第35話 いざ山へ
俺、メアリー、シュネ、アキの4人が揃い、いよいよ山に挑む。
「山までのルートだけど」
今日は山の入り口付近までの道のりを確認するところから始める予定である。
「こういう時にマッピングの魔法が便利だな」
場所に印を付けて道を覚える魔法であるマッピング。
熟練度が高い人は頭の中に地図が浮かび上がるようになるらしいが、この場に居る全員そこまでの練度は無い。
「空を飛んでいくのでも良いけど、今回は森との境界線を確認しないといけないから地上で行くよ」
メアリーにそう言われ、全員身体強化の魔法をかけ、駆け足で森の中を進んでいく。
「野生動物が本当に多いわね」
「熊や狼も多いからな……鹿やうさぎみたいな草食動物が多かったら狩人達も森で狩りをしやすかったんだろうが」
アキの小言に俺がそう返答する。
「探知の魔法で直径1キロ範囲に30匹近く反応がある……密集しているな」
「それだけ食べ物が山にあるんだろうね……あ、この蔓は自然薯の蔓じゃないかな! あっちには食べられるキノコも生えているし」
「詳しいなメアリー」
「まぁ植物を扱う魔法を使っている以上、植物に詳しくないといけないからね。調べられるだけ調べたよ」
メアリーが色々植物について話しながら森の奥に進んでいくと、探知の魔法で俺達以外に魔力の反応を感じ取った。
「ちょっと飛行してみるわ」
俺がそう言って浮かび上がり、上空から周囲を見渡すと、村から約5キロ地点、見える山脈とは3から4キロくらい離れた地点が森の境界っぽいな。
ここから奥は魔力の反応が幾つも点在している。
地上に戻った俺は、ここらが魔物のテリトリーの境界線に入った事を伝える。
皆警戒を強め、アキは嗅覚で敵を探知し、他の俺達3人は探知の魔法で魔物の探知を行う。
それに敵に探知されないように全員に消臭と消音の魔法をかけ、これ以降の会話は念話をするように伝える。
アキは念話の魔法を使うことができないが、俺が送受信を担うことで会話に参加できるようにする。
『獣人のデメリットが想像以上にあって迷惑かけてごめん』
『しゃーない、俺達もこうなることを考慮していたけどメリットの方があると思ったんだから。その分戦闘では活躍してもらうからな』
『了解……居たよ』
いち早く敵を見つけたアキに従って森を進んでいくと、開けた場所に角の生えた白い虎が何かの肉を捕食していた。
『なんの魔物か分かる人いるか?』
『確か……ホーンタイガーの一種だと思うけれどホーンタイガーはオレンジ色の毛色をしているはずだからちょっと違うね』
異世界の魔物について詳しく神の間で調べてくれていたメアリーが答えてくれた。
更に説明によると、ホーンタイガーは電撃を放つ魔物らしく、角に電気を蓄える性質があるらしい。
『どれぐらい強いか分からないが、ホーンタイガーの肉体を貫通する魔法で一撃で倒した方が良いよな』
『そうだね』
メアリーも頷いてくれた。
俺は土魔法で三角錐状の鋭利な弾丸を作り、空中で高速回転させる。
放出の魔力が溜まった瞬間に弾丸をホーンタイガーに向けて発射するとホーンタイガーのこめかみに弾丸が直撃し、パスンという貫く音と共に、弾丸がホーンタイガーを貫通。
肉体を弾丸が貫いて外にでるのと同時にホーンタイガーの脳みそも外に飛び散った。
白目を剥いたホーンタイガーは舌をビーンと伸ばし、地面に倒れる。
周囲を警戒しながら俺は白いホーンタイガーに近づくと、素早く異空間のゲートを開き、ホーンタイガーの亡骸を中に収納する。
『結構重いな……300キロ近くあるんじゃないか?』
『こんなのが彷徨いているって魔物の領域って恐ろしいですね』
シュネが怖がりながらも念話で伝える。
するとアキが俺達の肩を叩いた。
『近くにまだ魔物がいる。収納急いで』
俺は頷くと、亡骸を急いで異空間に収納する。
一方メアリーはホーンタイガーが食べていた残骸を確認していた。
