地に繋がっているらしいが……現状ではその距離を横断する道を作ることも往来することもほぼ不可能だろう。
『うーん、逆に魔物が蔓延っている地域に囲まれている場所を開拓できた領主様の先祖を褒めるべきか?』
『どうだろうねぇ〜まぁこの村に居ても将来性が無いことを再確認できたし、村の外に出た方が良いと認識できたから良かったかな?』
メアリーがそう締める。
俺もアキもシュネも頷く。
『さてと、ワイバーン……戦ってみるかい? 1体くらいなら皆で戦えば勝てる相手だと思うけど』
『もう少し森で普通の魔物で練習した方が良いんじゃないですか?』
メアリーは好戦的、シュネは慎重論を唱える。
俺はアキの方を見ると力こぶを作ってみせる。
戦いたい感じか。
『4人がかりで倒せるかやってみるか。アキ、逃げる時に肥やし玉を使うが良いか?』
『勿論』
俺の異空間に保管されている肥やし玉。
ぶつけた相手に強烈な悪臭を発生させて、嗅覚を麻痺させる代物で、人間に使ったら気絶するくらいの……ほぼ兵器である。
野球ボールくらいの大きさで、コンビニとかに置かれているペイントボールの様に普段は匂いはしないのであるが、破裂すると激臭がするのである。
山に行く前に逃走手段として用意していたのである。
『じゃあはぐれのワイバーンを探しますか』
『群れから離れているの居るかな』
探知の範囲をなるべく広げて、孤立している個体を俺達は探す。
すると森の方に降りていく飛竜を目視で確認することができた。
『あれにしよう』
俺はアキを背負いながら飛行の魔法で山を降っていく。
シュネとメアリーも俺の後ろを飛行し、森に降り立つ。
探知の魔法でワイバーンの魔力を確認しながら森を進んでいくと、池で水浴びをするワイバーンがそこに居た。
翼を水に浸けて、鳥のように翼を洗っている。
近くで見ると、恐竜のプテラノドンみたいな感じでは無く、某モンスター◯ンターに出てくる火竜を緑色にしたような見た目をしている。
最弱のドラゴンとは言われるものの、普通に迫力は十分である。
『作戦は……』
俺が作戦を伝えると、皆頷いて、周囲に散った。
最初に動いたのはシュネで、池を一瞬で氷漬けにすると、水浴びをしていたワイバーンも下半身を氷漬けにされてしまう。
ワイバーンの咆哮が轟くが、次にアキが石槍を生み出し、身体強化を施した怪力でワイバーン目掛けて投げつける。
ワイバーンの長い首に命中するが硬い鱗に阻まれて軽く出血させるに留まる。
ここで仕留められないとなると第二段階。
メアリーが電撃の槍をワイバーンに発射して感電させたところに、俺がワイバーンの顔面に巨大な火球をぶつけ、燃やし続ける。
足が氷漬けにされているし、感電していることで上手く体を動かすことができないワイバーンは顔を包むように燃え続ける火球を首を動かそうとして振りほどこうとするが、動きが鈍いので俺の操作で振りほどけないようにする。
5分ほど燃やし続けると肺の酸素が無くなったのかワイバーンは全身を痙攣させて、氷の張った池に体を沈めた。
すかさず変身で大熊に変化したアキがワイバーンに突っ込み、倒れているワイバーンの首を怪力で360度ぐるりとねじ曲げる。
バキバキと首の骨が折れる音が響き渡り、ワイバーンの討伐に成功するのだった。
『ナイスアキ!』
『皆もありがとうね』
4人でハイタッチをし、ワイバーンの亡骸の近くに集まる。
ワイバーンの大きさは約8メートルくらいで8トンクラスのトラックと同じくらいの大きさである。
足下の氷を溶かして地面のある場所に4人で運ぶが、だいたい4トンくらいの重さがあった。
魔法の力でワイバーンも飛行していることが分かる。
普通この重さと大きさだと飛行することができない。
予想よりも肉厚である。
倒したワイバーンを調べてみると、全身の鱗が魔法に対して高い耐性と防御力があり、アキの石槍が貫けなかったのは威力不足と素材が普通の石であったのが良くなかったかもしれない。
石は石でも炎の魔法と組み合わせて石を溶解させ、黒曜石にすれば貫けた可能性が残る。
今後の課題は1人でもワイバーンを倒せることか?
『ワイバーンってどれぐらいで売れるんだろう』
『流石に金貨くらいにはなるんじゃないか? まぁ町に行かないと売れないし、こいつを収容したらほぼ俺の異空間が埋まるんだけど』
前から狩っていた動物の素材、今日採取した蜂蜜、白いホーンタイガーの亡骸、チキンザウルスの亡骸、それにワイバーンで異空間はパンパンになってしまう。
『勝てるは勝てるけど課題も見つかったね。修行を続けて1人でワイバーンを倒せるようになろうね』
『『『おー』』』
今回の探索はこれで終了とし、ホクホク顔で村に戻るのだった。




