第31話 シュネ リベンジ!
転生してから桜花の転生体であるメアリーと合流し、実家が小作人ととても貧しい身分だったのでいつも腹ペコだった俺ことナーリッツ君。
メアリーがこっそり作っていた畑で芋を腹一杯食べることができたり、魔法を使った狩りで、野生動物を狩ることで肉を確保し、腹ペコ状態から脱出。
実里の転生体であるアキことアキーニャの意識も覚醒し、彼女の錬金術のお陰で塩不足の問題も解決。
あとはつららの転生体が目覚めるのを待ちつつ、身体を得たことで魔力の流れがぐちゃぐちゃになっているため、魔力の流れを正常に正し、体に慣れさせることで、魔法の効率や威力を高めていくのであった……。
「アキ! 前回は失敗しましたが! 貴族である私が1回の敗北で負けを認めるほど甘くは無くてよ!」
数日前にアキに負けた? ……ほぼ自爆したシュネが復活し、アキに勝負を挑んできた。
「手加減してやれよ」
「わかってるわよ」
ボソリと俺がアキに言うが、アキも小声で答える。
「じゃあ審判を僕がやるから、2人は参ったと言うか、気絶したら負けね」
メアリーはシュネが興奮して攻撃魔法を連発して周囲を火の海にしないように、先に審判を名乗り出ることでジャッジすることを決め、シュネもアキもそれを了承した。
「ナツ、僕も周囲に被害出ないようにするけど、魔法防御壁でそれとなく周りを囲んでおいて」
「はいはい」
俺はメアリーに言われて透明の防御壁を展開し、魔法が外に出ないようにしておいた。
「それでは両者準備は良い?」
「もちろんですわ!」
「いつでもいいよ」
「始め!」
シュネは火球……ではなく、火炎放射と言うべき炎の魔法を口からブレスし、攻撃を始めた。
火球だと弾き飛ばされてしまうため、前回の反省を活かした攻撃である。
まぁアキには効かないのであるが。
身体強化の倍率を上げたアキに見た目は派手であるが600度前後しか出ていない炎では一切ダメージを与えることができない。
「魔法の範囲を広げた代わりに威力……と言うか温度が下がってしまった感じか?」
「うーん、元々見た目は派手だけど温度を上げるのに魔力を消費することを避けている気がするね。口から放出するのを魔法の発動キーにしているからかな」
神の間で勉強したが、魔法には効果を増幅させる行動というのが存在する。
一番分かりやすいのは杖や指輪等の装備品によって魔法の威力を上げたり、制御をしやすくすることであるが、人によっては呪文を唱えたり、踊ったり、手を叩いたり等の行動を組み合わせることで魔法の効率を上げるという手段も存在する。
まぁ俺達神の間で鍛えた組はそんな恥ずかしい事をするより魔力量を上げて、無詠唱かつ予備動作も無しで魔法を使ったほうが戦闘の時に便利であると判断し、それができるように鍛えていたので、シュネの様な動作をする必要が無い。
事実俺が防御壁を展開したのも動作が無かったから、シュネは分かってないだろう。
シュネの場合は口から魔法を放出するというのが効率を上げる手段に決めているらしく、それ故に口だけに注目していれば問題無い為、対人戦において凄い不利になってしまうのである。
アキは炎のブレスを片手で押さえつけながら突進を開始し、シュネはブレスよりも威力の高い火球に切り替えて放ったが、アキには効かない。
渾身の火球を放とうとした瞬間に身体強化の倍率をさらに上げて瞬歩の様にシュネの懐に入り込んだアキは、シュネ顎にそっと手を当てて口を塞ぐ。
驚いたシュネは口の中で自分の魔法を暴発させて、口や鼻から黒煙を吹き出す。
ドサリ
白目を剥いたシュネは地面に倒れて気絶してしまい、アキの勝利で終わった。
「ほいほい、治癒魔法っと」
俺は防御壁を解除してシュネの治療を開始する。
自身の渾身の一撃を自分自身で食らったからだろうか、歯が何本も折れたり欠けてしまったりしている。
治癒魔法で治すことは出来るが……これトラウマになったりしないだろうか?
「またエグい方法で勝負を決めたな。アキさぁ……腹パンで良かったんじゃないか?」
「それでもよかったけど、結局今のシュネの人格はつららが覚醒するまでの仮人格みたいなものでしょ……それにナツを虐めるような子と仲良くは無理でしょ」
「それでもさぁ……いや、これ以上は野暮か」
俺が言うのを止めるとメアリーが
「流石に復活して早々にまた意識失ったって言ったらシュネの親御さんが当分の間シュネを外に出さなくなりそうだから何処かで休ませようか」
「そうだな……木陰で休ませようか」
俺がシュネをお姫様抱っこして運んでいき、木の横に寝かせる。
「シュネ居るから秘密基地に行くわけにもいかねーよな」
「そうだね。僕達は身体強化して相撲でもやるかい?」
「まぁ身体強化の練習には良いんじゃないかしら」
とりあえず近くで相撲でもやって時間を潰すのだった。
「ん、んん……」
「あ、目が覚めた」
俺がシュネの近くで様子を見ていた時に、彼女が目を覚ました。
メアリーとアキは2人で相撲に飽きたのか総合格闘技みたいな事をやっている。
「私……また負けたの」
「うん……負けていたねシュネ様」
シュネがどう反応するか気になったため、そう答えると
「……私がケッセルリンク家を再び貴族に復興させなければいけないのに……この村の住民程度に負けるなどと!」
やっぱり俺達の事を凄い下に見ているんだな……そんな感情が言動からひしひしと伝わってくる。
「当分の間あなた達の前に顔を出しませんの……次に会う時は必ず勝ちますわ」
そう言ってシュネは介抱した俺に礼も言わずに立ち去ってしまった。
次に会う時って……もう数週間したらつららの人格が覚醒してしまうが……。
「ふーん、シュネはそう言っていたんだ」
「アキと再戦目指して特訓するだろうけど、彼女のことだから誕生日当たりに再戦するんじゃないか?」
「でもそしたらつららの人格が覚醒するじゃん……シュネとしては負けたまま終わりってことになるのかな?」
夜、俺達は秘密基地にて今日の事を振り返っていた。
アキは錬金釜で何か錬成しているが……。
「アキは何を作ってるんだ?」
「ん? 匂い玉を作ってる」
「匂い玉?」
「そう、私の場合獣人の特性で嗅覚を使えば敵を探知する事ができるから、強い匂いがあれば追いかけることができるのよね。だから匂い玉を作っているのよ」
「なるほどな……材料は……聞かないほうが良いか」
「いや、普通にハーブとか匂いの強い薬草類よ。変な物は入っていないわ……そっちは逆に壺なんか作って何に使うのよ」
「色々に使えるぞ。これから調味料とか作っていったらそれの容器として使えるし……メアリーが大豆作ってくれているからな。塩と大豆で味噌や醤油を作っていこう」
「それもそうね……」