『多分オーク種の魔物だと思う。運が良いのか魔石が残っていたからナツこれも回収しておいてくれ』
『了解』
魔石……魔物から取れる魔力の籠もった石であり、魔法や魔力の扱いが得意な魔物ほど大きな魔石を体内で生成する。
魔石は、都市部では魔導具と呼ばれる魔力によって動く道具の動力源として活用され、大きさによってはそれなりの値段で取引される。
それこそ小さい物でも電池くらいの値段で、拳大の今回拾った魔石は……銀貨くらいにはなるんじゃなかろうか。
もしかしたらホーンタイガーの魔石はもっと大きい可能性もあるが、とりあえず後で掻っ捌いてみよう。
『一旦隠れて』
アキの言葉で俺達は茂みに隠れると、今度出てきたのは頭にトサカを携えた鶏と肉食恐竜を足して2で割った見た目をしていた。
大きさは2メートルを超えている。
『私にやらせて』
アキが変身し、大熊モードになると恐竜擬きに突っかかっていった。
『メアリー、あの魔物は?』
『チキンザウルスの一種だと思う……文字通り鶏と恐竜の足した様な見た目をしていて、種類によって前にウォーターとかストーンとかの名称が付くよ』
『じゃああれは……』
『ファイヤーチキンザウルスだね』
目の前では怪獣バトルが展開されていて、チキンザウルスが口から炎を吐き出そうと溜めに入った瞬間にアキのベアークロー……右フックがチキンザウルスの顔面に直撃し、溜めていた炎が暴発する。
そのままアキはチキンザウルスの首を掴むと、背負い投げでチキンザウルスを地面に叩きつけ、足に力を込めて倒れたチキンザウルスの頭にを踏み抜いた。
ブチャっと頭部が潰れたチキンザウルスはそれでも体がジタバタと動くが、チキンザウルスの飛び出た内臓をアキが引っこ抜くと、動きを止めて痙攣している。
『水魔法で血抜きして!』
アキから言われて、俺が茂みから飛び出し、チキンザウルスに触れて、水魔法で体内の血液を一気に抜いていく。
血を抜いたチキンザウルスの亡骸も俺は異空間に収納し、血の匂いで他の魔物が集まってくる前に、アキが土魔法で臓物だったり食いかけのオークの残骸に土を被せ、シュネがその上から消臭していく。
『あの程度なら拳で倒せるわね』
『だいぶ野性的な戦い方をするな……生前は虫を殺すのにも悲鳴をあげていた癖に』
『何を今更……この世界に転生してそんなのにキャーキャー言っているようでは生きていけないでしょ』
『それもそうか』
メアリーも笑いながら
『僕達転生してから動物を殺すことに一切ためらいが無くなったからね。それだけ殺伐とした世界とも言えるけど』
シュネの方も慣れてしまった……と少々困惑気味であるが、とりあえず全員魔物を倒せることを確認したい。
一旦この場は離れて別の場所に移動し、魔物を探すと、巨大な蜂の巣を見つけ、蜂の巣から蜂蜜が滴っている。
『うわ、勿体ねぇ』
『でも巣の下に居るよねぇ……ボス的存在が』
蜂の巣の下には滴った蜂蜜を食べようと魔物が群がっている。
熊っぽい魔物に大きな蝶やカブトムシみたいな魔物、ゴブリンも周りで蜂蜜を啜っている。
『ここはじゃあ僕が行こうか』
メアリーが前に出ると、腰にぶら下げていた袋から種を取り出して魔物達に指で弾いて飛ばした。
種は魔物達当たるとメアリーが魔法をかけ、種が魔物を養分にしながらどんどん成長していく。
ギチギチと蔓が魔物達に巻き付き、ゴキゴキと骨が折れたり肉が潰れる音が響く。
血塗れになった蔓は真っ赤な花を咲かせ、大きな果実を実らせ、その果実が地面に落ちそうになったのをメアリーが魔法で拾っていく。
『スプラッシュフルーツ。動物を養分として成長する植物で、魔法で急成長するように調整した物だよ。栄養を吸い取った動物や虫によって美味しさの違う果実を実らせるけど……素材が駄目になっちゃうのが玉にキズかな?』
滅茶苦茶恐ろしいことを言っているが、そうこうしている合間に蔓は枯れていき、地面には魔物の魔石だけが残り、散らばった魔石を回収していくのだった。




